ヤータ市防衛戦 5
ザキは風切鳥に対してカウンターをとれる、優秀な剣士であった。しかし長時間の緊張状態が続いたため、疲労が溜まり集中力が限界に近付いていた。
ドーンは風切鳥を捉えることが出来ないため、盾での守りに専念している。
冒険者たちの限界が近いことを察知したのか、5体の風切鳥がバラバラに急降下してきた。
「くっ!」
ザキとドーンは対処仕切れないことを悟った。ここまでか、と半ば観念する。
「伏せて!」
そのときアイが、ザキたちのもとに飛び込み鋭い声で叫んだ。
ザキとドーンは突然現れたアイに、一瞬困惑の表情を浮かべる。
「いいから、伏せなさい!」
そのあと続いて聞こえたソアラの声に、ふたりは反射的に従った。
アイは空に向けて短銃を構えると、弧を描くように火炎を放射していく。
5体の風切鳥は、突然出現した炎の塊に回避する暇もなく正面から突っ込み、そしてそのまま一瞬で燃え尽きた。
「よし!」
アイは小さくガッツポーズをする。
周りの冒険者たちは、その光景にキョトンとした。
ソアラでさえ、自分の予想以上の成果に動揺を隠しきれない。自分と同等に渡り合ったアイに対して、ある程度の予感は抱いていたが、この結果は想像の範囲を超えていた。
残った風切鳥が、アイを中心に旋回を開始する。
「アイ、今の攻撃で風切鳥の攻撃対象が、こちらに専念されました。皆を守るために、ここから離れることを推奨します」
「分かった」
アイはそーっとザキたちから距離をとり始めた。
「あの子…っ!」
アイの行動理由をソアラは瞬時に理解する。しかし同時に、感知の索敵範囲内に1体の魔物が引っ掛かった。魔操鎧の反応である。
(こんな時に!)
ソアラは顔をしかめて舌打ちする。
「ザキ、ドーン、魔操鎧が来るわ!あの子を守りなさい!」
「了解!」
ザキとドーンは声を揃えて返事をすると、ソアラの指示する場所に向かって走り始めた。
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ソアラは、ザキたちとアイとを両方フォロー出来る場所に陣取った。
負傷者の治療を終えたシストも、ザキたちの援護に向かっていった。
空に向かって放たれるアイの炎は、次々と降下してくる風切鳥を確実に焼き払っていく。
「一体何だというの?あの武器は…」
さっきと今と、全く違う攻撃方法をしている。ソアラには理解出来ない不思議な武器であった。
一方、魔操鎧を食い止めるため、ソアラのパーティメンバー3人が奮闘していた。
シストはお腹の前で、左手首にある銀のアミュレットに右手で触れる。
「泥地縛!」
魔法を唱えながら右手を挙げると、魔操鎧に向けて振り下ろした。その勢いで、シストの豊かな胸がプルンと揺れる。
すると魔操鎧の足下に魔法陣が広がり、地面が突然泥化する。そのぬかるみに膝まで沈み込み、魔操鎧の動きが奪われた。
透かさずドーンが斧の一撃で、魔操鎧の右手の鎚矛を弾き飛ばす。その後ぬかるみから這い出ようとする魔操鎧を盾で押し戻しながら、ドーンは斧で魔操鎧の腹部装甲を削り取り始めた。
ザキは飛ばされた鎚矛を拾い上げると、魔操鎧を打ち付けていく。とはいえ重量のある武器のため、ザキの思うようには扱えてはいなかった。
魔操鎧も両腕を振り回し、激しい抵抗を繰り返す。
斧槍や大戦鎚でもない限り、苦戦は必至の魔物であった。
本来はそのハズなのだが…あのネコミミ剣士は、まるで紙でも斬るかのように魔操鎧を斬り裂いた。
「あの両手剣も、尋常じゃないということね」
本当に一体何だというのだ。
ソアラはA級としてのプライドが、崩れ去りそうになるのを必死に堪えていた。




