私たちはハンバーガーとポテト
私たちの学校には、もうすぐ遠足というイベントがある。
まだそんなイベントあるのかよ。と内心文句も言いつつも、遠足先は最近できたテーマパーク。
やったね、遊園地ですよ。
小学生以来行ったことないから楽しみだ。わーい。
そこで今日のHRは、移動手段であるバスの席順と班メンバーを決めること。
遊園地を回る時、念のため班行動で回らないといけないらしい。
しかも、男女混合で。
これに関しては、生徒のブーイングがすごかった。
思春期のことを考えろとか、仲良しグループで回りたいとか、いろいろ文句はあった。
しかし先生たちは生徒の意見を一喝し、権力という名の暴力で私たちを黙らせた。
もちろん、私もこの件に関しては怒りのあまりに激おこぷんぷん丸である。
大体、先生たちは生徒に配慮がなっとらん!
世の中にはな、男性恐怖症のせいで不便な生活を送っている女子高生がいるというのにっ…!
バスの席順は、野乃葉と一緒で決まった。
私と野乃葉はマックでいうと、ハンバーガーとポテトだ。このセット商品並みにいつも一緒な私たちは、自然のように班も一緒だった。ていうか私は、野乃葉以外にクラスで仲良い人はいない。…さらっと今ぼっち発言をしてしまった。
(しかし、問題はどの男子と一緒に遊園地に回るかだっ!)
本当にどうしよう。
先生を呪いたい気分だわ。
「ねえ、野乃葉。男子は誰と組む?」
「んー。無難なところ選びたいわねー…」
遊園地で回る班は、男子二人と女子二人の四人班行動。
完全にアウェーイな男子と組みたくはない…っ!DQNそうな男子もNGだ!
地味で、影が薄そうな、何も言わなさそうな男子が望ましい!
目を光らせながらどの男子と選ぶか悩んでいると、クラスの女子が一定の場所に集まっているのが目に入った。
「椎原くんと森重くん!。私と一緒に遊園地回らない?」
「えー!私たちの班だよね!ね?一緒に回ろうよ!」
「もしかして、誰と一緒に回るか決まっているの?」
女子たちが、椎原くんと名前がわからない男子の方に班を誘っていた。
わお、大量に釣れていますね。
「…うっわー。女子の戦いに巻き込みたくないわー」
「だな」
横で野乃葉がドン引きながら話し、私もその意見に頷いて同意した。
当然だ。
あそこで行われているのは一見、モテる男子微笑ましいの日常の一コマかもしれないが、雌豹に化けた女子の争いが陰で行われているのだ。
女子の心の中は、でしゃばるじゃねーよこの雌豚が!とアイコンタクトをしながら同士で醜く争っているのが目に見える。いや、絶対している。
「あー。なんだか椎原くんと森重くん以外の男子が可哀想になって来た」
「ん?森重って誰?」
「…あんたねぇ。はあ、まあいいわ。
森重 悟くん、椎原くんと同じぐらい女子に誘われているクラスメイトよ。椎原くんの親友でもあり、彼も女子に人気があるわ。性格は、そうねぇ無気力かな?運動とか勉強とかも一応上位以内に入っているらしいよ。私は椎原くんの方がオシね。森重くん何を考えているかわからないもん」
あ、さっき私が名前知らない子だと思った子だ。
まぁ、彼も女子のハートをキャッチミーしそうな顔をしているね。
「ふーん、無気力な性格くんね」
「森重 悟よ…。名前覚えてあげなさいよ」
「顔は覚えたよ、それより男子を選ばないと。地味でおとなしそうな男子いるかな?」
「あんた、さらっとディスっているよ。…うーん、私もそんなに男子と仲良くないからなー」
お互い唸って考えている時だった。
「ねえ、俺たちと班組まない?」
嫌な予感がした。
恐る恐る声の方へ顔を向けたら、椎原くんが立っていた。
ピキリっと教室の空気が凍る音が聞こえた。女子たちの視線だけではなく、クラス全員が私たちに視線を集めていた。
「椎原くん!?ちょ、どうしてうちらの班に?」
野乃葉は、驚いて動揺を隠しきれなかった。
いきなり人気者である男子が女子のお誘いを断って、わざわざ私たちを誘ったんだ。
野乃葉はきっと、テレビ中継の時に突然インタービューされた驚きをもっているだろう。
だがしかし、ここで「いいよ」とあっさり受ける私だと思うなよ!
「…ごめん。丁寧にお断りさせていただきます」
「え!?永久!?あんた何言ってんの?」
昨日のこともあるし。絶対君とは組みたくない。
拒絶反応まるだしにしているけど、椎原くんはひるむ様子がない。
「そんなこと言わずにさ。あ、もう決めている人とかいるの?」
「…いない、けど」
「なら、俺と一緒でいいじゃん。…俺のこと嫌いじゃないでしょ?」
くぅうう!やり辛い!ああ言えばこう言う!
あまりのやり辛さに下唇を噛んで悔しがった。
「わ、私はべつにいいけど?男子誰にするか悩んでいたし」
「の、野乃葉!?」
野乃葉は驚きながらも、承諾した。
ダメだ野乃葉!こいつと一緒にいると私のSAN値が持つかわからん!
「ありがとう、野乃葉さん。おーい、悟はどうする?」
椎原くんは、うつ伏せになって寝ている森重くんを起した。
あの子、女子に誘われているのに寝て対応してたんだ…。
呆れとその図太さは椎原くんと似ていて、ああやっぱり類は友を呼ぶんだなと思った。
「…ん?俺はどうでもいいし、どっちでもいい。遊園地行っても寝るだけだろうし」
「じゃあ、俺たちの班にこいよ」
「んー。勝手にしろ」
「おう!わかった」
あ、これは。あかんやつや。
椎原くん、森重くん、野乃葉3人の班決定は確定された。
もうこれ、私入るしかないじゃんっ…。拒否権というものをください!
「…」
「ほら、椎原くんと森重くんだよ?安心していいからさ、素直に班組もうよ」
「そうだよ。俺は立花さん達と一緒に回りたいなぁーと思っただけだから、ね?」
ね?じゃねーよ!可愛い言っても信頼できないからな!
「…わ、わかったよ」
こうして5月の遠足の班は決まった。
目立ちたくないと思った私の日常は、あの悪魔のせいでぶっ壊されたのだった。
自己紹介パート3
<主人公の部活の先輩>
佐和 岬。血液型O。17歳。※この人は男性です。
性格、おねえ口調で明るい。永久のお姉ちゃんみたいなポジション。
いつも演劇部を明るくしてくれる、優しい部長。
容姿、金髪で前髪にヘアピンしている。黙ると美青年。