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初日終了 2

 全員の帰還信号を受けた佐藤は、出迎えのためにドームの中に入室した。


「皆んな、お疲れさま」


 するとちょうど全員が起き上がり、ヘッドマウントディスプレイを外しているところであった。


 佐藤は全員の表情を確認する。特に亜衣とお菊には注意を向ける。そしてその表情から、楽しんできてくれたと確信する。


 しかし、そうやって全員の顔を見回していると、見慣れない顔があることに気付く。気のせいか、1人多い…


「て…ええぇえーっ!」


 佐藤は2、3歩よろけて壁に後頭部をぶつけた。


 浅野は顔を伏せて、コッソリと腹を抱えて笑っている。坂下はそんな佐藤に同情した。


「佐藤さん、向こうで友達が出来たよ!」


 亜衣が鼻息を荒げて報告した。


「しかも、転位の資質まであったんです!」


 珍しくお菊も興奮気味に声を荒げる。


「フランです。よろしくお願いします」


 フランは深々と丁寧にお辞儀をした。


 君たち楽しみすぎだぁーーっ!


 佐藤の叫びは残念ながら、声にはならなかった。


 ~~~


「事情は…分かった。言いたいことは山程あるが、今さら言っても仕方がない…建設的な話をしよう」


 佐藤は異世界支援課の事務室に戻ると、水戸にも声をかけてから全員に話し始めた。


 浅野と坂下は午後からは元の部署での業務があるため、既に退室している。


「フランさんの姿は、ここ竜宮市ではさすがに目立ち過ぎる」


 桃色の長い髪に先の尖った耳、革の鎧まで着こなすその姿は…場所が場所なら大人気だろうが、竜宮市では大いに目立つ。


「お金を渡すから、着替えを買ってきて貰いたい」


 佐藤は財布から一万円を取り出した。


「そんな!佐藤さんに悪いです。私たちのお給料を使います!」


 お菊は首を振って、受け取りを拒否する。


「僕はここの課長なんだ。だから格好つけさせて欲しい」


 佐藤は有無を言わさず、お菊の手に一万円を押し付けた。


「とはいえ諸事情で、予算はこの範囲内で頼む」


「…分かりました」


 お菊は頷くと、佐藤からお金を受け取る。


 それからお菊は亜衣とフランに声をかけ、3人で来客スペースのあるパーテーションの向こう側に移動した。


「絶対、覗かないでくださいよ!」


 お菊は振り返ると、凄い剣幕で釘を刺す。


 佐藤と水戸は、只々首を縦に振ることしか出来なかった。


 ~~~


 フランは見た目は小さいが実際は子どもではないため、所謂いいプロポーションであった。


 亜衣とお菊がその事で、少なからずショックを受けたのは秘密である。


「ちょっと行ってきます!」


 ショッピングモールの中にあるファストファッションの店に、亜衣はフランの服と下着を買いに行くため退室した。


「それでは僕らは、もう少し話を続けよう」


 佐藤はパンパンと手を叩き、皆の注目を集める。


「こちら水戸さん。フランさんの同郷の方だ」


 佐藤の紹介にフランは大いに驚いた。そして、自分以外にも転位者がいたことに少し安堵する。


「ミトです。私も転位してきました」


「フランです。よろしくお願いします」


「フランさんの宿は、水戸さんの家の部屋が余ってるから、そこを使ってはどうだろうか?」


 佐藤が、少し躊躇いがちに提案した。


 フランは女性なので拒否される可能性も考慮しているのだろう。お菊はチラリとフランを見る。


「ご迷惑ではありませんか?」


 フランが遠慮がちに水戸に尋ねた。


「あなたが良ければ、私は全然構いません」


「…それでは、お世話になります」


 水戸が頷くのを確認すると、フランが礼儀正しく頭を下げた。

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