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ヤータ市防衛戦 1

 

「いつまでそうやって寝そべっているつもり?早くお立ちなさい」


 ソアラが嘲るようにアイを見下ろす。


 アイは警戒しながら立ち上がると、ソアラからゆっくり距離をとった。


「どういうつもり?」


「別に他意はなくてよ」


 ソアラが「フフッ」と優雅に微笑む。


「私はアナタを高く評価していますの。だから私を愉しませなさい!」


 ソアラは右手の魔法杖ロッドをアイに向けて突き出した。


火炎小銃フレイムバルカン!」


 小さな魔法陣が円を描く様に杖の周りに浮かび上がると、全ての魔法陣から雨のように火炎弾が撃ち出される。


「わわっ!」


 アイは慌てて逃げ回るが、数が多くて全てを避けきれない。何発かくらいながら、一際大きな木の陰に逃げ込んだ。一発一発の威力が小さくて、何とか命拾いをしたようだ。


「離れてたら、絶対負ける」


 アイの直感が訴えかけた。


「一気に近付いて、零距離で決めるよ!」


「了解しました」


 アイは大きく深呼吸をして、ソアラの次の攻撃に備える。


「隠れても無駄よ」


 ソアラは魔法杖を顔の前で縦に構えると、一気に上に振り上げた。


地獄の業火(ヘルフレイム)!」

「攻撃きます」


 ソアラとセーレーの声が重なった。同時にアイが木陰から飛び出す。その直後、今までアイがいた場所に火柱が噴き上がった。


「えっ!?」


 一気に目前にまで詰め寄られ、ソアラの表情が驚きで硬直する。


「いける!」


 アイはタックルで組み伏せようと、グッと身を低くして突っ込んだ。


 その瞬間、アイの足元の地面が爆発する。


 ソアラを中心に、その足下から輝く魔法陣が広がっていた。


 アイはモロに吹き飛ばされ、背中から地面に叩きつけられる。


「ゲホッ」


 衝撃で呼吸が出来ない。


「な…何が…?」


 身体が痺れて起き上がれない。


「どんな気分かしら?勝ちを確信した直後の無様な敗北感は?地雷罠マイントラップですわ。これで決めるつもりでしたけど、随分と頑丈なのね」


 ソアラは優雅に歩み寄ると、勝ち誇ったようにアイを見下ろした。


「なん…で?」


「言ったでしょう…高く評価していると。アナタ魔法を躱すんですもの、このくらいしてくると思ってましたわ。ただこの私を、他の魔法士と同じように考えたのが、アナタの敗因ね」


 ソアラは口元に右手の甲を当てると、愉快そうに微笑んだ。


「さあ、まだ何か手はあるのかしら?もう何も無ければ、終わりにするわよ」


「バカに…するな!」


 アイは倒れたまま、短銃を乱射した。


 しかしソアラは容易に躱す。


 その隙に、アイは何とか立ち上がった。


「アイ、この状況を打破するために、木のバレットを推奨します」


「木?」


「木のバレットは大地属性ですので威力重視になりますが、大地のバレットより威力は低く扱い易い筈です」


「特殊弾はダメ。あの人死んじゃうかもしれない」


「彼女の耐久値は不明ですが、防護魔法も展開しています。生命を奪うことはないと推測します。他に方法はありません」


 アイは睨みつけるようにソアラを見つめる。それから小さく息を吐き出すと、先程の大きな木の後ろに再び隠れた。


「まだ何かを、見せてもらえるのかしら?」


 ソアラが満面の笑顔で嬉しそうに笑う。


 程なくしてアイが再び姿を現した。手に持つ武器が光輝いている。


 アイは短銃を両手で構えると、ゆっくりと銃口をソアラに向けた。


「真っ向勝負ね。いいでしょう」


 ソアラは右手の魔法杖をアイに向けて突き出した。すると杖の先端に、一際大きな魔法陣が、光を放ちながら浮かび上がる。


火竜の咆哮(ドラゴンフレア)!」


 ソアラの詠唱に呼応して、魔法陣から大きな炎が吹き出した。その炎が竜の頭を形作ると、大きく開いた口から熱光線を放射する。


 同時にアイは短銃の引金を引いた。直径20cm程のエネルギー光線が放射され、竜のブレスとぶつかり合う。


 いくら威力が低いとは言え、凄まじい反動がアイに襲いかかった。吹き飛ばされないように、必死に踏ん張る。


 ぶつかり合ったエネルギーは、徐々に木のバレットが圧し始め、そしてついに圧倒した。


 アイの放ったエネルギー光線は、火竜の咆哮を粉砕し、ソアラの眼前に一気に迫る。


 迫りくるエネルギー光線を、ソアラは訳も分からずに、ただ呆然と眺めていた。


「やっぱり、ダメーー!」


 アイは咄嗟に、銃口を上に逸らす。


 エネルギー光線は軌道を逸れ、ソアラの目前を掠めて天空に消え去っていった。


 そのせいでバランスを崩したアイは、反動で後方に吹き飛び、木の幹に叩きつけられる。


 次の瞬間、アイの体が光に包まれた。アイの耐久値は、本当にギリギリだったのだ。


「あーあ、負けちゃったか」


 アイは自分の身体に目を向けると、そのまま空に舞い上がっていった。


 ひとり残されたソアラは、ただ呆然と立ち尽くす。


 そのとき不意に、後方で草の鳴る音がした。


 ソアラは緩慢に振り返る。


 西洋甲冑のような全身鎧姿の魔物が1体、茂みの中から姿を現した。

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