第五話 真実は・・・
サチとユウタが出会ったのは人ごみの中ユウタがサチに話しかけてからだった。
「すいません。あの、いつも一緒にいたあの人に一目ぼれしちゃったんです。どうしたらあの人と付き合えますか?」
「はぁ?あんた何よ?いきなりちょ〜KYなんだけど。」
しかめっ面をするサチに、
「いきなり声かけたのは謝ります。でも、あの人とどうしても付き合いたいんです。」
サチは悩んだ。が、いつもの悪い好奇心がうずいた、この子をミズハのお客さんにしちゃおう。面白そう。サチは姿勢を正し、せきを一つして話し始めた。
「う、うん。わかった少年。お姉さんが君をミズハに紹介してやろう。ただし、お客さんとしてね。」
「お客さん?」
「そう、ミズハは援助やってるからそのお客さん。お代は1時間2万円ね。」
サチは笑顔でユウタにそう言うと、ユウタは下をうつむいて少し悩んだ後、
「わかりました。お願いします。」
そう、力強く答えた。
それからのユウタとミズハの話は、ミズハの方から聞いていた。あれから何回も何回も会っていること、毎回お金を支払っていること。その話を聞き、興味を持ったサチは、一度どんな金持ちかとユウタの後をつけてみた。すると、そこにはとうていお金持ちの豪邸とはいえない借家に入っていくユウタが見えた。
驚きながらもしばらく見ていると、またユウタが出てきた。どこへ行くのかと見ていると、近くの工事現場だった。そこには見るからに持ち慣れていない交通案内表示を振っている姿が。それを見て真実を知ったサチは初めて罪悪感が出てきた。
私、なんてことしたんだろ・・・どうしよう・・・
次の日、サチはミズハにユウタのことを話そうとしたが、次も会う約束したんだと嬉しそうに語るミズハに何も言えず、ただ、笑顔でよかったねとしか言うことが出来なかった。
サチに真実を聞かされたミズハはサチにユウタの家の場所を聞いて急いで向かった。走っている間にユウタに何て言おう・・・何ていったら許してくれるんだろう・・・などが頭のなかをぐるぐる回ったが、家の前に着くとそれも全部吹っ飛んでしまった。
インターホンもない家のドアをそっと叩く。ユウタに出てきてほしいような、それとも出てきてほしくないような、そんな思いを秘めながら待っていると、はーいと声が聞こえてドアが開いた。思わず頭を下げていたミズハの上から
「どちらさまですか?」
と可愛い声が聞こえた。へっ?と思い顔を上げると、そこには小学生くらいの女の子が不思議そうにこちらを見つめていた。ミズハは、
「えっと・・・ユウタ君の友達だけど、ユウタ君はいるかな?」
と聞いてみた。
「お兄ちゃんは今アルバイトに行ってますよ。」
と可愛い声で返事をした。笑った顔はユウタにそっくりだ。ミズハはバイト先の住所を聞いてまた走って向かった。