ラスボスが仲間になると強い、その2 ―アイテムクリエイト―後編
闇夜の森。
砦近くのキャンプに足を踏み入れた大魔帝ケトスこと、もっふもふ素敵ニャンコな私。
そして。
女子高生勇者で転移者のヒナタ君は、同じく異界からの転移者である下卑た連中と対峙していた。
かわいい女子高生とかわいいニャンコ!
対するのは、いかにも悪役な魔剣士大男と露出狂気味の女魔導士。
なかなか変な絵面である。
私利私欲を満たし悪行三昧をしていただろう外道転移者たちを前にし。
ぷにぷに肉球で私は――ビシ!
『さーて、君達がここでなにをしていたのか、全部話してもらおうかな!』
「ついでにあんた達が犯した罪を素直に話しなさい! 反省するって言うのなら、命だけは助けてあげるわよ!」
続いてヒナタくんが黒髪を靡かせ、ビシ!
ダブル指差し攻撃である!
こちらサイドは明るいニャンコと女子高生なのに。
相手さんは黒い顔のまま。
焚き火の灯りで浮かぶ黒い顔を軋ませ――。
にちゃぁ。
魔剣士転移者はハハッと嗤う。
「命だけは助けるだあ!? はん! 選ばれ与えられた力を使って何が悪い。勇者の女子高生ちゃんよぉ、てめえだって人を殺したことぐらいはあるんだろう? そりゃ、かつて俺らのいた世界じゃ過剰防衛だって毎回裁判にかけられる、悪い事じゃねえのか? ん? 間違ったことは言ってねえだろう? ほら、てめえと俺様は同類、同じ穴のムジナだろうさ。はは! いまさら正義を気取ってるんじゃねえってこった!」
眉を跳ねさせたヒナタくんが、僅かに息を呑む。
苛立っているのだろう。
「はぁ、うっざ! 正義を気取るつもりはないけどさあ? あんた達みたいな連中は嫌いね、嫌い。だーいっきらい! いいわ、同郷だというのなら話が早いわね。かつての世界の仲間として、あんたの首――ここで刎ねてあげるわよ!」
宣言と共に、ヒナタくんの聖剣が七色の輝きを放ち始める。
私の世界の魔術と類似しているのか、その輝きは九重の魔法陣を描いていく。
あ、ヒナタくんの能力が一気に倍増してるな。
これ。
相手を倒すべき悪と認定するとリミッターが外れて、様々なスキルや術、アビリティが解放されるタイプの能力者か。
まあ、この手の能力者の弱点ははっきりとしている。
強さが安定しないのだ。
例えば相手側にしっかりとした大義名分があり、仕方なく悪を働いている、むしろ人間側が悪? なーんていうタイプのラスボスだった場合。
その力を発揮できなくなってしまうのである。
ともあれ、このままだと敵を殺してしまいそうなので。
スキルキャンセル効果を仕込んだ肉球を鳴らし――パチン!
「ちょ! あれ! あたしのスキルがキャンセルされてるじゃない! ケトスっち、なにするのよ!」
『まあまあ、ヒナタくん。少し待っておくれ、これでも私は魔王軍最高幹部でね。侵略とはいえ戦争ともなると、条約とか面倒な決まり事を守る義務があるんだよ――、いや、まーじで面倒なんだけどさ……一応、片方だけの意見だけでなく彼等からも話を聞かないとね』
猫口を動かして、私は男と女をじっと見る。
まあ……。
聞くだけ無駄だとは思うんだけど。後で問題になっても嫌だしね。
女の方は分からないが、スティーブンと呼ばれた男の方は地球からの転移者とみて間違いない。
ヒナタくんもそれを理解しているようだ。
『君達に訊ねるよ。洗脳は――されていないんだね?』
「洗脳だあ!? はははは! バッカじゃねえのか、この猫は」
ヒナタくんの九重の魔法陣にもひるむことなく――魔剣士は端整だが、黒い顔立ちをぐしゃりとさせて口を開く。
「俺はクソ勇者に殺される直前にこちらの世界に召喚されてな! 大魔王ケトス様は言ってくれたんだよ、お前は死ぬのは惜しいってな。その恩返しだよ!」
ふむ。
召喚主はやはり私の偽物なのか。
「それにしてもツイてるなあ、女は勇者か! はは、勇者様をヤレるなんて、たまんねえな! 前の世界でも勇者様がいたんだが、ありゃあよく泣いて面白かったなあ。くく、くくくく!」
『あー、そう……いるんだよねえ。君みたいな異世界に転生だか転移されてからイキっちゃう外道ってさ。その顔立ちは西洋系かな? 毎日ピザでも食べて、ぐーたらぐーたら、よっぽど元の世界ではつまらない生活をしていたのかい?』
かつての世界について言われ。
ああん? ――と。
男はギシっと顔を引き締める。
「よく喋る猫じゃねえか。これも高く売れそうだな」
抜き放つ男の魔剣に氷が纏わりついていく。
星座の形を象った杖を振り――露出狂気味の魔術師が、ふふふと濡れた紅い唇を揺らす。
「そう? 黒い毛皮なんてそんなに高く売れそうにないじゃない。わたしは好きじゃないわよ、そんな生意気そうなネコ。どうせまた雑魚なんでしょう? もういいじゃない。ねえ、とっととやっちゃいましょうよ。こいつらがあのイプシロン帝国……だっけ? あそこで召喚された勇者たちでしょう」
「そうだな。さきほどの答えをくれてやる! 洗脳なんてされてるわけねーだろうが! 俺達は俺達の欲望のままに動いているだけだってな!」
ゴゥ――ッ!
私の知らない魔術性質の魔法陣を纏う男。
その不精ひげが魔術閃光で輝きを放つ。
男の魔剣の輝きに胸の谷間をテカテカさせて、女が吠える。
「さーて、魔力解放するわよ! あはははははははは! 死になさい、かわいらしい勇者さん達!」
んーむ。
すがすがしいほどの外道である。
ちゃんと録画してあるし――これなら討伐しちゃっても後で怒られることはなさそうである。
ネコちゃんと女子高生の情操教育にもよくないから、とっとと片付けたい所なのだが。
その前に――と。
『回答をありがとう。モノのついでだ、雑魚である私の質問にもう一つ、どうか答えてくれないかな? 君達は大魔王ケトスに召喚されたんだろう? どんな奴なのか、詳しく聞かせてくれないかな。ほら、冥土の土産って言葉もあるじゃないか』
せめて種族を知りたいのだが。
男と女はギヒっと嗤い。
「だはははははは! こいつ、地球の文化に詳しいな! 教えてやってもいいが、さて、どうしようかな。はは! そこのねーちゃんが、奉仕でもしてくれたら、考えなくもねえぜ、ってだはははははははっは!」
「よしなさいよスティーブン。もしわたしらから情報が漏れたなんて分かったら、あの方に消されちまうよ」
あの方?
大魔王を名乗る愚か者の事だろうか。
……。
こりゃ直接、情報を引き出すか。
脳をハックし操り人形とするべく影を伸ばすが――。
次の瞬間。
ガガガ!
不意に、砦を囲う森に音声魔術が轟き広がった。
「おい、聞こえるかぁああああぁぁぁ! ネコと女! 砦の方がやべえ! オレは無事だが、中に捕虜と怪我人が大量にいやがる! 治療は苦手なんだ、手を貸してくれ!」
「タヌキっちの声じゃない!? 怪我人って!」
声を聞き、男と女は夜の中で嗤う。
タヌキ勇者の叫びを、鼻で笑い。
くくくくと、肩を揺らしているのだ。
「あー、だめだ! もう我慢できねえ、どうせこいつらもここで殺すか嬲って、魔道具の素材にしちまうんだ。言ってもいいだろう? 良いよな! いい! そう、俺様が決めたからこれがジャスティスだ! あの砦は血の宴の真っ最中! 今頃、俺らの仲間を増やす異世界召喚のための生贄の儀式が行われてるんだよ! 大魔王ケトスさまこそが、我等の王! あの方についていけば能力だって修行もせずにあがっちまう。最高だろう? おい。たまんねえだろうなあ、生贄の儀式は! 鮮血と殺戮の宴だ!」
興奮と高揚で若干、支離滅裂気味であるが――。
外道の言葉に、女が続く。
「あーあー、間抜けなスティーブンったら、また命令に逆らって言っちゃった。儀式については言っちゃダメって言われていたのに。ま、別にいいけどね。わたしらもジャンケンで負けたりしなかったら、一緒に羊を殺して嬲って、犯して……ふふ、たまらない享楽に浸っていられたのに。残念!」
空気が――変わる。
ヒナタくんが無言で聖剣を構える。
羊とは、まあ捕虜となっている人間の事だろう。
この二人は自我を保っていて、なおかつ強制されたわけでもなく外道に加担している。
抹殺確定か。
ヒナタくんの方はもう覚悟を決めている。
殺す気満々だ。
ぞっとするほどの殺意を放ち。
少女は唇を蠢かす。
「もう、いいわよね――やるわよ」
『ふむ――まあ、砦に急いだほうが良さそうだね。情報を引き出したかったけど、仕方ない――!』
ざざざ。
ざぁああああああああああぁぁぁぁぁ!
瞬時に私は跳んでいた。
女子高生勇者のヒナタ君。
彼女が動く前にと、ネコのモフ胸を焦燥が走ったのだ。
なぜだろうか。
超高速で動いた影響で、止まる時間。私だけの世界の中で考える。
何故焦ったのだろうか?
たぶん、おそらくだが――。
ヒナタくんに、手を汚して欲しくなかったのだ。
同じ世界、地球に居た人間を殺して欲しくなかったのだと思う。
きっと、勇者として二度世界を救った彼女には、既に人間を殺した経験もあるのだろう。
そして目の前の二人はおそらく、言い方は悪いが殺してもいい相手だ。
けれど。
同じ命の筈なのに、なぜかどうしても。
私はそれをさせたくなかったのだ。
合理性に欠けていると自分でも思うのだが……なんだろうね?
んーむ。
心というモノは、やはり簡単には理解できない領域で――複雑なのだろう。
ま、なんかムカムカするから。
理由なんてそれで十分だよね?
私、ネコだし。
だから。
私は、冷めた瞳でかつて同じ世界に住んでいた、地球からの転移者を見る。
能力は――男が物理反射。
女が魔術反射。
与えられていた仕事は――見張りか。
つまり、帝国が勇者の召喚に成功していたことは予知されていたか、あるいは既に察知されていた可能性が高い。
物理反射と魔術反射の組み合わせはかなり厄介なのだが――。
私はその対処法も知っていた。
少し細工をし――超高速の影響で止まっていた時間の中を駆ける。
そして。
時は動き出した。
その一瞬の刹那。
私が何かをしたと気付いたのはヒナタくんだけ。
「え……っ」
彼女がまともに顔色を変えたその時。
既に勝負はついていた。
「なにが仕方ないだ、てめえ! ネコの分際で人間様に……っさま、さまさまにぃぃ……? あ? さ? ま? さまさまさま。ちっ、精神系の攻撃か?」
「スティーブン? あ、あぁ……なに、これ――頭が……っ」
闇の中。
影の世界。
闇夜の森は既に私のダンジョン領域。
彼らは既に私の領域の中。
つまり私の管理する空間の中に在るともいえる。
魔術はこじつけと、言葉遊びが重要なのだ。
彼らの頭に巻き付けたのは、ネコの毛の糸。
ようするに、季節で生え変わる抜け毛。
錬金素材アイテムとして確保しておいた夏毛を編んだ、拘束アイテムである。
ニヒリと嗤った私は――そのまま闇の咢を開き。
『君達を魂と肉の素材にさせて貰うよ。もし、砦で民間人の死者が出ていたら――その蘇生の生贄として使うことにした。そういうわけだ。それじゃあ、さようなら』
肉球の先から、黒い靄が飛んでいく。
いつもの演出。
……。
ではない。
闇が動く。
影が蠢く。
夜の森が――ざぁぁぁぁああぁぁぁぁっと揺れた。
「かかったな! 俺様の能力は反射! てめえが強ければ強いほど――俺様は輝くぜ!」
構える魔剣士の剣が、ぶぉぉぉんと煌めく。
が。
唾を飛ばす勢いで、男は驚愕に顔を軋ませる。
「な――っ、反射能力が発動しねえだと!」
『当然だよ。これは攻撃行動ではないからね。ルールの適用外だ』
女の方も、杖を手から零れ落とし――。
「な、なによ……これっ、反射できない!」
『だから、無駄だって言ってるのに……ひとのはなし、きいてる?』
はぁ……と、わざとらしい息を吐いてやって。
私はトコトコトコ。
徐々に、徐々にと拘束されて動けぬ二人に近寄っていく。
肉体と魂を戒められ。
逃げられない影の糸に巻き取られ、ようやく彼らは気付いたのだろう。
私が、並みを越えたバケモノだったのだと。
彼らの唯一助かる道は、暴走したヒナタくんの攻撃を反射し拘束を解く事なのだが。
私の横で、彼女は肩を竦めてみせている。
出番を取られたと悟って、なおかつ敵が反射能力者だと気付いて攻撃を止めたのだ。
男と女。
驕り高ぶっていた彼らの肌に、びっしりと、脂汗が滲んでいく。
彼らの心の震えを伝えるように。
ざわざわ。
ざわざわっと、葉擦れの音が暗闇の森に響き渡っていた。
風が吹いたのだろう。
私のモフ毛が――揺れた。
「ま……っ!」
『待ってくれ。そう言いたいのかな? 君の過去を見たけど――だって、君、待たずに殺しちゃったじゃないか』
くははははははは!
くははははははは!
森に広がる猫の影が、夜空全体を覆う程に巨大化していく。
闇のネコの口がぎしり。
即死魔術ともなりうる言葉を発した。
《魔力――解放。アイテム生成。コード:魔力持つ生贄肉人形》
合成スキルに、ルールを捻じ曲げる猫の魔力をほんのひとつまみ。
世界の法則に介入する。
きぃぃぃぃっぃん……。
魔力の流れを肉球で手繰り寄せた私は静かに――瞳を閉じる。
『君達の魂は腐ってしまったが、それでも力ある存在。きっと、誰かのためになるモノだ。生まれてきたことを母に感謝しながら、消えるといい』
「いやあああああぁぁぁっぁぁっぁあ!」
「こ、ころさないでくれ――ッ」
肉球を掲げた私は、ギロチンを振り下ろす仕草で――シュン!
ぶづん……。
肉の筋と糸を切るような音が、闇の森の中で響く。
蒼白い輝きを放った後、男も女も世界から消えていた。
そこには既に、動くモノは何もなくなっていた。
あるのはただ蒼白い結晶体。
生命のクリスタル。
高レベルな人間と大魔帝の抜け毛を素材とした、錬金素材。
所持アイテムとして、彼らだったモノは既にストックされていたのだ。
そう。
私はいつかの教皇を錬金術で変換したように、彼らを強制的に所持アイテムと認識させ、合成素材として使用したのである。
このクリスタルは、文字通り高レベルな人間の魂を素材に使ったマジックアイテム。
きっと、この後――人命救助の役に立つ。
皮肉なことに、おそらくそれがきっと、転移してきた彼らの最初で最後の善行となるだろう。
森から、影の猫が消えていく。
わずかに尾を不機嫌そうに揺らし。
私は言った。
『さて――タヌキ君が先に行っている、私達も急ごう』
「え、ええ……、分かってるわ――行きましょう」
頷くヒナタくんが、私に続いて走り出す。
彼らを一瞬でアイテムに変換――つまり、殺した私の非道について、彼女は何も言わなかった。
きっと。
まだ世界を二度も救う前。ただの女子高生だった頃、転移したばかりのただの少女であったのなら――。
私を外道と詰るか、泣きそうな顔で私を責めるように睨んだことだろう。
けれど、違った。
そうはならなかった。
ここにいる少女は残虐な現実も知っている、本当に世界を救った勇者なのだ。
彼女は既に砦の攻略に頭を切り替えているようだった。
その瞳は、遠くを見るスキルを発動させている。
もう、彼らの惨い死など気にしていない。
きっと、既にそういう割り切りをこの少女は覚えているのだろう。
まだ若いのに、そういう死生観を習得しているのだ。
それはおそらく、少し寂しくて悲しい事だと私は思う。
血の匂いすら流れなかった勝利。
戦いにもならなかった戦いは終わった。
森の木々がざざっと鳴いている。
やはり異世界勇者召喚魔術などという禁術は、存在してはいけない魔術のような気がしてしまう。
呼ばれなければ、彼女は普通の女子高生として生きていたのだから。
私とて、呼ばれなければ――。
……。
いや、けれど呼ばれたことにより私は魔王様に御逢いする事ができた。
少なくとも二つの異世界を救う事が出来た。
全てが悪いわけではないのだ。
まあ……いまここで、異界召喚の是非について悩んでもしかたないか。
魔王様が私にあまり異界召喚をするなと言っていた理由も、この辺りにあるのかもしれないが。
私ネコだし。
むつかしい事は後で考えればいいよね。
そもそも。
日常的に異界から液状ネコちゃんおやつを召喚したりしてるし……。
禁止されちゃったら、困るのである。
ねえ?
私も頭を切り替えて、砦の方を魔力で眺める。
どうやら、もっと急いだ方が良さそうだ。
『ストップ! ヒナタ君! こっちへ来てくれ、タヌキくんの座標を参考に砦内に直接転移する。石や壁の中に入り込んでしまう事はないと思うが、一応結界を張っておくれ』
「おけおけ! 仲間の元へ集合する魔術ね! あたしはできないけどやっぱりあんたチートよねえ。なんかラスボスが仲間になってる気分だわ――っと!」
あははは! と苦笑しながら彼女は私の傍へと跳躍。
落ち葉を踏みしめ着地し、ザザッ!
ビシ――!
決めポーズは、まあご愛嬌か。
私の方がカッコウイイポーズだけど。
なかなか悪くはない。
「すぐに結界を張る、完了したら合図するわ!」
胸の隙間の亜空間から、ポンと炭素性の粉を取り出し、宙に撒き――。
儀式魔術を開始。
《――――――――》
私も知らぬ魔術言語で高速詠唱。
赤と青の輝きを大地と周囲にまき散らし、ダイヤモンド状の高密度な防御結界を顕現させる。
その間、わずか十秒である。
ん-む、早いなあ。
私はともかく、人間であるヒナタくんは転移先に壁や石、障害物があると肉体情報と異物が混ざり合って――最悪、存在が消滅しちゃう可能性があるからね。
それを防ぐために結界が必要なのだ。
だから、まあ――パーティではなく私の単独行動なら転移を繰り返せばいいんだけど……。
こればっかりは今いっても仕方がないか。
単独行動だと、うん。
うっかり手加減を忘れて、大陸全体を壊すリスクもあるし。
高密度の結界を自慢するように、ふふんと微笑し。
ドヤ顔少女は言う。
「どーよ、この結界は! あたしちゃん、こういうのは得意なのよねえ! ケトスっち、こっちの準備はオッケーよ! 砦に入ってからの作戦は?」
『ムカつく敵を殲滅する、それだけさ』
ふっふっふ!
毛を逆立て闘志を燃やす私に、彼女は目を輝かせる。
告げる私の作戦に異論はないのだろう。
にひぃ! っと女子高生は悪い笑みを浮かべ。
「へえ、いいわ! 正義のため! っていう感じじゃないのが、特にいいわね! ちょっとムカムカしてたし。暴れちゃってもいいわよね!」
『ああ、私達を敵にしたことを後悔させてやろうじゃないか!』
敵はぶっ飛ばしてもいい外道と分かったし。
遠慮する事なんてなさそうである。
砦を占領したら一旦、落ち着きたい所ではあるが。
ともあれ。
私は転移を開始した――!
クズ相手にはどんな魔導実験をしてもいいって、ニャンコ的には思ってるし。
相手、ムカつくし。
……。
にゃは!
にゃははは!
にゃははははっはははは!
外道狩りじゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁ!




