王国奪還、その2 ~走馬燈~【SIDE:敵拠点、第一王女ルビィ】
【SIDE:敵拠点、第一王女ルビィ】
極光色――いわゆるオーロラ色の極大魔法陣が観測された日。
世界を包んだ未知の魔力波動。
戦争状態にあるディガンマ大陸は騒然としていた。
突然の砦制圧による難民の対処に追われる――聖帝国イプシロン。
守りを固めた結果、まだ大魔王の手を免れていた――小国家群。
占拠された様々な国家の英雄。
生き永らえ、密かに反撃の機会を窺っていた強者たち。
皆がその日、西の空を見上げた。
原因は不明。
効果も不明――全ての計測器が壊れ、誰ひとり状況を確認することができなかったのだ。
そんな騒動の翌日。
空を見上げ、極大規模の大魔術を感知していたのは人間達の国だけではない。
大魔王ケトスの配下として生きる者達とて、あの現象を目撃していたのである。
その中の一人。
デルトライア方面を担当していた女は、空間をズラした場所にある隠れ砦で息を吐いていた。
◇
魔力ランプの灯りの中。
オレンジ色の照明で浮かび上がる景色は――まるで図書館。
そこにいたのは、大魔王軍幹部の女。
悪党を従える大魔王ケトス、彼の者に仕える指揮官。
邪悪なる魔導書の積まれた机を前にし、佇む、魔術師姿の女性である。
彼女の肩書はデルトライア第一王女。
西部制圧を担当している現地人、第一王女のルビィ=ヴィ=デルトライアは長く赤い髪を翻し、ぎしりと深く椅子に腰かけた。
「確認不可能な規模の大魔術? おそらくブラフでしょ……くだらないっ。そんなことよりも――っ、はやく、早く何とかしないと!」
攻めの要となっていた砦を占拠、制圧されてたった数日。
戦況は変わっていた。
あの砦をなんとしてでも取り戻せと上からの命令を受け、その頭を悩ませていたのだ。
卓越した魔術師である王女ルビィは二十七歳。
次期女王の座に君臨することも夢ではなかった、才女である。
邪魔者は消した。
だから、これからも全部上手く行く。
王女ルビィはそう信じ切っていた。
ふとした瞬間に、昔はあれほど大好きだった老いた父の戯言が脳裏をよぎる。
よぼよぼな声で、細くなった腕を伸ばし。
あの老人は言ったのだ。
「なにが年功序列よ! なにがなにがなにが……っ、あたしのどこがアレらに劣っているというの!? ジジイには、あの死に掛けの老いぼれには、現実ってもんが見えていないのよ!」
言葉を思い出し、ガンと机を蹴り上げて――王女ルビィは歯を剥き出しに唸った。
王権争いを憂いた父王が下した決断は――。
年功序列の通りに長男が次代の王となるべし。
これ以上醜い罵りあい、骨肉の争いを続けるのは――得策ではない。
民の信頼を失う。
そう、宣言したのである。
実際。
三女のシアン、シャーネス姫を王宮から追放した事をきっかけに、国民は冷めた瞳で王族を眺めるようになった。
あれほどのイイ子を捨てるとは、この国は駄目じゃな。
魔術はなくとも、槍の天才――あの子でいいじゃないか。
なぜ、王族達はくだらない慣習に従って魔術の才にこだわる。
そんな。
不敬も覚悟したうえでの陰口は、王宮に仕える使用人の口からも漏れていた。
シアンを追って王宮を去ったものも、多かった。
明らかに民たちの空気が変わっていたのだ。
だからこそ、他の野心もつ王族も老王の決断に従った。
まだ間に合う。
まだ民たちの信頼を取り戻すことができる。
あれほど三女を嫌っていた兄たちも、既に心を動かされていた。
長男の騎士として、シアンを王宮に戻そうと言い出す弟王子までいた。
だから。
王女ルビィは決断したのだ。
「そう、だからいけないのよ……あたしは悪くなくってよ……っ、国民だって、女王になるあたしのために犠牲になったっていいでしょう? どうせ、ただの平民なのよ。代わりに大魔王様はあんなに強力な異世界人を数百人も呼んだのだから。デルトライアはもっと発展できる。いえ、してみせる! あたしは、間違ってなど、いない!」
獣のように吠えるその顔に、光はない。
既に、曇っていた。
その手を、闇に染めてしまった。
北部に現れた大魔王を名乗る存在と、手を組んでしまったのである。
全ては女王となるため。
なのに。
浮かんでくるのは生贄にしてしまった家族。
王族の兄妹たちの顔。
姉さま――。
そう呼んで、いつまでも足元をウロチョロしていた三女シャーネスの顔が、浮かぶ。
「冗談じゃないわ……っ、あいつは王権を捨てたのよ! それでいいじゃない! 馬鹿馬鹿しい!」
机を叩き、震える顔の前で手を握る。
大丈夫。
大丈夫。
大丈夫。
兄妹たちも全員、生贄にした。煩い民たちももういない。
誰も文句を言わなくなった。
転移者たちを使って、このデルトライア王国を立派に導いてみせる。
これでいい。
これでいい。
滴る汗を拭って――王女ルビィは自分に言い聞かせる。
これでいい筈なのに。
彼女の胸はぽっかりと穴が開いたように、冷えていた。
隙間風が、ふとした瞬間に入り込んでくる。
もしかしたら。
取り返しのつかないことを、してしまったのではないだろうか。
そんな漠然とした不安が襲う。
足元が、昏く染まってみえるのだ。
事実。
今も、まるで獣に睨まれているかのような感覚が、足元から漂っている。
影には誰もいないのに。
「けれど、もう――引き返せないのよルビィ。あたしは第一王女ルビィ。いいえ、もう他の王族はいないのだから、あたしが女王。そう、あたしが一番なんだから」
ブツブツと呟くその顔が、ぎしりと歪む。
あの闇に従った。
もう、後戻りはできないのだ。
だから。
なんとしてでも、あの砦を取り返し、大魔王ケトスの信頼を得なくてはならない。
「し、失礼します! ルビィ陛下、緊急事態です!」
ダンと、扉が開かれた。
心も揺れたが――自分は人間がいなくなったあのデルトライアの唯一残った王族なのだ。
そう、言い聞かせルビィはすっと立ち上がる。
「騒々しいぞ――」
「も、申し訳ありません……っ、しかし緊急事態なのでございます!」
入室してきたのは――髪を後ろに撫でつけた長身痩躯の男。
直属の部下である執事だ。
その後ろには王女を守る聖騎士たちが並んでいる。
なぜか彼等は慌てている様子だった。
間違いなく悪い話だ。
――王女ルビィは息を吸う。
「どうしたというのだ――そなたがそのような慌てよう。何事か!」
汗で濡れたモノクルを光らせ、執事の男が声を上げる。
「報告であります! 転移門が陥落しました!」
「なんだ、そのようなことか――」
既知の情報だと知り、王女の胸が僅かに緩む。
執事は外に出ていて知らなかったのだろう。
だからこそ、今、その砦の転移門を取り返す算段を立てているのだから。
「へ、陛下?」
「ええーい、繰り返さずとも分かっておる! 監獄砦の一つが落とされたのだろう! 報告は既に二、三日前に届いておっただろう! いちいち喚きたてるな!」
爪を噛んで、王女ルビィはぐぬぬと息を呑む。
だから、転移能力を有している駒を使った。
砦を取り戻すべく尖兵を派遣したのだ。
異世界から呼ばれた強力な悪人だという話である――少なくとも敵の正体を突き止めてくれるに違いない。
策略を巡らせるルビィ王女だったが。
部下たちは顔を見合わせる。
「い、いえ――砦の件ではなく……今度の報告はデルトライア王国に関してでありまして」
「なに! では王国の転移門のことであると!? この短期間で進軍されているというのか――っ。そのようなバカげたことは、ありえ……」
いや。
ありえない……とは言い切れない。
実際、難攻不落だった監獄砦が落とされている。
いったい、だれが。
……。
ナニカとんでもない存在。
敵に回してはならない異形なる者が顕現した、そんな噂も流されていたが。
だが、まだ間にあう。
デルトライア王国に設置してある転移門の一つが、落とされただけに過ぎない。
まだ他にも門はある。
バッと手を翳し、顔をきつく尖らせ王女は宣言した。
「すぐに軍を回せ。デルトライアまで奪還されたとなっては大魔王様に顔向けができん。なんとしてでもデルトライアを死守せよ。これは命令だ!」
王女の言葉は勇ましかったが、むなしく沈黙で返される。
執事が言いにくそうに、床に視線を落としたまま前髪を垂らす。
「も、申し上げにくいのですが……その」
「なんだ、はっきりと申せ!」
「既にデルトライア王国全域が奪還されたとのことです、奪われた転移門は一つではなく、全て。配置されていた異世界人共も全滅……と」
何を言っている。
ありえない話に思わず怒声が飛んでいた。
「バカなことを申すでない!」
まともに顔色を変えて、王女は続ける。
「ありえぬ、ありえぬ、ありえぬ――! 素行は最悪であっても、あの者達の強さは本物であった。全滅などあるはずがないではないか!」
「しかし、報告は確かなようでして! 通信も途絶えたままに……! 転移門の方も、こちらからは起動せず――報告の信ぴょう性は極めて高いかと!」
王女は赤い髪を揺らし考える。
通信手段だけを断ち、占拠したという偽の情報を流す。
よくある手だ。
「周囲に散らしている異界人らを王都へ進ませよ! 無駄に豪華な馳走を喰わせているのだ、ちゃんと働いてもらうまでの話よ! いま、すぐに、やつらに声を掛けるのだ!」
「で、ですから――! 話をちゃんと聞いてください! 一部ではないのです! 王国全域が……全てが、既に落ちているのです! 目撃者の話では、転移者たちは皆、結晶体になって闇の霧の中に回収されていった――と」
王女は息を呑んだ。
魔術師としての勘が言っている――生命を魔道具として変換したのではないかと。
いやありえない。
「なにを意味の分からぬことを! はやく、あのただ飯喰らいどもをお呼びなさい!」
「だから――奪還されたと、全て消えてしまったと報告しているではありませんか!」
従者の言葉に嘘はない。
いつも凛として、冷静な執事が声を震わせる程の事態ということだ。
そう察した王女は唇を震わせ、わなわなと肩も震わせる。
王女は考える。
奪還されたのは王国の一部分ではなく。
領域、全て。
手駒にしていた転移者たちは、全てクリスタル化された?
その意味を察した王女ルビィは、どさりと椅子に身を落とす。
背中が、汗でじわりと濡れていた。
大魔王ケトスから預かった戦力を、全て、死なせてしまった――?
わなわなと顔を震わせ。
手で覆い――こぶしを握る。
「そんな、バカな……ありえぬ。デルトライアが落ちたと申すのか」
もはやついでとばかりに、従者が報告を告げる。
「それだけではありません。生贄として使われた民も、王子たちも皆――蘇っているとの報告が……」
民たちが蘇った。
その言葉を耳にした王女の瞳が、波のように揺らぐ。
「な……なんじゃと! 貴様、嘘ならば許さぬぞ!」
「し、しかし……そのような報告が上がっている事は確かでして――さきほど偵察に行かせた使い魔の映像が届きましたが、やはり……転移者たちが消えた代わりに――生贄にされた民のほとんどが、生き返っていたとしか思えないほど、賑わいが……あったと」
言葉を失う王女は、ぎゅっとローブを握る。
もし、兄王子たちが蘇ったとしたら。
全部、知られている。
大魔王の手下となり、王国陥落のために裏で動いていたことも知られている。
病に伏せる父王の耳にも入っている事だろう。
嘘か本当か。幻術か。
判断ができない。
使い魔の情報を直接みるしかない。
「使い魔はどうした!?」
「そ、それが――っ、うにゃ~っと鳴く黒い猫のような魔獣に捕まって……、そこで映像が――」
爪を噛んで、王女は考える。
隠密行動に特化したネズミの使い魔だったのだが。
相手の使い魔に捕まったとみるべきか。
微弱な魔力しかないネズミだ。
逆探知されるとは思えない、ここは――安全だ。
大丈夫。
ここは絶対に、気付かれない。
隠匿の魔術には絶対の自信があったのだ。
そう。
相手が神の領域にある魔術師でもない限りは――。
絶対に、大丈夫。
王女は頭を切り替える。
しかし。
もし全ての民を蘇生させたとしたのなら、相手はとんでもない規模の魔術を扱う魔術師に間違いない。
「よもや……あの極大規模の魔法陣は――なるほど、しかし……いや、転移者たちを魔力ある素材と認識させればあるいは……っ」
もし。
もしもだ――想像通りの大魔術師であったのなら。
どれほどのバケモノなのだろう。
ぞっとした。
「……っ」
しかし、何か行動をしなければ。
せめて砦を奪還しなければ、大魔王に消される。
いや、いっそ今からでもいい――大魔王を切って、その大魔術師に乗り換えるか。
確かに国を捨て、民を捨て犠牲にしたが。
報告が正しいのであれば、生贄とされた民は蘇生されているのだ。
まだ。
間に合うのではないか。
けれど。
もはや人間を裏切ったのだ、今更、戻ることなどできるはずがない。
それになにより。
今、戻ったら王権は二度と手に入らない。
このチャンスを掴むしかないのだ。
きっとこれが、自分が女王になるためのターニングポイントだと、王女ルビィは意を決した。
そう。
本当に。
いまの決断こそが――分かれ目だったのだろう。
「何か手を打たねば――なにか……っ」
やはり砦の奪還だ。
思考を巡らせる頭が鈍る。
そこでふと、人間を捨てた筈の王女はとても人間らしいことを考えた。
思えば何も食べていない。
腹に入れて、栄養を脳に送る必要がある――と。
焦る気持ちを落ち着かせるのも、上に立つ者の資質。
そんな忠告と優しい声。
生贄にしたはずの兄の言葉が――浮かび上がる。
なぜだろうか。
もう忘れていた日々、王権争いが始まってから捨ててしまった懐かしき日々。
思い出が――見えた。
まるで走馬燈のように浮かんで流れて、回っていたのだ。
やはり疲れたのだろう。
人間を裏切り、国を売った第一王女ルビィは従者に言う。
「すまぬが、誰でもいい――甘いものを持ってきてくれぬか」
返事が遅れている。
ぎしりと椅子を傾け、怪訝そうな顔で王女は眉を顰める。
「どうした?」
「それが――その、先に王国陥落の件をご報告するべきと遅れてしまったのですが。さきほど給仕から連絡が入りまして、不可思議な事に……食糧庫の中身が、全て――なくなっていたと」
「どういうことじゃ? ネズミでも出たのか」
呟きながらも、頭が何故か幻を見せる。
どうしてだろうか。
父と母。
兄や弟、妹たちとの日々が脳裏をよぎり続けている。
あの頃は良かった。
ふとそんな言葉が浮かんで、王女はかつての美しい微笑を浮かべていた。
誰も傷付けず。
国や民のために魔術を学んでいた日々が、回り続ける。
回る記憶に手をそっと伸ばす王女に、不審そうに顔を曇らせながらも従者が言う。
「給仕の話では――太々しい顔をした猫を見た……と」
太々しい猫――?
使い魔のネズミを捕まえたのも、猫。
それと同時に、走馬燈のように過去が走り続ける。
昔は仲が良かった三女。
シャーネス姫との思い出。二人は思い出の中で笑っていた。
魔術が苦手なくらい、別にいいじゃない。あたしが守ってあげるわ。
過去の純粋だったルビィ王女が、魔術の才が無く影で泣いていた妹に声をかけている。
妹が泣くから、喜ばせるために魔術を使った。
妹が大好きなアジサイの花を咲かせていた。
妹は泣き止んだ。
姉さまはやっぱりすごいわ――と。
喜んでいた。
だから魔術の道を究めた。
皆が笑ってくれるから。
あの頃はまだ。
あの頃は――。
どうして。
どうして、頭の中で走馬燈が走り続ける!
――あたしはただ! 魔術を使ってみんなを幸せにしたかっただけ!
どうして、最後の言葉のような事ばかりが。
浮かぶ――?
その時だった。
ぞっと背筋に走る悪寒。
寒さが襲ったのだ。
声が出ない。
なのに。声がする。
『せっかく生き残りの王族を見つけたけど――君は……うん、要らないかな』
声は、影から聞こえた。
王女はそっと下を向く。
ぎょっとした。
瞳。
ただただ赤い、瞳がそこにあった。
猫が見ていたのだ。
『そうか――君は、昔。シアンくんを支えていた時期もあったんだね』
猫が肉球を鳴らすと走馬燈が止まる。
まるで。
命の終わりを告げるかのように――。
それは過去を見る魔術だったのだろう。
ざしゅ。
「ぁ……」
『大魔王に操られた第一王女は既に死んでいた。憐れな王女はただ、魔術で洗脳されていただけだった。他の者にはそう――報告しておくよ』
それが君に与える慈悲だと。
遠のく意識の中で王女は見た。
猫がいた。
恐ろしいほどの無表情を保つ、猫がいた。
冷たい猫の息が、綺麗な赤い髪を。
揺らす。
『君を掃除したら、私は街の復興の手伝いにいく。だが、その前に――安心したまえ、君が悪に落ちたと知ってもなお、私利私欲を満たすためについてきた者達も、すぐにそちらにいく――。君は大勢で死ねるんだ、喜びたまえ――まあ冥界神も君にはつれないと思うけれどね』
口元に運ぶ乾燥肉を噛み切り――くっちゃくっちゃ。
猫は嗤い。
肉球が落とされる。
『それじゃあ、さようなら。裏切り者の王女様』
とん。
それが、人間を裏切った王女の聞いた最後の音だった。
猫は見た。
動かぬ王女の骸を見た。
細く血塗られたその指にあるのは、一輪の花。
最後の力を振り絞った魔術で生み出されたのだろうか――。
アジサイが握られていた。
けれど――そのアジサイもすぐに朽ちて、枯れていく。
魔力が既に汚れきっていたからだろう。
しばし、赤い瞳が枯れゆく花の色を見て――。
その気まぐれを誘ったのだろうか。
猫は、そっと肉球をあてた。
腐食が反転する。
アジサイは見事な大輪となって、膨らみ、王女の躯を淡い花畑で包み始めた。
それはまるで。
来世を導くように光り輝く――紫陽花の墓標。
猫の口が動く。
『残念だよ。君がもう少し早く思い出していたのなら――未来は変わっていたのかもしれないね』
猫が見ていた。
まるで哀れな犬を見るような瞳で――。
死にゆく女の最後の顔を――眺めていたのだ。
◇
その日、首都に住む二十万の人々は救われた。
脅威が去り。
まるで神の御手を受けたかのように、全員が蘇っていたのである。
デルトライア王国を包んだ奇跡と――第三王女シャーネス姫の帰還。
その奇跡を齎した計測不能な極大規模の魔法陣。
神話規模の大魔術がたった一匹の猫による魔術だったと知る者は――少ない。




