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空中ブランコ
「あ。」
口を開けた瞬間、ぐしゃりと嫌な音がした。
ピエロが死んだ。空中ブランコから真っ逆さまに落ちていった。悲鳴が私の耳を劈いた。ピエロは血を流しながら涙の模様をつけて笑っていた。
私にはそれが羨ましかった。私は空を飛びたかった。鳥のように自由に飛びまわれたら幸せだろうと小さい頃から思っていた。あのピエロもきっと同じことを考えていたのだろうと想像してみる。ピエロは自ら手を離したのを私ははっきりと見ていた。
今、私は空中ブランコにつかまって空を舞っている。もうすぐ、もうすぐ私は鳥になる。人々の目が、私に注目する。手を離せば私は....
ふと客席にいる少年と目があった。
「ばいばい。」
わずかに口を動かして届かない声で挨拶をした。
手を離す。地面が近づいてくる。私は空を飛んだ。
「あ。」
僕は口に入れたばかりの大粒のキャラメルが落ちるのも忘れて大口を空けていた。ピエロが鳥になった。




