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ハイエルフさん罷り通る!  作者: 黒六
第1章 召喚されてしまいました
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これも委員長のお仕事?

8/31 通貨単位を修正

「それでは…僕たちが行く世界というのはどういう世界なんですか?」

「何故それを聞きますか?」

「僕たちは地球で平和に暮らしてきました。命の危険なんてまずありえない世界です。そんな人間が対応できる世界なのか、それを判断する材料がほしいんです」

「呼ばれた世界以外に行くことはできないんですよ?」

「分かっています。だから、事前に対策を練ろうとしてるんです。召喚されたはいいですけど、その世界のことを全く理解してなかったために命を落とすなんて馬鹿らしいですから」


 徹は佐々木達に釘を刺しておく意味も含めて言った。安心安全に暮らすのであれば、その世界の事前情報は必須だ。何も知らずに飛び込んでいけば、ほぼ確実に自由など無くなると徹は予想していた。


「本当にあなたは面白い。ほかの方々はほとんど質問していないのにあなただけが的確に情報を引き出していく。しかもあなたの質問は理に適っているものばかりだ。一時の感情に押し流されるわけでも無い。かといって自分だけに適応するような回答のある質問はしてこない。…そこまで他の方々が大事ですか?」

「僕はクラス委員長ですから。クラスの皆の面倒を見るのが役目なんです」

「…皆を守る為…ですか?」

「そんなことできる訳ありません。僕の出来ることなんてたかが知れていますから。できるだけ情報を集めて、あとは皆がそれを基に的確な判断をしてくれることを祈るのみです」




 徹は自分が皆を守ろうなんて考えてはいない。確かに頭の回転は速いかもしれないが、全知全能のヒーローではないのだ。せめて楓と前島先生くらいは守れればとは思ってはいるが、それができる保証もない。だからこそ、事前にひたすら情報を集めて少しでも危険を減らしたいのだ。


「…必死なんですね」

「はい。必死です。今まで生きてきて一番の極限状態です」

「わかりました。あなたの知りたいことをどうぞ」


 それからは思いつくかぎりのことを質問した。まずはこれから行く世界について。これから行くのは「アステール」という世界で、文化レベルは地球で言うところの産業革命以前、中世ヨーロッパあたりの文化水準らしい。地理的には、巨大な大陸が1つとその3分の1くらいの大陸が3つ、あとは大中小の島々で構成されている。国家としては、バラムンド王国とティングレイ帝国、聖ルーセント教国の3国が大国で、それに付随して中小国が合わせて50ほどあるらしい。

 言語については、召喚者は基本的に多言語をマスターした状態で召喚されるらしい。これは半ば強制的に日本語に変換されて聞こえるらしい。話す言葉は話す対象によって自動的に選択して翻訳されるとのこと。

興味深かったのは魔法があることだった。召喚術があるのだから当然だろう。それから魔物もいるそうだ。魔物は人間をはじめとした動物を食べているそうだ。

 民族については、一番多いのが人族、次に獣人族、その次に魔族という順で少なくなっていく。

エルフ族や妖精種なんてのは希少種だそうだ。すでに絶滅してしまった種族もいるんだとか。

 あと、奴隷制度もある。主に犯罪奴隷と借金奴隷で、戦争で捕虜になった末端の兵士は戦争奴隷にされる。奴隷は隷属の首輪をつけられ、命令に背いた場合はそれが締まるらしい。基本的に犯罪奴隷以外は差別が禁止されているが、未だに根強く残っているそうだ。盗賊が一般人を攫って奴隷として売りさばくこともよくあるらしい。

 通貨はガルという単位で、ほぼ1ガルが1円換算でいいらしい。貨幣は銅貨1枚が10ガル、半銀貨1枚が100ガル、銀貨1枚が1000ガル、金貨1枚が1万ガルとのこと。


「他に聞きたいことはありますか?」

「どこの国が僕たちを…いえ、何でもありません。この世界の国で、国家間の情勢があまりよくないのはどこでしょうか?」

「成程、やはりあなたは素晴らしい。先ほどの質問をそのまましていたら強制終了していました」

「…やはりあれは地雷でしたか…」


 徹は自分の予想が当たっていたことに心から安堵した。本当はどこの国が召喚したかを聞くつもりだったのだが、自身の直感を信じて質問を変えた。あまりにも直球な質問は危険と思えた。

だから、国家間情勢という表現を使ったのだ。


「3大国家はあまり情勢はよくありません。ただし、国をあげての戦争ではなく、国境付近の貴族の小競り合いといった感じでしょうか」

「貴族がいるんですか?」

「はい。気をつけてください」

「ありがとうございます」

「あとは大丈夫ですか?」

「とりあえずは大丈夫です。また聞くかもしれませんが…」

「あなたは質問の仕方を弁えているようなので、かまいませんよ」


 声の主はどこか愉しげだ。


「とりあえず僕の聞きたいことは終わりました」

「お疲れ様」


 前島先生が徹を労う。


「随分細かいことまで聞いたわね。ただ、どこの国が召喚したかはわからずね」

「はい。それは仕方ないです。直接的な質問は地雷のようなので」

「よくそれに気付いたわね。本当にすごいわ」

「徹くんすごい!」

「ありがとう、楓」

「えへへへ」


 楓の頭を撫でてやると、嬉しそうに目を細める。


「声の主は誰なのかしら?」

「前島先生、多分それは一番危険な地雷だと思います。どうもそんな感じがします」

『さすがですね、その通りですよ』


 突然、徹の心の中に声が響く。どうやらこれが聞こえるのは徹だけのようだ。突然の事に何か不穏なものを予感し、咄嗟に小声で返す。


(どうしたんですか? ちょっとびっくりしました)

『いえ、他の方があなたの言う「地雷」を踏みそうなので。その前にあなたにだけ知らせておきたいことがあるのです』

(それはどういうことですか?)

『実は…過去に地球からアステールに召喚された方がいます。あなたと同じ国の方です』


 衝撃的な内容だった。召喚に前例があったとは。徹は地雷かもしれない質問をしてみた。


(その方たちは…帰れたのですか?)

『その時は4名召喚されたのですが、3名はアステールに混乱と災いを齎したとして処罰されました。残り1名は…罰を受けています…現在も…』


 その内容に、徹は物凄く嫌な予感しかしなかった。これから先はほんの僅かもミス出来ない。そう自分に言い聞かせて、状況を見守ることにした。

読んでいただいた方、誠にありがとうございます。

誤字・脱字指摘・感想等、宜しくお願いします。

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[一言] なんでどこの国が召喚したことを聞くのが地雷なの??
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