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ひと月の嘘と真実(ホント)

作者: タコそぼろ

2500字程度の短編です!

普通の高校生生活に少し違うアクセントが加わると当事者たちはそれだけで大きな変化を伴う。そんな始まりの一片を書いて見ました。

よろしければご覧ください。お願い致します。

何でもできるし顔立ちだってそんなに悪くない。

でも、

「ホント長谷部って性格悪いよねー」

「マジムカつくー」

陰口をたたかれるくらいに印象が悪かった。

印象が悪いって言っても基本的に生活態度が悪いとか、意地悪って訳でもなく自分以外の人に無関心だ。

いや正確には普通に生活を送ってる人には興味が無いって感じだ。

そう思うのはひた向きに頑張る人には真摯に向き合って手伝っているのを何度も見たことがあるから。

ただあまりにも大多数に対して彼は冷たい。多分そんな態度が周りの嫉妬と苛立ち、諸々を増長させてしまった。

私も含めて、なり振り構わず何かに取り組むことが出来ている人は少ない。はっきり言ってそれが出来てたらとっくにエリートやら天才と言われる部類に入るんだと思う。

だから、それを見せつけるような彼をみんなは嫌うんだ。


香里かおり?ねぇ、きいてる!?」

「え、えーと。うん、でなんだっけ?」

「だーから。ウチらの中で負けた罰ゲームで.....」

「あーゲームね。おっけー」

考え事から呼び戻しを喰らったと思ったらいつものゲームか。通せジュースを買いに行くとか何気ないやつだし。

そう思って途中で遮った。

「え」

「ん?どうしたの?」

他の3人は驚いたように、鳩が豆鉄砲を食ったように私を見ていた。

「い、いや。乗り気なんて珍しい、というか初めてだからちょっとビックリしてさ」

「そう?」

確かにいつもしょうもないとかくだらないとか言って適当に流してたけど、そんなに驚くかね?

まー適当にやってるせいか負けることもほとんどなかったから根拠のない自信もあったりする。

「ま、いっか!何のゲームで勝負する?」

「ここは完全に運で決めようと思います。ジャンケンでいかが!!」

「「ええ!?軽くない?」」

言い出しっぺと私を除いた残りの2人が絶句する。

やけに今日はノリがいいなぁ。悪口言って元気でも出ったか。

「べつにいーと思うよ。私は。正々堂々と勝負って感じでいいんじゃない?」

「香里マジ!?」

「ええ!?」

「お墨付きを香里様から頂いたんだからもう反対は許さんぞー!」

「う、うん」

謎のハイテンションをみなぎらせるみんなのことを私は片肘つきながらのんびりと眺めていた。

そう、この時までは。


「あら、負けちった」


「.....」

珍しく負けてしまったはいいけど、何だか空気は一気に固まってしまった。勝ったはずの3人は気まずそうに黙っている。

「え、どうしたの?」

「『え、どうしたの?』じゃないよ?香里大丈夫なの?」

急に真面目な顔して問い詰めてきたのは浴衣ゆき会ったのはこの高校に入学してからだけどこの4人の中でも1番仲がいい。まだ短い付き合いだけどこんな本気で物を言う姿は初めて見た。

「まあまあ、ひと月だけだからさ!何より香里自身も乗り気だったんだし」

私は何か大きなミスをしたか。そう思い始めたけどもう遅すぎた。

「そうそう。勝負は勝負だし!そこは筋通すべきっしょ」

残りの2人朱莉あかり紗英さえがまくし立て浴衣を大人しくさせる。2人とも悪ノリしている感じだ。

「じゃあ浴衣がやる?やっちゃう?」

これ以上は浴衣に申し訳なかった!

「まって!負け負けだ。やるよ」

「ま、まじ!?」「ちょ、香里!?」

「うん、仕方ないから」

「うおー!男前!」

「バカ!」

肩を怒らせながら浴衣はそのまま出て行っちゃった。

「あーらら、ちょっとやり過ぎたかなぁ」

「浴衣っち香里のこと大好きだもんな」

朱莉と紗英は気まずそうに言うが、すぐに切り替えてこちらを見た。

「さあ、懲らしめてやってくれよ!」

「へ?」


罰ゲームの内容は

〈長谷部くんと1ヶ月間偽彼女を演じてその後ネタ ばらし〉

というもの。

長谷部をギャフンと言わせるか、私がふられるかもしれないという罰ゲーム。

朱莉と紗英曰く、

「見るからに女性経験ゼロの長谷部が香里に告られたらイチコロだって!」

だそうだ。

浴衣があんなに怒っていたのも分かる。私自身こういうタチの悪い悪戯はしない。

普段大体のことを適当にやってきたけど、相手を傷つけるようなのはしてこなかった。それは間違ってるし嫌だから。だから、

「やらかしたなー」

ちゃんと話を聞いてればこんなことにはならなかったのに。やると言った以上やめるわけにもいかない。

最悪の状況だ。仲良しの友達にはシカトされて、自分のミスで他人である長谷部くんまで傷つけるかもしれない。


そんなこんなで告発当日。

よく考えた末に見つけた最小限の被害で済む解決策。

「告るだけ告ってふられる!」

そうすれば私が恥ずかしい思いをするだけで終わるはず。それにあの長谷部くんが相手にしてくれる可能性自体が低いことは明らかだし!

自分でそう決めておいて妙に気にくわないのが引っかかっているがそれは押し殺す。

意を決して声をかける。

「は、長谷部くん!話があるんだけど、放課後少しいいかな?」

「ん?構わないよ?」

あっさりと連れ出しに成功してしまった!


のらりくらりとしているうちに朱莉たちに指定された場所にきてしまった。(もちろん本人たちはいない。来たら許さないと念をおしておいた)

「で、公園にまで来て何の用かな?」

無駄に連れ回されて苛立っているのかそわそわしたように告げられる。

「そ、その。実は私は長谷部くんのことが好きで付き合って下さい!」

用意してたセリフは何処へやら。ふられるのを覚悟して無駄にゆっくり歩いてたり余計な事を話したりすることでどんどんイメージダウンを図ったのに。

こんなに緊張してしまうなんて。

ドキドキして下げた頭も上げられない。


「あ、あの凄く嬉しいんだけど。ちょっとどうしたらいいか分からなくて」


「.....え?」

ゆっくり顔をあげると顔を真っ赤にして狼狽えている長谷部くんの顔があった。

「いや、あの、俺君に一目惚れしてました!いつか言えたらと思ってたんだけど、まさかこんな日が来るなんて」

いつもの冷たい、厳格な感じ長谷部くんはそこにはいなくてただ嬉しそうに朗らかな笑顔を見せてくれる男の子がいた。

「う.....そでしょ?」

さっきまでとは違う気持ちが胸の中を占めていく。

高校2年の7月私にとって長くてあっという間な1ヶ月が始まった。



お読み頂きありがとうございます!

今回の作品は書きたいなこれ!と思って書きました(笑)

とりあえずのところは読み切りとしての短編とささて頂きます。

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