かつて信じられなかったあの日 ~ニャンコ、やらかす~前編
転移者達や、異世界転移から戻ってきた人間を保護する組織。
メルティ・リターナーズ。
目の前で愛するスマホをぐっと握っているのが、その幹部である残念美人な立花グレイスさん。
かなりのソシャゲ中毒者らしいのだが。
彼女から名刺を受け取った大魔帝ケトスな私は――ぶにゃん。
天才ニャンコな頭の中には、数々の魔術式が浮かび始めていた。
シリアスな話をするので、肉球をふっと振り。
とりゃ!
目の前のスーツ姿の異国美女さんの顔から、ゲームキャラに興奮し垂らした鼻血の跡を――こっそりと消し去る。
さて、これで真面目な話ができるかな。
私の横に座る勇者のヒナタくんが、グッジョブサインを送ってきたりもしたが。
では――始めよう。
『保護ってことは――転移者や帰還者は、危険な状態におかれている。察するにだ――何者かによって拘束、誘拐される恐れがある。そういうことかい?』
「ええ……実際、既に何人かは……我らが保護する前に」
漏らす息は深刻そうだ。
赤毛のグレイスさんはぎゅっと拳を握る。
『その反応からすると――まあ、拘束された者は、あまり良い環境におかれてはいないということだろうね。転移者は、幻想や空想であるはずの魔術やスキルを実際に扱える存在。その用途と可能性は無限にある』
「ちょっとケトスっち……それって」
女子高生には少し重い話となるが。
まあしないわけにはいかない。
『ああ――ヒナタくん、人間の昏い部分も知っている君なら、なんとなく分かってしまうか。たぶんだけどね。転移者という存在そのものが研究材料としても戦力としても、喉から手が出るほど欲しい人材となる……。スイッチを押さなくても詠唱で兵器となるんだ、やっぱり調べて見たくなるのが人間という生き物さ。あまり気分の良い話じゃないけどね』
意味が少し変わってしまうが、人の形をしたオーバーテクノロジー。
そんな黒い言葉が浮かんでくる。
「よく、そこまでお分かりになりますね」
『私はこれでも本物の大魔族でね――人間の醜い部分をよく知っているのさ。まあ、良い所も知っているけれど。どちらも人間だ。長所も短所も、認めないわけにはいかないだろう――それが人間の持つ性質、種族習性だから仕方ない』
女性二人の前だから、私は心の中でだけ考える。
人間とは、まあ……。
時に残酷な事すらできてしまう生き物だ。
欲望も際限ない
中には転移帰還者達を捕まえて、人体実験を行うモノもいるだろう。
あんまり考えたくないんだけど……さ。
この世界。
地球に戻ってきてから憎悪の魔性たる私の力は増している、それが証拠なんだよね。
憎悪で溢れているのである。
それも異常な程に。
もう、モコモコモコモコモコ! 滾る魔力で猫毛が膨らみまくっちゃうからね。
シリアスな顔になりながらも、私は考える。
まあ、そんな私も当然かわいいのだが……。
将来的な話。たとえば五年後――異世界からの転移帰還者と、元から暮らす人間達との戦争が始まる……。
なんてこともありえる。
結構深刻そうな問題になりつつあると知っているのは――。
おそらく私だけである。
思考の海に揺蕩う私が、しっぽを揺らす前――。
グレイスさんが息を漏らす。
聖剣使いの女子高生で、異世界からの帰還者であるヒナタくんに目をやり。
「帰還者、いわゆるリターナーたちの安全を最優先で確保したい。わたしたちがヒナタさんとの接触を図ったのも、それが理由だったのです。なるべく早く保護するか、危険があると説明したかったわけですね」
「それならそうと最初から言ってくれればよかったのに」
転移帰還者であることを隠す必要がないからだろう。
私の横でポテチを顕現させたヒナタくんが、口元を青ノリで汚しながら返答していた。
困った笑顔でグレイスさんは赤毛を揺らす。
「申し訳ありません。ただ、あなたがたが転移者を拘束、誘拐している犯人である可能性もあったので――」
『なるほど。それで試す意味でも襲い掛かってきた、というわけかい』
「どういうことよ?」
魔王軍特別最高幹部の顔で、私は猫口をうにゃうにゃ。
『グレイスさん側の立場になって考えてごらんよ。相手は敵か味方か、狂暴かまともか。話はできるのか、狂乱系の特技でいきなり暴れたりしないのか。不安は山ほどあるだろう? なにしろどこの異世界からやってきたのか、彼等にはわかりようがないからね。力尽くで保護できるのなら話は早いのさ。保護した後に事情を説明して詫びればいいんだからね』
「そりゃまあ、そうねえ」
モグモグと呑気な顔をしている所を悪いが。
暗い話を淡々と続けた。
『逆に、今回の私達のように相手が強者だった場合。襲い掛かる側である自分たちを殺さずに事情を確かめてくるのなら、とりあえずは話の出来るタイプだと判断できる。殺されてしまった場合は少なくとも日本の法律を順守する気のない悪人か、常識を既に失ってしまった者となるからね。おそらく――グレイスくん。君が死んだら、他の支部やら本部やらで待機しているもっと強力な組織員が次の動きをするんじゃないかな』
「ご推察の通りです。少し驚きました――今のは心を読んだ、わけではなさそうなのに」
ポテチをのんびり食べていたヒナタくんの手が止まる。
気付いたのだろう。
そう――可哀そうだが、ここにいるグレイスさんたちはある意味で捨て駒なのだ。
そしておそらく、彼女自身もそれを理解している。
『あの男の味方かと私に質問していたけど、誘拐犯はそいつなのかい?』
「それが、我等にも分からないのです」
資料を私に見せてくれながら彼女は続ける。
「ただ、拉致されそうになった方からの証言を集めると、必ず――黒髪の男の証言が出るものですから。我等の機関では深く関係していると判断しているのです。そもそもな話、我等の機関が本気になって探し回っても見つからない時点で、黒ではないか……わたし個人の考えではありますが、そう思ってしまうのです」
『その男についての情報は、どれくらい掴めているんだい』
返事の代わりだろう。
悔しそうに唇をぎゅっとし、彼女はかぶりを振る。
ほとんど掴めていないという事である。
実情は捨て駒の一つ。犯人の目星もつかない。日々、異世界からの帰還者が拉致されて……何をされているかも分からない。
それが自分の責任にもなるのだ。
そりゃ、まあ……ゲームにどっぷり浸りたくもなるか。
それでもグレイスさんは決意した様子で、私に言う。
「手を貸していただけませんか?」
まあ、こうなるよね。
なんだかんだで――私とヒナタくん、けっこう善良そうな相手に見えるだろうし。
『実は私も――この世界を調査しに帰ってきていてね。無関係とは思えないし……協力してもいいんだけどね。けれどもだ、君達の組織に協力する必要は正直あまりない。はっきりと言って申し訳ないが、君達では戦力不足だ。手を貸すとなると、何かを対価に契約を交わすという事になる。まあ代価は後で決めてもいいけど――先に依頼内容を聞かせて貰えるかな?』
この辺を有耶無耶にはしたくない。
それが相手のためでもあるからだ。
「依頼内容は、帰還者達を誘拐している何者かの拘束、または抹殺。これは既に政府の許可も下りています、正規の手段ではないですけどね……。犯人を殺してしまったとしても、罪には問われません」
条件付きのマーダーライセンス。
殺人許可証、か。
『いいよ、それで依頼報酬はなにかな?』
「わたしが出せるものなら、なんでも――それがたとえ命でも、魂でも構いません」
そっとスマホを隠している所が、微妙にギャグっぽいのだが。
彼女にとって、命よりもセイヤくんとやらが大切だという事だろう。
……。
提示された報酬に、私は口を開く。
『いや……、君の命を貰ったとしても、そんなに嬉しくないんだけど。命まで犠牲にできるって、何か訳ありなのかい? 私はこれでも紳士なネコを自称していてね、正直に話してくれる理由次第では――いいよ、無条件で引き受けようじゃないか』
ヒナタくんがお人好しねえ、と苦言を呈しているが――その顔は、まんざらでもなさそうだ。
グレイスさんは既に魔導契約下にある。
嘘はつけない。
少し俯いて、拍子に落ちた前髪を指で掬い――耳の後ろに流し。
彼女は言った。
彼女の事情を語り始めたのだ。
◇
漫画喫茶にも似た事務所。
異世界からの帰還者達を支援し保護する組織、その幹部の女性――。
立花グレイスさんは淡々と語り始めた。
机に乗せた拳をぎゅっと握り。
凛とした声が空間に響き始める。
「わたしには父の違う弟がいました。わたしとは違って、日本人の母に似たので……ちょっとかわいい感じの子だったのですが。十五歳になった頃には複雑な家庭環境もありちょっとグレてしまって……ある日、何処かに消えてしまったんです。わたしはまさか家出する程とは思っていなかったのですが……そういうこともあるかなって、どこかで安心していました。まだわたしも若かったですから、父親の違う弟にあまり優しくしてあげられなくて……。けれど、弟は家出なんてしていなかった。そう。お察しの通りかは分かりませんが、その時の弟は、異世界へ転移……させられていたのです」
過去を思い出すように、ぎゅっと唇を噛んで。
漏れる息と共に彼女の声が続く。
「二年後。弟は成長して戻ってきました。信じて貰えるかどうかわからないけれど、異世界から戻ってきたんだって。父にも母にも訴えていたのですが――当時、あの子はちょっと不良っぽい感じだったので……。弟も、そんな反抗期じゃなかったら信じて貰えたんでしょうが……素行が良いとは言えませんでしたから。信じては貰えず。どうせ遊んでいたんだろう。どこかの女と仲良くして、怠惰な生活を送っていたんだろうって……怒鳴りつけて、家から追い出してしまったんです。わたしもあの時はまだ、そんな異世界なんてファンタジー……現実で起こるとは思っていませんでしたから。信じてあげられなかった――そう、あの日のわたしは泣きそうな顔で姉ちゃんは信じてくれるよなって言ってくれた、あの子の事を……見捨てました」
駄目なお姉ちゃんでしょう、と。
彼女は苦笑に言葉を乗せて、続けた。
「もう弟の顔さえも曖昧になったくらい、八年間、だったと思います。死にかけの弟が……河原で発見され、病院に搬送されたと聞かされた時にはもう。既に手遅れでした。生きてはいたのですが……」
生きてはいた――つまり、生きているだけ。
例のあの男に捕まり、実験体にされていた。
ということだろう。
あくまでも感情は込めずに私は言う。
『弟さんはいま、どうしているんだい』
「ずっと意識を失ったまま、眠り続けていますよ。目が覚めない程に酷い事をされて……意識を取り戻せない状態の筈なのに、本当に、幸せそうに……眠り続けているんです。きっと、誰も信じてくれなかった現実よりも、夢の中の方が、あの子にとっては幸せ……なんでしょうね」
吐き捨てる言葉は、自嘲にも似ている。
実際、過去の自分を嘆き嘲っているのだろう。
「その時、ようやく……弟が言っていたことは全部真実だったんだって知って――わたしは真相を知るためにこの組織に入りました。病院を訪ねてきた刑事さんじゃない、ちょっと変わった人がいたので問い詰めたんです。それから魔術の存在を知って……色々な事を学んで。せめて弟のような被害者が増えないようにと、頑張っていたのですが。結局、犠牲者はまだ増え続けています。その悔しさを紛らわせようとお酒や男に溺れた日々もあったんですが……その時に、彼に……そう、車崎セイヤくんに出逢ったんです……ッ」
あれ?
なんか悲しい過去的なナカに、異物。
登場してない?
「彼ね、ちょっと弟に似ているの。わたしと違って母さん似で、髪の色も黒くて同じだし。微笑む仕草も、ボイスナンバー十五の、生き別れになってしまった実の姉と再会するシーンの『姉さんは悪くないさ』っていう名セリフがあるんです、その時の声もちょっと……弟に似ていて。はは……バカでしょ、わたし……。分かってはいる、本当に分かってはいるんですけど。弟に似たセイヤくんに悪くないって言われると、すこしだけ、心が落ち着くんです――」
ポンとスマホの液晶を叩き、ニャンココスプレ英雄モードなセイヤ君を見て。
グレイスさんはものすっごい、悲しい笑顔を見せましたとさ。
……。
ちなみに。
繰り返しになるが、彼女は魔導契約に縛られ真実しか口にできない。
つまり。
全部、事実なのだ。
うん。
重い……ものすっごい重い。
ゲームにどっぷりつかって逃げてしまうには、何か理由があったとは思っていたのだが。
弟を信じてあげられず、そんな事態になってしまった後悔や自己嫌悪を偶然、出会ったそのゲームで紛らわせている間に、沼に落ちた……。
ということか。
ええ……。
理由を知っちゃうと私……すんごい悪い猫だったみたいじゃん。
そんな大切なデータを消してやるぞ~、ぶにゃはははは!
大笑いしながら、脅迫してたわけだし。
まずい、非情にまずい!
彼女の部下達もその真実を知らなかったのだろう。
かなりびっしょり汗を流して。
やっべ、散々馬鹿にしちまってたよって顔で目線を泳がせている。
『分かったよ、君に協力しよう。サービスだ。報酬は初回価格でタダってことにしてあげるよ。君も、そして弟くんもセットで助けてあげようじゃないか』
「いいんですか……?」
『ああ、ただし――条件がある。私は今から少し特殊な大きな魔術を使う。その責任を君が負ってくれるならね。なにしろ私はネコだ。責任を取ろうにも、世間が認めてはくれないだろう』
承諾するように彼女は頷き、そのまま頭を下げる。
「分かりました、責任は全て……わたしが取ります」
よーし!
言質をとった!
つまり。
なにをやらかしても、私の責任ではない!
生み出した新魔術を試したくて、私は、うーずうずうず♪
モコモコな尻尾の先まで、ふぁっさ~♪
ネコのおめめをギンギラギン!
ネコ鼻も、ふん……ふん!
計画を始動し始める私のワクワクと邪気を感じ取ったのだろう。
黙って聞いていたヒナタくんが、ズズズと鼻を啜りながら――立ち上がり。
気付かれないフリをして魔術で涙とその痕跡を消し去り――言う。
「ちょっとケトスっち、何をするつもりなの? なんかあたしの勇者の勘が、止めるべきじゃないかって警告してるんですけど」
『大丈夫。弟さんが元に戻っても不自然じゃない状況と、そのあの男とやらの妨害。そして、世界の崩壊を防ぐために世界に変化を与える。異なる条件をすべて満たす魔術を思いついてね――それを実践するだけだよ』
魔術師でもある彼女。
ヒナタ君は訝しむように眉間をぎゅっとする。
「弟さんの方は……まあ、あたしの回復魔術やケトスっちの奇跡でなんとかなるでしょうけど、そのあの男の方はどうするつもりなのよ。ぜーんぜん、まーったく情報がないわけでしょ? 黒髪で男だなんて、この日本じゃ山ほどいるんだから。おそらくその男もなんらかの能力者なんでしょうけど……力を隠されたら見つけられっこないじゃない」
『大丈夫。そこも既に対応済みさ。ようは――転移者や帰還者が特殊な能力を持っていることが、拉致される原因なんだろう? 誰が転移者だか分からない状況を作り出す手段を取る。それだけの話だろう? だったら、簡単じゃないか――世界の法則を書き換えればいい』
ニヒィっとネコの丸口を膨らませて。
ブワァァァァァァァァァ!
極大魔法陣を足元に展開、私は大魔帝セットを顕現させ――。
ずじゃっと装備!
『我はケトス! 大魔帝ケトス! 世界を作り替える者なり!』
魔王様ならきっと。
これが単純で美しい答えと魔術式だ――そう言ってくれるだろう。
「ちょ! ケトスっち、待ちなさいあんた! こんな超特大規模の魔法陣を使って、マジで何をやらかすつもりなのよ! これ、絶対に止めるべきだって! 天啓まで下りてきてるんですけどー!?」
『やらかすって、人聞きの悪い事を言わないでおくれよ。私はね、ただ目の前で泣いている残念美人さんを救いたい――それだけだよ!』
言って、私は世界創生規模の魔術を発動させた。
◇
世界の変革を確認した私は、肉球の表面に浮かんだ球の汗をシュっと切り。
格好よく杖を亜空間にしまう。
窓の外を見てみると――おお!
ちゃんと月が二つある!
グレイスさんがプレイしていたソシャゲの設定どおりである!
『いやあ、大成功だね。さすが私! 自分の才能が末恐ろしい!』
「いや、本当になにをしたのよ……? なんか、日本全体をダンジョン化させた時と似た結界、えーと、《暗転影世界》だっけ? アレと類似した波動が恒久的に発生しているみたいだけど」
さすが魔王様の娘。
状況把握がはやい!
『おお、ほとんど正解だよ! 日本をソシャゲダンジョン化させたんだ。たぶん、みんなもう魔術やスキルを習得できる存在になっている筈さ。今はネットも発展してるし、たぶん一時間もしたら大混乱が起きるから、すぐに分かるよ。で――明日になったら魔物とかもポップするし、宝箱とかガチャとかステータス画面とかも、ではじめるんじゃないかな。全部、混ぜまくったし』
言っている意味が分からないのだろう。
部屋にいる全員が、ぽかーん。
「は? いやいやいやいやいや。あんた……いまなんて?」
『だーかーらー! 日本をゲームダンジョン化させたんだって!』
ふ……っ。
あまりにも素晴らしい魔術だからか、皆は声を失っていた!
『帰還者が特殊な能力を持ってるから、拉致されてなんかされちゃうわけだよね? だったら特殊じゃなくなっちゃえばいいのさ。そこから賢い私が導き出した答えが、これ! 日本全部を私のダンジョン領域とし、私を迷宮の領域ボスとして登録設定。次にダンジョン領域の私を主神として再設定――ダンジョン領域の変更の権能を使用し日本の魔術ルールを変更。あとは君とグレイスくんのスマホから適当に二百個ぐらいのソシャゲのデータをごちゃまぜにして取り出して、合成。現実化させて実際にある事象や法則、現象としてダンジョン領域日本に登録。世界の法則から独立させて書き換えたんだ』
「いや、意味わかんないんですけど」
いつものように魔術式を展開してみせてやりながら。
私は自慢げに解説を続ける。
『簡単に言っちゃえば、日本のソシャゲ化だね。たぶん明日の朝には、チュートリアルとログインボーナスっていうのが降ってくるんじゃないかな。ベースはグレイスさんのやっていたゲームだけど、そんなにのめり込んでいたんだ、きっと楽しいゲームなんだよね? 本格的なゲーム化がはじまり、神の声、すなわち私の設定したゲーム解説が自動的に流れるようになるはずさ。みーんなが帰還者と似たような能力を持つこととなる! 今頃誘拐犯たちも大慌てしているだろうねえ、誰がどんな攻撃で反撃してくるかわからない世の中になるわけだし。ぶにゃはははははは!』
「えーと、なに……? 約一億人を巻き込んで、世界を乗っ取ったって事!?」
驚愕の声を賞賛と受け取り。
ドヤァァァァッァァァ!
『そういうこと。明日の朝から、世界を救うための大魔帝ケトス製のゲームが始まるのさ! プレイヤーは国民全員だニャ! 当然、課金システムは私へグルメを貢ぐことさ! だって今の私、このダンジョン領域日本の主神だからね!』
胸を張って威張る私。
かわいいね?
実はちゃんと元に戻る仕掛けも、事件解決後に皆の記憶を消去。
なかったことにできる仕掛けも用意してあるのだが。
あっれ?
なんか、ヒナタくんがお説教五秒前の魔王様みたいな顔をして、ゴゴゴゴゴゴゴ!
ってしてる。
はて? なんだろう?




