表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/45

赤の姫君 6

 夕方になり自主練を切りあげたアイとおキクは、カタン出張所に戻ってきた。そこで建物の入り口前に座り込んでいるフランの姿に気付く。


「フラン!?どうしたの、こんな所で?」


 アイは驚いたように、フランに駆け寄る。


「仲間探しは、上手くいかなかったのですか?」


 おキクも心配そうに声をかけた。


「アイさん、おキクさん。良かった…また会えた」


 フランは安心したように微笑んだ。


「そうだ、フラン。お腹すいてない?」


 そのときフランのお腹が「ぐぅー」と鳴った。フランは気恥ずかしそうに顔を赤らめる。そういえば朝から何も食べていなかった。


「決まり!」


 アイはフランの手を引いて歩きだした。目的地は市長官邸の食堂である。


「そういえば、何であそこが分かったの?」


 アイがフランに不思議そうに尋ねた。


「エルフの目撃情報を辿ったら、割と簡単に分かりました」


 良くも悪くもアイは目立っていたのだ。おキク思わず苦笑いになる。


「フランは名探偵だね」


 アイは右手の親指を立てて「イイネ」と笑った。


 ~~~


 3人が食事を終えた後にひと息ついていると、フランがポツリと口を開いた。


「詰所には屈強そうな冒険者が沢山いてましたよ」


 フランは眉間にシワを寄せ強面を作ると「こんな顔した人」と説明を付け足す。


「でも向こうは私のことを、奇異の目で見てくるんです。もちろん何時ものことで、理由も重々承知していますが…でも今日初めて気付いたんです」


 フランはアイとおキクに真剣な顔を向けた。


「私が探していたのは強い仲間ではなくて、信頼できる仲間なんだと」


 フランは昼間の戦闘を思い出す。あの一戦は、確かに強い信頼関係で結ばれていたと確信している。


「もしお嫌でなければ、私をおふたりのパーティに加えてください」


「全然イヤじゃないよ!」


 アイが間髪入れず、声を張り上げた。


「私も大歓迎です!」


 おキクも続けて、大きく頷く。


 そんなふたりの返事を聞いて、フランはホッとしたような表情になる。それから倒れ込むように、テーブルにドッと突っ伏した。


「あー、スゴく緊張しましたー」


 フランの震える声を聞きながら、アイとおキクは思わず笑ってしまった。


 そのときフランは思い出す。


 それは詰所の帰り際、興味本位で受付に質問したときのことである。30代後半くらいで、長い茶髪を三つ編みにした縁なし眼鏡の女性であった。


「風切鳥?」


「はい」


 女性の問い掛けにフランは頷いた。


「あの魔物は結局は体当たりしかしないので、軍から支給されるトリモチを使えば誰でも倒せるわよ」


「では、トリモチを使わないならどうですか?」


「…魔物襲来初期の頃は手を焼いたようですね。あの速度にカウンターを合わせるとなると、かなりの熟練剣士でもないと難しかったようです」


 その答えを聞いてフランは身震いする。


 そう…普通は剣士でやっとなのだ。それをアイは、確かに見たことのない武器であったが、飛び道具でやってのけたのだ。


 自分たちをヒヨッコと自称している、この2人の秘めたる力に、フランは畏敬の念に近いものを感じていた。


 ~~~


 アイとおキクは自分たちの方にも話があると、カタン出張所の宿泊部屋にフランを案内した。


 3人揃ってアイのベッドに腰掛ける。


「フラン、私ホントはエルフじゃないの」


「え?」


 アイの突然の告白にフランは目を丸くして驚いた。


「これから信じられない話をするよ」


 アイの真剣な眼差しを受け、フランはゴクリと息を飲む。


「私たちは…別の世界から来た異世界人なんだ」


「…は?」


 途端にフランの口が、開いたまま閉じなくなった。


 フランの予想通りの反応に、アイも特別驚きはしない。とはいえ、こんな話、どーやったら信じてもらえるのだろうか…


「おキク、コレどうやったら証明出来るかな?」


「さあ?証明なんて出来るのかしら」


 アイとおキクは「うーん」と思案顔になる。


「あ、違います。信じてない訳ではありません」


 フランは慌てて両手を振った。


「おふたりの言葉なら、私は無条件で信じます」


 純血種に出会えた感激が嘘でも、そんな事は全然関係ない。


 正直…絶対あり得ないと思っていた『異世界人』に巡り逢えたのだ。


「だけど、こんな幸運…あって良いのでしょうか」


 フランの目からポロポロと涙が零れた。


「フラン?」


「ちょっと、大丈夫?」


 アイとおキクが慌ててフランに寄り添う。


「全然大丈夫ですよ」


 フランは涙を流しながら、「アハハ」と声をたてて笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ