第百二十八話『水着回と聞いて【挿絵付】』
「シャワーを浴びたんだが.......」
現在、宿泊するホテルルームにて設備がされているプライベート庭園にてくつろいでいるとディアーナがある提案をして来た。
「そんなの関係ねぇ♡」
カクテルを口に含みながらにこやかに芸人の真似をするディアーナ。
「ほらほらぁ〜可愛い水着だって先程ベルガールさんに頼んだら持って来てくださったんですよぉ♩」
水着を何処からともなく見せつけてくる。そしてルキフェルへと女性用と男性用の水着を渡した。
「何故私に両性の水着を渡すのですか。」
「ルキフェルさんの性別ってどちらなのか分からないんですよねぇ。下着ってお付けになってますぅ?」
確かに天使は性別が無いとは言えルキフェルは男性服女性服を気分で変えている。裸も勿論見たことがない為、正直な話、下がどうなっているかわからない。
「そうですね、ジョンが私に対して女性の姿を求めると言うのであれば女性の身体へと変化をして行くのでしょう。其れは同様に男性の身体へともです。因みに下着は付けておりません。」
ルキフェルはジリジリと自分へと寄りそう言ってくる。
「私の肉体を欲するのであれば要求をした方がいいですよ?」
耳元でそう言ってくる堕天使にドキリとする。
「悪魔的な誘い方だな」
「えぇ、堕ちた故の欲深さでしょう。」
唇が数センチの位置まで迫る。
「だが、アンタはあんたのままでいてくれ。」
だがルキフェルの唇へと指を当て笑う。
「ふふ、いつでも言ってください。私と貴方は永遠に暮らすのですから。」
ルキフェルは翼を広げ自分を包み込む。
「ちょっと待って下さ〜い( *`ω ́)」
ディアーナが自分たちの元へと飛び込んでくる。
「うがっ!?」
ディアーナの身体が重くのし掛かる。
「ディアーナ、少しは自重をしなさい。」
邪魔をされた事で顔を引き攣られせるルキフェル。ディアーナはルキフェルを放置し自分を見つめていた。
「永遠に暮らすのは私とですよねぇ?」
何時もならば私”も”とつけるはずなのだが個人を主張して来た。
「永遠にって言うが、精々生きれて60〜70年だぞ。其れも無事に事故や病にかからなかった場合だし。」
「ふふふ、心配いりませんよぉ?何せ、微量ながら瘴気を流し馴染ませおりますからねぇ♩」
凄いことをさり気なく言うディアーナ。
「はい?」
瘴気が少なからず自分の身体へと侵食している事を意味しているのだ。
「ディアーナ、貴方と言う魔性はなんと言う事をしているのですか!」
ディアーナの肩を掴み叫ぶ。
「ふふ、知っていますよぉ♩ルキフェルさんだって天の加護を勝手に授けているではありませんかぁ?」
ルキフェルはギクリと目を泳がせる。お前もなんて事をしているのですか!とツッコミを入れたくなる。
「何も私達に限らず芙蓉や狼さんも何かしらの術を施しているようですがねぇ。あ、カミーユさんは別ですよ♩」
改造人間にされているようだ。
「正直な話、俺の寿命ってどうなってるんだ?」
怒りたい気持ちもあるが好奇心も同時に感じる為、素直に聞くことにする。
「ふふ、私がこの半年に流し込んだ瘴気の質から計算するに、ふふ、ざっと100年以上は生きる事になるでしょう。」
「百年以上、ね。」
まぁ其れくらいならば妥協範囲だなと感じた。
「私が施す加護は老いを止めますので死なない限りは私と永遠に暮らす事が可能ですよ。」
うん、全然妥協範囲ではなかった。ディアーナとは規模が全く違うじゃねーか!
「おい、今すぐに外せ。」
「拒否します。」
速攻で答える堕天使。ディアーナも加護を取り外す事には反対の様でルキフェルと共に両腕でXサインを作っていた。
「さて、海水浴へと行きましょう♩」
「そうですね。先程レストランの予約も済ませましたし、水と戯れるのも一興でしょう。」
二人は水着を掴み部屋を後にする。
「え?加護とか瘴気はそのままって事!?」
二人の迅速な動きに文句も言えなかった青年は唖然とした顔で彼らの後を追うのだった。
「「海だー」」
ルキフェルとディアーナは美しい砂浜にて叫んでいた。辺りの客は二人の美しさに見惚れていた。
「一度は言って見たかった台詞なので、言えて良かったですぅ♩」
「えぇ、アニメではよく見る光景でしたのでね。」
ディアーナは黒のビキニを着用し男性の注目を一身に受けている。そしてルキフェルも同様にその彫刻や絵画で見る様な美しさに注目を浴びていた。因みにルキフェルの水着はブカブカなラッシュパーカーの下にホットパンツの様な水着だ。
(本当にルキフェルのチョイスは上手いな。性別がどっちなのかあやふやなポイントを押さえている。)
すると外国人の男達が二人へと話をかける。
(ナンパかな?)
自分はと言うと、現在二人に頼まれ(強引)、飲み物を購入する為にビーチバーにいた。
「Hey girls, u guys free?」
(やあお嬢さん達、今暇かい?)
「We can show u guys a nice places. 」
(良い所を沢山知ってるから見せてあげるよ。)
クスクスと笑いながら二人の姿を遠目で見る。すると店員さんが3つのドリンクを渡してくれた。ディアーナにはブラッディ・メアリー、ルキフェルにはジン・リッキー、そして何故だか自分にはセックスオンザビーチである。注文はお任せにしてもらったのだが何故このチョイスだったのだろうかと疑問に思う。
「うふふ、普通ならばジョンが此処に現れ私達を救わなければなりませんのに何をしているんですかねぇ♩」
「えぇ、此処は王道展開だと言うのに残念です。」
二人はやれやれとした表情で青年の方へと視線を向けると女性の集団に話を掛けられている姿が目に移る。
「Guys?」
(どうかしたのかい?)
男達は諦めず話を掛け続けているのだが二人の様子が可笑しい事に気付く。
「「Bit●h!!」」
((アバズレども!!))
ルキフェルとディアーナはそう叫ぶと急ぎ青年の元へと駆ける。取り残された二人の男は唖然とするしかなかった。
「u don't want to spend time with us? we can make u feel good?」
(いっしょに過ごしましょうよ?私達が気持ちのいい事をしてあげるからさ?)
顔を引攣らせ拒否をするのだが、女性達の推しが強い。
「huhuhu〜stay way from my husband please♩」
(ふふふ、私の夫から離れてくれませんかぁ♩)
ディアーナが蛇の様に腕へと自分の腕を絡めて来た。
「Get the f●ck out of here. u nasty ugly bit●hes.」
(失せてくれませんか?醜悪な娼婦の面など見たくありませんので。)
口が悪いな。そんなキャラでしたっけ......そんなキャラでしたね。
「ふふ、其れでは行きましょうか♩」
女性達は文句を言いつつも引き下がってくれた。どうやら二人の覇気と美貌に敗北を感じたのだろう。
「ほら、飲み物だ。」
20歳を越しているからこそ飲めるお酒。もっともカクテルは女性の飲み物と言われるが、男性が飲んでも別にいいだろうとは思う。
「ディアーナって確か二十代前半だったよな。」
「えぇ、正確には23ですよよぉ♩もっとも瘴気を取り込んで以降肉体に変化はなくなってしまいましたがねぇ♩ふふ」
ルキフェルは言わずとも二十代を超えているのは知っている。
「年など無いに等しい物です。私も二十代と言う事にしましょう。」
年など関係ないって言った手前、二十代にするって発言は矛盾しているのでは無いか?
「何ですかその目は?」
「何でも無いです。」
青年はビーチパラソルの中へと入り身体を横にした。備え付けてあるリクライニングチェアーの座り心地は実に快適だ。
「おい」
ルキフェル達は自分の姿を見るなり自分の座るリクライニングチェアーへと覆い被さって来た。
「..........何をしてるんだ、離れろ。」
二人を叩き落とそうと手をかけるが逆に拘束をされ1つの椅子に三人が座ることとなった。
「ケチケチは良くありませんよぉ♩」
「えぇ、旅行なのです。羽を伸ばしましょう。」
羽を伸ばすどころか物凄く狭いのですが......
「はぁ.......分かった。だけど流石に狭すぎる。彼処にあるビップ専用の天蓋付きベッドに行こう。そこなら三人で身体を伸ばすことも出来るだろう?」
自分達が借りるキーを見せれば入れるようになっている。
「それは名案ですねぇ♩」
「む、私は今の体勢でも構わないのですが。」
「俺が構うわ!」
周りの客は自分達を羨む目線で見て来る為に居心地が悪いのだ。