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鬼畜ダンジョンタワー攻略 ~極悪にゃんこの塔登り~その1



 野暮用も済ませてニャフフの、フ!

 麗しき大魔帝!

 素敵ニャンコでケトスな私は威風堂々、今日も行く!


 ビシ!

 なーんて、ポーズを取ってる場合じゃなかった!


『にゃにゃにゃにゃにゃ! にゃにゃにゃ――――ッ!?』


 黒きモフ毛を靡かせて。

 華麗なにゃんこボイスで唸りをあげるのは、この私。入るたびに形も罠も魔物も変化させる鬼畜極悪ダンジョン。

 新しく顕現したダンジョン塔に挑戦していたのである!


 逃げながら振り返り、遊びニャンコスキルを発動!


 駆ける私の頭上に、ニャンコ音楽隊の幻影が召喚され。

 ピーピー!

 ドンドン!

 笛を吹き、太鼓を叩き――セルフでわざと大きな音を立てたのには、もちろん意味がある。


 西洋ギリシャ神殿とコロッセウムを彷彿とさせるダンジョン内装。

 冷たい死の空気を背負いながら、私は肉球をザザザ!

 クイっと急ブレーキをかけて。

 ニヒィ!


 敵を引き付けているのだ!


『くはははははははは! 我こそがケトス! 大魔帝ケトス! 貴様らのその生意気な顔を……って! ぶにゃにゃ! 早い、早い! まだ詠唱終わってないんだってば!』


 普段ならば名乗り上げの詠唱だけでドゴドゴズドーン!

 迫りくるハイ・ソーサレス・リッチキングの群れなど、簡単に蹴散らせるのだが。

 今の私、レベル十五とかだからね!


 ネコ魔獣の俊敏力を生かし、サササササササ!

 ダッシュ! ダッシュのダッシュ!


 放たれる死霊魔術師王の魔弾。

 飛び交う業火を紙一重でかわし――!

 目当ての場所に着地!


『ぶぶぶぶ、ぶにゃはははははっははははははは! そーれ! ドッカーン!』


 ネズミ捕りにかかった獲物を見る王様ニャンコの顔で、ぽちっとな♪

 わざと極悪罠のスイッチを踏みこんだのである。


 カチン――ッ!


 どばどばだば~!

 猛毒と麻痺を含んだ呪いガスの仕掛けが地面から溢れ、周囲を圧迫。

 黒きモフ毛を靡かせる私を包み、蝕む。


 が――!

 私は種族補正ネコちゃんで状態異常が無効なのでセーフ! その代わりに、私の挑発魔術に連れられた魔物達が奇声を上げて、倒れ込む。

 多重の状態異常に陥っていたのだ。


 むろん。

 わざと巻き込む形で、極悪ダンジョンの極悪罠を発動させていたのである。


『ぶぶ、ぶにゃははははは! 愚かなり! 我が策略の前では、レベル差など無意味! 我が経験値となるがいいなのニャ!』


 紅き瞳を尖らせ。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ!

 超必殺!


『ネコ魔獣初期特技! 石投げにゃ!』


 蠢き苦しむ敵の群れに向かい――よいしょ、どっこいせ……。

 石を拾って、てい!


「あが、うが!」

「ぐぐ、うが!」


 レベル差があるので大したダメージは与えられないが。

 私はダンジョンの床を削り、石を掴んで。

 もう一回!


『とりゃ! せや! どっこいしょ!』


 ペーチペチペチ!

 一桁ダメージを与えまくって、罠の効果と共に魔物を一体一体、丁寧に撃破!

 まさに匠の技!


 敵の消失と共に。

 ニャニャニャ、にゃんにゃんにゃ~ん♪

 ファンファーレが鳴り響き、一気にレベルが上がっていく。


 ダンジョン低層であるにもかかわらず、敵は鬼畜。

 場所にふさわしくない高レベルモンスターを相手にしているので、その分、レベルも上がりやすいのである。


 そう!

 私は状態異常無効の特性を利用して、せこく!

 ただひたすらにせせこましく!

 レベリングを行っているのだ!


 極悪トラップがなければ、地道に攻撃を避けながら戦うしかないのだが。

 ま、ダンジョン罠を逆利用するのも迷宮攻略の基本だから仕方ないよね。


 たしかにこのダンジョンは鬼畜だが、ゲームとしての意味で鬼畜と分類される設定が多い。

 実際に迷宮が山ほどあるファンタジーな世界、異界での迷宮経験がある私達にとっては、わりと抜け道も発見しやすい。

 簡単なわけではないが、攻略の糸口も発見しやすかったりするのである。


 いま、ここにはいないが。

 既にダンジョン攻略ランカーの一人であるヒナタくんも、勇者としての扇動の力を存分に発動。

 魔物同士を戦い合わせて、最後に両者を背中からブスリ。

 せこーく序盤を進むらしいからね。


 ともあれ!

 敵を殲滅し、勝利のネコキック!


 ででーん♪

 なんちゃらリッチの群れを罠と石つぶての連打で蹴散らして、ドロップ品を回収する。


 ちなみにこのダンジョン、敵が落とすアイテムも基本的に渋い。

 鬼畜の名にふさわしいせいか――確率がかなり渋く設定されているのだ。


 まあそこはそれ。

 私、レベルが低くても幸運値だけは高いからね。

 この類まれなるラッキーで運命も改変。

 渋い確率であっても、それなりのアイテムを入手することが可能なのである。


 卑怯とか、チートとはいうなかれ。


 私の基本スペックはただの猫。

 本当に、普通におうちで飼われているニャンコに、毛が生えた程度のステータス値しかないのである。

 もっと高レベルにならないと、一発でも攻撃を喰らえば即死なのだ。


 その点、人間ならある程度は最初から戦える。

 基本スペックが段違い。

 魔力も筋力も文字通り桁が違う。

 その優位性を無視して、私だけがズルいと言われるのは心外なのである。


 状態異常耐性と豪運。

 二つの合わせ技と危険な綱渡り。そして何よりこの天才的なニャンコ頭脳で、なんとかやっているだけなのだ――!


 失敗も何度もするし、もきゅ~! っと、即座にやられて、ばたんきゅ~♪

 ダンジョン外に追い出されることもしばしば。


 そこを飽きない心と、好奇心!

 更に加えて執着心!

 何度も何度も繰り返す試行回数でそれをカバー!


 罠を悪用しての巨敵範囲狩り(ジャイアントキリング)

 厳密には違うが、一種のパワーレベリング状態を維持して、低層を安定させているのである!

 ビシ!

 てなわけで。


『くはははははははははは! レベリングじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


 敵の群れを発見したら挑発!

 罠まで大量に敵を引っ張って、わざとかかり――発動。

 遠くから石をペチ!

 石をペチ!


 そう、最初の階層はこうやって地道にコツコツ。

 ある程度の魔術を発動できる状態になるまでレベルをあげる――。

 そのためのルーチンワークを延々と、地味~に繰り返すのだ。


 あー!

 無双しないでこうやって一から成長していくのも、楽しいね!


 ◇


 あれからしばらく歩いていると。


『んにゃ?』


 脚に生えている数本の長ーい毛(センサー)と、顔に生えている数本の長ーい毛(センサー)がビビビ!

 敵の気配の流れを風で読んで。

 じぃぃぃぃぃぃ。


 敵が近くにいる。


 やる事は同じ――強敵を挑発で引き付けて連れ回し、罠に嵌め。

 チクチクチク。

 まあ、いつものパターンである。

 挑発の魔術って、本当に便利だよね。私、ちょっと人によっては太々しい生意気なネコに見えるらしく、挑発と相性がいいっぽいし。


 警戒しながら探索を続ける私は、大きなフロアの入り口に――顔だけを出して。

 にょき!

 中を確認。

 センサーにひっかかったのはこいつらか。


 いるのは……最高位悪魔グレーター・ハイ・デーモンの群れである。


 まあ現実の悪魔と違って、あくまでもゲームの存在。

 今は魔王陛下の護衛とお世話をしている悪魔執事サバスくんとは、系統の異なる悪魔たちだ。


 見た目も――いかにも人間が考えました、って感じの魔物要素の入ったデーモンである。

 ごっついサバトの黒ヤギ。

 彼らの数を把握した私は、戦闘態勢に移行。


 魔封じの粉を撒いて、よっし!

 挑発魔術を発動!


『あれー!? あれれー!? ま、まさか! 低級猫魔獣であるこの私すら倒せない、おまぬけ悪魔なんていないよねー!?』

「う、ぐが!」

『やーい! やーい! お尻ぺんぺん、悔しかったら我を捕まえてみるのなのニャ!』


 仲間を呼び、どんどんと増えていく悪魔を引き連れながら。

 私はダダダダダダダ!

 にゃんこの健脚がダンジョンの冷たい床をかけ、肉球がぷにっと硬い地面を跳ねる!


 罠の前まで猛ダッシュ!

 にひぃ!

 ふふんと罠を踏みこんで、発動!


『はーい、団体様ご案内~♪ にゃふふふふ、我の経験値としてやるのじゃ! ありがたく思うといいのである!』


 にょこっと二足歩行になり、腕を組んで――。

 くはははははははは!


 麻痺と毒と呪いガス。

 ついでに催眠傀儡人形の罠も、ぽーちぽちち!

 肉球でおもいっきり、何度も踏み込んでやったのだ!


 ブンブン、シャンシャンシャンシャン!

 罠の発動と共に、悪魔の団体様が状態異常の海に飲まれ。

 うごうご、ぐうぐぐぐぐと大混乱。


 その翼を、目を、心臓を――銀の矢が貫き弾く。

 狩人のように弓を構える私。

 かっこういいね?


『てい! ていてい! ネコちゃんクロスボウをくらえ!』


 合成錬金術で作り出した、遠距離攻撃武器でペーチペチペチ♪ しているのだ。

 矢の弾数が心もとないので、一旦停止。


 石を拾って、モフモフしっぽを左右にふーりふり!

 肉球に掴んだひも状の武器。

 遠心力をおもいっきり掛けたスリング石を、どりゃ!


『くはははははは! おまえたちなぞ、石で十分である!』

「ががが! うぐ……がが」


 何匹かが攻撃してきたところを、ひらっ!

 ひら! 回避! ひらひら!

 私、身体能力はレベル初期化で低くなってるけど、知識としての武術の極みが消えてるわけじゃないからね。

 ネコ魔獣の俊敏性と知識があれば、これくらい優雅に戦えるのだ!


 ま、まあ優雅に避けて罠を踏んで。

 敵を状態異常漬け。

 遠くから石を投げつけまくるって戦法だから……あまり、英雄譚向けの戦いではないかもしれない。


 ともあれ。

 華麗に避けて、回復アイテムの蜂蜜瓶から作り出した聖水入りの火炎瓶を投下!


『主よ――! ええーい、ちょっとダメージは下がるけど、祈りも詠唱も、念じるのも省略! ネコちゃんの悪魔祓いをくらえ!』


 神聖魔術でこんがりと悪魔を焼いて、最後に猫爪をじゃきん!

 シュパーン!


 影の中を渡って、一体、また一体とその首を刎ねる。

 ネコ魔獣の種族レベルが上がって、暗殺者としての側面が強化されだしているのだ。


 シュパン! シュパシュパシュパーン!

 一網打尽!

 ふ……っ、決まった!


 強敵たちの断末魔と、レベルアップ音を聞きながら。

 私はモフ耳と鼻腔をドヤっと膨らませる。


 卑怯な私もカッコウイイ!


 それにさあ!

 可愛い黒猫が――石を延々と投げ続けてる姿って、けっこう可愛いと思うんだよね!

 こうなんというか。

 肉球でクイっとする瞬間に、ネコのお手々もクイってなるからね!


 そこで急に影に入り込んで、相手の首をシュパーンとクリティカルヒット!


 いやあ、魔王様にもみせてあげたいな~!

 魔王様。

 今頃どうしてるかな?

 たぶん書類の判子押しで、だぁぁぁぁぁぁあってなっているだろう。


 魔王様。

 鬼畜ダンジョン要素を世界に蒔くのはダメッ! って私に怒ってたけど。

 お説教してごめんねー、反省できるケトスはイイ子だな~っていっぱい褒めてくれたし!


 なぜかヒナタくんもホワイトハウルも、いいのかこれで……?

 と、ジト目をしていたけれど。

 気にしない!


 そういや、ホワイトハウルと言えば。

 こっちに来てからのワンコは大忙し。

 この夢ゲーム世界の管理に尽力しているんだよね。

 ……。

 もしかして大いなる光が、ワンコを連れて一緒に暴れて、この世界の支配権を獲得した理由って……。


 魔狼に、主神としての仕事の疑似体験、ゲーム管理を通じて世界管理を体験させたかった……のかな。


 いや、まあ……。

 あの女神自体は、ヒナタくんの家で居候の鳩生活。


 テレビゲームに夢中になり白鳩モードで一日中、熱中。

 遊んで、遊んで――食っちゃ寝、食っちゃ寝してるけど。

 最近、分霊の鳩が妙にぷっくらしてきてるし。

 どうなんだろうね?


 前から思っていたんだけど。

 あの女神、基本は神聖で慈悲の心もあるし……悪い神ではないんだけど。

 私生活がさあ。

 けっこうどころか、かなりダメな女神なんじゃ……。


 ……。

 あれが主神て、よく考えたらウチの世界凄いな。


 ともあれ!

 こっちとしては、問題なし。

 ワンコがだいぶ管理を担ってくれるようになったから、楽になったし! こうやって遊べているからいいんだけどね!


 さて、魔王様にお土産話を作るためにも前に進もう!

 私は全力で遊ぶのだ。


 名乗り上げの詠唱で魔術を発動できるようになると、稼ぎもさらに加速するからね。

 とりあえず!

 もっと便利な、ネコちゃん錬金術の極みを発動可能になるレベルまで、チクチク狩り続行なのである!


 ◇


 ダンジョン低層を無双し、中層に上がってきた私は魔導地図を広げ。

 うなーん?

 まだできたばかりのダンジョンタワーなのに、先客がいるのである。


 青い反応なので、ダンジョン外からやってきた探索者。

 ようするに、ご同業の人間である。


 私は戦い方がかなり、せこ……特殊なので、基本ソロで塔を登っているから。

 んー。

 狩り場や魔物の取り合いで揉めても困るんだよね。


 まあ中層まで到達できているという事は、それなりに戦い慣れしている存在ではあると思うのだが。

 ……。

 好奇心もあるし、見に行こう!


 とってとって♪

 既に私のレベルはかなり上がっている。

 低層で稼ぎまくったからね。


 経験値入手率アップの薬品と食事、それに猫魔獣のレベルアップに必要な経験値の低さ。

 その合わせ技で上層ぐらいまでは、無双できるほどになっていたのだ。


『この辺に反応があった筈なんだけど……あれ? どこだろ』


 きょろきょろしながらも、私のレベルは上がっていく。


 周囲に響くのは魔物の断末魔。

 攻撃するのは私の魔力閃光。

 自動殺戮魔導球を発動可能になっているので、周囲の雑魚ぐらいは一掃できるのだ。


 かわいい私の素敵な鼻が――。

 ぴくんと揺れる。


 濃い血の香りを感じ取ったのである。

 人間の血ではない。

 魔物の血だ。


 歩いてその巨大フロアに肉球を踏み込むと――。

 そこには大森林が広がっていた。


 中層のここからは森林フィールドなのだろう。

 あるのは死体の山。

 狩ったのは――どうやら例の青い反応。人間のご同業のようだ。


 まだ若い男の声が、響く。


「誰だ――ッ!?」


 あれ?

 この声は――。


 私は声に従い、ふつうに、とってとってとって。

 若い男はうるわしいニャンコがふつうに、歩いてくるとは思っていないのだろう。

 上の方を警戒するように、キョロキョロしている。


「姿を現さないのなら、こちらにも考えが――っ」

『おーい! こっちだよ、こっち! 私はここさ』


 親切に声をかけてやったのには、訳がある。

 知り合いだったのだ。


『やあ、久しぶり! 君は――立花グレイスくんの弟君だよね。お姉さんが習得した治療魔術で回復、もう目を覚ましているとは聞いていたけど、まさかこんな鬼畜ダンジョンにいるなんて。どうしたんだい?』

「あんたは……ケトスさんか――どうしてここに」


 それはこっちのセリフなんだよね。


 立花弟くんはまだ、病院で療養中の筈なのだが。

 どーみても、これ。

 抜け出してきてるよね……。


 やっぱり、お姉さんとまだ上手くいってないのかな?

 まあ、信じてくれと縋ったのに家族に信じて貰えず――傷心の中で転移者狩りに遭い……。

 色々とあったわけだしね。


 人間不信、というやつだろう。

 まあ私は猫なので、セーフだろうが。


 はてさて。

 どうしたもんか――。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 勇者の戦い方が悪役(中ボス)にしか見えないところ。 [気になる点] ネコちゃん補正普通につよいのでは? [一言] 弟くんか猫中毒者になる未来が見えた。(幻覚)
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