17 ヤベェ奴ら
タケシ一行はセコンの街の東門から出ると、砂漠を東に向かって横断していく。
途中、オオミミズが顔を出したりもしたが、姿を現した瞬間、弓矢と魔法の雨をこれでもかと浴びて一瞬で塵となる。
道中厄介だったサソリですらそれは例外ではなく、原型をも留めない状態で地面に吸い込まれていった。
近接職の俺は暇だが、敵が姿を現してからの反応速度と瞬殺に背筋が凍る。
今からこいつらと戦うんだよな、俺。
間もなくたどりついた闘技場は、闘技面積が直径50mほどのコロッセオだった。
周囲の観客席はそこそこ高めになっていて、おそらくそちらの収容人数は1000人くらいだろうか。
タケシがまた何か面白いことをやっていると聞きつけた冒険者たちがぽつぽつと観客席に集まりだした。
街にいた冒険者はギルドだけで50人程度だった。全員が来たとしても、闘技場の規模の割に少し物足りなくなりそうだ。
道中聞いた話によると、今まではレベル20以上の冒険者が少なすぎて大会などというものは開かれてこなかったそうだ。
セコンの街到着時点での平均レベルは10~15程度。統計がとられていないのであくまで推測らしいが。
勝てそうな敵とは戦い、危険な敵からは逃げる。保身を前提にしつつ、新天地を目指した冒険者は少なくないらしい。
タケシは闘技場の中心部に参加者たちを集め、チーム名とパーティ編成をきき、紙に書いて折りたたむと箱の中に入れていく。
俺がチーム名に悩んでいると、ニアがなにやら勝手に書き込んだ。なんだそのふざけた名前は。代案が出てこなかったのでとりあえず決定してしまった。
全員の紙を集めきると、タケシが叫ぶ。気が付くと、観客がやけに多い。100人は超えたと思う。まだ増えているようだ。どこから来ているんだか。
「あー、みなさん! 本日はお越しいただきありがとうございます! 司会を務めさせていただく、タケシと申します。これよりトーナメントの抽選を行います。これより私が、この箱からチーム名の書かれた紙を一枚ずつ引いていきます! もちろん不正はございません。こちらのトーナメント表の左から順に1番、2番とし、1枚目のチームが1番、2枚目に引かれたチームを2番として順番に割り振っていきます。出場チームは2名一組、8チーム! 計16名の出場となります! 途中から来てくれている人も多いようなので、情報の共有にご協力いただけると助かります!」
タケシは一体何者だろうか。ただのパリピかと思ったら、普通に手際よく司会進行を始めたぞ。
「呼ばれたチームは前に出てください。それでは1番! チーム名! 『最強ナイトメイン盾』! ナイトとウィザードのペアです。チーム名がナイト一色ですが、どれだけ連携がとれるか見どころです。組み合わせとしては、攻守のバランスにすぐれたパーティといえるでしょう」
ロントがをクルクルと黒い突起のついた片手剣を振り回すと、ビシッと天に突き出してキメたところでアイリスがおだてる。
「かっこいいですね」
「それほどでもない」
最強ナイトメイン盾。マジでこのパーティ名でいいのかアイリスさん。
「け、謙虚なナイトですね。続いて2番チーム─────」
俺たちは3番目になり、その後も次々とトーナメントの順番が振り分けられていく。
初戦は意外にも最強ナイトメイン盾が勝利した。なんだかんだで二人とも連携のとれたいい動きだった。ロントが独断先行するかと思いきや、素早いアサシンの動きをスキルや剣戟で封じ、アイリスさんは単発魔法で牽制しつつバーサーカーとの距離を保ち、バーサクで柔らかくなったタイミングを見計らってまとめて範囲魔法で一掃した。
次の試合は、俺たちだ。
タケシの合図に合わせて、ニアと共に入場する。
「東から登場するのはチーム『にゃまたのおろち』バーサーカー、ヤマタと、ヒーラーのニアです! 状況に応じた的確なHP管理と、チャンス時に押し切れるパワーがカギとなりそうですね。そして、西から現るは二人の巨漢!」
白いローブがはちきれんばかりの筋肉を誇るスキンヘッドの男と、黒装束の上からでもわかる異常な肩幅の男。
「チーム『パンダさん組』、異端のヒーラー、てぃあら!! この巨体でどこへ隠れるというのか、アサシン、ふぇありー!! これはキツい! ギャップがオーバーヒートを起こして、頭がどうにかなりそうです!」
パンダさん組のヒーラー、てぃあらが指をパキパキとならして言った。
「とっとと白黒つけようぜ……」