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第百三十二話『反省と失念』

〝急ぎ部屋へと案内せよ”


ツェツェルレグまで駆け抜けたブランチェは急ぎ宿泊先であるホテルへと入る。そしてホテル一体に暗示を掛け従業員に部屋へと案内するよう命令をした。


“芙蓉、呪術による結界をこの宿舎に施すのだ。”


「がってん.......承知の助.....」


芙蓉はロビーへと戻り術式の構築を始める。


「This is your room sir.」

(此方がお部屋になります。)


“ご苦労、もう戻ってよいぞ”


従業員は虚ろな目をしながらもそう案内すると元来た道を戻っていった。そしてブランチェは急ぎカミーユをべッドへと寝かせ傷口の治療に入る。


「賢者様、一応止血は自分でしておいたから、」


それでも顔色が優れぬカミーユ。ブランチェは直ちに大地の加護を授け、カミーユ本人の治癒力を底上げする。


“すまぬな、吾輩にはこれくらいのことしか出来ぬのだ。”


「別に気にしなくいいわ。ルキフェル達と合流すれば腕は再生するのだし。」


しかしそれはかなり先の事になる。


“ルキフェルを此処に呼ぶ。”


ブランチェがそう提案する。だがカミーユは首を横に振った。


「ダメよ。飛翔をすれば、敵はルキフェルの位置を把握する。それに私たちが遊び過ぎた所為でもう時間がないのは知ってるでしょ?」


カミーユの言う通りセカンドフェーズの期限が二月を既に切っているのだ。


「それに私たちならやれるわ.......と言うか、賢者様が本気を出してくれたら一発でしょ!うぅ.......」


叫んだ影響で腕に痛みが生じ抑える。


「先ほどの者.....吾輩とて一筋縄ではいかぬ。奴は強い。ディアーナと同格か、それ以上の実力を持ち合わせておろう。」


ディアーナ以上と聞き眼を細めるカミーユ。


「確かに強かった、けど私と違って賢者様が手こずる程の相手ではないでしょ?」


“いや、奴は吾輩にとって相性が最悪なのだ。あの聖槍、魔を討ち神を討ち取る代物だ。それに神の血筋である以上、奴の攻撃は吾輩に届く。それに連なり芙蓉も相性が最悪だ。ディアーナ同様に芙蓉は魔に連なる眷属、あの聖槍に触れたが最後であろうな。”


つくずく相性の悪い相手だとため息を漏らす賢狼。


「ふっ.......それなら私が頑張るしかないじゃない。」


カミーユは右腕をブランチェへと突き出す。


「新しい剣を頂戴、あの宝剣折れちゃったの。伝説の剣くらい、あるんでしょ?」


“カミーユよ、其方....”


「後ろにさがってろ何て言わせないわ。次は最初から全開で“殺し”に行くわ。」


人から発っせられる殺気ではない。それ程までの闘志がカミーユからは感じられた。


“そうか、ならば授けよう。”


小さな種をカミーユの手元へと落とす。すると種は禍々しい気を帯びた剣へと形を変えカミーユはその剣を掴み取る。


“封印を幾重にも施した最強の劔、『古の剣』。強大な力故に代償はある。剣に呑まれるな。自画を保て。さすればいかな者と言えど切り伏せる事が叶うだろう。”


「それはルキフェルでもってこと?」


ブランチェは頬を釣り上げニヤリと笑う。


「賢者様も悪い子ね、ふふ。」


正真正銘、”切り札”をカミーユへと譲渡したのである。


“吾輩らの童話とあ奴”ら”の神話、どちらの力が勝るか、次の戦で白黒とつけようではないか”













“敵と一戦交えたなう”


芙蓉からメッセージが送られて来た。


“カミーユ負傷あり”


それに続きその言葉と共に写真が添付される。左腕が切断された痛々しい姿のカミーユ。

ピッ プルルルルル プルルルルル カチャ


「ッ.....無事なのか?」


その写真を見て直ぐに国際電話を掛ける。


「うん、大丈夫よ。でも敵を倒せなかった。」


カミーユは落ち込んだ声でそう言う。


「今すぐにルキフェルをそっちに送る。」


青年は心配してかルキフェルを向かわせるようとするが___


「たかが腕一本よ、気にしなくていいわ。それに私たちには時間がないのは知ってるでしょ?」


カミーユは心配はいらないと言う。


「確かにセカンドフェーズのリミッ卜が迫っているのは確かだけど。それ以上に俺はお前の身体の方が心配なんだ。それにリミッ卜が過ぎたら死ぬって決まったわけじゃないんだろ。」

「ないかも知れないしあるかもしれない。だけどね、私はこんな事で私たちの生活を壊されたくないの。必ずこの戦争で勝利を手に入れないとだめ。それで、皆でいつもの家に帰ろう。」


カミーユの純粋な願い。


「それに私は大の負けず嫌いなのはジョンも知ってるでしょ!最後は絶対に私が勝つ!!絶対よ!!!」


「ふ............っても時間がないのはカミーユ達が遊んでいた所為でもあるけどな。」

「それを言わないのがお約束よ。」


どんな約束だよ、と苦笑をし励ましの言葉を送ると通話は終了した。


「ジョン、私は本当にカミーユの元へ行かなくて良いのですね。」

「あぁ、カミーユ達を信じる。それにルキフェル達にはルキフェル達のやるべきことがあるんだろ。」

「ふふ、カミーユさんは毎度の事ながら初戦は“遊び”癖がついておりますからねぇ。多方、おお振りな攻撃を行使した後に左腕の切断に至ったんでしょう♪」


ディアーナはくすくすと笑いながら食事へと手をつけていく。現在、自分達はルキフェルが予約したであろう一流レストランへと夕飯を取りに来ていた。


「来日して早々と敵と合間見えるとは幸運であり不運でもありますね。ですが私たちも敵の討伐を急がなければなりません。」

「それでは明日の早朝、向かう事にしましょうか♪」

「えぇ、本来ならば数日の間は休息を取る予定でしたがカミーユの件もあります。早急に片ずけましょう。」


遊ぶ気満々だったのか。


「そもそもヒールを兼ねてる奴らが同じチームになるから、こう言った自体になるんだぞ?」


理想のチーム分けに置いてはカミーユ、ブランチェ、ディアーナの三人。そしてルキフェルと芙蓉によるツーマンセルである。此れこそが均等の取れたチームバランスと言えよう。


「さて、そろそろ部屋へと戻るとしましょう。」

「えぇ、ご馳走様でした♪」


口笛をふかしながら席を立つルキフェルとディアーナ。


(本当にこいつらは都合が悪い事を聞くと逃げるな。)

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