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ヤータ市防衛戦 6

 時間は少し遡り…


 ソアラと別れたおキクとフランは、魔操鎧を慎重に探していた。


 視界が悪くミーコの探知もないため、なかなか思うように見つからない。


「ソアラさんの後を追ったのかもしれない」


 そんな中、フランがふと溜め息混じりに呟いた。


「まさか…?」


 おキクも釣られるように、ソアラが走り去った方向に顔を向ける。


「おキク、今すぐソコから逃げてください!」


 そのとき、草の茂みから飛び出てきたミーコが焦ったように叫んだ。


「え…!?」


 同時におキクのすぐ横に立っていた木が粉々に砕け散り、魔操鎧の鎚矛メイスがおキクを横から打ち付けた。


 おキクはそのまま、トラックに撥ね飛ばされたかのように吹き飛び、背中から太い木の幹に叩きつけられる。


「かはっ!」


 衝撃で肺の空気を全て吐き出し、おキクは跳ね返るようにうつ伏せに倒れ込んだ。


 左腕がおかしな方向に曲がっている。直撃したのが腕であったため辛くも致命傷には至らなかったが、重症であることには違いなかった。


 ミーコは瞬時に痛覚の軽減措置を行う。セーレーがこの措置を行うのは、転位者が深刻なダメージを受けた時だけである。


「ごめんなさい、私のせいで!」


 フランはおキクに駆け寄ると、癒しの魔法を急いで唱えた。しかし…アバターであるおキクの体には効果が薄い。


「ああ、どうしよう。私の魔法では…やっぱり役に立たない!」


 フランは涙を流しながら、一心不乱に癒しの魔法を使い続ける。


「ありがとう、随分と…楽になったよ」


 そのときおキクが、赤子のハイハイのように手と膝をついて体を起こすと、身をよじって座り込んだ。


「そんなハズない!」


「本当よ。でも参ったな…左腕が全く動かないや」


 おキクは「アハハ」と明るく笑った。


「攻撃きます」


 ミーコの警告が、鋭く響く。


 フランは咄嗟に盾を構えると、魔操鎧の攻撃を受けとめた。しかしその重い衝撃に耐えきれず、フランは尻もちをついてしまう。


 そのとき、状態固定の盾を渾身の力で打ち付けた魔操鎧の右腕が、その衝撃を受け止め切れずに肩の先から吹き飛んだ。


 今だっ!!


 おキクは両手剣を片手で拾うと、剣を杖替わりになんとか立ち上がる。


「フラン、お願い!魔法でこの剣を支えて」


「は、はい…風の舞姫(シルフィダンス)!」


 前に出したフランの右手から、魔法陣がスッと広がった。すると両手剣の周りを風が包み込み、重量がフッと軽くなる。これならいける!


 おキクは一気に魔操鎧に詰め寄ると、お腹部分を片手で真横に薙いだ。超音波振動の刃は、おキクの期待に見事に応える。


 魔操鎧はガラガラと崩れさり、二度と修復されることはなかった。


 そのとき、気が抜けたかのように倒れそうになるおキクのことを、フランが寸前で支えた。おキクはそんなフランの頭を軽くポンポンと叩くと、ニッコリと微笑む。


「ホント助かったよ。フランのお陰で全部上手くいったね」


 フランは首を横にブンブン振ると、おキクの胸に顔を押し付けて再び涙を流し始めた。


 ~~~


 アイはこのままいけば、風切鳥を全部倒せると確信し始めた。しかし話は…そう簡単には運んでくれなかった。


「ゲージの残量がまもなく尽きます」


「…マジで!?」


 調子に乗った直後だったので、落胆も激しい。


 あんなにいた風切鳥は、もう20体もいない。本当に勝ちが見えていたのだ。


 ソレを知ってか知らずか、残りの風切鳥がアイの頭上で円を作り、一斉に急降下を開始した。


 アイは迎撃のため、上空に弧を描くように火炎を放射する。…が、3体を焼き払ったところで銃口がプスンと黒い煙を吹き、短銃の光が消失した。


「うそーっ!」


 アイの顔から血の気が失せて真っ青になる。同時に無数の風切鳥に貫かれる、自分の未来が見えた気がした。


熱の防幕(ヒートカーテン)!」


 突如アイの足下に魔法陣が広がると、赤色の薄い幕が円筒形にアイの身体を包み込む。そして風切鳥の攻撃を、受け流すように逸らして守った。


「た、助かったの?」


 アイが訳も分からず唖然とする。


「私の防護魔法も、そう長くは保たないわよ」


 突然背後から声をかけられ、アイは驚いたように振り返った。


 いつのまにか、ソアラがそこに立っていた。


「ソアラさん!」


「なかなかに、追い詰められてきたわね」


 ソアラは上空を飛び回る十数体の風切鳥を見上げながら、困った顔で苦笑いする。


 そのとき市街地の方から、住民の大きな歓声が湧き上がった。

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