異国風美女(グレイス)の憂鬱 ~後編~
えらーいニャンコな私、大魔帝ケトスが乱入した報告会議。
モニターの中に浮かぶのは、それぞれ離れた場所にいる幹部達なのだが――!
どのモニターにも可愛らしいスマァァァァトな黒猫がドヤり!
麗しい毛並みを輝かせ、黒きモヤモヤを纏い。
チーズの吐息を、げぷり♪
ドヤァァァァアっと王者の席に座っている。
むろん、大魔帝セットの玉座の上である!
大魔帝ケトスこと、この日本を救った英雄猫だから当然だよね!
さて。
私はこのまま、脆弱なる人類たちの会議を見張る筈だったのだが。
『ぶにゃはははははは! そんなに緊張しなくてもいいよ、今日は本当に牽制しにきただけ。世界を救った英雄の一人であるグレイスさんに、面倒をかけるんじゃないよ? って言いに来るついでに、遊びに来ただけなんだし。いやだなあ、そんな怖い顔をしちゃって――そんなに私が怖いのかい?』
まあ恐怖するのも当然。
私はいつもの演出のモヤモヤを、でれーんと垂れ流したままだし。
敢えて、漲る魔力も隠そうとしていないからね。
『おーい! この私が声をかけているんだよー! 無視ですかー!?』
アン・グールモーアから伝授してもらった、分身端末作成の能力。
そのチェックをかねて、私の分身端末が幹部連中の頭の上に――よいしょ♪ よいしょ♪
よーし!
これでモニター全員の顔の上に私が可愛く顔を出している!
これがいわゆる、全部カワイイである。
……。
もしかしたらちょっと違うかもしれない。
「さすがは魔猫の君」
「すばらしきドヤ!」
「我等も見習わなければなりませんな~」
肉球の拍手が鳴り響く中。
ふーむ、と私は人間達を一瞥する。
『さて、そろそろ真面目に話をしよう。もう、いいだろう? 今の私は前よりは忙しくないけど、ただボーっとしている君達を眺めているほどには、暇じゃないんだ。会議を続けておくれよ』
言葉に反応はない。
『あれ? もしかして圧倒的なレベル差の前で強制スタン状態になってる? グレイスさん以外、動けないのかな?』
「そのようでありまするな」
私配下の新人ニャンコ、ホープくんが応じる中。
『まあとりあえず先に、グルメセットを広げちゃおうか!』
眷属ネコ達にもピザを分け与えて、と。
分裂の魔術を発動!
会議用テーブルの上は、軽いピザパーティー状態。
チキンにポテト。
マヨネーズやらケチャップやらのお皿を並べて、眷族ネコ魔獣たちが――わっせわっせ♪
モニターを転移門に書き換えて。
次元を渡って、わっせわっせ♪
萎縮し固まる幹部連中の前を、縦横無尽に行ったり来たり。
長いシッポがその顔をベチベチしているのだが。
これ、トウヤくんなら逆に大喜びだっただろうなあ。
『ねえねえ! 追加オーダーしようよ! カルボナーラとかもあるし、最近のピザ屋さんって色々あるんだね~。店舗ごとの食べ比べもしたいしさあ――』
「ぶにゃ! ただちに注文をして参りまする」
「ガァガァ! ついでにお寿司屋さんの出前もとるのであーる! 吾輩、電話とやらを華麗に操ってみせるでありまするぞ!」
どさくさに紛れて顕現している、事件の黒幕だったっぽいペンギンさん。
イワトビペンギン神を見る、幹部連中たちの視線は重い。
私の配下に入ったことで、魔力の質が変化しているからね。
そう。
彼は魔王軍の一員、すなわち魔族。正式に魔の眷属となり、魔王様から魔帝の位を授かっているのである。
魔王様、あいかわらずかわいいもの好きだからな~。
ペンギンみたいなフォルムで、ペタペタ歩きをするアン・グールモーアを気に入ったようなのだ。
ま、その境遇に深く同情しているという理由もあるだろうが。
一応は落ち着いた、ということだ。
少し私も安堵していた。
そんな、感慨深いエピローグモードな顔をしている私に。
グレイスさんがぼそり。
「あのう……すみませんケトス様。お怒りなのか、お楽しみなのか複雑なところを、大変申し訳ないのですが……魔力の方を、もう少しだけ、落として貰ってもいいですか? たぶん、みなさん。そのうち呼吸困難で……」
『呼吸困難?』
「ええ、そちらの世界の人間はこちらの世界の人間よりも基本能力が高いのでしょうが――地球人種は魔力への耐性はあまりないですからね。あなたの魔力をこう、浴び続けると……だんだん、なんといいましょうか……」
グレイスさんが言葉を選ぶように言って、頬をポリポリ。
たしかに、脆弱なる人間達の息はだんだんと細くなっている。
まあ、冗談はこれくらいにしておくか。
『分かっているよ。んじゃ、魔力も抑えて――っと。まあ、これで頭の固い連中にも私が実在し、そしてそれなりに力のある獣神であるとは理解できたはずだ。どうだい? そこで冷や汗をかいている、一番偉い初老の紳士さん』
魔力圧から解放された初老の紳士が、鼻梁に力を込めて。
ずい! っと私に目をやった。
「ほう、ワタシが一番偉いと――何故そう思われるのですかな?」
『私はある程度、他人の心を読めるからね。たとえば――そうだね。そこのおばちゃんが組織のお金を横領していたり、そっちの弁護士風のおじさんが愛人を囲って怠惰な生活を送っていたり。そういう隠しておきたい心を全部読めてしまうのだが――君の心にはガードがかかっている』
並の人間じゃできないね!
と。
キリっと名探偵モードで猫口を動かしながら、むっちゅむっちゅ。
シーフードピザのイカさんを、ぶちり♪
フライドチキンをガージガジガジ!
おー! 噛み切った時に、程よい塩分がお口の中に広がって、イイ感じ!
ペンギンとハチワレニャンコが届いた宅配グルメを広げる中。
私は悠然と瞳を細め、王者としての声で告げた。
『さて、戯れはもういいか。真面目な話をしよう。君達に問う。私に協力する気はあるのかい?』
「協力とは、すなわち――終末の未来予知のことですかな」
話が早い。
肯定を示すように、私は静かに頷いていた。
まあ、今はダンジョン領域日本を継続しているとはいえ、いつまでも続くわけじゃない。
元の世界に戻った時のための保険。
公の機関とコンタクトをとれる組織との繋がりは、できるかぎり維持しておきたい所なのである。
ネコ魔獣に支配されつつあるモニターの中。
幹部達は難しい顔で、互いに互いの顔を見ている。
やはり代表となったのは例の男。
初老の紳士が螺旋を描く杖を浮かべて、静かに応じる。
「疑うわけではないのですが、その予言、我等に見せて貰ってもよろしいでしょうか? こちらの予言能力者では、未来が既に読めなくなっておりますので。確かめたい、それも本音なのですよ」
『ああ、構わないよ』
言って私は猫目石の魔杖を顕現させ、一振り。
十重の魔法陣を展開しただけで、初老の紳士はごくり。
椅子から立ち上がり、その身を歓喜に震わせていた。
まともに顔色を変えているのだが――まあ……この素晴らしき魔力と完璧なる魔術式、二つの大天才ニャンコ要素に見惚れてしまうのは当然である。
さほど問題ではない。
「なんと……美しい魔術式……」
『もっと褒めてくれてもいいけど、まあ、そんな場合じゃないか。ほら、見えてくるよ』
そこに映っていたのは、灰化していく地球が滅ぶ映像ではない。
次の滅びの予知――。
食べ歩きをしていて――うっかり転んだ私とペンギンさんが、そのままドデン♪
ホープ君も驚き、ぶにゃん!
発生した魔力が、世界のコアとマントルを吹き飛ばす……映像、だねぇ。
……。
アン・グールモーア……じゃなかった。謎の魔族ペンギンが黄金の飾り羽を逆立て。
ピンク色のペタ足をバタタタタタとし、叫ぶ。
「ガァガガガガガ! ケ――ケトス殿! それは吾輩と貴殿が慌てて隠した方のデータでありまする! 比類なき獣神達である吾輩たちが協力関係になったことで新たに発生した、うっかり世界滅亡パターンの方でありまするよ!」
『ふぇ? あ……あー! こ、こっちじゃないじゃん! 今のは、そう! フェイク映像だよ、フェイク! あくまでも可能性の一つってだけで――今の、なーし!』
なんつーか。
ギャグみたいな話と滅び方で大変申し訳ないのだが。
実は本当に……うん。
私達がうっかり――悪意も悪気もなく。
偶然世界を滅亡させてしまう、そんなパターンも増えていたのだ。
いやあ、地球ってけっこう脆いよね~♪
それはホープくんと私と、このペンギンさん。
あと、未来視を使ったロックウェル卿だけの秘密だったのだが。
当然、グレイスさんが顔面蒼白となって言う。
「えーと、ケトス様。フェイクなのか可能性の一つなのか、どちらなのでしょうか? わたし、聞いていないのですが? 転んでアイスを落としちゃったぁ、みたいな軽いノリで滅ぼしてますけど……ヒナタさんはご存じなんですか、これ」
グレイスさんのツッコミに、モフ耳がぴょこんと逸れる。
私と謎の魔族ペンギン。
そして新人ハチワレニャンコなホープくんとも目線を合わせ。
強く頷く。
心はたぶん、三匹とも一緒。
聞こえなかったことにして!
本来の滅亡映像を――とりゃ!
ちゃんと普通に地球が滅びる、正しい映像に切り替えて。
こほん、と肉球で口を覆うように咳払い。
シリアス魔族幹部声で私は言う。
『これが次の滅びの予知さ。おめでとう、人類諸君。これは未来視が得意な、力あるニワトリに視て貰っているからね、何か変化を与えない限り、まず間違いなく滅ぶだろうさ』
私を含むネコ魔獣は、宅配ピザをくっちゃくっちゃしながらコーラを、じゅじゅじゅ♪
映画鑑賞感覚で眺めているのだが――。
幹部連中はぞっと顔を歪ませている。
まあ地球がそのまま太陽の公転から外れ、迷子状態。
宇宙をさまよい。
極寒の中で滅んでいく様は、さすがに光景としてはエグイものがあるからね。
『あと四十パターンぐらいの滅びがあるけれど、全部見るかい?』
「後で資料として提供していただければ幸いかと――大魔帝ケトス殿。貴殿は我等、メルティ・リターナーズに何を望まれておられるのか、率直にお聞かせ願いませんかな」
細い瞳を見開いて、紳士は言った。
大魔帝として私は応じ、瞳を細める。
『一つは邪魔をしないで欲しい。そして二つは、どうか私を怒らせないで欲しい。私は私と関わった存在を傷付けられることが嫌いだ。それがたとえかつて敵対し憎悪した種族、脆弱なる人間であったとしても……傷ついたら、心が痛い。不快に思う習性があってね、もし君達がくだらない組織内政治で、くだらない事件を起こすなら――警告したように、私は君達をひそかに消し去る。君達がいたという記憶すらも、全ての民から拭い去ってね。家族ですらも君達の事を思い出せなくなる、そういう意味での消滅さ』
演出ではない黒い靄。
憎悪の魔性たる私の、可視化した魔力を蠢かせて私は続ける。
『けれど、私は君達の功績を知らないわけじゃない。メルティ・リターナーズ。それは転移帰還者狩りにあった人々への救済機関。その仕事のおかげで救われた命も、多くあるのだろうからね』
「そこは評価していただけると?」
『ああ、そうさ。今の君達の内情はだいぶ腐っているようだが――まだ間に合うだろう。本当に未来を救う救世主となるために尽力をする。そうすれば君達が行っていた軽い不正も、まあ仕方のなかったコストだったと言い訳もできるだろう?』
告げる私に、グレイスさんが眉を顰める。
「言い訳……ですか? あの、ケトス様はまるでこのメルティ・リターナーズが滅びるかのような、危険だと忠告しているような、なんというか……不思議な言い方をしていらっしゃいますけど。何かあるのですか?」
ネコ魔獣たちが騒ぎ出す。
彼等も知っているのだ。
まあ黙っていても仕方がないと、私は苦笑しながら言う。
『えー、うーん……なんていうかさ、このダンジョン領域日本を維持している主神の一柱に厳格なる白銀の魔狼がいるんだけど。彼は横領とか、職権乱用で私利私欲を肥やすタイプの人間を裁く立場の神獣でね? 狼系の神獣で基本的に集団行動を重んじる神でね? 滅びる世界の救済のためにここが使えるのかって調べ始めたらしいんだけど……組織の腐敗が酷いってワンコ肉球をぺちんと濃い眉間に当てて唸っていてね?』
厳格ワンコの『まあ、世界救済には要らんかこの組織……』と呟いた時の。
ものすっごい冷めた真顔を思い出し、私は続ける。
『たぶんこのままだと、この組織――神の裁定が下って、なくなっちゃうんだよね……』
そう。
既にここはホワイトハウルが目をつけている、腐敗組織の一つ。
手にする裁定の書――私が勝手に死神わんこノートと呼んでいる帳簿に、さ。
この組織の名前が……書かれてるんだよね。
ある一定の不正ポイントが溜まると、どかーん!
厳格ワンコの得意技。
冥府魔狼の裁定魔術が発動されてしまうのである。
「えーと、それはいつになるお話で――」
『たぶん、最短で明後日ぐらいかな。ワンコ、あいつけっこう気が短いし』
映像として見せてやると、幹部連中の表情は完全に消沈。
今頃。
なんであの時、あんなことをしてしまったのか――そんな後悔が浮かんでいる筈。
ものすごく落ちた空気の中。
私達ネコ魔獣にとっては、あまり関係もないので――。
眷属猫達はすっかり会議モニターを占拠。
全ての会議場を乗っ取り、白熱した議論を重ねている。
どこのメーカーのピザが一番おいしいのか! コスパがいいのか!
サイドメニューがうまいのか!
会議を開始していて、それぞれに推しの宅配ピザを一位にするべく尻尾を震わせているのだ。
そんな微笑ましい日常を眺め。
刻みアスパラとイカが特徴的なシーフードピザを平らげた謎の魔族ペンギンが、フリッパーをクイクイしながら舞い始める。
「ガガガガッガァ! ぷぷうー! 地球が滅亡する前に、ここが滅んでしまうわけでありまするなー! 愚かなり人類! ガガガガガッガガァ!」
クルクルの、ずじゃ!
氷の舞台を顕現させて、一人でアイススケートをし始めてるし。
こいつもなかなかマイペースなペンギンだよね。
「やーい! やーい! 滅ぶでありまする―!」
「まあ確かに吾輩たち。共に人間達への慈悲は、あまりありませぬからな」
うっわ、人間を基本的に恨んだままだからこのペンギン、大笑いしてやんの。
ホープ君の方は人格が既に異なるので、冷静なままだが。
妙に楽しそうなペンギンはおいといて。
私は紳士な声で告げる。
『ま、そんなわけで。私にとってもグレイスさんだけが無事なら別にそれでいいんだけど、一応、忠告に来たってわけさ。ただ、そうだね。私にも僅かながらの慈悲がある』
猫の身体を、ザァァッァァッァァァァ!
黒衣の神父姿へと変貌させ。
魔王様を讃える書を胸元に抱きながら、慇懃に告げる。
『君達が今後、協力をしてくれると誓うなら――私は大魔族としての権限をもって、ホワイトハウルに君達のことを協力者だと宣言しよう。彼は神族側の存在だ、更生を誓う存在には少しは寛大にもなるだろう。これは我が主。我が君。魔王陛下からの慈悲でもある、そう思ってくれていい』
さりげなく魔王様への信仰を勧める私。
偉いね?
こういう地道な布教活動こそが! 魔王様信仰を広げる第一歩となるのだ!
ででーん!
っと、人間モードだからドヤポーズは止めておこう。
あくまでも悠然と、静かに佇む私に――。
初老の紳士が言う。
「つまり、大魔帝ケトス様。あなたは我等に、世界を救うチャンスを与えて下さり、更に我等自身にも、慈悲を――滅びぬ道を用意してくださった。そういう事でよろしいのでしょうか」
初老紳士の瞳には魔力が浮かんでいた。
それは赤き魔力。
彼自身の魔力ではない、私の膨大な魔力に魅了されているのだ。
ま、これでも私はネコ魔獣で大神。
魔力や叡智を求める存在からは崇拝の対象にされやすい。
彼はもう、既に私の肉球の上に落ちたのだ。
『広く解釈するとそうなるかもしれないね。まあ、犠牲者達を救って匿っていた部分は評価に値すると、私はそう考えてもいる。その心も、能力も含めてね。捨ててしまうのは惜しいのさ。それに私はネコ魔獣、犬と違って集団ルールをそこまで重視しない。使えるモノは使う。使えないモノなら切り捨てる、ただそれだけの話だよ』
ネコ魔獣モードではないので、グルメによる懐柔も不能。
黒髪の中で見え隠れする私の赤き瞳に目をやって。
紳士は言った。
「メルティ・リターナーズ。我等は魔猫殿下と魔王陛下に忠誠を誓いましょう。部下たちが行っていた不正の件、後程詳しくお聞かせ願いたい。もし世界を救うための組織となるのなら、膿は早いうちに駆除するべきでありましょう」
それは魔族へ誓う忠誠の言葉。
この初老の紳士。メルティ・リターナーズの創設者と思われる彼の正体は知らないが――おそらくは高僧や徳の高い聖職者なのだろう。
彼の知らぬ場所で、彼の部下がどこまでの罪を犯しているかは正直さほど興味はない。
それは彼等の問題であり、物語。
私の介入するべき領域ではないのだ。
きっと、この初老の紳士はこの後、不正を行っていた部下たちを処分する。
どんな処分かも分からない。
けれどおそらく、命までは取らないのではないだろうか。
何故そう思うかって?
そりゃ、私がそういう現場を目にしたら、おそらくちょっとだけ嫌な気分になるからである。
密告したみたいで、ねえ?
ま、この幹部連中が私利私欲で人の命まで奪っているのなら、話はまた別なのだが。
私はあえて、そこまで干渉するつもりはない。
『君達の協力を歓迎しよう、メルティ・リターナーズ。ああ、そうそう。未来視によると今回の大規模イベントが終わった後、また何か事件が起こるらしい。人間である君達の協力が必要な場面もくるだろう、それまでに……君達がまともな組織に戻っている事を、私は願っているよ』
言って、私は姿を猫へと戻し。
くわぁぁぁぁっぁぁあぁぁ……、おもわず欠伸をしてしまったのである。
高級絨毯に着地して、バーリョバリョバリョ♪
おもいっきりバリバリバリ!
爪とぎをしてしまうのだが、これは人型モードから猫モードに戻った反動と思っていただきたい。
別に高級絨毯でニヒャァァァァ! 爪とぎする誘惑に負けたわけではない。
うん。
んー、外はいい天気だし……。
そうだ!
『さて、ネコ魔獣諸君。残りの宅配ピザ会議と宴は花見をしながらしようじゃないか。世界が滅んでしまうのなら、最後のお花見になるだろうからね』
本当に滅亡してしまった時のことも考える私、冴えてる~♪
「場所変更でありまするか?」
「我が主! 場所変更ならば、ついでに駅前でフライドチキンを買っていきましょうではありませんか!」
『お、いいねえ! ワンコもニワトリも呼んで、最後の花見を満喫しよう!』
ノリノリな私が肉球を鳴らすと――。
ぽん!
コミカルな音を一つだけ立てて、全てが去る。
会議室を占拠していた、群れ集うネコ魔獣と宅配グルメが消えていたのだ。
再生するメルティ・リターナーズ。
おそらく、彼らはこう思っただろう。
命拾いをした、と。
そう――今の戯れの時間の中でも、一歩選択を間違えていたら……。
まあ、それは言わぬが花かな?
◇
これでまた一つ、未来が変わった筈。
次の事件は何が起こるやら。
とりあえず思う事は――地球ってさ、脆いし……。
敵も多そうだし、狙われる理由……いっぱいあるよね。
どれが原因で滅ぶのかが分からないのって、まあ面倒くさいのだが。
グルメのためだから仕方がない。
今の内に、こうして目ぼしいグルメ情報を集めておくのも悪くないのだ。
本当に滅んでしまうなら、終わる前に回収したいしね!
ポカポカと暖かい陽気の中。
お花見をしながら私はモフ毛をもこもこ♪
遅れてやってきたワンコとにわとりと、穏やかな休日を過ごしたのであった。
(裏)幕間その1
異国風美女 (グレイス)の憂鬱 ~おわり~♪




