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異世界へ 1

 アイはゆっくりと目を開いた。


 最初に見えたのは、知らない部屋の天井。どうやらベッドに寝ていたようだ。ムクリと上半身を起こして横を見ると、おキクもちょうど起き上がったところだった。


「おや、お目覚めだね。どこか身体に違和感とかはないかい?」


 声のする方に顔を向けると、背は低いが肉付きのいい女性が立っていた。


 ふたりはベッドから立ち上がると、女性のところまで歩いていった。


「大丈夫だと思う」


 アイは体を適当に動かし返事をする。


「特に問題ありません」


 おキクも自分の体を点検しながら答えた。


「それでは、改めて……ようこそいらっしゃい。ここはラング国のカタン市、竜宮市役所カタン出張所だよ」


 女性は両手を広げて歓迎の意を表すと、ふたりを連れて部屋を出た。


 真正面には扉があり、もう一つ部屋があるようだ。そこから廊下が左手に延びており、突き当たりが玄関になっている。かなり簡単な造りである。恐らく小さな建物なのだろう。


「アタシは普段この部屋にいてるから、用事があるときは遠慮なく訪ねて来なさい」


 女性は自分のお腹をポヨンと叩いて、豪快に声をたてて笑った。


「ここを出て大通りを右手に真っ直ぐ行けば、市長官邸があるからね。まずはそこで、市長に挨拶してくるといい」


 それだけ言い残すと、女性は部屋に入っていった。


 ふたりは顔を見合わせて頷き合うと、玄関に向けて歩きだす。そのときふと、アイは自分の格好に気が付いた。


「スカートが短くなってる!」


 自分の太腿が少し見えるくらいまで、スカートの裾が上がっていた。コレはちょっと恥ずかしい。


「私なんて、コレよ」


 おキクは自分のスカートの右側面を、アイに見せるために指差した。そこには足の付け根まで切り上がっている、大胆なスリットが入っていた。


「おーっ!おキク、カッコいい!」


 アイは瞳を輝かせて興奮した。


「私の威信にかけて、おふたりのパンチラは絶対にさせませんよ!」


 突然のセーレーの声と同時に、アイの右耳のあたりで何かが点滅する。


 おキクが何事かと覗き込むと、アイの右耳に直径5cm程ある銀色のフープのピアスが付いていた。


「ピアス!これ、セーレーなの?」


 おキクは驚いたように声を張り上げた。


「うん。自分の体に穴開けるの怖いんで、コッチならいいかなーと思って」


 アイはニヘラとゆるーく笑う。その発想はなかったとおキクは唸った。相変わらずアイは、こういう発想が柔らかい。


「それにしても…」


 おキクはとうとう、その事に触れた。


「随分変えたね、アイ」


 アイの外見は、金髪碧眼長い耳。これはまさしく…


「うん、エルフ!」


 アイは楽しそうに微笑んだ。


「せっかくの異世界なんだからさ、思いっきり楽しまないとね!」


 …佐藤さん、あなたの悪い予感は見事に的中しましたよ。


 おキクは心の中で、両手を合わせて合掌した。


「おキクも似合ってる。すごくカワイイ!」


「え…そう?」


 アイの発言に、おキクは照れて赤面する。


 おキクの長い黒髪に、黒のネコミミはとても似合っていた。水色スカートのお尻の上あたりから生えてる黒いシッポもまたグッド。これはこれで、抜群の破壊力を秘めていた。


 そのときおキクの足元に、白い仔猫がちょこんと姿を現す。


「何これ?」


 アイは目敏く見つけ、そして素早く抱き上げた。


「私のセーレー、名前はミーコ」


「可愛いー!死ねるー!」


 アイは仔猫を、自分の胸にギュッと抱き寄せる。


 玄関の外では、アイとおキクの接続信号を受けたアサノとサカシタが、いつまでも待ちぼうけをくらっていた。

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