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歪み ~ニャンコの瞳は何を見る~その4



 歓迎会が行われているレストランを囲む謎の集団。

 殺意ある者達。

 大魔女曰く、おそらく主神を滅ぼした導きの女神教徒――らしいのだが。


 大魔帝ケトスこと麗しき猫魔獣な私は、モフっとお顔に怒りマークを浮かべて。

 ギロリ!

 きしゃー! っと毛を逆立て威嚇音を立ててしまう。


『君、今。デブっていったかい? この冬毛で膨らんでいる素晴らしきモフモフに、デブっていったかい!?』

「はぁ!? たりめえだろうが、そりゃデブ猫のてめぇしかいねえだろ!」


 前に出てきた神父服で人相の悪い男が、三日月刀を手にフフンと嗤う。

 サメのような牙が目立つが、種族は人間だ。


 ころしても、いいよね?

 まあ――殺すのは情報を入手した後だけど。


 冷静を意識して。


『それで、ここに何の用かな? 君を殺す前に確認しておきたいんだけど、駄目かな?』

「俺様を殺すだと? あー、いやだねえ、雑魚がピーピー! たかが使い魔、たかが猫魔獣如きが俺様に質問できる立場にあると思ってやがるのか!? ああん!?」


 嗤う男。その三日月刀の表面には既に血がついている。

 垂れる赤黒い体液がポトリと石道に落ちる。

 ……。

 死の気配も相手から感じ取ることができるが――まあ、誰かを殺したと考えるべきか。


 抹殺は確定として。

 私は瞳をスゥっと細める。


『おや? 猫魔獣如きなら簡単に殺せると?』

「たりめえだろ」

『なら、教えてくれたっていいじゃないか。こういうのは人間達なら冥土の土産っていうのかな? それとも、こんな猫一匹に怯えて口にできない程、君達は弱いのかい?』


 猫口に魔術と言霊を乗せて扇動する、と。

 くぉぉぉん!

 男の瞳が紅く光り始める。


 判定は――成功である。


「ふん、まあいい。なら教えてやろうじゃねえか! 血の宴だ! 抹殺抹消、大虐殺に決まってるだろう! そこにいる生徒共と南からやってきたっていう聖女候補と姫さんと野郎、それと戦場の猟犬。全員な!」

『な、なんだってー! その理由は!?』


 くわっと口を開いて怯える私に気をよくしたのか、男は牙を尖らせフフーン!


「はぁん!? 怖いのか? 怖えんだな!? ぶはははははははは! なら教えてやるよ、教皇様の命令に決まってるじゃねえか! てめえら学園の連中に、無駄な知識をつけさせたくねえんだってよ! なにか企んでやがるってのはもう分かってるからな!」

『へえ、教皇様ねえ』


 ちなみに。

 この口の悪い神父男であるが。いわゆる冥土の土産のお約束で、愚かに口走っているわけではない。

 私の術中にハマっているのだ。

 宣教師魔竜が使っていた言葉による誘因。魔力を乗せた話術である。


 前回の事件で使い方がちょっと上手くなったんだよね~♪

 成長している私、偉い!


『私達が王都へ向かったと、何かを企んでいるとどうしてキミタチは知っているのかな?』

「んだ? てめぇ、そんな事も知らねえのかよ。神は常に見ている。我らの女神の瞳はいつだって――」


 女神の瞳?

 感知系の魔術か奇跡だろうか。あと少し情報を引き出したかったのだが。


「愚か者がぁああああああああああああぁぁぁぁぁ、キサマ! 敵の術中にはまっているぞおおぉぉぉ!」


 怒声が、別の街路樹から飛んできて――。

 黒刀の一閃が疾風の如く空を切る。


 ザシュゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウウウウゥゥッゥゥゥゥゥゥゥゥ!

 スパン――ッ!

 ぐるりと回る男の首。

 サメ牙が、擦れた息を漏らす。


「あ? あれ…………夜空が見え……っ」


 出てきた伏兵は一人。

 まだ奥の方にもいるようだが――。

 扇動の力で情報を引き出していた私ではなく、ソレはサメ牙神父男の首を刎ねていたのだ。


 ぐじゃっと男の首が街路樹にぶつかり跳ねて――土に落ちる。

 私は冷めた瞳でそれを見て。

 現れた新しい影、軍服姿の男に目をやる。


 ナイフのような尖ったイメージの男である。

 抜刀を得意とする軍人、なのかな。


『ふむ。もう少し情報を聞き出したかったんだけど。仕方ないね。君、仲間まで殺しちゃうなんて、けっこう外道だね』

「滅びず! 我等は滅びず! 女神様の加護がある限り! 我等は滅びずぅぅううっぅぅぅぅう!」


 うっわ、こいつもなんか変なヤツだし。

 かかわりたくないなあ。


『いや、思いっきり滅びてるじゃん』


 その辺を揶揄ってやろうと思っていたのだが。

 街路樹の土の上。

 死んでいた筈の男の首が、サメ牙を覗かせ騒ぎ出す。


「ってええな! なにしやがる!」

「ヴァァァッァアアアアアアアァァァァルス! 貴様が、貴様が! 貴様が我等の情報を漏らそうとしたのが悪いのではないかぁぁぁぁっぁぁあ!」

「は? どうせここで死ぬ奴だ、ちょっと情報を漏らしたって問題ねえだろうっ!」


 生首と軍人が喧嘩をし始めているが。

 なるほど――。

 とてとてとてと近づいて、紅い瞳を輝かせ私は猫口を開く。


『へえ凄いね! ガラの悪い方の君、不死属性持ちなのか! 種族はただの人間なのに、どういうインチキをしているのかな?』


 私や聖女教師マイルくんのような死なない能力者のようである。


 まあ、生きているというのなら都合がいい。

 ほんのりと魔力を乗せ放った私の言葉に、生首はニヒィィィ!

 喜び勇んでニョコニョコと自らの胴体に進みながら。

 瞳をくわ!


「はーっはっははは! 驚いたか駄猫! そりゃあ俺様が――」

「ヴァァァァァッァアアアルス! 口を、クチクチを開くな! こやつこやつこやつ! 扇動の力を用いた言霊使いだ、ただの猫魔獣と侮るでない!」


 ありゃ。

 軍服男の方にネタばらしされちゃった。


 魔術の種を明かすなんて、礼儀知らずな奴である。


『つまらないね、君』


 せっかく教皇様とかの情報を引き出したかったのに。

 ヴァルスとよばれたサメ牙神父の生首が胴体にくっつき、それは普通に会話をし始めた。


「はん! なるほどな! どうりで俺様の口が軽くなっちまったわけだ。そりゃこの天才神父、ヴァルス様がペラペラ情報を漏らすわけねえもんなぁ!」

「ヴァルス、油断をするなと言われていただろう」


 軍服男の方の声音が変貌する。

 湧き上がる殺意が、私のモフ毛を揺らし始める。


 キィィィン。


 音と共に軍服男の足元から広がるのは五重の魔法陣。

 独特なポーズで抜刀術のスキルを発動させ、待機しているようで。

 ふむ。

 五重の魔法陣ならば、まあ人間としてはかなりの使い手なのだろう。


『一応聞いておこうか。話し合いを望んだりはしないのかい?』

「教皇様の命と知られた以上は、稀少なネコ魔獣といえど生かして帰すわけにはいかんな」

『教皇様とやらはこの世界が滅びに向かっている事を知っているのだろうか。一応こっちは世界の崩壊を喰い止めようとしていてね、協力できたりする可能性ってのを、確認したいんだけど』


 告げる私に、むしろ抜刀男の殺意が増す。


「ならぬ、ならぬならぬならぬ! 滅びこそが、我が女神の正しき導き。あの方の愛! それを喰い止めようというのなら――貴様は紛れもない敵である!」


 ナイフのような冷淡な顔つきが、かわいい私を睨みつけている。

 ジャンキー顔負けの、ぐーるぐるぐるな目である。

 おー、怖い怖い。


「なあなあ、ウォールス! じゃあ持って帰ろうぜ! 正しき導きに従う俺様に職務質問なんてくっそ、くだらない理由で邪魔してきたクッソ生意気な連中はもう捌いちまったから、もう肉が残ってねえんだよ。なあなあ! いいだろう!」

「ヴァルス。きさま、また無駄に人を殺したのか」


 捌いたって。

 まあ、言葉通りの意味か。

 ようするにここを取り囲んでいた異変に気がついた街の役人を殺した。

 ということだろう。


 ふむ。

 意識を広げてみると、確かに周囲に死の意識が転がっている。

 私なら、今でも間に合うか。

 ……。

 うがぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 見ちゃったからには助けないわけにはいかないじゃん!

 役人なら民間人ではないとはいえ、無辜なる住人だろうし。


 さて。

 少なくとも導きの女神教とその教祖様は私の生徒を殺す気満々みたいだし。

 当面の敵ってことでいいよね。


 仕方ない。

 挑発状態を維持するようにして、一度殺しとくか。

 優先的にこっちを狙うように呪っておけば、関係ない町の人を襲えなくなるだろうし。


 魔力と殺意を完全に隠して、私は猫口をうなんな。


『ねえ、君達ちょっといいかな?』

「ああ?」

『たぶん。そっちの軍服男さんも不死なんだよね? もし再生不能なほどのダメージを受けるとどうなるんだい?』

「ありえねえが、まあいい! 教えてやる! セーブポイントでリポップするだけだ、何度殺したって無駄! 正しき導きに従う俺様達に死はねえ! どうだ、こええか! くひゃははははは……は……って、あれ?」


 闇の中。

 紅き瞳を輝かせる私の影が広がっていく。


 ざざざ。

 ざざざざざざざざ。


『良かった――リポップするならまた今度遊んであげられるね。もしかしたらヒトガタ君と同じリポップ式なんじゃないかなあって思ってたけど、ビンゴか』

「ウォ-ルス! 油断するんじゃねえぞ、こいつ、なんかヤベエ!」


 闇猫の影に侵食されていく空間を見渡し、ようやく神父男は気が付いたのだろう。

 いつのまにか相方が消えていると。


「おい、ウォールス?」


 男の三白眼が、広がる。

 その先にあるのは、灰。

 黒い煤。

 歪んだ人の形が見えている筈だろう。


 軍服と黒刀が遅れて落下し、カランカランカラン……。


 さぁぁぁぁぁっと消えていく灰を見て、歪んでいく視界の中で男は何を想っているのだろうか。

 瞳が――。

 声が、喉が魔力が――揺れている。


 三日月刀を掴むその手に、濃い汗が浮かんでいる。


「てめえ! なにしやがった!」

『何って殺しただけだろ?』


 突如相手の肩の上に顕現して、耳元で囁いてやった。


『いいじゃないか、どうせリポップするんだし』


 それだけなのに、男の肌は毛穴を開き――ぞっと瞳を見開いていた。

 さすがにもう察したはずだ。

 私がただの可愛いだけの猫魔獣ではないと。


 膨らむ魔力。


「糞野郎がぁあああああああぁぁぁ!」


 襲う三日月刀の一閃!

 斬撃と共に振り返ったサメ牙神父だが――むろん、既に私は肩の上になどいない。


 刀の上に、ちょこんと立って、グヒィィィィィィィィィ!

 とてとてとて。

 肉球に魔力を這わせ刃の上を歩き。

 わざわざ目の前にまで顔を寄せ、ぎりぎりまで近づいて。

 紅き瞳で男の瞳を睨んでやる。


 猫の吐息が。

 男の前髪を揺らす。


『君、もしかして――弱い?』

「なっ……」


 くぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっと男の瞳孔が更に広がり、額に青筋が浮かび上がる。

 おそらく言われた事のない。

 寝耳に水な言葉だったのだろう。


「てめえぇぇぇぇぇらあああああああぁぁ――、作戦変更だ! 糞生徒どもなんて関係ねえ! 隠れてないで手を貸しやがれ! 俺様のウォールスを殺しやがって! 糞ネコ、クソクソクソ――殺す、殺す、殺してやる!」

『誰に言っているんだい?』


 言葉を受けた私のまんまるな瞳が、ぎんぎらぎんと照り始める。


「なんだ、てめえその貌は。少し素早い程度で、調子に乗ってると――っ、なんだ、なんで誰も反応しやがらねえ……っ」

『なんで、だろうね』


 猫口だけを動かして。

 にひぃぃぃぃ!

 あー! 外道を外道戦術で倒すのって気分がいいね!

 私、猫魔獣だからね。

 残虐な狩りを楽しむ本能が存在しているのだ。


 別に。

 デブって言われたことを根に持っているわけではない。

 そう。

 これはあくまでも!

 リポップしたとしても私を狙い続けるようにするための!

 挑発状態の維持が目的なのである!


 はい、証明終了!


「おい……、まさかてめえ……っ!」


 男の声は引き攣っていた。


 闇の中。

 げひぃぃっと猫の牙を覗かせ嗤ってやる。


 私はパチンと肉球を鳴らし――ぶしゅぅぅぅぅぅぅうう!


 紅い鮮血が雫となって降り注ぐ。

 周囲を濡らす雨。


「雨っ……?」


 もうとっくに終わっていた。

 街路樹の影にいた伏兵どもを殺していたのだ。


 囲まれていたんだから、まああっちにもいるよねと空間に干渉。

 同じ歪みを持つ魂をロックオン!

 無辜なる者をいたずらに殺した事のある者限定で強制転移。

 魔力を封じ、空中に飛ばしてやったのだが。


 なんか全員浮かんじゃったんだよね。


 ちょっと加減を間違えたせいで、転移した瞬間に内臓を壊してしまったようで――。

 空からグチャグチャグチャっと贓物をまき散らし。

 ソレらは落下する。


 男の顔が軋む。

 ぐにゃっと歪む。


『あー、これかい。ごめんね、もう壊れちゃったよ』


 引き攣った顔で地を見るサメ牙神父の瞳から、どっと汗が滲みだす。

 額から落ちる冷や汗が、滴っているのだろう。


「なんだ……よ。これ……っ、おめえら、なんでそんなところにいるんだよぉおおおおぉぉぉ! なんで死んでやがるんだよぉぉおおおおおお!」

『ありゃ。君たち以外は不死じゃなかったのかな。それは気の毒だったねえ、いやあ本当に気の毒だ。気の毒過ぎて、くくく、くははははははははは! 実に愉快ではあるまいか、我の前で泣くか! 喚くか! 良いぞ、良い! もっと憎悪せよ! もっと我を楽しませよ!』


 魔族としての私が前面に出始めて、ギヒイィっと哄笑を上げる。

 ぐは、ぐははははははははは!

 憎悪を浴びた私の吐息が、魔術となって発動する。


 呪われし獣の咆哮。

 呪怨がヴァルスと呼ばれる不死の男の身体を蝕み、その肉体を歪ませる。

 落ちる身体を見下し。

 憎悪の魔性としての私が、牙を輝かせギシりと嗤う。


「かはぁ……っ! か、からだが……う、ぐお……」

『貴様、自分が強者だと思っていたのだろう? 絶対に負けないと思っていたのだろう? ああ、たまらない。他者を殺めるのは好かぬが、殺すなら貴様のような外道に限る』


 なぜこんなに脅かしているのか。

 理由は単純。


 さっきも述べたが、挑発状態を維持して攻撃ターゲットを私に強制固定させる事。

 リポップや再生で復活して、私の知らない所で民間人を襲ったりしたら面白くないからね。

 そしてもうひとつ。

 なんとなくムカついたからである。


 だいたい、無辜な人間を遊び感覚で殺しちゃうような人間なんて別にいなくても、ねえ?


 ……。

 やっぱりなんかムカつくし、もうちょっと虐めとくか。

 ゲシゲシゲシと呪いで内臓を軋ませてやる。


「痛い痛い痛い…っ、やめ、……っ、ぐ、ぐ」


 ぐはははははは!

 悪趣味というなかれ。

 ここで徹底的にやっておくことが、街の人間の安全に繋がるのだから。やってることは外道でも、わりと本気で人助けに繋がるのである。


 そう、これは人助け!


 くどいようだが。

 別にデブと言われたことを、ネチネチネチネチと根に持っているわけではない。


 かわいい、おデブちゃんね~♪

 と。

 デブ。

 では、雲泥の差なのである。


 さあて、どうしてくれようかと思った。

 その時だった。

 魔術メッセージが私のモフ耳に届く。


「ケトス先生。あなたのエリカです。大魔女からの伝言です、殺されていた街の警備員の蘇生ができるのなら手を借りたい……と、ええ、遺体はアタシのフェニックスで回収済みです。不死の属性を変容させた尾羽で魂の消失を防いでいるのですが……もうしわけありません、アタシの力で蘇生魔術はさすがに……」


 憎悪を滾らせていた咢を緩め、私は教師の声で穏やかに言う。


『いや、素晴らしいよ。話を聞いてすぐに召喚獣を動かしていたんだね。可能なら元の人間の形に整えておいてくれると――』

「はい、すでに完了しております。先生がご教授くださった、蘇生の確率を上げるための遺体保存の授業を覚えておりましたから」


 うーみゅ。

 マジで優秀でやんの。

 自らの身はちゃんと隠したまま、万が一やられても問題のない不死のフェニックスを使い犠牲者の回収を行い――更に、蘇生の確率を高めるための処置を完ぺきにこなしているのだから。


 あの模擬試合で一枚皮がむけたのかな。

 つまり。

 私の教えが良かったのである!


『分かった。大変だっただろうけど、よくやってくれたね。ありがとう――ゴミを片付けたらすぐに行くよ』


 とりあえず気が晴れたので。

 私はいつもの黒猫顔に戻って、ぶにゃん!


『さて、外道で遊ぶのもこれくらいにして。殺そっか。そろそろ治療を開始しないと面倒なことになるし。こっちの冥界に降りた事はないし、魂を拾いに行くのも大変だろうしね』


 ぺちぺちとサメ牙男の額に肉球を落とし。

 メキリ、メキリ。

 肉球の重圧と石畳に挟まれる外道の骨格が、歪んでいく。


「糞がぁぁぁあああぁぁ!」

『まーたそれ。あまり複雑な言葉は言えないのかい? まあいいや』


 浮かんだ石畳。

 グリグリとテコの原理で男の額を押し。

 首を捻じ曲げながら。


『急いでるからそれじゃまたね――今度会った時も、殺してあげるよ。何度も、何度も何度も。でも、これだけは先に言っておこうか。毎回言ってあげるつもりだから、よく聞いておくれ』


 いつもは抑え隠している憎悪を覆う事なく顕現させ。

 私は紅い瞳を輝かせる。


 ギラギラギラギラ。


 サメ牙神父が、ひぃっと息を呑んでいた。

 その次の瞬間。


『君――つまらないね』


 言って私は前脚を踏み下ろした。

 ぐじゃぁ……。


 きっと。

 歪んだ男の瞳と心。

 外道となった男の脳裏には――耐えがたい恐怖が刻まれた事だろう。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 皮肉だね!悪党の血のほうが綺麗な花が咲く…。 とあるキャラの台詞引用(笑)見事な赤い花を外道達が咲かせてくれました((o(^∇^)o)) [一言] 黒幕教皇って事と女神がなんちゃらって事…
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