ヤータ市防衛戦 3
山の麓では、冒険者と風切鳥との攻防戦が始まっていた。
メイン会場にはまだ多くの市民が残っているため、冒険者は会場を出てトリモチで応戦している。
トリモチは闘牛士のマントのような形をしていた。全員で上空を監視し、降下してきた風切鳥を確実に1体ずつ粘着面で捕えていく。
粘着力は強力で一度捕えると剥がせないため、トリモチごとトドメを刺していく。
しかし、まだまだ無数の風切鳥が上空を飛び回っている。このままでは、トリモチの在庫の数が足りなくなるのは容易に想像出来た。
「多数の魔物と戦うのなら、火のバレットを推奨します」
不意にセーレーの声が、アイの耳に届いた。
「火?」
「所謂、火炎放射器です。1発の特殊弾で燃料ゲージを使い切るまで、何度でも攻撃出来ます」
「でも、火なんて…」
アイは辺りをキョロキョロと見回す。すると会場の真ん中にある、大きな組み木に気が付いた。
「セーレー、ソアラさんに会いたい。案内して!」
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「これは、私の状態固定によるものです」
フランは大盾を折りたたむと、ランドセルのように背中に背負う。
「任意の無機物に、不変的な状態固定を付与することが出来るんです」
「不変的な状態固定?」
おキクが難しい顔で首を傾げた。するとミーコがおキクの肩に飛び乗り、耳のそばでそっと囁く。
「簡単に言うと、絶対に壊れないということです」
「そんな事、出来るのっ!?」
おキクはフランの凄さに、改めて驚愕した。
「……そんなに凄い力、どうして今まで黙っていたのかしら?」
ソアラも同じように、驚きを隠せない顔をする。
「これは父方の血に流れる固有スキルです。私に発現した時に、誰にも言ってはいけないと、キツく教えられました」
「…何故?」
「強すぎる力は…悪人を呼び寄せるからです」
フランの真剣な表情に、ソアラは探るような視線を向ける。
「それならどうして、今さら私に話すのかしら?」
「何故…でしょうね?結局一番の理由は、ソアラさんのことが嫌いになれなかったからです」
フランは少し照れたように「フフッ」と笑った。
「客観的に見て、私の装備は本当にあり得ません。気付かずに組んだ他の冒険者が生命を落とさないように、ああいう態度をとったのだと…今なら分かります」
言いながらフランの頬が、みるみる膨らんでいく。
「だけど…あんな言い方は無いと思います!しかも今日の事は、もっと赦せません!私だけでなく、アイやおキクの事までバカにした。これではさすがの私も腹が立ちます!」
「う……っ」
ソアラが顔を赤らめて言葉に詰まる。
「アイがソアラを探しています。合流のため、こちらからも移動します」
そのときミーコが、いきなり声を張り上げた。
「な…何、その猫!?」
突然喋った白い仔猫に、ソアラは目を見開いて驚きの視線を向ける。
「えと、使い魔…かな?」
頬を掻きながら、おキクが適当に誤魔化した。
「剣士が、使い魔ですって!?」
ソアラが信じられないという顔をする。
「さっきの子といい、アナタといい、アナタたち一体何者なの?」
「ただのC級冒険者ですよ」
おキクは勝ち誇ったように、ここぞとばかりに涼しい笑顔で言い放った。
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3人を先導していたミーコが、急に立ち止まり振り返った。
「左方向から魔操鎧が1体接近しています」
「……ミーコとソアラさんは、このままアイの所に向かって」
おキクが左方向に視線を凝らしながら口を開く。しかしソアラが、その提案に反発した。
「どうしてこの私が、アナタなんかに指図されないといけないのよ」
「アイがソアラさんの力を必要としてるの。お願い力を貸して」
「う…」
おキクの真剣な眼差しに、ソアラは口をつぐむ。
「わ…分かったわよ。C級を補佐するのもA級冒険者の役目。やってあげますわっ!」
ソアラは背筋をピンと伸ばすと、自分の胸をドンと叩いた。
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「ソアラを確認」
アイの右耳のピアスがピクンと反応した。
すると前の茂みの中からミーコが現れ、アイの胸に飛び込んできた。
「ミーコ!?」
アイは驚いたように、ミーコを抱きとめる。
続いてソアラが、茂みの中から姿を現した。
「ソアラさん、探してたんだよ!」
アイはいきなりソアラの手を握ると、そのまま麓に向かって走りだした。
「い…いきなり何ですの?」
「ソアラさんに、やって欲しいことがあるの。お願い、力を貸してっ!」




