表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイエルフさん罷り通る!  作者: 黒六
第10章 狙われた魔道学院
80/124

まさかの反撃

後半に百合&微エロ表現があります。

嫌いな方はご注意ください。

一之瀬は自らの欲望のままに動いていた。ラウラが欲しい…ただその一点で…。そして、ついに手に入る時が来た。

 

ラウラは観念したのか、自分から少し距離をとって何か考えているようだった。


(これでお終い! あとは傷ついた心を優しく労ってあげれば…もうラウラは身も心もわたしのもの!」


 そんなことを考えていた一之瀬は、ラウラの一言で全身が凍りついた。





「それ以上やったら…嫌いになっちゃうからね!」





 いったいどういうことだろう? 思考が上手く纏まらない。冗談かと思ってラウラをよく見れば、全身が小刻みに震えており、その大きな瞳は潤んいる。目尻には大粒の涙が溜まっている。


「ま、まさか………嘘…嘘でしょ?」


 一之瀬の心は大きく揺れる。強引にいけば、ラウラは手に入るだろう。しかし、あの表情を見てしまったらどうしようもない。


 それほどに、涙を浮かべて可愛らしく拒絶する姿は………一之瀬のツボに入った。





「かわいい~! なにこれ!」







 ラウラは楓からの指示を聞き、最初は酷く悩んだ。自分自身のプライドなどいつでも捨てる覚悟は出来ているが、それでもこれは駄目だと思えた。


 プライドではなく、誇りの問題なのかもしれない。これだけは捨ててはいけない最後の一かけらなのかもしれない。


 それを捨てれば、もう後戻りできないかもしれない。そんな恐怖がラウラの心に生じる。初めて味わうその感情に戸惑いを隠せない。


 戦いにおいて恐怖を味わったことはない。200年の修行で、戦いの恐怖は克服したと思っていた。しかし、今自身を蝕む恐怖は全く異質だ。


 一之瀬のラウラを見つめる瞳が、舌なめずりするその口が、妖しげに指を動かすその手がラウラの視界に入った途端、全身を悪寒が駆け抜ける。


(一刻も早く、この場から逃げ出したい!)


 そんな思いがラウラの判断能力を奪ったのかもしれない。仕方なくではあるが、楓の提案に乗ることにした。









 そして…ラウラは後悔した。


 何という恥辱か、何という羞恥か。恥ずかしさのあまり、その色白な肌は薄桃色に上気してしまい、全身は小さな震えが止まらない。気付けば視界が涙で滲みかけている。


(でも…やるしかないんだ!)


 自らの心に鞭を打ち、何故かもじもじしている一之瀬へんたいに対峙する。


「やーん、もう我慢できない! 絶対に持って帰る! 」


 そんなことを堂々と言い放つ一之瀬の目はより一層の欲望に染まる。顔を赤らめて必死に拒絶するラウラの姿は、一之瀬に力を与えてしまったようだ。


(どうする、楓! さっきより危険度が増してるぞ!)

(まだまだ足りないよ! 次はね………)

(………もういい、ここまで来たら行き着くところまで行ってやる…)


 楓からの次なる指示を受けて、ラウラは行動を開始する。


 じりじりと距離を詰めてくる一之瀬に対して、ラウラも距離を取ろうとするが、背後に仕掛けられた結界がそれを阻む。仕方なく、楓に伝えられた次なる手段を実行する。


「私………怒ってるんだからね!」

「そ…そんな…なんてこと…」


 顔を赤らめながらも、その両手を腰にあて、膨れっ面をしながらも、半ば拗ねたような口ぶりで言うラウラを見て、一之瀬は動揺を隠せない。


 大きく開いた口を両手で覆い隠しながらも、その両目はラウラから離さない。いや、離せないといったほうがいいだろう。それほどまでに、ラウラの仕草は一之瀬の心を抉った………ラウラにとって悪い方向で。


「ぐうっ…」


 その時、ラウラの後方から呻き声がする。その声はユーリエのものだ。


「おい! 大丈夫か!」


 何らかの攻撃をうけたのかと、不安な表情を露わにして振り向くと…そこには顔の下半分を両手で隠すユーリエがいた。しかも、その指の間からは夥しい出血があった。


「だ、大丈夫です………少しばかり興奮してしまっただけです…」


 どうやらユーリエは鼻血を出しているようだ。まさか仲間内にまで影響を及ぼしているとは想像もしていなかった。


「くうっ………」


 もうひとつあがった呻き声に反応して振り返ると、そこにはユーリエと同様に鼻血を流す一之瀬の姿。ただ、ユーリエと決定的に異なるのは、流れる鼻血を一切隠そうとしていないところだろう。


「そ、そんなに可愛く怒られたら………興奮しちゃう………」


 その両手を広げながら、じりじりと距離を詰める一之瀬に、ラウラは思う。


(あ、これは終わったかもしれない)



 前には一之瀬へんたい、上下左右後ろには結界…ラウラには脱出する方法が見当たらない。弱体化した(ラウラは力をセーブしていることを自覚できていない)状態では力任せに破ることも難しい。それほどまでに一之瀬の力は強かった。


(せめて一矢報いるくらいはしないと………ん? これは?)


 視線を一之瀬から逸らさないまま、片手で魔法の鞄マジックポーチの中を探ると、あるもの・・・・がその手に触れた。ラウラはそれにおおよその見当をつける。


(これならもしかして…あとはどうやって使うかだな。何とか一之瀬に気付かれずに至近距離まで辿り着かないと…)


 ラウラは恐怖でフリーズしかける頭の回転数を上げ、対策を考える。


(一之瀬の行動は、箍を外したシャーリーに近い…とすると、私から歩み寄る姿勢を見せれば拒絶はしないだろう。…となれば…できればやりたくないが、仕方ない…)


 何とか解決策らしきものに辿り着き、それを実行するタイミングを見計らう。


(一之瀬はロリ好きだと聞いた…ならこれは効き目があるはずだ………私のダメージは測りしれないが…)


 微量の魔力を循環させて、身体のある部分を刺激する。ラウラの思惑通りに自分の身体が反応しはじめたのを確認すると、計画を実行した。







「う…うう………ご…ごめん…なさい…」






 突然涙を流し始めるラウラ。震える声で謝罪するのは誰にあてたものか…



 いきなりのラウラの豹変に、一之瀬は激しく動揺した。







 

 ラウラの流す涙を見て、一之瀬は自責の念に駆られていた。


「そんな…本当に泣かせてしまうなんて…」


 一之瀬は確かに女性はロリ以外相手にしない変態で、それを自覚している。それは一之瀬自身に信念があるからだ。


 それは、『決して無理強いしない』ということ。


 無理矢理なんて以ての外なのだ。相手とそう言う事・・・・・を愉しむには、お互いの同意がなければいけないのだ。


 無理矢理ならば非難されて然るべきだが、同意の上ならば何の問題があろうか。


 だが、今目の前にいるエルフの少女ラウラは泣いている。自分に怯えている。

 多少、怖がらせるつもりではあったが、ここまでしてしまうのは一之瀬のプライドが許さなかった。


「大丈夫よ…怖くなんてないから」

「ほ、本当? 虐めたり…しない?」

「もちろんよ! 無理矢理なんて有り得ないわ! こういうことは同意の上で愉しむのがいいんだから!」


堂々と胸を張って主張する一之瀬。言ってることは胸を張るほどのことではないのだが…


「それじゃ………仲直り…してくれる?」

「ええ! これで仲良しね!」


 ラウラの言葉に爽やかな笑顔で返す一之瀬。


(これでラウラの印象は良くなったわね。あとはじっくり深い関係になっていけば…)


 最初は拒絶されていたが、次第に手応えを感じられるようになった。こんな時こそ焦ってはいけない。そう自分に言い聞かせていた。自分の思惑通りに進んでいることにほくそ笑む。





 だが、一之瀬は気付いていない。攻略対象ラウラもまたほくそ笑んでいることを。








 2人の攻防は引き分けドローということになり、今は水田の傍の草地に並んで座っていた。一之瀬は満面の笑み、ラウラはどことなくぎこちない笑みだったが。


「さて、これからどうしよっか? お話する? それともイイ事する?」


 ラウラの両手をがっちりと握って顔を近づけてくる一之瀬に、表情を強張らせながらも何とか対応する。


「あ、あの…私…料理作ったんです…一緒に食べますか?」

「え? ラウラの手料理? 食べる! 絶対食べる!」


 身を乗り出してくる一之瀬を何とか避けながら、鞄を開く素振りをする。


「あの…味はいいんですけど…見た目がちょっと…だから、恥ずかしくて…」

「えー? そんなの気にしないよ?」

「私が気にするんです! だから、食べさせてあげますから、目を瞑っていてくれますか?」

「ラウラが『あーん』してくれるの? 瞑る瞑る! もう一生瞑ったままでもいい!」

(よし! かかった! あとは『シチュー』を…)


 魔法の鞄から取り出そうとしたとき、ラウラの脳裏に声が響く。小さな声だが、必死に何かを訴える声だった。




『その子を殺しては駄目…取り返しのつかない事になる…』




 ただひたすらに、それだけを繰り返している。ラウラは思わず『シチュー』を手放し、違うモノを掴んでしまう。



『それでいい………これで最悪の事態は………回避できた………』


(…誰だ? どこか懐かしい感じがする…それに、最悪の事態とは何だ?)


 そんな疑問が残るが、ラウラとしても敵以外を殺すつもりはない。一之瀬を無力化してしまえばいいだけだ。


「ねー、ラウラ? まだ?」

「あ、はい。今あげますから、口を開けてください」

「あ、懐かしい香り。私の好物だよ、これ」

「それは良かったです。よく味わってください、………『カレー』を」


 一之瀬は何の躊躇いもなく、そのピンク色の物体を…食べた。そして、一之瀬の意識はピンク色に染まり、何かに誘われるように眠りに堕ちていった。


「ふう、何とかここまできたか………しかし、この後どうなるか…」


 一息つきながらも、緊張した面持ちで眠る一之瀬を見つめるラウラ。時折、変な笑い声をあげたり、指をわきわきしたりする一之瀬を嫌々ながら監視する。








「あれ? ここは何処だろう?」


 目を覚ました一之瀬は、一面の花畑の中にいた。


「あれ? ラウラは何処? さっきまで一緒だったのに?」


 辺りを見回すと、少し離れた場所に何かがあった。


「あれは何だろう? 行ってみよう」


 それ・・に向かって歩みを進めると、それはキングサイズのベッドだった。そしてその上には、何故かバスローブを着たラウラが座っていた。


「ラウラ! ついにその気になってくれたのね!」


 一之瀬はすぐさま自分の衣服を脱ぎ去り、ラウラに向かって突撃する。ベッドにダイブし、ラウラを抱きしめようとした瞬間、どこからともなく現れた薔薇の蔓が一之瀬を拘束した。一之瀬は理解できないといった表情をラウラに向けると、ラウラは今までの可愛らしい雰囲気を一変させ、妖艶な笑みを浮かべて一之瀬に近づいてくる。



「なあ、私を抱くつもりなのか? 随分と威勢がいいじゃないか。でも、それは間違いだ」

「え? 何で? どこが間違いなの?」


 いきなり雰囲気の変わったラウラに戸惑いながらも、乱暴な言葉を投げかけられることに自身のMの部分が刺激されてしまう一之瀬。


「何が間違いか? おいおい、そんなことも解らないのか? お前・・が私を抱くんじゃない、私が・・お前を抱くんだよ!」


 拘束された状態のまま、無造作に引き寄せられると、薔薇の棘による痛みに思わず声を漏らしてしまう。


「なかなかイイ声で鳴くじゃないか、もっと私を愉しませてくれ」


 一之瀬はラウラになすがままにされていく………夢の中で………そして、新たな感情が芽生え始めていた………



一之瀬さんはどうなってしまうんでしょうか…

次回は5日の予定です。

読んでいただいてありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ