三獣神の集い(チョコ)
ブリ照りから始まった異世界散歩。
あの楽しくも懐かしき日々から帰還して、数日。
新たな戦力をゲットした我等魔王軍!
大魔帝ケトスこと最強ニャンコな私を先頭に、今日も行く!
ビシ!
まあ、行くと言っておきながら外出はせず。
コタツで寛いでるんだけどね。
春が見えてきたとはいえ、まだまだ寒いもんね。
コタツに可愛い肉球あんよを乗っけてポーズを取る私。
そのモフモフふわふわな猫毛を、力あるワンコの目線と吐息が揺らす。
『ケトスよ、なーにを一人で変なポーズをとっておるのだ? 我、早く魔王様の日記とやらを読み解きたいのであるが?』
尻尾をぶんぶん!
ピョコンと立ったワンコ耳をぴょこぴょこ!
魔王城最奥の私の部屋。
積まれたチョコレートの山をワンコの鼻で掻き分けて、最強ワンコこと白銀の魔狼ホワイトハウルがシュとした顔を出してギラリ。
その獣の咢には数多くのチョコレートが入っていて、バリバリもしゃもしゃ。
コタツを中心とした部屋中に、濃厚な魔力とカカオの香りが広がっている。
それもその筈。
今日は普段お世話になっている相手にチョコを送るという、素晴らしい行事が行われていて――。
にひぃ!
我らの前にはチョコ菓子の砦が築かれているのである!
『いやあ、魔王様にお見せする記録クリスタルの編集をしてたからさ。いつもの超カッコウイイ決めポーズを取っていたんだけど、まあ、ワンコのセンスじゃこの美しさは分からないだろうね!』
『ふーむ、我にはお前が跳ねているようにしか見えんが――まあよい!』
ハートの形をしたチョコレートをワンコのお手々で取り出して、バーリバリバリ!
その正面で。
私も女の子たちから貰ったチョコレートをバーリバリバリ!
『ねえ、ホワイトハウル。君、犬なんだからチョコはまずいんじゃないかい?』
『ケトスよ、本来であれば猫もチョコはまずいのであるが?』
まあ私達、猫魔獣と魔狼かつ神獣だからね。
そもそもだ。
今現在、この世界で猫と呼ばれる存在は全て猫魔獣と呼ばれる魔物に変化している、かつて私が生きていた世界での猫とは厳密に言うと在り方が異なる。
つまり。
チョコを食べても全然問題ないのだが。
カカオパウダーがべっちょりついた肉球をチペチペチペ。
丁寧に最後の甘さまで舐めながら、私は考えるように目線を上にする。
はて?
なんでホワイトハウルは猫がチョコを食べたら駄目だって知ってるんだろう。
まあいいや。
目線を下ろして、コタツの上の獲物をチラリ。
ぐぐぐぐ、とチョコの山を魔力を込めたにゃんこ肉球で引き寄せる私に。
ググググと、魔力を込めたワンコにくきゅうで対抗するホワイトハウル。
両者は獲物を奪う獣。
互いに城壁の如く積まれたチョコ菓子を、仲良く奪い合っていたのである。
『ふむ、それにしても今日という日は天国であるな。何もしなくても向こうからチョコを山ほど運んでくれるのだからな――! 魔王陛下も良き習慣をこの地に取り入れたモノよ!』
『まったくだねえ。にゃははははは!』
室内で荒れ狂う魔術の散弾。
ニャンコとワンコのちょっとしたじゃれ合いに、きっと今頃、世界は揺れているだろう。
聖女のアイラくんや、グルメ繋がりのある帝国や王国辺りでは、どうせ私がなんかしているのだろうと落ち着いているだろうけど。
他の国だと、どうなんだろうね?
もしかして今頃、世界の危機なのかって混乱してたりして。
にゃはははははは!
ぐがんっ、ぐぐぐごご、ごごごごごごごごごご!
バリバリ。
……。
キィィィィン、キィィィンキィィィィイイイイイイィィィィッィン――ッ!
水面下でチョコ争奪の魔力大戦が行われている中。
当の私達はニッコリとチョコを貪りニャハリ♪
コンビニ売店バイトの女の子からの贈り物の生チョコケーキを箱から取り出して。
ぶにゃ~ん♪
フォークでちゃんと丁寧にお口に運んで、ぱくり!
『くははははははははは! 素晴らしい! 中にフルーツまで入っているではないか! フルーツの僅かな酸味と生チョコレートのほろ苦い甘さが、なんとも、なんとも、にゃんとも絶妙である!』
『グハハハハハハハハハ! 見よ、ケトスよ! こちらのケーキはショコラの層ができておるぞ! 口に運ぶたびに食感にも味にも変化が生まれておるのだ! 人間め、脆弱なる身でありながらこのような技術を編み出すとは、神に認められし超絶技巧! これだから馬鹿にできん!』
どうやら神獣としてのホワイトハウルへの貢物らしいショコラケーキを、ワンコのお口がパリパリパリ。
我等はコタツの中でニヒィ!
『くははははははははははは――!』
『グハハハハハハハハハハハ――!』
それぞれに頂いたチョコ菓子の山を前にし嗤う獣達。
そんなコタツ部屋にもう一つ――。
力ある獣の嘶きが、劈き続く。
『クワーックワクワクワクワ! ぬしらも味わっておるようであるな、余の狩りは終わったぞ! 見よ、このチョコレートの山を!』
次元を渡ってやってきた最強ニワトリさんことロックウェル卿が、城壁ほどあるチョコレートの山をドンと置き。
ドヤァァァァァァァァ!
私とホワイトハウルのじゃれ合いの魔力を、魔術式ごといともあっさりと石化させて。
鳥足で大理石の床を、カカカカカカ!
ふわふわ羽毛と鱗持つ足をコタツに突っ込んで、ドヤヤヤヤヤァァァ!
『余の麗しさに心惹かれ、このような貢物を用意するとは――優雅さは罪。余の素晴らしき舞いに酔いしれた淑女のなんと多い事よ』
『いや、君――治療の神の一面もあるし。無差別石化が治まってからは魔王城でお医者さんみたいな事をしてるだろう。そのお礼なんじゃないの? みんなかなり感謝してるし』
善意で医者をやっているくせに。
『ふむ、なれど――あれは医療行為ではない。ただの治療魔術の実験である。それにだ、城の幹部連中にはこの自動石化能力を制御する技術の件で世話になったからな。礼には礼で報いねば魔王陛下に叱られてしまう。ケトスよ、勘違いするでないぞ? 余はそこまで他人に甘くないのであるからな!』
くわっと嘴を開いて、テレを隠すように卿は言う。
まあ、いいけどね。
こいつもけっこう素直じゃない性格してるよね。
『おー、ロックウェル卿よ。今度は天界にも出張してくれんか?』
『天界と言えば確か――アップルパイが名物であったか――ふむ……参るのもやぶさかではないが、天界といえば浄化や解呪、治癒も得意分野であろう? 余の助力など必要あるまい?』
コケケと首を横に倒す卿に。
じっと私を睨みワンコが言う。
『どこかの魔猫が突然蘇生させて連れ帰ってきた大いなる導き。主神クラスの天女の舞を見ようと場所の取り合いとなってな。怒った我が主、大いなる光が「喧嘩はなりませんよ」――と、一部の臣下に暗闇状態の戒めをかけてしまってのぅ……』
『よくわからんのう。舞を見るぐらい良いではないか。まあ、天の者が争いを起こすのは感心せんが――花見の場所取りのようなものであろう? そこまで怒るほどの事とは思えんが』
ニワトリさんの言葉に、ワンコはジト目をして。
『大いなる導きはその、豊穣を司る部分が実り豊かでな――臣下たちがその部分をじっと見ていたのが気に入らなかったのだろうと我は思っている』
『なるほど。女神の嫉妬か。ククク、クワーックワクワクワ! ホワイトハウルよ、キサマの主人もキサマに似て嫉妬深いと見える。まあよい、遊びに行くついでに解いてやるとしよう』
二人の相談を横目で見て。
私はぶにゃんとチョコドリンクを啜って一言。
『ふーん、天界も大変なんだねえ』
呟いた私に、何故か二獣はじぃぃぃぃぃいぃぃぃっとこちらを睨む。
あれ?
なんだろう。
『誰のせいでこのような混乱が起こっていると思う?』
『ケトスよ。まだ説教が足りないのであるか?』
うっ……。
わんことニワトリさんの目が痛い。
さすがに二獣同時に相手するとなると、うん……しんどいからね。
説教はこりごりなのだ。
どう話を逸らして誤魔化そうかと、悩んで猫トサカをうにゅうにゅする私に助け船がやってきた。
強大な魔力が一つ。
深淵の底、奈落の果てから浮かび上がってきたのだ。
死の瘴気を纏うこの気配は――。
魔王様の兄。
現冥界神のレイヴァンお兄さんである。
お兄さんはどういうインチキをしているのか――剥がせるはずのない私の結界をそのまま素通りして、私の部屋まで強制顕現。
ワイルドな顔立ちには、ちょっぴり怒りマークが浮かんでいる。
「おーい、てめえら。ヤベエ魔力が冥界にまで流れて来てるんだが? 世界が揺れてるんだが!? どーなってやがる! それに、なんだこのメンツは――っ、やべえモフモフどもが集まって、戦争でもするんじゃねえだろうな!」
『やっぱり、レイヴァンお兄さん。君だったのか、チビッコは元気にしているかい?』
のじゃ巫女の顔を思い出す私に、お兄さんはふっと表情を緩め。
まるで姪っ子をみるオジサンの顔で言う。
「ああ、まあな。元気過ぎるぐらいで大変なんだが――って、なんだよおい、喧嘩の原因はソレか? てめえら獣の分際でそんなにチョコを貰いやがったのかよ」
そういうお兄さんの手にもチョコが握られている。
なにやら髪から翼の毛先までも整え――完全なる冥界神モード。
気取ったスーツに高そうな靴。
全体的に高貴な皇帝を想わせる雰囲気を纏っているのだが。
こりゃあ、アレだ。
騒ぎに乗じて、魔王城にやってきただけだな。
浮かれやすいこの日を利用し、魔王城の女の子を食いに来たのだろう。
……。
念のために言っておくが、物理的に喰らうわけではない。
全てを見通すロックウェル卿も、呆れた鳥目でお兄さんを見ている。
私の予想は当たっているのだろう。
尻尾を左右にゆらゆらさせて、私は呆れた声で言う。
『その様子だと……はぁ……魔王城の女の子にチョコでも貰いに来たのかな? 前にも言ったけど、セクハラ案件だったらさすがにお兄さんでも処罰の対象になるんだけど』
面白いくらい古い反応で、ギクっと翼の先を跳ねさせ。
「いやいやいやいや。俺様は呼ばれただけだし? そりゃあ淑女たちにぜひ来てくださいね魔王様のお兄様って頼まれたら、断れねえだろう? おー、なんだなんだ? おまえさん達、恐れ多くも畏くも、この冥界神様に嫉妬か? いやあ! わりぃな、モフモフアニマルズ! さすがに義理とかわいさでチョコを貰えてる獣共よりも、イケてる俺様の方がチョコも愛も貰えるだろうよ!」
と、なーっはっはっはっはは!
偉そうに笑う、その翼の裏ではいつもの飛蝗くん達が私に向かい手を振っている。
無限分裂の魔術をかけたチョコを、翼亜空間にも分けてあげながら――。
私はお兄さんをジロり。
『へえ、私達よりもチョコを貰えると?』
「可愛いだけじゃダメだってことだよ。今日だけは大人の日でもあるんだからな」
冥界神としての闇を帯びた微笑で、スゥっと宣言した後。
デレデレーっとまったく大人っぽくない顔をして。
いやあ、わるいなあ!
と、満面の笑みでお兄さんはキシシシシ。
「モフモフども! んなわけで、俺様はちょっと狩りに行ってくるから、あんまり世界を揺らすなよ! ただでさえ闇の眷属が世界一個分増えたんだ、世界の連中をまだ落ち着かせてやれ」
本気で今晩の相手を大量に集めに行く様子。
冥界神のくせして、あいかわらず俗っぽいでやんの。
まあ、寂しがり屋なのだろうが。
翼を小刻みにバッサバッサとさせて、魔王城内へチョコ狩りに行くレイヴァン兄さんの背に目を向けるのは――。
我等、なかよし三獣神。
モフモフ毛玉となって我等は集合し、ひそひそひそ。
『のうケトスよ。あやつ、魔王様の兄だからと言って少し生意気ではないか?』
『で、あるな。余もすこし奴に身の程というモノを弁えさせるべきではないか――そう考えるが?』
『そうだね。魔王様のお目覚めの前にお兄さんを調子に乗らせて好き勝手させたってなったら、魔王様に怒られるし』
三匹、互いに頷いてぶわっとモフモフを膨らませる。
三匹同時詠唱。
十重の魔法陣を展開し――。
ザァアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァ!
肉球をパチンと鳴らした私は――翳ある黒衣の美貌紳士に変身!
遠吠えを上げたホワイトハウルが――ワイルドクールな神族紳士に変身!
翼を広げ舞ったロックウェル卿が――人間離れした麗しい貴族紳士に変身!
三匹が三匹ともダダダダ!
カカカカカッとお兄さんを追い越して。
普段は意図してデバフをかけている魅力値も、封印している自動誘惑スキルも解放し。
キラキラキラキラ!
「おい、モフモフども突然どうした――って! あぁぁああああああああああぁぁぁぁ! なっ――、コ、コラ、てめえら! 俺様が貰えるはずのチョコを横取りするつもりじゃねえだろうな!」
むろん、そのつもりである。
『くははははははは! チョコは我等が全て頂くのである!』
猫魔獣の得意技!
魅了オーラを全開にし、私はお兄さんの貰う筈だったチョコを女性から受け取り――猫微笑。
魅了能力でこの私に勝とうなど、二千年早いのである!
「は!? てめえこの駄猫! それに鬼畜ニワトリ! なんてことしやがるんだ! あのサイクロプス娘は絶対に今晩イケると思ってたんだぞ!」
『ほぉ! レイヴァンよ、そなたは一つ目巨人族の娘も守備範囲であるか! その広き愛には感心する、しかし! 余と余の友らを義理と可愛さだけと言い切った、その愚かさを呪うがよい!』
スカーフを靡かせ世界蛇の宝杖を翳すロックウェル卿。
恐竜を想わせるその瞳が、くわぁぁぁぁっと紅く染まる。
これ……。
ギャグみたいな展開だが、実は最上位の魔術戦でもあるんだよね。
『ケトスよ次はあっちだ。こやつに一つもチョコを渡させるでないぞ!』
『オッケー! 君はそのまま未来視でお兄さんの行動を予測しておくれ!』
チョコを先に狩り尽くすために悠然と走る私とロックウェル卿。
その後ろで翼をバッサァァァァッァア!
「いい度胸じゃねえか、モフモフども! 今日だけはこっちも本気を出させて貰うからな! 冥界神を舐めるなよ!」
悪食の魔性としての力に瞳を紅く燃え上がらせるレイヴァンお兄さん。
その足元が不自然に揺れる。
しかし術を放っているのは冥界神ではない。
『魔力――解放。冥府魔狼の監獄檻』
モフモフ毛皮付きの神の軍服を纏うホワイトハウルが、スゥっと瞳を尖らせたのだ。
神話規模の神聖結界が――発動する。
お兄さんの足元からキキキキキッ、キキキキィィィィッィン!
「な――っ、この俺様を捕らえる結界だと!」
『ふん、冥界神よ――油断したな。我は我が主である大いなる光とは違い、貴様に対する甘さも義理もない。我等三獣を馬鹿にした蛮行の数々。その報いを受けるがいい』
ホワイトハウルが精悍な顔立ちをキリっと尖らせ。
くわッ!
『我の知らぬ場所でケトスと仲良くしおって! 我は知っておるのだからな!』
「あのなあ――嫉妬の魔性に言いたかねえが、アホな事で嫉妬してるんじゃねえ! ただモフモフしてるだけじゃねえか!」
『あやつをモフるのなら、我の許可を取ってからにせよ』
フンと腕を組んで神聖結界を無数に展開するホワイトハウル。
その顔はけっこうマジになっていて。
あー、そういや。
ロックウェル卿は冥界下りをした時にお兄さんと正面からやりあって、どちらが上か、はっきりと鳥足を叩きつけてやったって言ってたけど……。
ホワイトハウル。
このワンコはまだお兄さんとマジ対決はしてないのか。
『言っておくが、我は二獣とは違い貴様に甘くはないぞ。卿とも冥界で酒を交わしおって、羨ましいなあなどとは思っていないのだから。まったく、これっぽっちも、我は嫉妬など、しておらん!』
「お、おいてめえ……ワンコ、ちょっと、落ち着け。な? いや、それ、直撃したらしばらく寝込むぞ、俺様」
ホワイトハウル……私の前だとただの駄犬だけど。
ガチの主神クラスの神だし。
普段はクールワンコを気取ってるけど、本気で嫉妬深いからなあ……。
ゴゴゴゴゴゴと世界が揺れる。
対魔力結界で覆われている筈の魔王城すらも、揺れている。
『我以外の二獣ばかりと遊んでいたことも、我! 別に! なんとも思ってはいないのだからな!』
赤き瞳の魔狼の影が、魔王城の上空一面に広がる。
それはさながらラスボスの影。
あ。
これ、まずいかも。
あの黒マナティが危険を察知し逃げるって――。
『ちょ――! ホワイトハウル、ストップ!』
『いいではないか、ケトスよ。どうせいつかはどちらが上かでやり合うのだ。一度本気でぶつかった方がいいと、余は思うぞ?』
この反応。
完全に面白がっているな、ロックウェル卿。
「上等じゃねえか、このワンコ! ニワトリには油断したが今度は負けねえからな! 冥界で勝負しやがれ!」
『あらら。今度は――って事は、冥界での戦いだったのにお兄さん……ロックウェル卿に負けたんだね』
まあ、ロックウェル卿。
マジモードになればたぶん、私と魔王様以外には負けないだろうしね……。
お兄さんとホワイトハウルとなると、どうなんだろう。
んー、ワンコが有利寄りの互角なのかなあ。
単純な魔力量だとホワイトハウルの勝ちなんだろうけど。
相手は冥界神。
戦いの相性的には……不利なのだ。
ワンコの得意分野は結界や守り、そして罪の意識を利用する審判系の裁定魔術。
冥界神って、大義名分をもって公正な裁きを下す存在だから、そういうの効きにくい筈なんだよね。
そう思っていたのだが。
私の目の前。
悠然と佇むワンコ(人形態)が犬歯を覗かせ厳格な顔で朗々と告げる。
『我こそが白銀の魔狼ホワイトハウル。我こそが魔王陛下の牙! 我こそが大魔帝ケトスの一番の友! 後からやってきた冥界神などに、その席を譲るつもりなど皆無!』
ホワイトハウルが主神としての輝きと光を放ち。
嫉妬の魔性としての力もオン!
ついでに。
魔王城の周囲に、私も知らない天の導きの波動が生まれ始める。
『いいだろう――貴様のフィールドである冥界に下り。どちらが上か、はっきりとさせてやろうではないか!』
あ、これ。
ホワイトハウル……既に大いなる導きの加護も取り込んでるな。
こいつ、女神――というか力ある女性全般に好かれるからなあ……もう認められているのだろう。
……。
勝負は見えているような気もするけど。
レイヴァンお兄さんは、開いた力の差に気付かずフフン!
「モフモフわんこ、後で吠え面をかくなよ! 俺様が勝ったら、そのモフモフ、思う存分ナデナデし続けてやるよ!」
あ、やっぱりモフりたいんだ。
お兄さんも本来なら比類なき存在で、絶対に負ける事なんてないんだろうけど。
どうも私達と関わると、貧乏くじを引かされているような気がする。
まあ彼らがやり合っているうちに。
私とロックウェル卿はカサカサカサ。
魔王城の中を散策して、彼らが貰う筈のチョコを横取りして回ったのだった。
◇
騒動も落ち着き。
やっぱりワンコが勝ったと連絡を受けながら戻った我が部屋。
そのコタツテーブルにそっと置かれていた袋に私は、うにゅーん?
ゴソゴソとその袋を開けると。
炎の魔術で作られた燃えるチョコ菓子がキラキラと輝いていて。
猫の瞳も輝かせる。
『直接渡してくれればいいのにね』
まあ、これもまた思い出かなと。
私はキラキラ輝く炎のお菓子を、じっくりと眺めるのであった。
幕間6
三獣神の集い(チョコ)~おわり~




