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ジョージの終わり。

 ある村にジョージという男の子がいました。

 ジョージは村一番のいたずら好きの男の子でした

そのいたずらは、ハンスさんの牛に、赤い布を見せて暴れまわりハンスさんを困らせたり、マリーお婆さんが一生懸命育てたお花をわざと枯れ指したり、ピーター先生の自転車のサドルを盗み、サドルの代わりにカリフラワーを挿すといういたずらをして村人たちを困らせていました。




 大晦日の日のことです。村に移動遊園地がやってきました。

 遊園地にはメリーゴーランドや観覧車やお化け屋敷や、小さいながらジェットコースターがありました

村の子供たちはもちろんのこと、大人たちもよろこんでいました。もちろんジョージもです。遊園地の舞台ではいろいろなショーがありました。自称東洋一の手品師やアラブのナイフ使い、ピエロやバレエダンサーが村人をよろこばしていました。

 つぎに現れたのは、ボロボロのタキシードに、ボロボロのシルクハットの老紳士が舞台にあがってきました。

「わしゃ、この国で一番の催眠術師じゃ。このなかでわしの催眠術にかかる勇気がおるものがいるか」


 老紳士が言うと、たくさんの村人が手をあげた。ジョージも手をあげた。老紳士は手をあげた村人をテキトーにえらんだ。


「最後に、そこのボウズ。そう、おまえじゃ。おまえは勇気があるかな」

老紳士はジョージを指さした。

「あったりまえだよ。おれさまはそんなインチキにダマされるもんか」ジョージは舞台にあがった。

 老紳士にえらばれたジョージたちは老紳士に横一列にならぶように言われ、ひとりづつ催眠術にかけていった。犬になれと言われたヘンリーさんは、犬のように四つん這いになってワンと吠えた。水をブドウ酒だと催眠術にかけられたミランダ婦人は、よっぱらってしまった。ロバート議員にかけた催眠術はバレリーナだった。それを見て観客の村人たちはおお笑いした。


「ボウズ、おまえが最後じゃ」

老紳士がジョージに言いました。


「ヘヘヘ……。そんなインチキにかかるワケないじゃん」


「そんな減らず口をたたくのはいまだけだぞ。ではボウズ、目をつぶるのじゃ」

 ジョージは目を閉じるふりをしました。なにもしらない老紳士はジョージに催眠術をかけようとすると、ジョージはポケットにかくした花火に火をつけ、老紳士の足もとに花火を投げました。

「ウァッ、アッチッチ」


 おどろいて舞台から転げおちた老紳士。それを見て笑うジョージと村人たち。


「このクソボウズめ」

老紳士はジョージに詰めよって言いました。


「明日からおまえは女の子じゃ。あやまっても許さんからな」

老紳士は去っていきました。


「ジョージ、あのじいさんマジだったゼ」

友達のマイケルが言いました。

「心配するなって。おれがそんなインチキにかかるかよ」


「もしジョージが女の子になったら、俺がジョージの恋人になってやるよ」

ジョージよりひとつ年上のアレックスが言いました。


「じゃあ私はジョージのお姉さんになってあげるわ」

同級生のオードリーが言うと、ジョージは心配するなってと言って笑いました。みんなもジョージにつられて笑いました。

 それがジョージの男として過ごした最後の年となったのです。



 オードリーの家の玄関をドンドンと叩く音がしました。オードリーは玄関のドアをあけると外は雪が積もっていました。

 玄関の前にはジョージが立っていました。オードリーはおどろきました。なぜなら、ジョージは女の子の服を着ていたからです。


「ジョージ、その恰好どうしたの」

オードリーの問いにジョージはもじもじしながら言いました。


「わからないわ。朝起きて気がついたら、こんな服を着ていたの……」


「ジョージ、外は寒いから中にはいろう」

オードリーはジョージを家にいれました。オードリーは、ジョージをイスに座らせて待つように言うと、オードリーは台所にいきスープを持ってジョージのところへ持っていきました。

 ジョージの待つ部屋に戻ったオードリーは、ジョージがひざをそろえて行儀よく座るのを見てスープを落としてしまいました。

「やっぱり、あの老紳士のいったことは、ほんとなんだ」

ショックで顔が真っ青になったジョージ。とうとうジョージは女の子のように泣きだしてしまいました。


「ジョージ……」

オードリーは女性的なジョージを見てショックを受けました。

 二階からオードリーの姉のベロニカが降りてきました。ベロニカは、新年の朝だというのに、オードリーの声がうるさいから文句を言おうとして降りてきたのです。

「ちょっとオードリー、なに騒いでいるの。それになによ、この床。なんでこんなにヨゴすの」


「ごめんなさい。ベロニカお姉さん」

あやまったのはジョージだでした。


「ごめんですんだら……ちょっとオードリー、この子だれなの」


「ベロニカ姉さん、この子はジョージなのよ。ジョージ、この雪だから移動遊園地はまだ片付けるのが遅れると思うから、はやくいきましょ。姉さん、床そうじお願いね」

オードリーはジョージの手をひっぱって外に飛びだしていきました。




 ジョージは、移動遊園地につくまで、オードリーにいままでのことを話しました。

 朝ジョージが起きて着替えると、ジョージはトイレにはいりました。気がつくとジョージは座って用をたしていた。トイレから出たジョージは服を見ました。それは女の子の服だったのです。

 母親のアイリーンは、ぼうぜんと立っているジョージに声をかけました。

「どうジェニファー、その服はジェニファーのために買ったのよ」


「なに言ってるのママ、わたしの名前はジョージ……よ」

ジョージは、昨日の老紳士の言ったことを思いだしました。だがアイリーンの言ったことがジョージが頭に直撃したのです。


「遊園地にいた催眠術使いの老紳士に頼んで正解だったわ」


「ねえママ、それってどういうことなの……」


「わたしとお父さんは、ジェニファー、あなたがいたずらばかりするからわたしたちは村の人たちから苦情がいっぱいきてるの。そのことを村長に相談したら、大晦日にくる移動遊園地の園長と知り合いだというのよ」


「まさか……」


「そうよ。園長に相談したら、ちょうど催眠術使いを雇ったからと言うの。私たちは催眠術使いに頼んであなたの性を替えてもらったの。でもすごいわねー。だって完璧な女の子になったから」


「ひどいよママ……。わたしはどうしたらいいのよ」

ジョージはアイリーンを押しのけると、外に飛びだしていきました。





「それで、わたしの家にきたのね」

オードリーは言いました。


「オードリー、あの老紳士さん、わたしのことを許してくれるかしら」


 ジョージとオードリーが移動遊園地に近づいてきたが、遊園地は撤収作業の途中で、もうすぐ遊園地が片付けられるところでした。

「すみませーん。あのう、昨日いた催眠術使いの老紳士はどこにいますかぁー」

オードリーは撤収作業している遊園地の作業員たちに聞こえるように大声で言いました。

「お嬢ちゃんたち、あそこにいる園長に聞いてみたらどうだい」ヒゲをはやした作業員が言いました。


「ありがとう、おじさん」

オードリーは作業員に礼を言いました。

「あのおじさん、わたしのことをお嬢ちゃんと言った……」

ジョージは少しづつだが女の子らしくなってきているのがいやになってきた。


「そんなことないよ。ジョージはすごく女の子らしいわよ」


「オードリー、からかわないでちょうだい。ねえオードリー、あそこにいるのが園長さんじゃないかしら」


 ジョージは遊園地の園長に催眠術使いの老紳士はどこにいるのか聞いた。でも園長は、催眠術使いはもう出ていったあとだとジョージに言ったのでした。

 この村から移動遊園地が出ていったのを見送ったジョージとオードリー。帰り道をとぼとぼ歩くジョージに、オードリーは昨日のことを話しだした。


「ジョージは、昨日わたしが言ったことを覚えているかな」


「たしかオードリーは、わたしが女の子になったらお姉さんになると言ってた……」

ジョージは昨日のことを思いだしたのです。


「だからいまからわたしがジョージ、ううん、ジェニファーのお姉ちゃんになるの。ジェニファーは今日からわたしの妹」


「オードリー、なに言ってるの」

ジョージは、オードリーがジョークを言ってるのかと思いました。


「ジェニファー。また雪が降ってきたから、わたしの家にいきましょ」

オードリーはジョージをジェニファーと呼びました。





「これが、あのボウズの男らしさの玉か。これほどキレイな玉はめったにないのぅ。それほどあのボウズは男らしかったんじゃな」

老紳士はカバンを開けた。カバンの中にはたくさんの玉がはいっていました。

 老紳士は、ジョージの男らしさの玉をカバンにいれると、カバンの中にあった水晶玉をだしてきました。

 老紳士は水晶玉に呪文を唱えた。すると、ジョージとオードリーのふたりがいる部屋が映っていました。映っていた部屋は、オードリーの部屋でした。

ジョージは、オードリーの部屋にある大鏡に移っている女性の服を着た自分の姿に、顔を赤らめてウットリしているのが見えました。


「替わりにいれた女らしさの玉が、ボウズをもっと女らしくさせるじゃろう」

老紳士は水晶玉をカバンの中にいれると、カバンを荷物棚のうえに乗せました。

「この移動遊園地もあきたのぅ。つぎはどこに行こうかのぅ。とりあえず寝ようかのぅ。おっと、その前にしっぽをしまわなくては」

 老紳士はズボンを脱ぎ、しっぽを後ろにまわしました。しっぽの先端は三又になっていて、まるで悪魔のしっぽみたいだった。

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