22 導かれし者たち
トーナメント閉幕後も、しばらく会場の熱は冷めなかった。
最終的な観客の数はざっと300人。
聞いた話によると、ゲーム内でのフレンド間のやりとりや、現実世界の掲示板やSNSであっという間に噂が広まり、周囲で冒険していた人や、ログオフしていた人たちが気になって見に来たらしい。
中には、ファースの街から観戦目的の強行軍も結成されたりもあったとか。
攻略最前線級のプレイヤー同士のPvPに興味をそそられた人や、お祭り騒ぎを楽しみたい人、ギャンブル好きの人など、観戦に来た理由も様々だ。
しかしパラレルワールドの都合で実際にチャンネルが合わなかった人や実際に足を運ぶ予定がなかった人がほとんどであり、未実装であるはずの視界動画配信を行ったハッカーの同時接続者数は数百万人になっていたらしい。
ちなみに優勝賞金はたけしとリゼで山分けしたらしい。たけしは次のイベント計画が捗るとうっきうきだった。
そんな中、後ろからか細い声が聞こえた。
「…………あ、あの……」
振り返ると、リゼがもじもじそわそわと、こちらを見上げている。
フードを被っていないので、普段ほとんど見えなかった銀髪と蒼い目に少し驚いた。
正直今回は本気で優勝するつもりでいたのだが、それを上回り勝利をもぎ取ってきた猛者にそんな態度をされて肩透かしをくった。
「お、本日の優勝者じゃないですか。優勝したご感想は?」
ニアがエアマイクをリゼの口もとにつき出す。
リゼはおどおどとしながら答えた。
「……す、すごい、あの、かっこよかった、です」
んん! そう言われると嬉しいけど、優勝した感想ではないかな。
「……あ、そうじゃなくて、うれしかったです」
リゼはかなり小柄で子供みたいだ。ニアがリゼをなでなでしながら言った。
「そんなに緊張することないよ、私もリゼのこと、すっごいかっこいいと思った」
リゼは顔を真っ赤にしてうつむいている。
かわいすぎる。戦ってるときは恐怖を体現化したみたいだったのに。
ニアが口に手を添えて、こそっと俺に耳打ちする。
「……ねぇ、ヤマちゃん、この子可愛すぎるんだけど。ぎゅーしていいかな」
「……俺に聞くな」
「……あの、……あの、ボク、ずっとひとりでやってて、たけしのパーティ4人でいつもいっぱいだったけど、なんか声かけられて、一緒にいたら楽しくてみんなやさしくて」
けなげすぎるぞリゼちゃん……
「たけしとトーナメントで一緒にたたかえて楽しかったけど、たけしみんなと仲いいからちょっとさみしくて、そしたらすごいかっこいい人いて、ふたりとも楽しそうで」
うつむいていたリゼが不安そうな顔を上げた。
「いっしょにいたいって思ったの」
「くぅうーッ!」
ニアが耐えきれず、リゼを抱きしめた。こんなけなげな子にここまで言われて、ほっておけるか!
「あら、面白い組み合わせね」
アイリスが俺たちを見つけて話しかけてきた。ニアとリゼは手をつないでいて、姉妹のように見える。
「あっ……」
俺とニアは声を揃えていったが、リゼは訳も分からずきょとんとしている。
「なにその『あっ……』って。私と会って何かまずいことでもあった?」
「すみません、アイリスさん、私たち、負けてしまいました……どうかお許しを………」
「ふふっ。許すも何も、あの試合を見て、本当にあなたたちって最高だなって思いが強くなったわ。その、リゼはどうしたの? 手なんかつないじゃって」
「この子、うちの子になったんで」
うちの子って……リゼはまんざらでもない様子で照れている。
「あなたたち、優勝者までパーティに引き入れたの? ちなみにロントは『時すでに時間切れ』とか言って、ログアウトしていったわ」
「俺はロントと仲良くはなれなかったけど、あれほどの立ち回りができる人間が活動休止するのは惜しい気がするな。俺とのサシで相打ちにまで持ち込んだ男だ」
「そうね、私は寂しいけど、引退したわけじゃないから、そこまで重くなることはないわ。それで、決勝戦前に言った言葉、私の加入の件、返事を聞かせてもらえるかしら。嫌なら断ってもらっても構わないわ」
「俺としては、アイリス以上の適材はいないと思ってる。もし来てくれるならバーサーカー、アサシン、ウィザード、ヒーラー。確実に相性抜群のパーティになる。ニアも同じ意見だ。リゼはどう?」
「……すごい。一日で4人そろっちゃった。アイリスさん、よろしくおねがいします」
「嬉しいわ。これからの冒険が楽しみね。このメンバーだったらどこにだっていける気がするわ。これからよろしくね」
そう微笑むと、少し真剣な顔に戻って続ける。
「それならまず、仲間としてやっていく以上、仲間の能力をしっていることが大事だと思うの。連携の基盤として大事なことだわ。義務ではないから、嫌だったら言ってちょうだいね。責めたりしないから」
アイリスの言葉に同意した俺たちは、順番にステータスを公開していく。
ヤマタ【バーサーカー】Lv34
HP 341
STR 223
VIT 84
DEX 52
INT 59
AGL 77
LUK 18
【バーサク】
戦闘時HP30%以下で自動発動。攻撃力・俊敏上昇、防御低下
【ブラッディカッター】
HPが残り少ないほど威力が上がる中距離攻撃。HPを少量消費して発動する
【ガードブレイク】
敵のガード状態を打ち砕き、ダメージを与える。また、防御力の高い相手ほど威力が上がる
【狂気の裁断】
バーサク状態でのみ発動可能。HP20%を消費して、中範囲高火力攻撃
【血の洗礼】
一定時間、戦闘中の敵味方全員から継続的にHPを吸い取る陣を形成する。
陣の発動時間中、術者が与えたダメージと、吸収されたHP量に応じた威力の投擲槍が使用可能になる。
ニア【ヒーラー】Lv31
HP 262
STR 32
VIT 70
DEX 61
INT 150
AGL 53
LUK 255
《スキル》
【ヒール】
PT中距離単体回復
【エリアヒール】
PT中距離範囲回復
【ホーリースラスト】
中距離単体攻撃
【ミラージュカウンター】
自身に放たれた魔法攻撃の効果を軽減し、対象に自身のステータスをソースとした受けた魔法と同等の術でカウンターを行う。カウンターには威力の上昇補正がかかる
【ヘブンズゲート】
味方PTが利用可能なゲートで2つの地点を結ぶ。任意の地点の地面をそれぞれ触れることで発動可能
【ライトニング】New
落雷を敵単体に放つ。ダメージは少ないが、一瞬硬直することがある。
アイリス【ウィザード】Lv30
HP 170
STR 22
VIT 29
DEX 71
INT 238
AGL 64
LUK 82
《スキル》
【ファイアボール】
遠距離火属性単体攻撃。詠唱時間をかけることで威力増大
【ファイアストーム】
中距離火属性範囲攻撃。詠唱は長いが、範囲内の敵を炎の渦に巻き込む継続ダメージ呪文
【テレポート】
自身が望む短距離を瞬間移動できる。厚さが一定以下なら壁の向こうへ移動も可能
【鈍足の陣】
範囲内の敵の敏捷を大幅に低下させる。詠唱時間は長く、持続時間も短め
【吸命の陣】
範囲内の敵全体から、継続的にHPを吸収し、PTメンバーに分配する
【マナバースト】
広範囲高火力攻撃。詠唱時間は極めて長い。使用後、術者は全ての呪文を一定時間使用不可能になる
リゼ【アサシン】Lv37
HP 195
STR 91
VIT 45
DEX 143
INT 31
AGL 211
LUK 129
《スキル》
【ポイズンナイフ】
一定確率で毒状態にする
【パラライズナイフ】
一定確率で麻痺状態にする
【スリープミスト】
一定範囲に滞留する催眠効果のある霧を出す。
範囲内にいる敵は一定時間毎に睡眠付与のLUK判定がある
【スモークボム】
一定時間、投げた範囲から、広範囲にわたる煙幕を発生させる。
持続時間はさほど長くなく、再使用可能になるまでクールタイムがある。
【アサシネイション】
無防備な敵ほどダメージが増大する斬撃を繰り出す。
参考《おまけ情報》
パンダさん組の白いほう
てぃあら【ヒーラー】Lv33
HP 351
STR 365
VIT 90
DEX 8
INT 17
AGL 3
LUK 2
《スキル》
【ヒール】
【ライトニング】