初日終了 1
とうとう4日目を迎えた。
いつもの自主練にフランも参加し、今や3人で訓練に励んでいる。
そんな中、アイとおキクにセーレーから連絡が入った。
「まもなく4時間になります。帰還の準備を始めてください」
「……え?」
一瞬、何のことだか分からなかったが、アイとおキクは思い出したように「あ!」と声を出した。
「そうか…帰るのか」
アイが戸惑いながら呟く。それからとても重大なことに気が付いた。
「あーしまった、メッチャやばいっ!」
「フランのことね…確かにどうしよう」
おキクも同時に事の重大さに気付く。
「どうかしましたか?」
そんなふたりの様子に、フランが困惑したように小首を傾げた。
「フラン…よく聞いてほしいのだけど」
何となく、おキクが説明をすることになった。
「私たち、一度自分の世界に帰るの」
「……そうですか」
別に信じてなかった訳ではないのだが、いざとなると理解が追いつかない。
「私たちの世界で、明日になったらまた戻って来るのだけど…」
「あ、それくらいなら、全然大丈夫ですよ」
フランは何でもないように笑った。
「違うの、よく聞いて」
おキクは真剣な眼差しでフランを見る。
「コッチの世界では、たぶん20日後くらいになると思う」
「……え?20日?」
フランはキョトンとした顔で、意味も分からずただ呆然と繰り返した。
その20日は結局は無かったことになるのだが、フランが1人で20日を過ごす必要があるのは確かな訳で……
おキクはゆっくりと丁寧にフランに説明した。
「…分かりました。20日間我慢すれば、今この直後におふたりは戻ってきてくれるのでしょう?だったら全然大丈夫ですよ」
フランが少し寂しそうな笑顔で頷く。彼女のそんな姿を見て、アイは堪らずセーレーに懇願した。
「セーレー、何とかならないの?」
「フランには時空間転位の資質がありますので、彼女の了承が得られれば、日本に連れて帰ることが可能です」
「……は?」
アイとおキクの両目が点になる。
「そ…それを早く言ってよー!」
アイはおつゆを撒き散らしながら大声で叫んだ。
「フラン!」
それからアイは両手でフランの両手を握りしめる。
「私たちの世界に、一緒に来ない?」
「……え?」
フランは一瞬、ポカンと間の抜けた顔をした。
「そ…そんなことが可能なんですか!?」
「うん!誰でも出来る訳じゃないけど、フランにはその才能があるんだって」
「い、行きたいです!アイとおキクの世界を、私もこの目で見てみたい!」
「じゃ、決まり!」
アイがニカッと、満面の笑みを見せた。
「それではこの場所を地点登録して、カタン出張所に転移します」
「待って!」
アイが焦ったようにセーレーを止める。
「フランも一緒に行けるの?」
「アイかおキクに接触していれば、付属品として範囲指定が出来ます」
言い方…おキクは思わず苦笑いした。
「フラン」
「はい」
アイの伸ばした手を、フランがしっかりと握り締める。
「セーレー、お願い」
「了解しました。転移を開始します」
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気が付くと、そこはカタン出張所内の宿泊部屋であった。
「よお、お前ら、元気にしてたか……って、ちょっと待てぇーーっ!」
先に部屋に着いていたアサノが、現れたアイとおキクの姿を見て驚嘆の声をあげた。
「うえぇぇえー?」
サカシタの方も、飛び出んばかりに両目を剥いて驚いている。
アイとおキクは、先輩たちの反応に一瞬困惑の表情を見せた。しかし直ぐに、連れてきたフランの事だと思い当たる。
「友達が出来たんだ…名前はフラン」
「フランです」
アイの紹介で、フランがペコリとお辞儀をした。
「……で、どうする気だい?」
アサノが興味深そうに尋ねた。
「フランにも転位の資質があるようですので、一緒に連れて帰ります」
おキクが然も当然とばかりに答えた。
「ええぇえーっ?」
再びサカシタの絶叫が響く。
「面白い。サトーの驚く顔が目に浮かぶ」
アサノが愉快そうにニヤリと笑う。本当に心底愉しんでいるように見える。
「……いいのかなー?」
サカシタが物怖じしたように呟いた。
「良いも悪いも、もう全部知ってんだから今さら同じだろ?」
未だに煮え切らないサカシタの背中を、アサノがバシッと叩いて気合を注入する。
「お前も腹を決めろ、サカシタ!」




