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08 まぼろしと洞窟

 俺たちは草木のほとんど見られない、荒れ果てた峡谷を進む。

 ゴーレムはいまだ現れない。岩に擬態でもしていないかと注意しだすと、どこもかしこもゴーレムに見えてくる。


 目を凝らすと、遠くに自然の岩の寄せ集めのような一軒家ほどもある物体が動いているのが見えた。


「あれがホーリースラストのいけにえ?」

「そうだな……、いや、ちょっと待て二体いる」

「実は三体だったりは?」

「まぁあり得るが、何体だろうが闇雲に突っ込んだら死ねる。ちょっとコイツを試してみるか」


 ルーンダガーに祈りを込めると模様が赤く光り、俺の分身が現れる。

 HP1、金魚すくいのポイにも劣る紙耐久である。さらには攻撃すら全スカの幻影だ。

 使用者に影響を受けた自立行動(A.I)らしいが、どこまでお利口かは使ってみなければわからない。


「おー、意外と見分けつかないね」

「様子みてから俺たちもいくぞ」

「りょーかい」


 さっそく幻影が足に攻撃を仕掛けにいった模様。さあどうでるゴーレム。

 ゆっくり両腕を振り上げ……幻影の攻撃が着弾すると同時に腕を振り下ろした。

 スゲー迫力。地面が陥没し、轟音と振動がここまで伝わってくる。


「いくぞ!」


 幻影の安否は見えないが、俺はそれと同時に駆け出し、腕を橋にしてゴーレムを駆け上る。

 ニアは一心不乱にホリスラを撃っている。

 撃ちだすというより、目に見えない爪で引っ掻いてる印象だ。


 ゴーレムの肩に登り切った俺は、すかさず頭部に向かってガードブレイクを放つ。

 なかなかの手ごたえ。頭部にあたる部分にひびが入ったがもう一息だ。


 一方分身はノーダメでゴーレムの足元をすり抜け、奥にいるもう一体のゴーレムの牽制に向かった模様。

 思ったより有能だった。

 ニアも俺の幻影の働きぶりに感嘆している。


「幻影のほう、ダメージ入ってないけど実質3対2なとこあるね」


 こちらのゴーレムは腕で俺を振り落とそうと頭上を薙ぎ払おうとしたが、一足先に大剣を首の隙間に突き刺し、柄にぶら下がってやりすごす。

 唸るような風圧が頭上を抜けた。まともに食らったらただじゃすまないだろう。

 そのままねじるように大剣を引き抜きながら、着地と同時に大剣で足元を薙ぎ払う。

 ダメージは少なかったものの、足に強い衝撃を受けたゴーレムが揺らいだ。

 そのタイミングに合わせてトドメのホーリースラストが入り、ゴーレムは地面に崩れ落ちた。


ゴーレムの攻撃は高火力でそこそこ範囲もあるが、やや鈍重で一つの大振りの攻撃に集中しがちである。

分身は結局自然消滅まで粘り切り、かなり安定して2体目も討伐できた。

完璧な連携の成功に、ニアと目を合わせてハイタッチをした。


峡谷を進んでいくと、ひらけた場所に出る。足元は平地だが、山に囲まれている盆地だ。

小さな湖の岸には草木が生い茂った光景は、岩だらけの道を進んできた俺たちには新鮮に映った。


「今まで殺風景だったけど、ここは明るくてキレーだねー」


ここからは怒涛のレベリングの舞台に繋がっていくわけだが、一歩タイミングを誤れば全滅は免れない。

成り行き次第では未知の領域に足を踏み入れることになり、かなりの長丁場になることも予想される。


「ニア、ここらで作戦会議だ」

「オーケー、ボス」


湖岸の茂みに転がっていた倒木に腰を下ろすと、ニアもそれにならって隣にすわる。


「あそこに洞窟があるだろ?入口の両脇に槍を持って立っているのがアンデッドウェアウルフだ。」

「アンデッド? この距離からだと鎧? で分かりにくいけど、よく見るときったない顔してるね。見張り役かな?」

「そうそう、目も腐ってて、鼻も麻痺してる。とはいえ、見張りをこなすだけあって、さすがにある程度近づけば気づく」

「素通りはできないわけね」

「掲示板の情報提供者いわく、速攻で片づけて中の偵察にいくつもりだったらしい。だが、一匹を倒したとこまでは良かったものを、もう一頭に雄たけびを上げられたそうだ。しかし、増援を呼んだかと思ったが新手が来る気配がない。気になっておそるおそる洞窟に潜ったところで、大量のスケルトンソルジャーに囲まれてタコ殴りにされてパーティ一同お陀仏って話だ」

「私たちも情報なく来てたらそうなってたかもね……」


ニアが思わず身震いをする。狭い通路で正面からしか来ないならラクなものだが、対策もせずに一気に囲まれたら何人仲間がいようが対処しきれないだろう。


「仲間を呼び寄せるというより、奥で待ち構えてるスケルトンに侵入者の報告したってことね」

「一応ヒールでスケルトンにダメージは入るらしい。まぁ、数も多いしそこそこタフだからエリアヒールのついでに巻き込むくらいか」

「正攻法じゃ返り討ち必至だと思うけど」


作戦開始だ。

俺は素早く走り寄り、片方のアンデッドウェアウルフの首を跳ね飛ばした。

相方のウルフが遠吠えを完遂するところをしっかり確認し、振り下ろした大剣で脳天をカチ割った。

掲示板との条件合わせだ。罠と分かっていようが、むしろ不確定要素は少ない方がいい。


「準備オーケー。これで経験値の群れが待ってくれてるはず。……よし、いくか!」


後ろからニアがついてきていることを確認して、怪しげな洞窟の中に潜っていった。


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