ヤータ市防衛戦 7
待ちに待ったカタン市からの援軍が、とうとうヤータ市に到着した。
駆けつけた冒険者たちは予想された最悪の状況と違い、勝利寸前のこの状況に困惑する。
魔操鎧は大戦鎚の一撃で鎧が剥ぎ取られ、露見した魔力核をザキが斬り裂いた。
残った風切鳥は、補充されたトリモチにより全てが討伐された。
かなりの時間を要したが、フランのキュア(と自己修復機能)により、おキクの腕は何とか動くところまで回復した。
それからおキクとフランは山を下り、アイとの合流を果たす。
こうしてヤータ市防衛戦は幕を閉じた。
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ソアラは援軍のリーダーらしき冒険者に、いろいろと事情を聴取された。
しかし、今回の防衛戦の立役者である3人のC級冒険者については、ソアラはあまり詳しくは報告しなかった。
彼女たちの存在は、未知の部分が多い。
なんとなく、ツマラナイしがらみに巻き込んではいけない様な…そんな気がしたからである。
ソアラのこの判断のおかげで、アイたちの自由は守られた。
事情聴取から解放されたソアラは、特に理由もなくアイたち3人の姿を探す。
すると、メイン会場の隅に立つ木の根元に寄りかかって、身を寄せ合って眠る3人の姿を見つけた。
なんとも愛らしい、無防備な寝顔である。
「ここだけ見てると、さっきまでのことが全く信じらないわね」
ソアラは呆れたように苦笑いすると、静かに立ち去っていった。
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後夜祭が始まった。
組み木は既に燃え上がっているため、点火の手順は省略された。
大会の閉会式も兼ねていたのだが、ほとんどの冒険者が逃亡してしまったため式典は寂しいものになるかと思われた。しかし援軍に駆けつけた冒険者たちが、残って場を盛り上げてくれたのだ。
「優勝者はソアラさんです。おめでとう」
ヤータ市長がソアラに、花の首飾りと共に聖遺物の授与を行った。
ソアラは無言で受け取り、ゆっくりと頭を下げる。
アイたち3人は、拍手でソアラを見守った。
「ごめん、フラン。言ってなかったけど、実は負けちゃった」
アイはフランを見ると、あっけらかんと笑った。
「知ってましたよ。任せたハズなんですけどね」
フランもにこやかな笑顔を見せる。
「いやー」
フランの期待に応えられなかったことに、アイは若干の苦笑いを見せた。
「ソアラさん、ホントに強かったよ。結局一発もダメージを与えてない」
「その通りですわ!」
唐突に、背後から大きな声がした。3人が声のした方に振り返ると、そこにはソアラが立っていた。
「私が勝った。それが全てよ!」
ソアラは声を荒げて勝ち誇る。
「ただし…強い私にこの聖遺物は必要ないから、弱いアナタたちに差し上げますわ」
ソアラは10cm四方の木箱をアイの胸元に押しつけると、フンと鼻を鳴らして去っていった。
「え…何?どういうこと?」
アイは胸元の木箱をどうする事も出来ずに、おキクとフランの顔を見た。
「さあ?」
おキクが意味深に笑う。
「きっと認めてくれたんですよ、私たちのこと」
言いながらフランは、去っていくソアラの背中を嬉しそうな瞳で見つめていた。
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ヤータ市長の計らいで、逃げずに街を守った冒険者たちに、無償で宿と食事が提供された。
まだ現金をほとんど持っていないアイたちも、無料ならばとヤータ市に宿泊を決める。
その宿で、3人は聖遺物の確認をすることにした。
木箱を開けると、中には金色チェーンのブレスレットと、一枚の鑑定書が入っていた。ブレスレットには三日月のモチーフがあしらってある。
鑑定結果「月の雫」
着用者の身をあらゆる脅威から護るアミュレット。
ただし一度発動すると、月の光の下に一晩置かないと効果は回復しない。
「スゴイ効果だね。誰が持つ?」
アイは、おキクとフランの顔を交互に見た。
「おキクが持っててほしい。お願い」
フランは迷わず、おキクに視線を向ける。
おキクは目を閉じて一瞬考えたが、やがてゆっくりと頷いた。
「分かった。有難く使わせてもらうね」
「うん!」
フランは頬を赤く染めると、嬉しそうに微笑んだ。




