表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

大人になること

作者: 琥珀ルイ

大人たちが夏の暑さに襲撃されている頃、無邪気な子どもはかき氷を夢中で頬張る。

リスのように膨らませた口を針で突いたらぴゅーって液体が飛び散るのかな。

それはきっと綺麗な赤色のシロップだろうね。

かき氷食べると頭がキーンってするのを知ったのはいつだっけ。テレビで見たんだっけ。ママからきいたんだっけ。覚えてないや。

子どもたちが炎天下を駆け回っている頃、身勝手な大人はエアコンの吐息で身を休める。

それから子どもに内緒で高級ジェラートなんかを丁寧に味わう。

多分頬を針で突いても綺麗なシロップは湧き出ないね。

高いアイスの味を知ったのはいつだっけ。親戚のおじさんからお土産で貰ったんだっけ。パパが買ってくれたんだっけ。

人はだんだん同じものでは満足しなくなる。次々に良いもの新しいものが恋しくなるんだ。

100円のアイスは気が付けば200円のアイスになって400円のアイスになって、さらにもっと高いアイスになっているのかもしれない。一度覚えた甘さは忘れられないんだね。恋と同じだ。体の快楽と同じだ。

私はそんな風にはなりたくなかった。ハーゲンダッツよりもスーパーカップの美味しさがいつまでもわかる大人でありたかった。

初めて繋いだ汗ばんだ手を。初めて触れた柔らかな唇を。忘れない大人でありたかった。

体の快楽よりもキスの幸福を忘れない大人でありたかった。

エアコンの吐き出した冷たいため息が充満したピンクの部屋で、私はハーゲンダッツをスプーンですくいながらそんなことを思った。

横には裸の男が寝ている。

この人誰だっけ。



最後までお読み頂きありがとうございます。

よければポイント評価や感想をを頂けると嬉しいです。今後の作品創りに活かしたいので。あとモチベーションにもなります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ