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18 笹食ってる場合じゃねぇ!

 筋肉ハゲヒーラー、てぃあら。巨人アサシン、ふぇありー。

 正直なにがどうなってこんなことになってしまったのか……


「ベットはどうする?」

「いらん、はやくしろよ。今すぐその頭を叩き潰してやる」

「泣いたって許さねぇからなぁ?」


 せっかちなやつらだ。お互いの決闘条件を決定し、申請をして受理。


 戦闘、開始。

 アサシンとヒーラーなら、アサシンが位置情報を撹乱しつつヒットアンドアウェイか、敵の懐にもぐりこんで一気に状態異常を狙いつつ、ヒーラーが後ろからヒールをとばすのが定石だ。

 だが、こいつらはギャップのプロフェッショナル。二人で殴り掛かってくるかもしれないし、今までのはフリで、オーソドックスな戦いをしても逆に度肝を抜かれそうだ。

 もう何もわからない。


 しかし様子見でもして、なすすべもなく相手に翻弄されるのだけは避けたい。

 戦いつつ勝利への糸口を見つけよう。常にどちらも視界にいれ、一方をフリーにしないことが大事だ。


 手始めに、ニアがアサシン(ふぇありー)にホーリースラストで攻撃を加えると同時に、アサシン(ふぇありー)もニアに姿勢を低くして飛び込む。

 いい動きではあったが、ホリスラはデカい身体(マト)に普通に当たった。


「残像だぜぇ……」


 いや、普通にヒット判定が見えたが……


 アサシン(ふぇありー)はそれを意も介さず短剣でニアの胴体目掛け斬り上げた。ニアはとっさに杖でガードの態勢をとろうとするが、全然間に合っていない。

 ニアの腹から胸のあたりをかするようにヒットし、パリッとした黄色いエフェクトが見えた。

パラライズスタブ、麻痺付与の斬撃だ。

 しかし、現在のニアのLUK(状態異常耐性)は200にも迫る数値だ。事故の危険はあったが、麻痺をレジスト。ひるむことすらなく杖の先端をアサシンの喉元に突き立てた。ガードが甘かったのはフリだ。


「うぐぇ……! ざ、残像……!」


 AGL(行動速度)の差を意識し、あえて攻撃をさそい、被弾覚悟でより素早い相手にカウンターする隙を作ったのだ。

 STR(物理攻撃力)の低いニアの攻撃といえど、一点集中された急所への攻撃にアサシン(ふぇありー)は激しくせき込みながら距離をとった。



 開幕と同時にニアが先制してアサシン(ふぇありー)に向かってホリスラを撃ったのを横目に、俺はヒーラー(てぃあら)に突進していた。

 ヒーラーは距離が詰まり切る前にホリスラあたりを放ってくるかと思っていたが、俺が大剣を振りかぶると同時に素早く前に踏み込み、俺の腹に鋭く拳を突き上げた。


「ふんっ!」

「ごはっ!!」


 なんだこの威力! ヒーラーが、素手で!?

 血反吐を吐きながら宙を舞う俺に間髪入れずライトニング(落雷)を放ち、硬直しながら落下してくる俺に再びアッパーで宙に殴り飛ばす。

 格ゲーじゃねえか、これ!

 このダメージでコンボを続けられたら間違いなく……死!

 まったく身動きがとれない。

 このままでは完封される!

 ヒーラーに、近接物理職が、物理的に完封勝利される!


 再びライトニングが放たれ、迫りくる拳に絶望していると、横から放たれたニアのホーリースラストで拳の軌道が歪み、斜め方向に吹き飛ばされた。

 痛みに耐え、素早く態勢を立て直しブラッディカッターで反撃、ヒーラー(てぃあら)の頬を深々と切り裂く。

 反動で首が振れたが、ヒーラーは意に介した様子もない。

 セルフで自分の頬を回復しながら、ゆっくり歩き、距離をつめてくる。

 その時、闘技場に深い霧が漂い始めた。アサシンの煙玉だ。

 視界の悪さに乗じて、使い手が一方的に奇襲をかける技と誤解されがちだが、視界が悪くなるのは範囲内の敵味方全員だ。


「きゃっ!」


 ニアの短い悲鳴が聞こえる。

 しかし、誰がどこにいるのかはっきりしない。相手は、場所の分からない敵に対する攻撃手段を持っているとみるのが筋だろう。

 しかしこれはこちらにしてみれば好機ともいえる。

 これは温存しておきたかったが、使いどころも選ばれる。俺は足音を殺しつつ闘技場の端に近いところまで後退すると、大剣を胸の前に構え、血の洗礼を発動した。


 血の茨模様が広がるフィールドの敵味方全体から、血液(生命力)を吸い上げる。

 今回はハイレベルプレイヤー4人分だ。

 敵にダメージを与えることでさらに威力が上がるのだが、今回はあえて利用しない。

 がむしゃらに突っ込んだところでうまくいく保障はないからだ。

 血の洗礼によりHPが減少したことで、バーサクモードが発動し、赤黒いオーラに包まれた。


 形成されていく血呪槍(けつじゅそう)を手に取ると、投擲の構えをとり、煙玉の効果時間が終了した瞬間、目に映ったてぃあらに投げつけた。

 突然の強烈な一撃に、てぃあらは訳も分からぬまま胸部を血呪槍に貫かれる。

 しかし、倒れない。

 大きくよろめいて膝をつきそうになるが、踏みとどまった。アサシン(ふぇありー)はニアに短剣の連撃を加え、ニアは杖で応戦をしているが、戦闘職と、回復職、戦力差は歴然だ。回復する隙すらない。

 バーサク状態で大剣にオーラを纏わせつつ駆け寄る俺を、ニアはチラリとみて、頷いた。

 その直後、ニアはアサシン(ふぇありー)から切り刻まれながらも全力逃走。

 最高の配置だ、ニア。


《狂気の裁断》


 黒い斬撃の嵐がてぃあらとふぇありーを巻き込み、荒れ狂う。

 ズタズタになったてぃあらがついに崩れ落ちたが、ふぇありーはなんとか耐え抜き、瀕死のニアに襲い掛かる。


《ブラッディカッター》


 HPが10%以下となり、最大まで威力の高められた血の刃は、間一髪のタイミングでふぇありーの胴体を両断した。


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