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ヤータ市防衛戦 4

 アイとソアラが麓まで下りてきたとき、ひとりの女性が近寄ってきた。


 癖のない金髪のボブヘア、黒い瞳の大きな目には縁なし眼鏡をかけている。シワの無い黒の長衣を身に纏い、肩には白いストールを巻いていた。背丈はアイと同じくらい。充分に美女なのだが、彼女のなかで一際目を惹くところは、自己主張の激しい…その胸の存在であった。


「ソアラさま、ご無事で良かった」


「シスト、アナタも無事でなにより。ザキとドーンも無事なのかしら?」


 ソアラは道中で、アイから魔物の襲撃に関して、ある程度の説明を受けていた。


「おふたりとも今は無事です。しかしトリモチが底をつき、多くの冒険者が逃亡してしまったため、かなり厳しい状況です」


 軍隊と違い、個の集団である冒険者の弱点が露見したカタチである。勝ち目の薄い戦いに、生命を懸けて臨める冒険者は少ない。


「今はドーンさまと、防護魔法に秀でた数名の魔法士が敵の攻撃を一身に引き受け、市民への被害は出ていませんが、それも恐らく時間の問題です」


「シストも皆の援護に戻りなさい。この子の用事を済ませたら、すぐに私も合流します」


 ソアラはシストに指示を出すと、アイとともに再び走り始めた。


 ~~~


「お願い、ソアラさん。コレを燃やして」


 アイは会場内の組み木にソアラを案内すると、組み木を指差しながらそう言った。


「は…?」


 ソアラは一瞬呆けたが、すぐに我にかえる。


「アナタ、この非常時に何を言ってるの!」


「必要なことなの!お願いします」


 アイは精一杯に頭を下げた。


「何なのよ、アナタたち…」


 ソアラは軽く溜め息をつくと「離れてなさい」とアイを退がらせた。それから魔法杖を顔の前で縦に構えると、一気に上に振り上げた。


地獄の業火(ヘルフレイム)!」


 組み木の真下に魔法陣が広がると、炎の柱が噴き上がる。一瞬で組み木の丸太が燃え上がり始めた。


「コレでいいかしら?」


「ありがとう!」


 アイは瞳を輝かせてソアラに感謝の意を伝える。


 ソアラはアイの真っ直ぐなその瞳に、思わずたじろいだ。


(本当に調子が狂う…)


 そんなソアラの態度に気付かず、アイは燃え上がる炎の前に移動する。


「アイ、熱量と威力は比例します。可能な限り近付いてください」


「分かった」


 セーレーの説明を受けて、アイは更に一歩踏み込んで、炎に向けて右手をかざした。


「バーストバレット!」


 アイの右手と炎の間に魔法陣が浮かび上がる。


「アチッ、熱い!なんかいつもより長くない?」


 炎の熱や飛び散る火の粉に晒されて、アイはその場で足踏みを繰り返した。


「ゲージが溜まるまで時間がかかります。我慢してください」


「熱いアツイ!もう限界!」


 アイのギブアップの寸前に、読み取り完了のサインが伝わり正四面体が出現する。アイはそれを掴み取ると、転がるようにそこから離れた。


 それからアイは、握りしめていたSDカードを短銃のグリップエンドに差し込む。すると短銃が、まばゆい光を放ち始めた。


(一体何を…やっているの?)


 ソアラは只々、アイの姿を呆然と眺めていた。


 ~~~


 アイとソアラが冒険者たちの元に戻ったとき、その人数はさらに減っていた。


 2人の魔法士が傷つき倒れており、シストがそばで癒しの魔法(キュア)をかけていた。


 そのシストを守るように、ザキとドーンが左右に別れて立っている。


 ザキは背中まで伸びた焦げ茶色の髪をゴムで無造作に束ねた、つり目の顔した長身男性である。青色の胸甲鎧ブレストアーマーの下には、薄紫色のシャツとズボンを着ている。そして両手に短刀カトラスを持つ、二刀流の剣士であった。


 ドーンはドワーフの流れを汲む、小柄で骨太な体格の男性である。日に焼けた褐色の肌、黒い短髪にモジャモジャの黒髭。灰色の甲冑鎧プレートアーマーを身に纏い、円形の大きな盾と斧を装備する重戦士だ。


 風切鳥の数も減ってはいたが、まだまだ上空には多く残っている。頭上を飛び回る魔物の数と、更に疲れも相まって、残った冒険者たちの士気の低下は著しいものであった。

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