ダンジョンは眠れない 貪欲魔王のダンジョン経営 重課金者(勇者)様お待ちしております。
「23万ロンしか売り上げが無いだとおお」
今日も会議室に魔王の怒声が響き渡る。
「無能か?お前ら全員、無能の集まりか?」
口から炎を吐く魔王の恐ろしさにスライムが泣き出した。
「泣くな!どこぞでかわいいとか言われていい気になってんじゃねーよ」
魔王はスライムを靴底で踏みにじった。スライムの体がビヨーンと伸びる。ダメージはあまりない。
「ち、これだからスライムは。とにかく一日最低100万ロン、これがデッドラインだ。以上」
魔王は言うだけいうと地下の宮殿へと戻る。
「ひどい、僕が可愛いからって踏み潰すなんてライム」
「魔王様は怒鳴れば売上が上がると思ってるのでしょうか」
配下の魔物は愚痴を言いまくった。
魔王が経営するダンジョンだが、最近はハイリスクハイリターンな冒険者は流行らないのか、なかなか人が集まらない。
たまに落ちるジュエルは、外でも価値はあるが、アイテムはダンジョン内しか使えないのも、地味に不人気の理由の一つだ。
魔王がケチなので、ジュエルの還元率も悪い。
「でも、最近歳のせいか無理が効かなくなって」
「ダンジョンは一日26時間、年中無休ですからね」
「こんな時に、重課金者が来てくれたら。」
勇者が生まれれば、人間達の気運も上がり、冒険者も増える。
魔物達は勇者を切望した。
魔物達の願いが届いたのか、待望の勇者が人間界に生まれた。
勇者は破竹の勢いで、ダンジョン目指して世界を旅する。
「勇者のおかげで目標の倍、200万ロン達成です」
「よし、大入り袋を出そう。スライム、ジュエル仕込んで、ちょっとやられてこい」
「ひどいライム」
魔物達は浮かれていた。勇者の目的を忘れるほどに。
そして、ダンジョンにたどり着いた勇者は。
「なんで、命を奪うライム!」
ダンジョンの魔物が倒される時、ライフは1残すのが通例だ。
しかし、勇者はライフが0になるまで攻撃をする。
「だって、魔物だし」
勇者はサクサク、魔物を倒していく。
そのとき、魔王が現れた!!
「ったく。自分が正義だって思ってるやつに限って残酷なんだよな。我が眷属よ、我が内に戻れ」
魔王が闇のマントを翻す。
「魔王さぁまああ」
魔物達は魔王に取りすがった。
「勇者よ。ダンジョンはくれてやる。我は眷属 と共に、しばし闇に帰る」
魔王は地上から地下の闇に戻った。
「魔王、ダンジョン無くなってもいいライム?」
「構わん。お前達がいれば、またダンジョンは創れるからな」
魔王はニヤリと笑って言った。