ロングレンジフェス 7
予選前半の参加者が、柵に囲まれた大きな魔法陣の中に誘導された。
主催者の開始の合図とともに、魔法陣の中にいた冒険者の身体が光に包まれる。その直後、まるでロケット花火のように、山に向けて次々と打ち出されていった。
しばらくすると、山の方が騒がしくなった。
どうやら戦闘が始まったようだ。
それに伴い、メイン会場の魔法陣に強制送還される冒険者が、一人二人と現れだす。
「ついてない!いきなりソアラと当たっちまった」
「くそっ!」と悔しがる冒険者が、アイの前を通り過ぎていく。
「A級は伊達じゃないてことか」
アイは山を見上げて、ひとり呟いた。
30分程経ったころ前半組の予選が終了し、生き残った20名が魔法陣に送還された。当然、ソアラの姿もその中にあった。
主催者側が、この結果に騒然としていた。どうやら相当短い時間での決着だったようである。
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後半組の予選が始まり山の中に転送されたアイは、気が付くと森の中に一人ポツンと立っていた。
「ライトニング」
掛け声と共に、アイの右手に短銃が装着される。
とりあえず周りを見回してみたが、木々がいい具合に邪魔をして視界が悪い。
「アイ、見つかったようです。右方向から1人近付いてきます」
「え?」
セーレーの警告で、アイは近くの木の陰に急いで隠れた。それから少し顔を出して様子を伺うが、相手の姿が確認出来ない。
「どこ?見えないよ」
次の瞬間、アイの全身に電撃が走った。
「ぎゃん!」
全身から力が抜けたように、アイはその場にヘタリ込む。
「何…今の?全身が…ビリビリする」
「雷撃魔法です。アバターの耐久力がなければ、一発退場もあり得る威力です」
「でもドコから!?姿も見えないのに」
「それが魔法の特性です。任意の場所に効果を発現させることが出来ます。…簡単に言うと、好きな場所に攻撃することが出来るのです」
「ええ?」
「再攻撃きます」
セーレーの警告にアイは咄嗟に前に飛び込むと、前回りして受け身をとった。
その直後、さっきまでアイが立っていた頭上に魔法陣が出現し、落雷が地面を打ちつける。
「こんなの、ズルイ!」
アイは再び、別の木の陰に身を隠した。
「射線の通らない山林では魔法士が有利だと、フランと受付から忠告があった筈です」
「そうかもだけど、そんな具体的には言ってない!絶対聞いてない!」
アイは腕をブンブンと振って抗議をするが、もはや後の祭りである。ひと通り弱音を吐いたあと、アイは大きく深呼吸をした。
「魔法士に弱点とかあるの?」
「当然、魔力の練成時間です。強力な魔法ほど、強大な魔力を練らなくてはなりません」
「そっか!」
だから一気に追撃をしてこないんだ。アイは納得したように頷いた。
「次、勝負かけるよ」
「了解しました」
アイは気持ちを落ち着けて、短銃を握り直す。
「再攻撃きます」
セーレーの警告と同時に、アイは木陰から飛び出した。後方で落雷が地面を打つ音が聞こえる。
「移動を始めました。右斜め前」
「逃がさない!」
アイはセーレーの誘導を頼りに、一直線に駆け抜けた。すると木々の間に、チラホラと男の背中が見え隠れする。
そのまま追っていると、一瞬開けた場所に出た。
ここしかない!
アイは足を止めると、狙いを定め早撃ちを決める。
撃ち出された弾丸は相手の背中に吸い込まれるように命中し、6発目のヒットで男は光に包まれ空に舞い上がった。
7発目8発目の弾丸は空を切り、奥の木の幹に命中する。
アイは構えていた短銃を下ろすと、「ふぅ」と大きく息をついた。
「なんとか、一人目」
それから近くの木の幹にもたれかかると、左の手の甲で額の汗を拭った。
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暫くして、後半組の予選が終了した。
アイはあの後、もう一人倒した。
終了までの経過時間は、1時間半であった。




