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ハイエルフさん罷り通る!  作者: 黒六
第10章 狙われた魔道学院
81/124

どうして…

300万PV超えました!

ありがとうございます!

「どうしてこうなった…」






 ラウラは、今自分に起こっている状況に天を仰いだ。



「ああ…ラウラお姉さま…恵は…もうお姉さま無しでは…」

「恵ちゃん! ラウラちゃんから離れてよ!」

「ラウラ様の従僕1号は私です。わきまえなさい」


 ラウラの足に縋り付く一之瀬。

 一之瀬を引き剥がそうとする楓。

 それをラウラの隣で見つめるユーリエ。


 他の者はそれを見てドン引きしている。

 時折…


「ラウラってそっちの趣味が…」

「ドSの百合って誰得だよ…」


 といった囁きが聞こえて、ラウラの耐久力を削っていく。



「本当に………どうしてこうなった…」


 自分の身を守るためとはいえ、こんな結末になってしまうとは、自分自身の見通しが甘かったことを後悔した。


「こんな変態を相手にしたことなんて無かったからな…」


 戦う前に比べて、かなりやつれた表情のラウラ。ある意味、ここまでラウラにダメージを与えるのは称賛に価するだろう。


「西川! お姉さまは私のものだから!」

「何言ってんの! ラウラちゃんは私のだよ!」

「…いつから所有物になったんだよ…」


 キャットファイトになりそうな状況だったので、とりあえず助け舟を出すことにした。


「おい、一之瀬。少しは立場を考えろ。楓のほうが先だったんだぞ」

「そうだよ! 恵ちゃんは後からなんだから遠慮して!」

「…そんな、お姉さま…まさか、もしかして…これはNTRフラグ?」

「…NTR? 何だそれは?」

「…ラウラちゃん? それは『寝取られ』っていう意味だよ? 私からラウラちゃんを寝取るつもりなんだよ…」

「寝取るって…まだ寝てもいないのにか?」


 思わず頭を抱えて蹲るラウラ。

 そんな姿を見た一之瀬は、名案を思いついたような顔をする。


「ふーん、まだ・・なんだ…。それなら3人で…」

「「 しないよ! 」」


 思わず声を合わせてしまうラウラと楓。


「本当にこいつは………先が思いやられるな…」

「ねぇ、どうして恵ちゃんを助けたの?」

「ん? …ああ、何となく…かな? 色々と使えそうな気がしたんだよ」


 楓の問いに、少々言葉を濁す。

 あのときラウラを止めた声についても、色々と調べなければならない。

 まだ確信が持てない以上、無闇に話していい内容ではない。

 

「それに、一之瀬コイツはこれでもルーセントでは有名人なんだろ? 色々と融通利かせてもらえるかもしれないじゃないか」

「この女に? 大丈夫なの?」


 露骨に嫌な表情を浮かべるのはサラだ。


「あら、この子は誰? ふーん、あの複製体コピー母体オリジナルか」


 素気ない対応の一之瀬。


「別に私はあの国に愛着なんて無いわ。好きにしてもらっていいわよ」

「好きにって…巫女はどうなったの?」

「上位3位までの巫女は死んだわ。私を拉致してへんな奴と融合させようとしたんだから、当然の報いじゃない」

「それは…そうなんだけど…」


 かつて巫女の一員として、教団の暗部を見続けていたサラにとっては、苦い思い出だ。

 表情を暗くするサラを見て、一之瀬が慌てて付け加える。


「ほ、ほら、私も少しは面倒見てもらったってのもあるし、少しくらいなら協力するわ!」

「本当? …それなら、私が教団の建て直しをする!」

「…おいおい、大丈夫なのか?」


 かつての発言を翻すサラに、ラウラが苦言を呈す。


「いきなり上層部がいなくなったんだ、混乱してるだろう?」

「だから行くんでしょ! このままじゃ、瓦解してしまうわ! 誰かが支えないと!」

「仕方ないな…おい、一之瀬!」

「はい! お姉さま!」

「…誰がお姉さまだよ…。サラはまだ勉強不足だから、サラが戻るまでの間は何とかしろ。お前だって無関係じゃないんだから」

「はい! お姉さまのために頑張ります!」

「それじゃ、先に戻ってろ。きっと国内は混乱状態だ、お前が皆の前に出れば少しは落ち着くだろう。…それと、人前ではその姿になるなよ? 」

「わかりました! この姿は2人きりで愛してもらうときだけにします!」

「…理解の方向がかなりずれてるように思うが…とにかく任せた」

「…頑張った分、ご褒美くださいね」


 一之瀬は意味深な言葉を残してウィンクすると、その場を後にした。



「やっと離れてくれた………ラウラちゃん、私というものがありながら浮気なんて…」

「そんなに新しい従僕が欲しいのですか…やはり新しいほうが…」

「楓? これは浮気じゃないと思うぞ? それにユーリエ? 新しいほうがいいって何だよ!」

「だって…恵ちゃんがあんなになるなんて…よほどすごいコトしたとしか…」

「そうです、あの変貌ぶりは考えられません。是非ともその御技をこの私に…」

「だーかーらー! あいつが勝手に変な夢見ただけだろう!」

「そ、そんな…夢見心地にしたなんて…」

「な、なんて羨ましい…」

「もう勝手にしてくれ…」


 ラウラはどっと疲れが押し寄せてくるのを感じた。これまで生きてきて一番厳しい戦いだったのかもしれないと心底思った。

 

 そして、何故か楓とユーリエそれぞれに添い寝する約束をさせられてしまった。


「ラウラちゃんの同意を取ったわ…これで堂々と色々できる…」

「ここは従僕として、私の全ての知識を用いて御奉仕を…」


 妖しげな笑みを浮かべる2人を見ながら、ラウラは大きな溜息をついた。






「本当に…どうしてこうなった…」










 

「で? お前らはどうするつもりなんだ?」


 総督府の評議長室、その執務机に腰掛けたラウラが不快感ありありの表情で見下ろす。


「「「「「「「「「 申し訳ありませんでした! 」」」」」」」」」


 ラウラの前には土下座して額を床に擦りつける職員一同。 二村の使った洗脳が解け、改めて自分達の行動を見返した時、その事実を知ってしまったのだ。



 偽者のラウラを崇めてしまっていたことを。


「し、しかしですね…我々もですね…」

「…何だ? 言ってみろ?」


 ラウラのねめつけるような視線にたじろぎつつ、一人の男が反論する。


「我々も洗脳されていたわけでして…決して故意ではないのでして…はい…」

「ということは、だ。私は簡単に洗脳される無能・・に要職を任せた無能ということだな?」

「そ、そんなことは決して…」


 ラウラは内心、舌打ちする。というのも、ラウラにとある報告がされていたからだ。







 ――― 数日前 魔道学院応接室 ―――



 そこには苦々しい表情をしたラウラと学院長、そして評議長に復帰したアドルフがいた。

 ユーリエは無表情だったが、時折不穏な単語を口走っていることから、かなり立腹しているようだった。


「で、この報告書の内容は間違いないんだな? アドルフ?」

「はい、しっかりと裏をとりました。間違いありません」

「…まさかここまでだとはな…」


 一同は険しい表情を崩さない。ユーリエだけは全く表情を崩していないが…


「それにしても、まさか魔道技術の横流しをしている者がいるとは…」


 学院長の表情は暗い。それも当然だろう、魔道技術の流出ということは、学院の関係者が関係しているのだから。


 魔道学院はその情報の重要性から、関係者以外の学習施設への立ち入りを固く禁じている。しかも、技術に関する情報はある一定のレベルに達した者でなければ触れることすら許されないほどに徹底している。


 つまり、それほどの重要な位置にいる者が関わっているということなのだ。


「教職員には誓約の魔法を使ってありますので、関係しているということはないと思いますが、生徒ではそうもいきませんので…」

「生徒でもそのレベルに達している者は限られてくるんじゃないか?」

「はい、そうなんですが…」


 言葉を濁す学院長に代わり、アドルフがその答えを引き継ぐ。


「実はですね、嫌疑をかけられている生徒は皆、連合国の主要国の王族関係者なのです」

「ほう?」


 ラウラの瞳に剣呑な光が宿る。


「ラウラ様の想定通り、その王族は連合国の中でも過激思想を推進している者達です。その思想というのが…」

ラウラを排除して、独自の国家を作りたいということだろう?」


 アドルフの言葉を最後まで言わせずに、核心をつく。その表情は笑みを絶やさない。ラウラの性格を熟知するアドルフは、それが危険信号だと理解していた。


「そ、それはまだ確定ではありませんが…おそらくは…」

「お前を失脚に追い込めるような権力を持つ者など、そうはいないだろう? 目先の金と権力に踊らされる馬鹿がいるんだろ?」

「は、はい…その通りです…」


 アドルフはかつて『森』に棲んでいたエルフだ。ラウラの性格は良く知っている。だからこそ、権力争いなどという無益な騒動を嫌悪していることも良く知っていた。


 もし、嫌疑のかかった王族のいる国にラウラが向かえば、そこには惨劇しか生まれないということも。

 

 評議長として、そのようなことを認めるわけにはいかないのだ。例え、それがラウラに反抗することになっても、だ。


「全く…そいつらの国に行って、ちょっとばかりお灸を据えてやらないとな…」

「お、お待ちください! ラウラ様には是非ともやっていただきたいことがありまして…」

「…なんだと?」


 ラウラの殺気の籠った視線に腰砕けになりそうになるのを必死に堪えて、アドルフは続ける。


「総督府内にも関係者がいるようですが、なかなか尻尾を出しません。私の評議長という立場から、強硬手段に出られないことを理解しています。そこで…」

「私という、超法規的存在で炙り出そうということか?」

「はい、お願いできますか?」


 学院長は話の内容に顔を青くしている。まさかラウラをそのように使うとは微塵も考えていなかったからだ。しかし…


「いいだろう、しっかりネズミを燻し出してやろうじゃないか」

「は、はい! お願いします!」

「お前が私に反抗してまで拘る理由………関わってる国は多いんだろう? ネズミを放った国を吊るし上げて、他国への牽制にする気だな?」

「はい、全ての膿を出し切ってしまったら、この国は他国に対抗する国力を失いますので」


 確信を持った表情で話すアドルフに満足そうな表情で頷くと、隣でぶつぶつと呟き続けるユーリエを促して立ち上がる。


「ほら、ユーリエにも手伝ってもらうことがあるんだ。一緒に来てもらうぞ。アドルフ、こっちは任せておけ、しっかりネズミ駆除しておいてやる」


 意味深な微笑みを浮かべて立ち去るラウラを見て、アドルフは自分の選択が間違ったのではないかと不安な表情を浮かべていた。

ついにラウラにお姉さま属性が!

次回は8日の予定です。

読んでいただいてありがとうございます!

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