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亮1

俺は、見た目はイケてるんだと思う。彼女のすみれにもかっこいいとはよく言われるから。だけど、それだけだ。俺は顔だけのような気がする。歌は大して上手くないし、かといって下手というわけではないいわゆる平均点。運動も例えばバスケとか折角背が高いのだからゴールを決めろよと言われるが入る確率が低いのだ。もしかしたら、運動音痴なのかもしれない。勉強もそこそこで、だけど俺の偏差値よりも高い山岡高校に入ったから今は割と下にいる。


学校は楽しいから、普段は気にならないがこうやって自分を振り返るとやっぱ少し落ち込むな。


今日は、中学の頃から付き合ってるすみれに呼ばれて地元の駅前で待ってるのだけども、相変わらず約束を守らないのだすみれは。だから、とっくに時間は過ぎてるのに今も駅前にいるしかないのだ。


駅前といっても、地元は小さいほうで近くに何も無いため本当に手持ち無沙汰なのだ。早く来いよ、そっちから誘ってきたくせに……でも、きっとそんな文句も言えないのだろう俺は、どうも口下手でうまく言えないのだ。


諦めてるといってもいい。


「亮、ごめーん」


明るく、謝ってきたが少し許せそうにない。


「おそ……なんでもない」


やっぱし、言えなかった。この後を想像するとどうも言えなくなってしまうのだ。


「はぁ……私亮のそういうところ嫌い、ねっ別れよう」


とんでもない事をさらりと笑顔で何気なく普段通りに言われた。


「えっ?はっ!?」


「前々から思ってたんだけどねーだって、言いたいことはっきり言わないしー顔だけなんだもん!じゃあそういう事でじゃーねー」


そう言って、すみれは散々待たせた後、立ち去ってしまったのだ。


「えっ!?嘘」


俺、振られてしまったのか……。


その日の夜正気に戻った頃に、すみれにどういう事かもう少し詳しく聞きたくて連絡したが電源を切っているのか一切連絡が取れなくて諦めるしかなかった。


「篠原、どうした元気ないな」


立ち直れなさ過ぎて、寝れなくて結局オールになってしまい、何時もよりも早く学校についてしまったんだが、井原はそれよりも早く来ていた。同じクラスで先日席替えしたばかりだし口下手なせいで特に話したこともない井原にも心配される程顔色が悪いのか……。


「なんでもない」


「そうか?恋愛のスペシャリスト剛様に何でも聞くとよい」


何故、恋愛と断定するのだろうか。


「あっても井原には言わねえよ」


「ひでーな、イケメン」


「何だそれ?」


「はんっ、イケメン様は自覚なしとムカつくな何か。てか、お前意外と話すんだな」


「……ああ、いや、今日はちょっとオールして……多分ハイになってるんだと思う」


その事に納得したのか井原は俺を見て鼻をならしてきた。


「軟弱だな、イケメンは。ただの夜更かしでフラフラとは」


「井原君が、特殊何だよ」


「そうか、俺特殊なのか」


単純だなと思う。きっと、佐藤さんの言ってる特殊と井原の思ってる特殊は違うと思う。


「おはよ」


「おはよう」


「はよ」


元カノのすみれが、サバサバしているボーイッシュな感じだとすると佐藤さんは、フワフワしている女の子だ。背も、小さくてぱっちりとした目が印象的である。そんな、佐藤さんがいつの間にか会話の中に入っていた。


「佐藤さんも早いね」


「俺よりはいつも遅いけどな」


「井原君は、早すぎだよ」


ほのぼのとした空間に少し昨日のことが原因の傷が癒されているきがする。


「てか、以外だよな篠原」


「何がだ?」


「もっと、お高くとまってる孤高気取りの奴かと思っていた」


「失礼だな」


「そうだよ、井原君」


俺は、そんなふうに見られていたのか、というか孤高気取りって何だ。ただ、口下手なだけで皆と馴染みたいとは思っていた。


「孤高気取りじゃなくて輪には入れないだけなんだよ」


「お前の方が酷くないか?佐藤」


「バレた?」


「バレバレたな、なあ篠原」


「う……うん」


また……だ。こんな時なんて言ったらいいか分からずに濁してしまう。本当は、乗ってバレバレとか言って明るくなりたい。けど、いきなりそんな事言っていいのかとかどうにも思い切りをだせないのだ。2人にも呆れられてしまうのだろうか?


「どうしたの?篠原君」


「図星で、恥ずかしくなったのか?」


気軽に笑って言うが、その通りで情けなくて。


「ああ、言いすぎたすまん」


「えっ」


「そうだよね、こんなふざけちゃってごめんね」


こんな風に謝らせちゃって迷惑かけて、本当に自分が嫌いだ。


「違うんだ」


「えっ?」


「なんだイケメン」


けど、絡んでくれた2人になら勇気を出して言ってみてもいいのかな?


「俺、口下手だし面白くないしで本当に輪に入るのが苦手なんだ、だけど2人が話しかけてくれて嬉しかった、だから謝らないで欲しい」


場をシラケさせてしまったのは俺だしとは、言えなかった。


佐藤さんが、俺の話を聞いて考え込んでいた。また、気分悪くさせてしまったかな?


「よしっ!決めた」


「うるせーな佐藤」


「篠原君は、クラスメートの皆と仲良くなりたいんでしょ?」


「うん」


「なら、お詫びも兼ねて篠原君と皆を仲良くさせちゃおう大作戦をしようと思います」


なんだそれ?なんだそれ。


「具体的に何するんだ?」


「篠原君を、今度の文化祭のリーダーに押す!そして、井原と私が補佐するの、そしたら皆と関わるしね仲いい子増えるかも」


「えっ……えっ」


「アホな佐藤にしたらいい案だな、じゃそうするか!」


何か、勝手に話が進んでいくんだけど。


「じゃ、決まりね!」


「おう、推薦は任せとけイケメン」


「……分かった」


「あっ、そろそろ真由子ちゃん来る時間だ!じゃ、そういう事で」


思わず受けてしまったけどいいんだろうか?


悩んでいたけど、ホームルームの時本当に実行委員になってしまった。


「けど、何で山本さん」


「ゴメンネ、じゃんけん負けちゃった」


補佐をすると言ってくれた佐藤さんは、同じく立候補した山本さんとのジャンケンに負けて委員の座を明け渡す事となったのだ。


えっ、これ大丈夫なのかな?山本さんと話したことないし。


「優ちゃん、テンション高いけどいい子だから大丈夫だよー」


佐藤さんは、本当に顔が広いな。一番仲いいのは酒井さんらしいけど、他の子とも仲はいいと思う。


「ダイジョウブカナー」


「いざとなったら、俺を頼ればいいんだしなっ、篠原」


俺の肩を叩いてくるのは井原だ。本当にこのふたりはお人好しというか罪悪感だけでここまで後押しとか委員とかやってくれようとなんてしないだろう普通はめんどくさいし。


「ありがとう、俺の為にこんな」


「湿っぽいのはよせって、早速委員の集まり放課後にあるんだろ?頑張れよ!」


「いや、お前もいるだろ?」


「俺、サボるから」


「はぁ?」


「悪いな、バイトだ」


そう言って、井原は帰った。そう、押し付けて帰ったのだ。佐藤さんも申し訳無さそうにして帰っていった。


「えっ、井原帰ったの!?立候補しといて?ありえない」


やはり、山本さんは怒った。俺も怒ってる、かなり怒ってる。推薦しといてそれかいみたいなのがある。


「それにしてもさー意外よね篠原君こういうの嫌いそうじゃん?」


「いや、訳あって」


「ふーん、まあサボらないでしっかり仕事してくれるならいいよ」


山本さんは、楽しげに笑って会議室に入っていった。慌てて入ると、既にたくさんの実行委員の人が集まっていた。やはりというか、他のクラスの人はキラキラしてると思う人が多くて非常に居心地が悪い。


生徒会長が前に立つと、喋ってる人達も黙った。


「進行を務めさせてもらいます花谷です。今日は、文化祭についての説明をさせてもらいます。お集まりくださりありがとうございます」


「いよっ、生徒会長」


「静かにしてくださりますか?二宮さん」


「……はい」


先輩達の掛け合いは、流れるように自然でそれにクスクス笑ってる山本さんや周りの人達。生徒会長は、全く顔色を変えずに進行をしている。その、アンバランスな様子に思わず声が出てしまい睨まれてしまった。


「1年生はお金を徴収しない出し物、2年生は物品販売と1クラスだけ調理ができます。3年生、部活動は調理、物品販売どちらも可能です。何か質問はありますか?」


「……ないようなので、次の説明をします」


そんな感じでそつが無いわけではなかったが、文化祭に向けてのオリエンテーションは終わった。


「明日、何やるかアンケート取らないとだね!!もちろん、井原をこき使って」


「ああ」


「楽しみだねー文化祭……ってあれつむぎじゃん!先輩と一緒だ、ヤホー」


会議室から出て、明日必要なプリント等を教室に運んでいざ帰るかと山本さんと昇降口に向かってる最中。山本さんが手を振った先にはオレンジに照らされた廊下で笑いあってる男女がいた。


佐藤さんと、見知らぬ男の人だ。山本さんの言う通りなら、先輩という事になる。


「最近つむぎ、先輩と仲いいなーもしかして彼氏とかなのかなー?もしそうなら、いいなー。彼氏ほしー」


無邪気に笑う山本さんは、佐藤さんに大して羨望の意を唱えながらも割とどうでも良さそげに聞こえる。


昨日ふられたばかりだから、そんなふうに感じてしまうのかもしれない。


彼氏かもしれないという先輩と笑ってる佐藤さんもカレカノを羨む山本さんも見たくなくてその日はそのまま何も言わずに帰ってしまった。


次の日を迎えても着信0、LINEメッセージ0、虚しい。すみれから、何かメッセージがくるなんて期待をもっていた。突然過ぎて多分、まだ実感がなかったから……何て女々しい。


すみれは、決めたらこうという女だ。多分、俺から連絡しないと何も説明なしに終わるだろう。


だけど俺から、振られたことについてのメッセージをする事は怖くて出来ないし、やっぱり待ってしまう。多分そんな意気地無しな所もお気に召されなかったのだろう。


意見がはっきりと言えるようになりたい。……その為に、半ば押し切られるように立候補してしまった文化祭委員、今度の文化祭で何か変わるといいな。……突然帰ってしまったから仕事終わったとしても驚いただろうな謝らなくては……カタンと携帯が落ちた音がした。最後に充電してないなと思ってでも睡魔に勝てなくてそのまま寝てしまう事になった。

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