黙示録の微笑 ―名もなき神父の幻影―
ネコ状態に戻ってしまった私、大魔帝ケトスは顔を引き締め――。
キリリ!
モフ毛を魔力で膨らませ、シリアスな空気を演出。
影に映るほどブワっとなったネコ髯のツヤが、雪の結晶を反射している。
よーし、完璧なるシリアス!
こほんとネコ声を調整し……っと。
ダンディ魔猫な声を上げる。
『さて、君ほどの力があれば私との実力差は理解できただろう? こちらも魔王陛下の母君を消滅させたくはない、素直に投降してもらえると有難いのだが――どうだろうか?』
黒山羊こと魔王陛下の母君、ブラックマリアは黒百合の形をした魔法陣を展開したまま。
メメメメッメ!
妖艶な笑みを浮かべて、魔力を保ち続けている。
もふもふモコモコな山羊毛を膨らませ。
ふふーん!
「大魔帝ケトス――あなたがアタシの目的を叶えてくれるのなら、それでも構わないけれど?」
『第一世界に私の子供を救世主として送る、か――』
しばし考え――。
……。
なんかすぐに空気をぶち壊しそうなこっちの白山羊の口を魔術で封じながら。
私はシリアスに瞳を開く。
『そもそも向こうの世界で何が起こっているんだい? 例えばだがね、人間同士の戦争でどうしようもなくなっている、なんてパターンなら、私は絶対に介入しない。それぞれがそれぞれの正義で動いているのだろうからね』
「安心して、そういうきな臭い話じゃあないわ」
訳知り顔で応じる黒山羊の瞳に嘘はない。
戦争ではないとすると、巨大隕石が降ってきたとか、地軸が変わってしまったとか、あるいは強力なウィルスなどが蔓延しているか。
答えは分からないが――。
「きっと救世主規模の魔術があれば、簡単に平和を取り戻せることよ。あなたの転生してきた穴から戻っていける存在、あなたの子供なら……たぶん問題なく解決できる筈。白い方のアタシもこの意見には同意している筈よ? って、あの白いの……なんでヒナタさんに口をぐるぐる巻きにされてるの……」
しまった、シリアスポイントが若干下がっている!?
慌てて私は顔の彫りを深くさせ、ネコ顔をキリリ!
『こちらの作戦を敵に伝えると思うかい?』
阿呆な発言をしないように、口を塞いでるだけなんですけどね!
訝しみながらも、私の魔力に中てられたのか。
黒山羊もまた顔を引き締め、背後に浮かべる聖母の影に微笑を湛えさせている。
私の話術スキルの影響で、黒聖母は言葉を続ける。
「まあいいわ。こちらの計画は言っての通りよ。とはいっても気づいているんでしょうけど、それだけが目的じゃあない――今のあの世界は本当に混乱しているんですもの、心も体も隙だらけ。ふふ……あの状況を救うものは、本当に多くの、しかも純粋な信仰を集めることができるわ。それこそが新たな救世主の誕生、そして新たな楽園の完成」
女はかつてのあの日を眺めるように。
遠くを見ながら。
寂しそうな顔でこういった。
「アタシは新たな楽園で今度こそ、やり直すの――」
黒山羊だった顔が、聖母の顔に変貌していく。
そこには清楚で儚い顔立ちをした女性がいた。
きっと――魔王様の母君、本来の姿なのだろう。
「救世主の母として、今度は間違えないように……アタシは世界を平和にしてみせるわ。この言葉に偽りはない。アタシの心に偽りもない。平和のため……恒久的な安寧のため。それこそが楽園の再来、失ってしまった……いえ、レイヴァンとあの子を守れなかったアタシが壊してしまった、楽園の復興。それこそがアタシの悲願。アタシは失ったものを取り戻すの、何を犠牲にしてでも」
死なせてしまった息子の影。
頬をなぞるように、女は闇の魔力ドレスを纏わせた手を伸ばしていた。
きっと、女の脳裏にはあの日の楽園が映っているのだろう。
「だから、アタシ、間違ってなどいないでしょう? 世界平和。それが最終目標になるのですから」
黒く淡く輝いていた百合が、聖母を象徴とする青色に変化していく。
純粋に平和を願っているわけではない。
けれど――結果的に平和を願っていることは、本当なのだろう。
しかしそれは、歪んだ目的を叶えるための手段でしかない。
白い山羊はおそらく純粋に、第一世界を救う事自体を目的としている。
けれど。
黒い山羊は、違う。
第一世界を救うこと自体が目的ではなく、新たな楽園を作るための途中経過。
手段に過ぎないのだろう。
あの日、レイヴァン神を守れなかった事ですべてが狂ってしまった。その、あの日をやり直す。
そんな妄執に、完全に憑りつかれているのだ。
哀れな女性だと思った。
悲しい母だと思った。
けれど、壊れた杯は二度と直らない。やり直せることとやり直せないことが、世界には存在すると私は知っていた。
しかし相手の手口も、見えてきた。
実際、私の子を救世主として育て連れ帰れば彼女の目的は達成するだろう。
かつての私の故郷。
魔術のない地球が本当に何らかの危機に陥っているのなら、話は早いのだ。
『なるほど、確かに命を救われた人間の心は掌握しやすい。危機的状況に現れた救世主は、たとえ偽物の救世主でも本物に見えてしまうだろうね。弱ったものに手を差し伸べよ、宗教によくある手段ということか。絶望の中に差し伸べられた救いの手は、とても眩い輝きに見えるだろうからね』
あの日、私が魔王陛下に助けられたように。
魔王陛下は私を善意で救ってくれたが、この黒山羊はそんな気はないということだ。
「そうよ、けれど本当に救うのですから――問題はないでしょう?」
『その目的が新たなる楽園化だというのなら、問題ばかりだと私は思うよ。人々を偽の救いで惑わす者。それは救世主といえるのかい? どちらかといえば、その逆。救世主と対となるモノ――世界に偽の平和を齎す者、反救世主そのものじゃないか』
告げた私は、思考の海に沈んでいた。
反救世主、アンチメシア。
それは、あの方を模して造られた偽物の悪魔。
黙示録に刻まれし偽の救世主。
救世主のフリをし救いを求める人間に近づき、破滅を導く悪魔の総称。
優れた指導者、救世主として人々の前に現れる聖人である。
悪魔の子、六六六の子供。
そんな言葉を思い浮かべれば、どんな存在かは少しは理解してもらえるかもしれない。
そう。
偽救世主は、普通の人間として生まれるのだ。
それも天才と称されるほどのカリスマと知恵。
そして誰もが羨む美貌をもって。
偽救世主の統治や支配は、素晴らしいものとして称賛される。
実際に素晴らしい統率力、まるで勇者のようなカリスマをもって人々を導くのだ。
けれど――支配が進むと本性を現す。
救世主としての裏の顔、模していた善人を止め邪悪な行いに走り出すという。
全ては反救世主の目論見通り。
その者を信じた人々は偽の救世主に騙され、滅びの道をたどるという。
つまり。
偽の救世主。反救世主こそが、世界に終末を齎すのだ。
もっとも、これは対立する宗教や同胞を陥れるための方便。
聖職者が邪魔者を排除する時に都合よく利用していたレッテル、相手を悪魔と決めつけるための言葉の武器として利用されていた、という説もあるが。
ともあれだ。
信仰対象となっていたあの方。
救世主を模した、一見優れた救世主がその反救世主の概念である。
人間世界を恨み悪魔崇拝者となったものが、その偽救世主を生み出そうとする映画。
物語が昔、何本かあった……。
それらは意図的にその反救世主を産もうとする、ホラー映画である。
時に人は恐ろしい妄想をすることがある。
聖書や神話に刻まれる悪魔を、自らの手で召喚。
つまり、産み出そうとする物語を想像してしまうのだから。
それが物語ならばいいのだ、フィクションなのだから。
けれど。
世界を滅ぼしたいと切望するほどに、全てを憎悪した人間がいたとするのならば。
どうだろうか?
その人間が、世界を破壊する妄想に囚われ、悪魔と呼べる人間をあえて生み出そうとしたのなら。
どうなるだろうか?
答えはきっと、何も起こらないだろう。
第一世界は魔術がない世界なのだから。
けれど、本当に黒く歪んだ奇跡が起こってしまったら。
万に一つの可能性を掴み。
そんな邪悪な存在が、歪んだ信仰の中で産まれてしまったとしたら?
信仰は力となる。
心は力となる。
それが魔術で、魔術式。
世界の法則を書き換える、奇跡。
そう。
そんな奇跡を実現した存在がいるとしたら――。
脳裏に――呪われし偽救世主の誕生を題材とした映画を思い浮かべた。
次の瞬間。
私の体は転生前の姿を現す、黒衣の神父モードに戻っていた。
赤い光を反射する雪の結晶に、黒い髪をした寡黙な神父が映っている。
眉目秀麗な神父。
子どもからも大人からも、男からも女からも好かれてしまう完璧な神父がそこにいた。
皆が彼を聖人と呼んだ。
子どもたちの成長を心から願い。
自分とは違う幸せな日々を掴んで欲しいと、彼らを教育した神父がいた。
幼い頃からなんでもできて、なんにでも優れていて、なんでも奇跡を叶えてしまう優等生の神父がいた。
神父が人々から慕われたのは、言葉を覚えてすぐの事。
当時の彼はまだ子供だった。
けれど、他者の心を掴むことに長けていた。
そう、恐ろしいほどに。
まだ少年でありながらも、神父は蠱惑的だったのだ、
時に教師を諭し。
時に神父を諭し。
時に牧師を諭し。
まだ言葉を覚えたばかりなのに、孤児院を乗っ取るほどに賢かった神父がそこにいた。
その姿は神童、まさに救世主の誕生だったと周囲の大人はもてはやした。
けれど。
ただ一つ、例外があった。
獣だけはこの神父を警戒した。
何かに怯え惑うように、震え、逃げてしまうのだ。
獣には何かが見えていたのかもしれない。
次第に神父は考えるようになった。
神父は幸か不幸か、優秀だった。人より優れていた。
少し斜に構え。
世をからかう様に飄々としていたが――幼いころから孤児院で育った彼は、様々なモノが見えていた、
神父は賢かった。
それがいけなかったのだろう。
彼自身が悟ってしまったのだ。
もしや自分は、そんな妄想の産物から生み出されてしまった。
本物の――。
……。
神父は神に祈った。そんな筈はないと、神に祈った。
けれど。
祈りは届かなかった。
……。
加速し、沈んでいた意識が浮上する。
私がゆったりと赤い瞳を開くと、黒山羊聖母もまた。
口を開いていた。
「反救世主、ねえ――”あなた”がそれを口にする?」
女は訳知り顔だった。
シリアスな空気だった。
いっそ、シリアスを投げ捨てたいとすら思った。
けれど――私は今、ここにいる。
『不愉快だね、君――かつての私がどうであれ。今の私は大魔帝ケトス。君が言うそれと何ら関係もない』
不興が、私の周囲の魔力を混沌とさせる。
バチリバチリ……。
神父モードなのに、憎悪の魔力が溢れだしている。
「そう? 別にアタシは構わないけれど、どうかしら? あなたも手を貸してみない? 救世主の父ならば、あなたも新たな楽園の父となる。憎い人間たちが、あなたを神として崇めるのよ? それって、素敵なことじゃない?」
『生憎と、神の立場になんて興味はないよ』
やはり止めなくてはならないか。
シリアスも維持できている。
『君を封印するよ――いまだに楽園に心を奪われた哀れな聖母よ』
告げて、私はゆっくりと手を翳し。
力を調整して。
触れる程度の魔力で……。
ドォオォオオオオオオオオオオォォォォン!
……。
ギリギリで避けた黒山羊の居た空間が、軋んで歪んで、消滅していた。
ゲームとかで、口からレーザー光線を吐く超巨大獣の攻撃を想像して欲しい。
そんな感じの焦土状態である。
なんとか結界で防ぎきっていたが、全員がぜぇぜぇと荒い呼吸で肩を揺らしていた。
敵も味方も、ぐぎぎぎぎっと私を睨んでいる中。
焦げた匂いをさせ、完全な黒山羊形態に戻った聖母が、くわ!
「は!? ちょ……! こ、殺す気!? こんなん直撃したら、マジで消えるわよ!?」
『あ、あれ? おかしいなあ……すっごい力を抑えたはずなんだけど……』
口の封印を解いた白山羊さんが、慌てて叫びだす。
「ちょっと、なにやってるのよ!?」
『いや、私にもなにがなんだか……』
自らのあふれ出る力と手のひらを眺める私。
とっても美壮年紳士だね?
そんな素敵な私を、近眼の人が目を細めるような瞳で白山羊さんが見て。
「あぁああああああああぁっぁあ! あんた、たぶんあの子の聖名を解放したことがきっかけとなって、人間状態の正体が覚醒してるわよ! 砂漠の蘇生事件ってのもきっとそれが原因じゃないの? てか、あんた! 人間だったときの記憶を取り戻してるわね!」
「正体って、どういうことよケトスっち!」
白山羊さんの言葉にヒナタくんが、結界を増強しながら叫んでいた。
対する私は、困った顔で、んーむ。
『正体もなにも……私は私だけれどね――ふむ、そうだね。まあ確かに、神父モードの私の変化のせいで力のコントロールが上手くいかなくなっているようだ』
しばらく考えて。
……。
まあ、いっか!
なんか神父モードなのに、思考が猫よりになっている気がするけど!
気にしない!
そのまま私はピストルの形を指で作り。
『てい! てい! てい!』
ズフドォオォォォォォォォン!
ゴガガガガガ!
ドゲスデゲェェェェン!
指先から飛び出した高密度の聖なる波動が、結界内で暴れまわる。
ふむ、と私は自らの力と手のひらを再確認。
『すまないね、ブラックマリア。どうやら私の本能が暴れだしそうになっているようで――制御できていない。死にたくなかったら避けてくれるかな?』
「避けてくれるかな? じゃないわよ! なによその澄まし顔はっ!」
聖弾の射手による追撃を青百合結界でギリギリかわし。
メメメメメエ!
黒山羊は踊るように、闇のドレスを翻し!
「もう怒ったわ! そっちがその気ならいいわよ! 救世主を産ませるための道具に過ぎないんだからっ、その身体さえ確保すれば問題なし! 心を破壊する聖母の力で――」
『すまない、どうやら自動攻撃モードになっている。君が殺意を抱いた分、私の攻撃もそちらに飛ぶ。っと、忠告が遅かったかな……』
と、苦笑する私の目の前には――黒い毛玉の焦げ山羊さん。
ぷすぷすと、コミカルな黒山羊焼きになっているのだが。
さすがはありとあらゆる聖母の力を扱える黒幕、即座に蘇って。
「これ、シャレにならないわよ――」
『そう、冗談じゃないんだ。皆、悪いけれど大きな攻撃が連続するだろうから、なんとか結界で防ぎ、私から世界を守っておくれ』
頼むよ――っと。
私は仲間を信じて、穏やかに瞳を閉じる。
いつものようにネコ形態が暴走してるんじゃなくて、人間形態が暴走してるんだから仕方ないよね?
私の影が聖光に包まれ回転する。
私の力は私の意思とは反し、敵対者を屠る螺旋となって顕現する。
具体的に言うと、だ。
ねずみ花火を想像して欲しい。
くるくると回って足元で弾ける、あのちょっとおかしな夏の花火である。
その花火が聖なる破壊の力となって、しかも大量に生み出された状態を思い描いてもらいたい。
そんな感じの自動攻撃が、結界の中で展開されているのだ。
ちなみに、一発の威力は女神リールラケーを滅ぼせるぐらいの力である。
そんなもんが暴走したらどうなるのかは、まあ言わずもがなだろう。
花火を避けながらも黒山羊が唸る。
「こんのバカ神父! こんなのがこの夢世界で破裂したら! この世界が滅びるわよ! ヒナタさんはアタシの選んだ聖母候補なんだからっ、作戦が台無しになっちゃうじゃないの!」
『だから君も協力し給え。私の暴走が終わるまででいい、力が世界を破壊しないように共闘しようじゃないか』
「なにを他人事みたいに言ってるのよ! 暴走してるあんたがどうにかしなさい!」
眉を下げて私は言う。
『おかしなことをいうね、暴走しているから自分で止められないんだろう?』
「だぁぁぁあぁっぁ! めちゃくちゃに力を暴走させてるくせにっ、口調だけは冷静って腹立つわね!」
この黒山羊にとってヒナタくんは作戦の要。
絶対に破壊してはいけない存在。
なので――やはり腕を伸ばして、この事態を解決するべく動いていた。
動くしかない、といった方が正しいか。
聖母の権能を全力全開で、私の力を抑えるべく敵が動く。
まあ敵っていっても、今の目的は一致してるけど。
私を止めないと、全てが泡となるのだから。
「アタシは拒絶する! 否定する! 根源を遮断する! って! こんな複雑な魔術式、対応しきれないわよ! ちょっと白いアタシも協力なさい!」
「ええ、そのままあんたが滅んじゃったほうが、あたしは助かるし? その後でもいいんじゃないの~?」
ウチの白山羊さんは、メメメッメメエ!
大笑いである。
しかし、私はシリアスを継続したまま。
ぼそりと容姿端麗なハスキー声。
『そっちの白いマリアも協力しておくれ。実はけっこう、まずいかもしれないんだ』
「ああ、そういうのはもういいわよ? それも作戦なんでしょう? 人間の方が暴走してるなら、とっとと黒猫に戻れば解決じゃない」
と、安易な発想をしている白山羊さんに。
私は困り眉で微笑を返し……ふっ。
目線をそらす。
『い、いや……戻れない、みたいな?』
「そう、戻れない……って!? まさか、あんた! ガチで暴走してるの!?」
頭の後ろを掻きながら、暴走した魔力をズドドドッデン♪
いやあ……なんか力が強まってるって、前兆はたしかにあったからね……。
穏やかシリアスに私は告げる。
『だからそう言っただろう。下手するとヒナタ君の身体を破壊のエネルギーが乗っ取り、外の世界でも具現化。ありとあらゆるものを破壊という形で救うまで、この力は収まらないかもしれない。だから、うん。本当に、何とかして貰えると助かるんだけど。どうかな?』
先ほどとは状況が反転。
シリアスモードな大魔帝をどうにかしないと、世界がヤバイ。
そんな空気を察したのか。
銀髪を揺らし――。
大型犬顔のヨナタンくんが汗を飛ばしながらコミカルに叫ぶ。
「黒猫の旦那っ! まてまてまて! これ以上は、耐えられねえぞ!」
『君たちならできるさ。私の弟子や仲間たちなのだからね』
ここ、実はすんごいイイ感じの美声で告げている。
司書ウサギは図書館を顕現させ、でちちちちち!
「黒猫の方だけじゃなくて、人間の方まで実は迷惑魔人だったなんて! やっぱりあんたしゃんは邪悪でちね!」
「もう、しょうがないわね! ケトスっち! あとでグルメをたっぷりよこしなさいよ!」
言って、ニヒィ!
ヒナタ君も聖剣を構えて、黒髪を靡かせる。
おお! 勇者の最終決戦っぽいぞ!
空気も温まってきたので、私はなんとか空気をシリアスからギャグに戻そうと。
ふっふっふ!
バッと手を翳し――朗々と宣言する。
『さあ、我が仲間たちよ――私もそれなりに力を抑えてみるが、君たちが頼り。来るがいい、人類よ! 今こそ私を倒し、世界を救ってみせるがいいのである!』
よーし!
なんかイイ感じのセリフを言えたぞ!
まあ実際は倒されないけど!
シリアスになりすぎると、たぶん人間状態の私の暴走が増すから。
今度は適度なギャグを保つのである!




