【SIDE:聖職者アンネ】異邦人の微笑 その2
【SIDE:聖職者アンネ】
聖職者アンネは退屈していた。
時刻は昼前。
普段ならば駆け込みの患者が大勢、走り込んでくる時間である。
ここ、最高位の治療院は内臓の欠損はもちろん、人体の部位欠損の修復も可能。
来院者の持ち込み儀式アイテム次第では、簡易の蘇生さえ可能。
皆が認める、この国随一の治療の場。
莫大な金はかかるが、それに見合った効果を得られる礼拝堂。
だから。
ここはいつでも、混雑していた。
筈だった。
そう――。
今日は何故か、誰も怪我人が運ばれてこないのである。
鳥の声さえ欠伸に聞こえる、のどかな日になってしまった。
アンネは鳥のさえずりに釣られ――思わず欠伸をしそうになってしまうが、ぐっとそれを我慢する。
喉の吐息を、噛み殺し。
アンネは山羊の角を輝かせたのだ。
彼女の付き人である羊の神官達も、退屈そうだった。
ついに漏れたのは、ふぁ~っと気の抜けた息。
堂々たる欠伸を漏らした神官に向かい、アンネは氷を崩した微笑を漏らす。
「神の御前なのですよ?」
「ふぇ!? あわわわわ! す、すみません!」
慌てて姿勢を直す神官たち。
彼らは普段はキリリと厳格で優秀。けれど、こうも暇だとそれも緩んでしまったのだろう。
その新鮮さがアンネの微笑みを誘っていた。
「と、いってもわたくしも欠伸という悪魔をこっそり浄化していたのですから。お互い様なのですけれどね」
氷の聖女が漏らす冗談は、周囲をほんわかと温める。
神官たちは、アンネが心底のお人好しだと知っているのだ。
良い空気だった。
「もう! 脅かさないでくださいよ、アンネ様~!」
「ふふ、いいじゃない。今日は珍しく暇。たまにはわたくしが、こういう冗談を言う日があっても、許されるんじゃないかしら?」
と、口にはしたものの。
退屈過ぎるのも考え物だ。
働かなければ、役に立たなければ――この大陸では生きていけないのだから。
もっとも、今までの成果を考えればアンネやお付きの神官が追放されることはない。
彼らは治療のプロ。
優秀だったからだ。
アンネは礼拝堂のステンドグラスを眺め。
ふぅ……。
疑問を口にする。
「それにしても――どうしたというのでしょうか……もうお昼の時間でしょう? 誰一人、迷える信徒が訪ねてこない。こんな事、今まで一度もなかったのですが」
穏やかな陽射しの中。
呟く美貌に目をやって、神官たちは上司を気遣う優しい言葉を漏らす。
「えー、別に良いじゃありませんか!」
「そうですとも、アンネ様。あなたはいつも働き過ぎで、少し心配でしたから……神があなたに、休暇をお与えになってくれたのかもしれませんね」
くすりと、口元を抑えて微笑むアンネが言った。
「あら、二人とも。随分と優しいのですね。普段のあなた達に、いまのあなた達の顔を見せて差し上げたいですわ」
「もし見せる事となったらですよ!? 普段のアンネ様が一番、怒って! ぼんやりしてるアンネ様に、『神の御前ですよ!?』って、お説教しそうですけどね~!」
愛嬌のある羊神官の冗談が、周囲の笑いを誘う。
奥の薬師達からも笑いが起きる。
神官やスタッフとの落ち着いた雑談は、いつぶりだろうか。
いつもは忙しさに追われ、それどころではなかった。
アンネはもう一度ステンドグラスに目をやって――。
ふと言葉を漏らす。
「でも、本当に穏やかで……、少々面を喰らってしまいますね。わたくし達が暇だということは、重症の怪我人がいないという事。それは喜ばしい事なのでしょうが」
実際。
おとといも、酷いケガをした狼巨獣人達が来たばかり。
「あ! でもでも! 軽症者の方はそれなりにいるようではありますね~」
「ああ、わたしも聞きましたよ。低級階層の礼拝堂に、ほら、なんて名前でしたか……おととい、新しい神父が来たでしょう?」
アンネの脳裏に、男の赤い瞳が思い出されていた。
黒衣と同じく黒い前髪の隙間から覗いていた、深い色の赤眼。
アンネの唇が、表情を変えずに動いていた。
「ケトスさん、ですわね」
アンネの補足に神官達が言う。
「そう、そう! そんな名前でしたか! いやあ、あの新人くん。顔と声が良いって評判もあって、一目見ようと人が集まっているようなんすよねえ!」
「あちらは大した治療を受けられない代わりに、代価は少量。寄付金もそれほどかかりませんしね」
シスターアンネは、あら……と、微笑を浮かべていた。
「そう、あの方は上手くやっていらっしゃるのですね。安心いたしましたわ」
神官たちが「ん?」と首を傾げる。
いつもと違うアンネに、戸惑いをみせたのだ。
「何かご心配でもあったので?」
「ああぁあああああっぁぁっぁああぁ! もしかして、アンネさま! あの男に見惚れてしまったんじゃないでしょうね!」
アンネに恋の噂など一度も流れた事はない。
お付き神官の大声に、同じく暇をしている薬師たちが氷の聖女アンネの初恋!? と、礼拝堂に目をやっている。
みんな、暇なのだろう。
アンネは苦笑で返していた。
「ふふふふふ。そういう浮ついた話だったら良かったのですが、残念ながら違いますよ――」
「ま、そうでしょうねえ~」
愛嬌のある神官の漏らす言葉が途切れた後。
アンネは表情を引き締め、真面目な声で言う。
「ケトスさん、あの方はレベルが一桁ですし――我等巨人とは違い、差別を受けやすい小人族でしたでしょう? どうしても、力の限界はありますでしょうからね」
新人が張り切り無茶をして魔力を使い切ってしまう。
それもよくある話。
しかし、なぜだろうか
羊の神官たちの顔に浮かんでいたのは、怪訝。
片方の神官が、アンネに言う。
「えーと、アンネさまあ。あの人、本当に、レベル一桁なのですか?」
「鑑定の結果ではそうなっていましたが、どうしたのです?」
アンネの友人であり、鑑定の実力だけは信頼できるギルド受付の女鹿獣人。
彼女による鑑定。
そして、アンネ自身も再度鑑定の奇跡を行使した。
結果は共にレベル一桁。
疑いようなどない筈。
「いえね、大したことではないんですけどお……あの新人くん。なんか朝から休む間もなく、訪ねてくる低級階層の治療をし続けているっぽいので。よ~く、魔力がもつモノだなあ、と」
「アンネ様、わたしも同じ話を聞きましたよ。なんでも朝から晩まで、治療をしていたとか……あの男、もしかしたら魔力回復速度が速いのかもしれませんね」
アンネは考える。
あの男は異界の神に仕えていると言っていた。
魔力コストが非常に低い、効率に優れた癒しの御手を習得している可能性がある。
愛嬌のある神官が言う。
「それに、あの新人くん。どうやらまともな代金を、受け取っていないっぽいんですよね~。奇跡の代価は祈りとグルメ……この際、家庭料理でもいい、なんて言いだしてるらしくって。普通、レベル一桁なら、そういう余裕のある行動はしませんからね~」
「寄付を受け取っていないのですか?」
アンネの漏らした言葉に、神官が言う。
「いえ、だから……食事は要求するらしいですよ? あと、祈りさえ真実ならば、それでいいと……本人が言っているそうです。まあ、あちらの礼拝堂に定額料金もありませんし……低級階層が高額な料金を払えるとは思えないですし、民たちは助かっているようですが」
「ええ~。低級階層のことなんて、あんまり興味はないな~。だって役に立たないから、低級なんでしょ?」
エリート意識のある彼らの言葉を聞きながら、アンネは考える。
一応、治療スタッフ本人が代金を断る事は自由だ。
その分、本人の働きにならないだけの話。
そんな事を繰り返していたら、いつまで経っても昇格できず……最底辺のまま、階級も上がらないのだが。
問題は、無償であるという事だ。
稼ぎに繋がらないとなると、面倒なことを言いだす連中を皆はよく知っていた。
「後で様子を見て参りましょう。聖十字軍に目をつけられないといいのですが……」
そう。
あまりにも目立つと、やつらに目をつけられる。
不意にアンネの心に、冷たい針が通り過ぎたような感覚が襲う。
なぜだろうか。
今までに感じた事のない、強い動揺。
胸騒ぎがしたのだ。
◇
低級階層にあてがわれた教会。
とても綺麗とは言えない場所。
もう黄昏時だというのに、人の流れは消えることなく続いている。
一般人にも解放されている小さな礼拝堂にあったのは、無数の人だかり。
まるで、蜜に集まるアリのようにワラワラワラ。
巨獣人族の山ができていたのである。
その中央。
中からは思わず聞き入ってしまうような、酷く蠱惑的な男の声音が響いている。
神父ケトス。
彼が来たのはおととい。その筈だ。
けれど、これではまるで新たな宗教団体。
教祖に群がる信者のようだと、アンネは感じていた。
この熱気は――異常だった。
「これは……、いったい! 何の騒ぎですか!」
カツン!
アンネが大司祭の宝杖を鳴らし、静寂を生み出そうとしたのだが。
止まらない。
「祈りに集中していて、聞こえていないの!?」
アンネは思わず驚愕を口にしてしまっていた。
それもその筈だ。
この低級礼拝堂が、あきらかに異質な空間となっているからである。
既にここには熱狂的な信心があった。
新人神父への信奉者が集う、妄信的な領域と化している。
正面からはとても入っていけない。
急ぎ、聖職者用の裏戸から中に入ると、あの男の姿が見えてきた。
やはり神父ケトスだった。
その姿はさながら、敬虔なる宣教師。
男は小さな体で、巨人達を眺め――怯むことなく説法をしている。
『祈りなさい。励みなさい。主が御座す悦びを感じなさい』
「我が信仰は、貴方の主に」
「我が心は、あなたの主に」
神父の開く聖書に跪き、祈りを捧げている二人には見覚えがあった。
先月、失明により戦闘員ギルド上位の地位から底辺まで落ちた、双子の兄妹。
呪いと傷により光を失ってしまったのは妹の方。
アンネは力及ばず、その失明を治すことはできなかった。
けれど。
神父ケトスは穏やかな微笑で、妹の薄れた瞳に手を翳す。
『さあ、貴女の傷を癒しましょう』
「しかし、神父様……階級落ちし、まともな冒険さえ困難となった、我ら兄妹にはもはやお金が……」
神父は構わず、微笑する。
『いいのです。ないのでしたら御金など要りません。あるのでしたら受け取っていた所ですが、それは仕方の無き事。そこに大きな過失がないのなら、貧しさは罪ではない。あなたたちは悪くないのです』
「では我等は何を差し出せば……っ」
言葉を待っていたかのように、神父の唇が妖しく動く。
『無理をなさらない程度の食料と、後はただ真に祈る心さえあれば、それだけで良いのです。主は見ておられるのですから。あなた方、兄妹が本当に助かりたいと祈りを捧げた時……我が主、我が友はあなたに光を捧げるでしょう。そして今あなた方、兄妹に必要な異神は――大いなる聖光に満ちた女神』
告げて神父は聖書を風で揺らし。
礼拝堂の床に、聖印を刻む。
キィィッィッィィイイイイイイイイイイィィッィィィン!
吹きすさぶ神聖な光が、黒衣の神父のストラを揺らす。
シスターアンネのローブも、バタリバタリと揺れていた。
光と風の中。
大いなる光に満ちた祝福が発動する。
アンネの鑑定スキルも、発動する。
祝福名は――。
《敬虔なる信徒への施し》
スキルのレベルは……。
「鑑定不能……っ!?」
思わず漏れた声に、神父の視線が向く。
だが、すぐに跪く信徒へと赤き瞳は戻っていく。
『さあ、光は満ちました。後はあなた方二人が、本当に心から願うだけ。心の中で詠唱なさい。祈りなさい。念じなさい。真に救われたいと願うのならば、神はそれを見捨てたりはしないのですから』
礼拝堂の窓から白い鳩がバサりと舞い降り、両翼を広げる。
聖光が礼拝堂を満たし――そして。
奇跡は起こった。
『願いは成就されました。さあ、忠実なる神の信徒よ。瞳を開けてごらんなさい』
神父の妖しく蠱惑的な声に、頷き。
少女は恐る恐る、瞳を開ける。
本当にゆっくりと。けれど――着実に、在りし日の光を求めて顔を上げた。
そして。
神父の顔を覗き込み。
ぽぉっと頬を赤く染め上げる。
「ああ。なんて、美しい人……」
少女の唇は動いていた。
次に瞳が揺れて。
そこでようやく、失明から解放されたと知ったのだろう。
少女は自らの手のひらを眺めた。
その手の窪みに、雫が流れる。
流れる雫を視線で辿り、少女は兄を振り向いた。
「兄さん……あたし……っ、見えるわ」
ザワザワザワ。
奇跡を目の当たりにした者達の声が聞こえる。
アンネは考えた。
開くようになった眼で、少女はいったいどんな景色を見たのだろうか、と。
お世辞にも綺麗とは言えない簡素な礼拝堂。
妹の回復に歓喜する兄。
そして。
夕闇の中で微笑み続ける、赤い瞳の神父が映っていた筈。
それは、あの日の自分では届かなかった祈り。
自分にはできなかった、奇跡だ。
「わたくしが……負けた?」
アンネはぎゅっときつく、大司祭の宝杖を握っていた自身に気が付いた。
それは本人も自覚している、悔しさだろうか。
嫉妬だろうか。
自らの卑しさに気付き、ゾッとした彼女の耳に。
そして、礼拝堂内に。
朗々とした穏やかな声が響き渡る。
『奇跡は授けられました。おめでとうございます、あなた方は今、心の底から祈ることを学んだのです。どうか耳を傾けてください。この世界、この大陸には神へと祈る心が消失してしまっている。力を失ってしまっている。それはとても悲しい事です。神も万能ではないのです。あなた方の力なくしては、その祈りを届けることができないのですから』
誰の目から見ても分かる奇跡。
眼球を傷付けられ光を失った瞳に、力を与えた。
それは、なによりのパフォーマンスになったのだろう。
人々の瞳に変化が起こった。
黄昏の礼拝堂を反射し――赤く染まっていたのだ。
奇跡を受けた少女は兄に抱きつき。
兄もまた、泣き崩れながら抱き返し。
子どものように泣き腫らす。
「見える、ああ、見えるわ。兄さん! あたし、これでまた冒険ができるのね」
「ああ、本当に……っ。神父様、ありがとうございます。どう、お礼をしたらいいか。このご恩は必ず! 必ず!」
歓喜し、感謝を述べる迷える子羊達。
聖女ともいわれたアンネが治せなかった失明を、いとも容易く治した男。
神父ケトスを疑うモノは誰もいなくなった。
なにしろ。今、奇跡が目の前にある。
かつて上位階級だった哀れな兄妹が、いま、目の前で救われた。
顔を崩し、咽び泣きながら、互いの身体を支えている。
とても綺麗な物語だ。
冷やかしに来ていたモノさえ、既に堕ちていた。
その心は浮かれていた。
妖しく端正な顔立ちの神父。聖職者ケトスの虜になっているのだろう。
もしこれが全て演出であったのなら――。
どれほどのバケモノが、今、目の前にいるのだろう。
と。
アンネは肝を冷やした。
そんなアンネを知ってか知らずか。
神父ケトスは、やはり静かに微笑する。
『さあ、次の方。祈りが本物であると自信があるのなら、前に出なさい。神は平等に、あなたがたの心を見るでしょう』
黄昏の灯りの中で、淡い光が礼拝堂を満たす。
漆黒の髪を揺らし。
赤い瞳をその隙間から妖しく覗かせ、男は両手を広げた。
男は治した。
男は治した。
男は治した。
低級階層の者達は気付かない。
これがどれほどの奇跡なのか。
アンネは確信した。
なぜ今日一日、暇だったのかを。
弱者さえ差別しないこの男が、全ての傷を癒していたのだろう。
アンネの帰還が遅い事を心配したのか、羊神官も裏戸から入ってきて。
異様な景色に、眉を顰める。
「うわぁ……なんなんですかぁ、これ……」
「奇跡を見たわ。神父ケトス。彼は、たぶん本物の聖人よ」
もう一人の羊神官が言う。
「では、やはりレベル一桁ではなかったと……?」
「レベル偽装をしていたのでしょうね、あの高度な技の数々、低レベルの神父が使っていい奇跡じゃないわ」
漏らすアンネの言葉に、愛嬌のある羊神官がぼそりと呟く。
「たしかに凄いですけどぉ……。この異様な光景。聖人というよりは、人々を惑わす……悪魔に見えますね」
アンネは何も答えられなかった。
本来なら彼女たちが治療をしなければ再生できない、腕の欠損を治療し。
神父ケトスは祈りを捧げた。
事も無げに、汗一つ流すことなく神父は告げたのだ。
『明日を信じるモノ達に、神の祝福があらんことを――』
礼拝堂を取り囲む聴衆たちが、跪く。
今、ここに。
奇跡を授ける救世主が存在していたからだろう。
◇
奇跡は黄昏の終わり……夜になるまで続けられた。
もはや疑うまでもない。
この男は異常だ。
そう、聖職者アンネは確信していた。
だから。
終業の時間。皆が退散したその後で――彼女は礼拝堂で祈る神父ケトスの後ろに立っていた。
他大陸からのスパイの可能性もある。
どう考えてもレベル一桁ではない。
それが偽装だというのなら……。
悪意ある異邦人の可能性も高い。
しかし目的が分からない。
現状だと、ただグルメを集めているだけ。
その手段として、信者を集め、暇つぶしに治療しているだけにしか見えない。
あれほどの奇跡の使い手なのだ。
そんなバカな話、あるわけがない。
もっと恐ろしい計画が、その裏にはある筈。
なんにしても放置しておくには危険すぎる存在だ。
奇襲するなら今しかない。
けれど、理由や思惑はどうあれ彼は民を救ったのだ。恩を仇で返すことになる。
それを彼女の正義感は善としなかったのだ。
だから――。
カツン……。
わざと宝杖で音を立て、アンネは言った。
「ケトスさん、お話があります。少しお時間宜しいでしょうか?」
『構いませんよ、シスター。けれどその前に質問があります』
男はアンネの後ろ。
礼拝堂の柱の陰を目線で示し。
穏やかな声で言った。
『あなたの後ろにいる方々は、お知り合いで?』
「……――ッ」
アンネは息を呑んだ。
羊神官ではない。
では――なにか。答えは決まっている。
彼女は間に合わなかったと悟った。
この気配には覚えがあったのだ。
聖十字軍。
粛清のために動く、最上位階級の私兵だ。
濃い死の気配が、周囲に広がっていた。