表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

時間よとまれ!

作者: 頭山怚朗

「人には何か一つ特技があると言いますが、頭山さんには何もありませんね!? 」

 会社の飲み会で年下の係長は真っ赤な顔をして、私に言った。


 その日、係長と二人で得意先周りをしていたらトラックが猛スピードで突進してくるのが見えた。

 私は呟いた。「時間よとまれ! 」

 ……。

“ドーン”。 鈍い音がして、係長の体が宙を飛んだ……。

“ドサッ”。 係長の体が地面にたたきつけられた。

 トラックは一端止まったけれど走り去った。

 ××-××……。ナンバーがはっきり読めた。

「“もう、ダメだ! ”と叫んで係長は道路に飛び出しました。何が原因か知りませんが、最近の係長は少し変でした。何か悩んでいました。……。ナンバー? すみません、突然のことで覚えていません……。分かりません 」 私は警察の事情聴取にそう答えた。

 それでも、警察はたいしたものだ、二日後にはトラック運転手はひき逃げで逮捕された。

「突然、男の姿が目の前に出現した。飛び出したのでなく、急に目の前に現れた。あれでは誰が運転していても避けようがない」 運転手はそう言っているそうだ。

 警官は鼻の先で笑ったのが、私はそれもありえるかも知れないなと思った。


 死んだ係長は「人には何か一つ特技があると言いますが、頭山さんには何もありませんね!? 」と言ったけれど、実は私にも特技があるのだ。

 時間が止められるのだ。

「時間よとまれ! 」と呟けば時間が止まる。それで、私が「時間よ動け! 」と言えば再び時間が動き出す。


 係長が死んで次は私かな? と、思ったが世の中、そんなに甘くなかった。

 次の係長は、前係長よりさらに若かった。

 次の係長は「人には何か一つ特技があると言いますが、頭山さんには何もありませんね!? 」なんて言わなかったけれど、その目は私を見下していた。

 社内旅行だF県のT坊に行った。海に突き出した高い岩場で、自殺の名所で有名なところだ。

 係長が岩場から下を覗きこんでいた。

「時間よとまれ! 」と、私は呟いた。

 皆、動きを止めた。中には宙に浮いたまま止まったままの人もいる。私は勢いよく走りだし係長を突き飛ばした。係長の体が宙に浮いた…。でも、私も勢い余って高い岩場から落下した。係長の体は宙に浮いたままだが、私の体は水面に落下、海底の岩場に頭を強く打った。

それで死んだ……。

 

 それで、時間は動き出した?

 あなたは私の話をよく聞いていなかったようたようですね? 言ったでしょ、私が「時間よ動け! 」と言わないと時間は動かない。それが私は「時間を動け! 」と言わないまま死んでしまった。

 つまり、時間は止まったままだ。約百三十七億年前のビック・バンで始まったこの宇宙全体が止まったままだ。でも、いいではないか!? その時間に事故・病気で死にかけていた人は永遠に死なないで済む。(時間が止まっているのに“永遠”にとは変な、矛盾しているような表現のような気もするけれど……)



 なら、今、この駄文を読んでいられるのは何故だ?!

 と、言う人がいるかも知れない。


 そこのあなた、そんな細かなことは気にしては出世できない……。


ヤフーブログに再投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ