第一話 乾いたあとには・・・
「さよなら。元気でな。」
その一言でエイジは振り返り、私の前から去っていった。私はその後姿を見て、手で目を押さえたが、涙が止まらず、その場にひざから崩れ落ちた。そして、涙が止まる頃には、エイジの後姿すら、もう見えなくなっていた。
私は・・・今でもその場所から立ち上がることが出来なくなっていた・・・。
「っていうか、この前の客がちょ〜うぜぇヤツでさ!」
ソファの肘掛に腕をのせ、サチはドリンクバーで取ってきたグレープジュースを一息で飲んだ。飲み終わると氷まで噛み始める。店内にバリバリと不愉快な音が響き始める。そんなことはお構いなしにサチは話を続ける。
「女子高生ってのがうちらの"ウリ"なわけじゃん?それなのに会った途端その男、『このナース服に着替えてもらってもいいかな?』だって!私らの付加価値台無し!そんならそこらのコスプレ喫茶にでも行きやがれっての。」
ギャハハッとサチの笑い声が響く。ミズハは恥ずかしくて周りの視線が気になった。会社帰りのサラリーマンもアイスをスプーンでつついている主婦たちも一斉にこっちを見ている気がした。そんなたくさんの視線を感じながらもしかし、ミズハはそんなサチが嫌いではなかった。周りの目なんか気にせず、好きに生きるその生き様、まさにミズハとは正反対な部分に惹かれている自分がいた。
「サチ、イスの上にそんな座り方すると、パンツ見えるよ。ほら、そこの男の人も見てるし・・・」
ピンクの超派手なサチらしいパンツ。見せパンだろうかと思いつつもミズハはついつい口に出してしまった。どうもサチの面倒を見たがってしまう。母性本能だろうか?自分で考えてみてもまったくわからない。ただ、サチみたいな子供がいたらめっちゃ大変だろうな、と自分で勝手に想像してみる。笑いが少しこみ上げてきてプッと笑うと同時に、
「おい、兄ちゃん。何ヒトのパンツ、タダ見してんだよ?金払えよな〜」
とサチが大声で叫んだ。ビックリして走り去っていくサラリーマン風の男の人。それを見てサチはまたギャハハッと笑った。私も奥歯まで出して笑うサチを見て笑いが止まらなくなった。