独白(ユーリエ)
閑話1本目です。
短いです。
愛おしい。
この想いはどんどん大きくなる。
それは燃え尽きる前の蝋燭のようなものなのだろうか。
もしかすると、私にはもう時間が残されていないのだろうか…
私はこれまでの生き様を振り返る。
なんて無駄な時間を費やしてしまったんだろう。
どうしてもっと早く出会わなかったのだろう。
ラウラ=デュメリリー
魔大陸に、いや、この世界でその名を知らない人族以外の種族は存在しない。
迫害を受けていた種族の解放を実現した大英雄。
どんな恐ろしい方だろうか。
私など取って喰われてしまうのではないか。
畏れ多くも、そのような想いだった。
だが、実物は全く違った。
その見た目は可憐という言葉を体現したような少女だった。
自らに好意を持つ相手に対しては、とても柔らかい物腰。
当然ながら、敵には容赦はなかったが…
その力は覇者と呼ぶに相応しいものだった。
力こそが絶対正義の『森』において、全ての魔物が平伏すその力。
庇護者としての貫禄は私の想像を遥かに超えて輝かしいものだった。
しかし、私にはいくつか気になる点があった。
ラウラ様の使う術式に費やす魔力が多すぎる。
ラウラ様は「確実に発動させるため」と仰っていたが、私の倍以上の魔力を使っていた。
あまりにも非効率だ。
魔法の研究に余念のないラウラ様にしては珍しい。
次に、ラウラ様が「精霊魔法」を使ったところを見たことがない。
エルフならば、大概の者は精霊魔法の使い手だ。
ラウラ様ほどのハイエルフならば、大精霊が使役できてもおかしくはないのに、その兆候が見られない。
まるで、元々使えないかのような…
そして、一番の疑問がある。
ハイエルフという種族に対する文献が、一切存在しないこと。
ハイエルフはエルフの至高種とされているが、そのような記述をした文献はいくら探しても見当たらなかった。
あの方は一体何なのだろう。
元は召喚された勇者だと教えてもらった。
とある存在にその体を貸してもらっていると。
そして、天使達との戦いを繰り広げていると。
天使の存在は知っていた。
だが、それと戦うということを考えたことは無かった。
だが、それは私の想いを妨げる要因にはなり得ない。
私にとって、ラウラ様は神だ。
そんな方にお仕えすることは至上の喜びだ。
それなのに…
私は許されないことをした。
私はラウラ様の血を飲んだ。
魂の絆を結ぶ為だ。
その事実を、ラウラ様は知らない。
私の種族は、魔力の強い者の血を飲んで力を増やす。
しかし、ラウラ様の血を飲んでも、その実感は無かった。
何故だろう。
無断で血を飲んだことへの罰だろうか。
私は文献を調べた。
そして、原因を突き止めた。
それは、衝撃的な内容だった。
だが、それを回避する方法は存在しない。
なら、受け入れよう。
もっともっと、ラウラ様のために働こう。
私は羨ましい。
自らの欲望に忠実なシャーリーさんが、それに輪をかけたような一之瀬さんが、そして、ラウラ様と最も深い魂の繋がりを持つ楓さんが…
私はそこに入れるのだろうか。
いいや、今は考えるのはやめておこう。
ラウラ様の戦いの妨げになってはいけない。
私はあの方のサポートをしなければいけない。
あの方の喜ぶ顔を見せていただくために。
あの方に褒めていただくために。
「すまなかったな、助かったよ」
「お前がいてくれれば、私は安心できる」
「なんだよ、もっと気楽にしてくれ」
そんな御言葉をかけていただくたびに、私は夢心地になる。
もっともっと尽くしたい。
そんな想いが身体を駆け巡る。
それが私をもっと強くする。
ラウラ様の隣で戦うのは私に許された特権だと思う。
ならば応えてみせる。
どんなことがあっても。
その先に何が待っていても。
私は決意を新たにする。
心の片隅に、ほんの僅かに残る違和感。
そんなものを吹き飛ばすために。
これからもずっと、あの方の支えとなれるように。
ラウラ様の笑顔を、隣で見続けるために…
支離滅裂な感じがするのは敢えてそうしてます。
その理由が、本編で明らかにします。
1時間後にもう1話、閑話を投稿します。
よろしくおねがいします。