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魔猫神父と教え子 ~ラスボスポジションを奪うケモノ~



 結界の中で穏やかな微笑を浮かべる黒衣の神父。

 人を惑わす蠱惑的な紳士。

 かつて転生前の業を思い出した男は思う――。


 これ、完全にラスボスのポジションを窃盗しちゃったよね……。

 と。

 そんなわけで!


 雪の結晶が舞い散る最終ダンジョン!

 本来なら敵と攻撃を封じるための結界は、大魔帝ケトスたる私を封じる結界に早変わり!

 敵だったはずのブラックマリアも、協力態勢!


 目的のために、夢見る乙女のヒナタ君を守る必要があるのだろう――。


 敵も味方も関係なく、暴走する私の魔力を止めないと世界がヤバイ!

 私には少し先の未来が見えていた。

 だから、あえて魔導契約をするように告げる。


『そういうわけだ。どうか皆で協力して、私を止めておくれ。報酬はまあ、私にできることならなんでもしてあげるよ。さすがに他の人に迷惑をかけることはダメだけれどね』


 本来だったらこのダンジョンのラスボスだった黒幕――。

 ブラックマリアは言葉を聞き、ぐっとヤギ目を細め。

 黒山羊顔をメメメメっと尖らせ唸る。


「ちょっと大魔帝ケトス! あなた! 魔力をどうにか引っ込めることはできないの!?」

『そうだね、じゃあ授業の時間だ。君に質問だブラックマリア、もし風船に水や空気、まあなんでもいいけど力ある概念をどんどん、どんどん詰めていったら――どうなると思う?』

「そんなの分かるわけないでしょう!」


 えぇ……わかりやすいと思うんだけどなあ。

 この黒いのも白いのと同じぐらい、その、アレだよね?


 空気を読んで流れを引き継いだのだろう。

 ヒナタ君が顎に人差し指を当て。


「魔力吸引の弊害――ケトスっちは自らの魔力で破裂するけれど、直後にそのまま再生。けれど、世界はそうはならない。内に魔力をため込んで破裂したあんたの大爆発を受けて、一瞬で崩壊しちゃう。ってところかしらね……」

「ほんとうに、迷惑な魔猫でちねぇ……」


 と――。

 ジト目で異世界図書館の顕現を維持し、無数の童話書を行使しながらウサギさん。

 続いて!

 けっこう巻き込まれている形の脳筋皇子ヨナタン君が言う。


「今度は自動攻撃で暴走してるから止めてくれって。はぁ……。黒猫の旦那ぁ……ずっと思ってたんだけど、あんた……ちょっと自由過ぎねえか? そこの黒山羊をどうにかすれば解決するっていう、簡単な話だっただろう?」

「だからあたしもダビデくんも計画を練ってる時に言ったでしょう? ケトスっち単独だと、いろいろとヤバイって……まさかこんなに予想が的中するとは思わなかったわ」


 げんなりと愚痴る少女に、我が弟子ダビデ君が眉を下げながら。


「わたし達が参加していなければ、このまま暴走する魔力に巻き込まれて、この世界は崩壊していたでしょうからね。師匠がわたしを鍛えた理由も、もしやこの時のため――なんてことも、本当にあるのでしょうね」

『いや、君を鍛えたのも、武骨戦士君を救ったのもただのきまぐれさ。あくまでも結果的にこの最終決戦のための戦力となってくれているに過ぎない。あいにく、我が友と違って私はそこまで先は見えないからね』


 告げる私に、武骨戦士君が頷いて。

 すぅっと刀を構える。

 胴体に巻く猫しっぽが、魔力に中てられ膨らんでいるが――。


 戦士の顔で、糸目をさらに細め長身のネコ獣人男は言う。


「具体的に、どうすればいいのでありますか?」

『我が弟子と仲間たちは私への理解が深くて助かるね』


 魔術式を走らせ、最適解を計算。


『作戦はこうだ――私は今から全力で君たちに支援魔術や奇跡、バフをかけ続ける。強化された君たちで私を……そうだね、三十秒ぐらいでいい、完全に取り押さえる状況を作ってくれないかな? そうしたら後はまあ、なんとかするさ』

「師匠がそういうのでしたら――」


 告げてダビデ君が皇族としての顔を涼しげに引き締め。

 ふっと、瞳を細めて続ける。


「修行の延長上だと思えばいいだけの話ですからね。やりましょう、皆さん! 死んだとしてもすぐに師匠が蘇生してくれます!」

「いや! 死ぬこともあるのかよ!?」


 我が弟子の言葉に突っ込むヨナタン君。

 その顔にはおもいっきり汗が滴っているが、ん-む……たぶんこの皇子、本来なら他人を引っ張りまわす方なんだろうけど。

 完全に、私や弟子たちの空気に呑まれてるでやんの。


 まだまだ大魔帝ケトスへの慣れが足りないようである。


『安心したまえ、ダビデ君が言うようにすぐに蘇生をするさ』

「そりゃ、今のケトスっちほどの魔力と力があれば、蘇生さえも簡単なんでしょうけど。普通、女子高生にそこまで要求する?」

『君なら誰も死なさずに、私をどうにかできる筈さ。なにしろ我ら三獣神の弟子なのだからね』


 私もよくするしぐさで、ゆったりと瞳を閉じた後。

 少女は瞳を開いた。


「まあ、ケトスっちにはお世話になってるし? ここで恩を売っておくのも悪くないわね! いくわよ、みんな! ああは言ってるけど! 無限に蘇れるんだから、結局は諦めなければなんとかなるわ!」


 苦笑したヒナタ君が聖剣の力を解放!

 虹色の輝きが、パーティーメンバー全員を強化する。

 その瞬間。


 私もまた、手を翳し――。


『主よ、聖霊よ。邪悪なる大魔帝を打ち破る力を彼らに授け給え――』


 静かな言葉に導かれ、聖光が生まれる。

 これも強化の奇跡である。

 神話に語られる天使の影が、勇者ヒナタを中心に降臨し始めていた。


『黒いマリアも白いマリアもここは協力して貰うよ。彼らだけではどれほど強化しても荒ぶる私の魔力を押さえることはできない筈。互いに言いたいこともあるだろうが、拒否権はない。これは世界の危機なのだから』


 よーし、いけしゃあしゃあと言い切ってやったのだ!

 白山羊が頬をヒクつかせながら。


「あんたねえ! ちょっとは申し訳なさそうな顔をしなさいよ!」

『どうしてだい? 私は悪くないだろう? そもそもだ、君たちが小細工などしないでちゃんと私に正攻法で相談していれば、こんなことにはならなかった――違うかい?』


 告げながらも私は追加の奇跡を発動。

 救世主としての輝きを存分に放ち、無数の聖書を顕現させる。

 宗派の異なる聖書や聖典、読経や石板が一斉に、バササササササササ!


 ヨナタン君が、結界を埋め尽くすほどの聖典を眺めて驚愕する。


「な、なんだこの、大量の聖なる書は!? 白山羊、女神なんだろう! なんか知ってるか!?」

「って、あたしに聞く!? ま、まあ何となくならわかるけど。たぶん……第一世界、って言っても分からないわよね――えーと、魔術のない世界があるんだけど、そこで伝わっている救世主信仰の経典ね。おそらく、枝分かれした宗派、全部の聖典を顕現させてるんじゃないかしら……っ」


 さすがは聖母の力を宿す山羊。

 理解が早い。


『これから君たちを大幅に強化する。一時的だけどね――だから、どうか私を止めておくれ』


 告げて、術に集中する。


 これは無数の聖典を同時利用しての、強化奇跡。

 同時詠唱。

 同時干渉。

 並列して奇跡を操っているからだろう――白昼夢にいるような感覚に私は襲われていた。


 ◆


 私の思考が、海の中に沈んでいくように重くなる。

 いや、加速しているのか。

 詠唱を続ける中で、あの日の記憶が脳裏をよぎる。


 この一冊、一冊には思い出があるのだ。


 あの世界、転生前の私は教師。

 育った孤児院で働く聖職者の教育者だった。


 孤児院で預かった子供に教育するため、私は学んだ。


 様々な教え、様々な派閥、様々な宗派の教えを学んでいたのである。


 理由は簡単だ、子どもたちのためである。

 寄る辺ないままに生き、孤児院にたどり着いた教え子たち。

 世界に絶望していたあの子たちが、義務として神の教えを習うのなら、せめて……その中から望む教えを選んでもらいたい。


 そう感じて、私はありとあらゆる宗派の考え方を学んだのだ。

 それがこの経典たち。


 自慢になってしまうが、私は優秀だった。

 基本頭脳がネコとなっている今の私とは真逆。

 一度覚えてしまえば、二度と忘れなかったのだ。


 教え子の理想にあう宗派を見つけ、教え、あわない宗派の教えは強制しなかった。他の教えを知りたいと言えば、求める教えを与え。この解釈には矛盾があると聡い子どもがいいだしたら、別の宗派の解釈を引用し、勧めた。


 そのためには学ぶ必要がある。

 だから、学び続けていた。

 私は、子どもたちの自主性を尊重したかったのだ。


 理由は多くある。

 けれど一番の理由はおそらく――ある意味で酷い話ではあるが。

 同族への哀れみだろう。


 幼くして孤児院にいる時点で、既に……多くの苦労と苦悩を抱えているのは明白。


 私がそうであったように、彼らは両親の顔もまともに覚えていないような子が多かった。

 だからせめて……せめて私だけは彼らの味方でありたい。

 そう、願っていたのである。


 子供たちは皆、すぐに私を慕うようになっていた。


 ある日、教え子の一人が言った。

 禁止されている漫画を読んでみたいと。

 私は願いを叶えてやった。


 もはや孤児院のルールも規則も、私の言葉一つで動かせるようになっていたからである。


 ただその子の願いを叶えてあげただけ。

 けれど、漫画一つで世界は変わった。

 子どもたちが物語の中の冒険を見るたびに、目に見えて明るくなっていたのである。


 世に捨てられた子供たち。

 彼らの瞳に希望が宿り始めたことを確信した私は、その時初めてエンターテイメントを勉強した。


 はじめは正直、あまり理解できなかった。

 きっと、私が酷く歪んだ存在だったからだろう。

 楽しい、面白い、悲しい、そういった感情をあまり理解できなかったのである。


 けれど。

 私は学んだ。

 子どもたちの反応から、絵空事の物語の楽しさを学んだ。


 ゲームも漫画もテレビも映画も、全て、教え子たちに世界を伝えるため。

 世界は暗いだけではない、明るい部分もあるのだと――そう教えたかったから。

 ……。

 いや、それだけではないか。


 きっと私自身が――、知りたかった。

 子どもたちを通じて世界の明るさを知りたかった。

 教えてもらったのだ。


 私は子どもたちを通じて、初めて心を深く理解したのだ。


 教師とは教え子からも学びを得る生き物である。

 そう言ったのは誰だったか。

 きっと、あの言葉は間違ってなどいなかったのだと思う。


 だから、あの日々で学んだ子どもたちからの教えを、私は今も。

 忘れていない――。

 意識が浮上する!


 ◆


 様々な宗派の聖典が浮かぶ結界内。

 私は瞳を開き、様々なアプローチで神に祈りを捧げる。

 宗派の違いを魔術体系の違いと認識し、同時に無数の奇跡の奥義を行使したのだ。


 強化の輝きが、私の目の前。

 仲間たちを包み込む。


『多重詠唱奇跡:《かつて見た、あの子たちの学び舎》。さあ、君たちに――希望を授けよう』


 あの日の思い出が、温かい光となって世界に広がったのだ。


 聖典が魔術効果を発揮し、パタンと閉じ。

 私の影の中に沈んでいく。

 司書ウサギが魔術式を読み取り、でちっと口を蠢かす。


「全能力大幅向上に、自動蘇生、攻撃反射に魔力吸収。チートみたいな支援奇跡でちね」

「マジか、これ、すげえな!」

「油断はしないで! ケトスっちの支援はすごいけど、あっちの暴走してる魔力も同じくらいチートだろうし! これでようやく同じ土台に上がれる権利を得たってぐらいよ!」


 告げながらもヒナタ君は『我が愛しき魔猫へ』の魔導書を顕現させる。

 それは――最強の魔導書。

 私が彼女に預けている一冊、三毛猫に転生する前の三毛猫陛下の残した書。


「あたしはヒナタ! 勇者ヒナタ! 夢見る乙女の名のもとに命じます――!」


 虹色の魔力が放射状に延びて天を衝く。

 黒髪が、ばさりばさり!

 美少女を彩る鮮やかなモノトーンとなって、私の視界を奪っている。


 長い髪にジャレたいと感じる。

 その時点で彼女の作戦は順調。

 黒猫の私が引き上げられている証拠か。


 ヒナタ君は続けて詠唱する。


「異世界召喚、身勝手な勇者召喚で朽ちた魂、ブレイヴソウル! 黒マナティークイーンよ! あなたの主人を、同族を守りたいのなら手を貸して!」


 勇者としての扇動の力が発動する。

 私による強化奇跡、そして『我が愛しき魔猫』の魔導書の魔力が黒マナティーの支配権を上書き。

 ヒナタ君の影に黒マナティーが譲渡される。


 モキュモキュモキュ!

 ヒナタ君に懐く黒マナティー達が、荒ぶる私を止めようと手を翳す。

 九重の魔法陣が幾重にも連なり、更にヒナタ君たちを強化する。


 瞬間、ダビデ君が錫杖を回転させ。

 詠唱を開始する。


「この世ならざる邪聖霊よ! 我はダビデ、印可のダビデ! これは汝の主人を守るための戦いである! ならばこそ、汝の使命もまた我らと共にあり! その憎悪をもって我らの魔を高ぶらせよ!」


 頬に玉の汗を浮かべ、更に追加詠唱。


「我は汝を恐れる者! 我は汝を哀れむ者! なれど汝らの憎悪はけして無駄にならず。願いを叶える栄光の手よ、血に染まりし聖者の手よ。汝の助力を今こそ――ここに!」


 血塗られた栄光の手も、魔術に従いヒナタ君に譲渡される。


 ダビデ君は大魔帝ケトスの力を借りた魔術を扱える。

 その眷属たる黒マナティーや栄光の手。

 彼らの力を借りた魔術も扱える。


 これは邪眷属を通じ味方を強化、鼓舞する――。

 今作られたばかりの即興魔術のようだ。


 しかし、その力が強すぎたせいだろう。

 荒ぶる私の魔力が自動的に攻撃を開始していた。


「暴走する大魔帝の魔力が向かってきてまち! あたちは先に仕掛けるでちよ!」


 告げて白いモフ毛をぶわっと膨らませた司書ウサギが、瞳を赤く染める。

 魔性ではないが、瞳に魔力が浮かんでいるのだろう。

 魔導書代わりの童話を、バサササササ!


「《舌切り雀の大きな葛籠(グリード・ボックス)》!」


 宣言に従い、強化を受けた童話魔術が発動される。

 童話書から出てきたのは、昔話の大きな葛籠つづらと小さな葛籠つづら

 自動的に大きな葛籠が開かれ――。


 中から、バケモノたちが顕現!


「百鬼夜行に沈むがいいでち!」


 くおぉぉぉおおおおぉぉぉぉ!


 神話規模に強化された魑魅魍魎が、私の身体を亡霊の波で押し流す。

 魔力を喰らう性質があるのだろう。

 荒ぶる私の魔力が、すこしだけ減少している。


 押し流されながらも私は冷静に、観察し。

 穏やかな声を上げていた。


『舌切り雀の逸話か、そうだね――大きな方と小さな方。どちらを選ぶかと言われたら大きいのを選んでしまう。けれどそれは間違い。正解は――』

「両方選ぶ、でしょう!」


 魑魅魍魎に流され結界の壁に引きずられる私を追撃するのは、ヒナタ君。

 ダダダダダダ!

 黒マナティーの加護を受けた勇者の剣が、私の魔力を絶つべく宙を舞う。


 シュビシュビシュバババババダダーン!


 剣術の頂にあるとされる剣聖レベルの技術が、私の胴体を何度も薙ぐ。

 自動攻撃モードになっている私の魔力が、邪悪なるネコの形となって膨れ上がっていくが。

 すかさず私は動いていた。


『攻撃反転、荒ぶる魔力よ――我が前の児戯じぎを見逃し、その力を強化したまえ』


 祈りと共に、発動したのは私の魔術。

 《反救世主の戯れ》が効果を発揮!


 効果は属性の変換。

 攻撃に溜められた魔力を、なんとか強化魔術に変換。

 私を押さえるべく敵となってくれている皆の力を、再び大幅に強化する。


 黒と白、二柱の聖母の強化を受けたヨナタンくんが猫髯の弓を引き絞り。

 シュン!

 ねずみ花火の様に暴れている私の魔力の渦を射抜き続けている。


「俺たちの攻撃が、児戯ってか……っ、おい、白糞女神! てめえの力で、なんとかあいつの攻撃を抑えられねえのか!」

「簡単には無理よ! あいつ、本当に属性盛り盛りの大神なんですから! とにかくこっちは、基礎能力を底上げするしかないの!」


 宣言しながらも、黒と白の聖母は多重詠唱を開始していた。

 それぞれが魔導書を開き――きぃぃぃぃぃん!

 青いユリの色と形をした魔法陣が、山羊の毛をモコモコとさせ。


「《国戦黒神・聖母(カーリー・マー)の猛き鼓舞(・サンスクリット)》!」


 それは主神すらも畏れる殺戮聖母。

 戦神でもある異教の聖母の力を仲間に宿させる、強化魔術なのだろう。

 戦闘参加者たちの武器が強化されていく。


 聖母の強化を受け、ヒナタ君がニヒヒヒ!

 悪戯そうな、女子高生美人スマイルである。


「いける、いけるわ! さっすが、あたしのおばあちゃん! めちゃくちゃ戦闘能力が上がってるじゃない!」


 喜ぶヒナタ君に、二柱は同じ顔でくわッと叫ぶ。


「「おばあちゃんって言わないで頂戴!」」

「あ、あははははは。そ、そうよねえ! と、とにかく――やるわよ、皆! せっかくの機会だし、ケトスっちをギャフンと言わせてやるんだから!」


 誤魔化すように――キン!


 更にヒナタ君が、扇動ではなく勇者の先導で仲間を強化。

 可視化されたオーラを纏って――。

 ダダダダ!


「いくわよ、あたしの弟子!」

「承知であります!」


 強化を受けた武骨戦士君とヒナタくんが、駆ける!


 荒ぶる魔力を止めるための、三十秒。

 たった三十秒を稼ぐための聖戦である――。

 戦いはまだ、終わらない。


 けれど――。

 希望は既に、見えていた。

 彼らならば、長い時間がかかってしまうだろうが、必ず私を押さえてくれる。

 そう、信じている。


 本格的な戦いはこれからだ――。


 そう思った瞬間。

 光が、私の瞳を覆っていた。

 まぶしい太陽が、私の視界を奪っていた。


 希望の光?

 いや、違う。

 これはヒナタ君の花のような笑顔だ。


「まだ終わらないって思ったでしょ? けれど、甘いわね! あたしだって成長してるのよ!」


 声は、耳元で聞こえた。


 少女の聖剣は私の予想を破り。

 荒ぶる邪悪なる魔力を押さえるように――。

 私の影を貫いていたのだ――。



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― 新着の感想 ―
[一言] 回想シーンが最高に泣けた……! いや、泣きすぎじゃねとはいう勿れ。 もはや私の涙もアイテム化しているのだが(伏線回収☆)ーーまあ、効果は世界樹の雫の強化版の味方完全蘇生ってやつっすよ! 結構…
2024/02/14 22:21 退会済み
管理
[一言] 「ハー」で「ゲン」の「ダッツ」を触媒にして師匠達を召喚しよう! 勿論召喚に使った触媒は数量マシマシにして献上だよ。
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