大魔族の影 ~這いずる魔猫の誘惑~その4
静かなる恐怖が広がる魔王城風玉座の間。
誰もが本能的な恐怖に押しつぶされそうになっているのだろう。
んーむ、ちょっとまずいかもしれない。あんな光景をみたら仕方ないけど、みんな空気に呑まれているな。
魔族として残酷な世界にも慣れていた私や、感覚が人間とは違うベイチト君は平常心を保っているが、はてさて。
蟲魔公ベイチトくんは髑髏状の杖を僅かに傾け、ギチギチと囁く。
「もしや、四大脅威の情報、伝わっていない?」
「それなら、それでいい。知らないなら、知らないでいい。応え、求む」
「基礎情報共有。重要。些細な認識の違い、戦闘に支障をきたす恐れあり」
おーい、人間ども―。こたえろー。
……。
尻尾をパータパタと振ってしまう。
だーめだ、こりゃ。ほぼ全員、精神に状態異常を受けている。
たぶん女教皇ラルヴァのスキルとみて間違いないな。目にするだけで状態異常を与える、そんな自動発動のスキルが存在するのである。
そういう奴って大抵はラスボスクラスに厄介なんだよね……。
過去の映像なのにこれほどの影響を与えるとは、かなりの強敵なのは間違いないか。
仕方ないか。
私はドテリとわざとらしく大袈裟な仕草でクッションに座り直し、くっちゃくっちゃと蛸イカの燻製を噛み千切る。
蛸イカ燻製の足は、マンドレイク、植物の根のようにみえなくもないだろう。
くっちゃくっちゃくっちゃ、くーっちゃくちゃくちゃ。
静寂の中では私の咀嚼音がよく響き、次第に私に目線が集まってくる。
さて、このタイミングかな。
『不謹慎に見えるかい? あんな映像を見せられて、ダラダラしているのは場違いだと、そう思うモノもいるのだろう? けれど、これも重要な作戦さ。あまりあのマンドレイクの狂気に囚われない方がいい。相手のペースに乗ったとして、何一つ利点はないのだからね』
言って、私は肉球を鳴らす。
魔王城風玉座の間。
その壁に埋め込まれていた守護石像達の瞳が、ブォォォォオンと輝き始める。
私の魔力に反応したのだ。
『女教皇ラルヴァ。あのマンドレイクはおそらく、狂気によって相手のペースを崩す能力を持っている。そうして君達が怯んでしまう事も、彼女にとっては有利な条件となってしまうだろう。少し、落ち着いた方がいい』
告げて――私は、うにゅぅぅぅぅっと身体を伸ばし、ズジャ!
精神防御の祝福を全員に展開。
バササササと開く聖者ケトスの書が、皆の身体を淡い肉球の光で包んでいく。
恐慌状態を防ぐほどの結界を一人一人に張ったのだ。
これでステータス異常としての恐慌状態が進行することはなくなったが、人の心というモノはそう簡単なモノではないからね。
精神状態は乱れたままなのだろう。
さて、どうしたもんかと思った時。
「それでは陛下、みなさま。わたくしからよろしいでしょうか?」
人間たちの重い沈黙を破ったのは、女教皇ラルヴァと同じく聖職者の立場にあるもの。
グロッキーな映像を見せられても既に平常心を取り戻し、そして冷静さを保っていた神官長ミディアム女史である。
女の人って、こういう時は案外強くなるというが――実際そうなのかもしれないね。
空気を切り替えるためだろう。
あのラルヴァとは対照的に、まるで聖母のような笑みを浮かべる。
「ありがとうございます、ハウル卿様。このような素晴らしい能力上昇の祝福。更にあらゆる精神攻撃を一度だけとはいえ完全に弾き返す最上位の結界。神話の領域にある大魔術を瞬時に展開なさってしまう御方――ハウル卿様。どうですか、皆さま。この方が今だけとはいえ味方となってくれているのです。これほど心強い事が他にありましょうか?」
恐怖に怯える周囲に優しく語りかける声。
神官長の穏やかな声音には魔力が含まれていた。
「わたくしは思うのです。このままでは……あの四大脅威が最後の狂気。聖職者の姿を借りた狂信者、人を喰らい禍々しい儀式を行うあの女教皇に負けてしまう。当然でしょう? 伏せてばかりでこの方々の御気持ちさえも無視してしまい、呆れられ、見捨てられ――このまま滅んでしまう未来が見えるのです。それでいいのでしょうか。わたくしは嫌です。物心ついたころから聖職者としての道を歩んでまいりました。平和になった世を望み歩んでまいりました。けれど――やはり、わたくしとて乙女……戦わずにいられる世界で、恋だってしてみたいのです」
聖職者として上に立つ者にとっては、淡い幻想。けして、抱いてはいけない泡沫の夢。
それが叶わないことは誰だって知っている。
彼女自身が一番知っているだろう。
だからこそ――寂しそうな微笑を零し、彼女は続ける。
「ごめんなさい、最後のは冗談です。生まれて初めてついてみた、下手な……嘘。皆さんには分かっていましたよね? わたくしったら、不謹慎でしたわね。けれども――人間として、わたくしにも微かな欲望はございますわ。口にしてはいけない感情だって、本当はあるのです。だから――まだ、死にたくなどない。生きていたい。そのためには、目覚めるであろうあの脅威に立ち向かうため、このお二方と共に前に進む。わたくしは自らその道を選びたいと思いますの――神に仕える身でありますが、それでも……今は魔族の方であろうと、この方々をお慕いし、共に歩んでいきたいと、そう思っているのです」
ぱぁぁぁぁぁっと、髪を靡かせる彼女の後ろに後光が見える。
幻覚ではない。
これ。
魔力だね。
聖職者が扱う教え諭すためのスキルだね。
まあ言い方を変えれば洗脳に近い扇動スキルである。
演説のふりをした、洗脳だね。
清楚な顔をして、なかなかエグイ魔力を扱う子だ。そういや魔竜とも戦うって言っていたし、伊達や酔狂で神官長の立場に上がったわけではないのだろう。
気付いた私にちょっとテヘペロをして、しぃぃぃぃぃっと黙っているように合図を送ってくる神官長ミディアム。彼女は美しい顔立ちをそのままに手を組み始めた。
祈りを捧げるように胸の前で手を合わせ、微笑む。
それはさながら聖女を讃える絵画の一枚。
「どうか皆さま、我ら人間の力を御信じ下さい。このような偉大な魔族の方々が力をお貸しくださったのも、運命なのでしょう。神は我等をお見捨てにはなっていない、いえ、たとえお見捨てになっていたとしても拾う神もある――ということなのですから」
本来なら神以外には祈らない聖職者の長が、こうして私に祈りを捧げているのだ。
人間たちを守るために――それは結構、深い意味を持つ行為でもある。
重ねるように、眠い瞳をなんとか開けて私が言う。
『ま、大魔帝ケトス様も異界の一部では神様として祀られているからね。滅びる君たちを見捨てたりはしないだろう。それにホワイトハウル、白銀の魔狼も今回の件では味方をしている。更に言うのなら、あのネモーラ男爵に致命的な一撃を与えた魔帝ロック、神鶏ロックウェル卿と呼ばれる強大な大魔族も味方をしているんだ。三大神獣が味方だからね、君達はまあ恵まれているんだよ』
ミディアムくんと私の言葉に安心したのだろう。
人間たちの恐慌状態はだいぶ治まっていく。
「それではベイチトさま。わたくしが引き続きお話をさせていただきますわ。陛下もそれで構いませんか?」
ベイチトくんと王様が頷く。
聖書を顕現させ、ページを捲りながら神官長は語り始めた。
「四大脅威――それは神話の時代から現存する大魔族。その誕生は不明。神々の戦いの中で生まれたとも、異界から種が齎されたとも言われておりますわ。聖書の記述でも謎の存在とだけ――そして、彼の者たちを退けるために我に祈りを捧げよ……と。事実、わたくしたちは神の教えに従い、ネモーラ男爵と長き戦いを繰り広げていました――神の奇跡に何度も頼り、祈りを捧げ……わたくしたちは神の守りの中、生き抜いてきたのです」
今の一節に、私はふと違和感を覚えた。
が、今は関係ないか。
「四大脅威の誕生には他にも色々と説がありますが――確かな情報は何も……ただ、強力な魔族であることは間違いなく。世界を自らの種で埋め尽くし、人類を滅ぼそうとしている――わたくしどもにはそう伝わっておりますわ」
それに続いて宮廷魔術師団の方から声が上がる。
「実際、ネモーラ男爵は長きに渡り我らと戦いを続けておりましたからね。何度退散させ、滅ぼしても蘇り……また侵食を開始する。その度に、我等は大いなる輝きに祈りを捧げ、恩寵――神の守護という名の力を借り受け、武器とし戦い続けてまいりました。まあ、最後は追い詰められて逃げた地にて暗躍し……あちらの世界で滅びたわけですが」
と、青年宮廷魔術師のワイルくん。
細い瞳が印象的な彼の目線の先に居るのは――特等席のクッションを抱き枕に女性神官たちの膝の上でチヤホヤされて、ぶにゃーんと寛ぐ私。
やはり猫の姿であっても私は美しい。
渋い大人の魅力は人間を虜にしてしまうのだろう。
このまま、人間どものメスをぜーんぶ我の眷属としてくれようか!
……。
まあ、真面目な話をすると――人間を守るための行動なのだ。
先ほどの狂った女教皇の映像の影響。その自動スキルで恐慌状態になりかけていた人間、特に弱った女性たちの精神を私の誘惑で上書きし、その精神状態を維持しているのである。
その副作用でこのハーレム状態なのだ。
まあ中には普段キリっとしてそうなオッちゃんや、青年騎士とかもいるが――我をチヤホヤと持て囃すのならば良し! 我を讃えよ、崇め奉るのじゃ!
にゃはははははは!
そんな影ながらの努力を知らず――。
ワイルくんはあからさまに顔を曇らせ私にちくり。
「えーと、ハウル卿? もう少し真面目にしていただきたいのですが……」
『すまないね。今……意識を他に集中させていて……まあ、私に構わず話を続けてくれたまえ――。ちょっと、人助けと……私の世界の人間の回収をしていて。眠いんだよ』
「女性の方を侍らせるのが、人助け……ですか」
嫌味を言っている――かと思いきや、ワイルくんの視線はお姉ちゃんの太腿に向けられている。
それも、ちょっと遠慮気味に……。
……。
こいつ。
あのラルヴァの異様な空気に呑まれていないのか。ちょっと古いが、むっつり助平というヤツなのだろう。普通ならジトーっとした目で見てしまうのだが、これは頼りになりそうである。
少なくともラルヴァ戦では戦力として数えられるだろう。
だが、それよりも重要な事実に気が付き。
私はモフ耳とモフ尻尾をピーンと立てて悪戯貌で、にゃはり!
『もしかして、嫉妬しているのかい?』
ぶにゃはははは! ド直球で指摘してやったのだ!
「べ、別に嫉妬をしているわけではありません」
『んー、じゃあ……代わるかい? いま、魅了で精神を維持しているから、彼女たちは君にも自由にさせると思う。まあ……たぶん……起きたら白い目で見られるだろうけど。今なら君の自由にできちゃうよ?』
むろん、からかっているのである。
貌をかぁぁぁぁぁっと真っ赤に染め上げ、ワイル君が立ち上がる。
「わ、わたくしは! そ、そのような魅了に頼らずとも女性の一人や二人……いや、そういうことをしたことはまだ……ゴニョゴニョゴニョ……」
純朴そうな顔は、まあ有閑マダムに好かれそうではある。
空気はだいぶギャグ方向に持っていけただろう。
はぁ……手のかかる人間達である。
「とにかく――そ、そんな破廉恥なことはできませんよ!」
『にゃははは、ごめんごめん。なるほどね。君の方がよっぽど聖職者である彼女よりも純潔をって……いや、なんでもない。目線が怖いから、うん……ともあれ、なかなかやるじゃないか、あのラルヴァとかいう女からの精神汚染を完全に弾いている。そういういつも通りの反応はとても大事だよ』
言って、私は少しだけ真面目な貌を見せ――告げる。
『さきほども言ったが、本当に相手のペースにだけは呑まれてはいけないよ。脅すわけじゃないが、熟れたザクロのようにそのままガジっと齧られてしまう可能性もある』
凛々しく宣言したのだが、状況が状況だけにあまり説得力がないかもしれない。
ちやほやしてくれるお姉ちゃんの膝枕。
精悍な騎士達にフルーツの盛り合わせを持ってこさせ。
男女様々な美形を揃えた私はネコちゃん誘惑無双で酒池肉林。肉球マッサージを受けながら、半目で応える私は蜜ジュースをぐいぐい傾ける。
ごくりと、男も女もこのネコちゃんハーレムに息を呑んでいる。
まあ、ハロウィンキャットだけはご馳走の方に目を奪われているが――私はちょいちょいと肉球で読んで、カボチャ兜の猫たちにもご馳走を振る舞い、猫の吐息。
不謹慎に思えるかもしれないが、これは遊んでいるわけではない。
ああ! なんという悲劇!
良い事をしているのに、責められてしまう!
ああ、にゃんて哀れな私なのだ!
ぶにゃはははは!
我を責めよ! そして後に、後悔して詫びるのじゃ!
と――悲劇の勇者ごっこをしている私に目をやって、ベイチトくんが分裂しながら補足する。
「ハウル卿の言葉、真実」
「ヤツのペースに呑まれれば負ける。これ、照れ隠しでふざけているだけ。ハウル卿、人間たちを心配してわざとやっている」
ブンブンブンと蜂の群れが宙を舞う。
魔術計算式を空に書き込み、それを皆に提示し始めた。
「実際、あなた達の空気、変わった。ハウル卿の自己犠牲の冗談で、心拍数、精神の数値安定」
「自らに敵対心を向ける事により、相手の精神呪縛解く」
「これ、勇者が使う自己犠牲スキルの一つ。この魔猫、おそらく闇猫勇者の職業スキルも習得している」
え? なにそれカッコウイイ!
ベイチトくんの勘違いだろうけど、ダークヒーローっていいね!
ともあれ、こういうお堅い連中には数値を見せた方が理解してもらいやすいのか。
精神数値の変動で納得して貰えたようである。
なるほど、そこまでハウル卿は考えて――そんなざわつきと賞賛の声が私のモフ耳を揺らす。
いや、まあ実際その通りなんだけど。
んーむ。
こういう風に真顔で解説されてしまうと……にゃにゃにゃ、にゃんか、もどかしいぞ。
「さらに補足」
「ハウル卿、眠くウダウダしているのには理由あり」
「今、この世界に闇に這いずる魔猫の分身体、飛び散っている。世界を魅了し、ラルヴァの恐慌状態防ぐ防壁、準備している。それハウル卿の慈悲。おそらく、全世界の民間人、ひとりひとりに結界を張るため動いている。そして同時に、ラルヴァの様子、探っている」
それも見抜かれていたかー、あーせっかく隠していたのに―。
ドヤりたい場面だが、やはりそれは我慢して。
私は片目だけを開けて、疲れた息を吐く。
『せっかく、隠れてやっていたのに。ばらしちゃうんだね』
「我は言った。情報共有重要だと」
「ハウル卿、それはあなたにも含まれる。今、どうなっている?」
「状況説明。求む」
『とりあえず、今行ける範囲の人々にはマーキングをした。何かあったとしても三日以内なら蘇生すらも可能な状態にはできた。私の世界の人々の回収も完了している。問題は他の大きな国だね。さすがに無数に増やした分身体では、軍事国家の結界の中に侵入するには時間がかかるんだ。その間に攻めこまれたら――残念だけれど、私の力では助ける事ができない』
なるほどと、ベイチトくんは翅を鳴らし考える。
「それ、とてつもない領域の大魔術、大奇跡の複合儀式」
「神話魔術を超えた領域」
「並の人間ならば、ふつうは不可能。十年以上を費やしやっと数分、使えるだけの魔力量。多少、いまここで寛ぐハウル卿本体の精神が睡眠モードに入っていても責めない、推奨」
あ、もうネタばらしされちゃった。
もうちょっと皆に駄猫と責めさせてから明かして。
おお、我等はそんな偉大なる善行に気付かず愚かにも責めてしまっていたのかぁ……と詫びさせるシーンをやりたかったのだが、まあいいや!
これはこれで、ドヤポイント高めだし!
ついつい抑えきれずにニャフフとドヤに笑む私を見て、神官長ミディアムが頭を下げる。
「ありがとうございますハウル卿様――ベイチト様。四大脅威の話に戻させていただきますわね、わたくしどもはあなた方の情報をほとんど持っていない。そういう認識で進めて頂けると助かります」
頷く蟲魔公は続ける。
「そうであったな」
「我等四大脅威。世界を包み、自らの種植物で覆う本能を刻まれた魔族」
「なぜ、誰に作られたのか。それは語るのは我の仕事ではない。必要あれば語るが。必要ないなら語るつもりもない」
言って、ベイチトくんは微かに王様をちらり。
その辺りの情報は、封印された王立図書館に眠っていそうである。
まあ、今は直接関係はないだろうからこれは後回し。
「我等の本質は、普通の植物と同じ。生存し、魔力因子を残したいだけ」
「ただ、普通の植物と違い、世界を滅ぼすほどに強くなった植物、というだけの話。それでも実際には、世界滅ぼさない。あの女を除いては」
「虚栄の女教皇ラルヴァ。アレだけはその輪から外れ、暴走した。だから危険」
四大脅威、四つの植物の素体を空に描きながら彼女は言う。
「植物の本能、その最終目標は手段を問わず、自らの種を世界に広げる事。それは我らが生まれ出た時から刻まれた、使命」
「なれど我らは植物魔族。ただの植物とは異なる存在。魔王種とまでよばれる魔族同士、魔王の名を冠する我らが同時に侵攻すると、共に衝突する支障あり。故に、我等は同時に侵攻をしないよう創造主から、本能に刻まれた。同時に活動しない理由、そこにある。今回、ネモーラ男爵消滅、すなわち侵攻不能を確認し、我が動き出したことこそ、事実である証拠」
植物の素体は、一体、一体と消えていく――そして残されたのは。
「侵攻を止め、人の手を借り宿主を増やす、共生の道を選んだ我――人と手を結んだ我はおそらく、既に四大脅威の使命から外れた。故に、残りの脅威も活動する。これ、可能性絶大」
マンドレイクの根。
つまり、封印されていた一番厄介な女教皇ラルヴァが目覚める――と。
そういうことなのだろう。
誤魔化せそうにないって言っていたし、戦いは避けられない。
目を伏して、私は渋く考える。
大魔帝として、魔族として。
私に彼らを守る義務はない。けれど――まあ、乗り掛かった舟だ。
仕方ないから、守ってやるか――と、苦笑してしまう私なのであった。
まあ、お人好しだっていう自覚はあるんだけどね。
仕方ないじゃないか。
魔王様だって、ピンチの人をみたらついつい助けてしまうお人好しだったし。
そんな。
懐かしさとこそばゆさにネコ髯を揺らす私を見て――。
この国を預かる人間、カルロス王が申し訳なさそうに言った。
「のう、残りの三大脅威が封印したのであれば。その場所は分かっているのであろう? まだ眠ったままのラルヴァとやらを、今のうちに、こちらから滅ぼしに行くことはできんのか?」
――と。
たぶん、その方が倒しやすいし。
いつ攻めてくるか分からない相手を待つよりも確実で手っ取り早いだろうと。
王様は、渋い美貌をぽりぽりと指で掻きながら言ったのだ。
ものすごい沈黙が、周囲を走り回る。
……。
私は、くわぁぁぁぁっと猫顎を開き。
ベイチト君も、蟲の顎をぐわぁぁぁぁっと開き。
その手があったぁぁぁぁぁぁあああああと。
思わず叫んでしまった事は、言うまでもないだろう。
えぇぇぇぇ、なんだったの。この会議。




