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ハイエルフさん罷り通る!  作者: 黒六
第3章 風雲! ティングレイ皇城!
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皇城での召喚者たち

 ラウラ達がスージーの店でピザトーストを食べている頃、皇城では皇帝と勇者の謁見の準備が進んでいた。ほとんどが制服だったのだが、異世界の正装ということで納得してもらえた。しかし見栄えが良くないということで、制服の上から男子は革鎧、女子はローブを羽織っていた。ちなみに制服は男女ともにブレザーだ。

 鎧やローブは皆同じというわけではなく、明らかに違いがあった。佐々木を始め、二村孝一フタムラコウイチ一之瀬恵イチノセメグミ参田勝サンダマサルの3名の生徒は煌びやかな鎧やローブ、その他の生徒は、彼らほどではないが、立派な装備を付けていた。

 楓と前島は、二人の為に与えられた部屋で楓の復調を待っていた。その部屋は石造りで質素なベッドと机があるだけ、灯りはランプ一つだけだった。他の生徒の部屋は皆個室で、佐々木ら4人は国賓用の部屋を与えられていた。


 前島はベッドで眠る楓の髪を撫でながら、先ほど与えられたローブを見やる。くすんだ灰色のローブは一般兵が羽織るローブ。明らかな対応の違いに歯噛みする。


「この部屋といい、こんなに対応が違うとちょっと傷つくわね。この部屋なんて扉は外鍵だし、見方を変えれば牢獄よ」


 小さく揺れるランプの灯を見つめながら、漠然と今後のことを考えていると、楓が目を覚ました。


「ん…あれ…前島先生? …ここは?」

「ここはティングレイ帝国という国よ。私達を召喚した国ね。今いるところは首都モトロにある皇城。これから皇帝と謁見があるそうよ」

「えっけん…って?」

「王様に御挨拶するってこと。召喚してよんでくださってありがとうございますって」

「どうして? 私達そんなこと望んでないのに…」

「私達を召喚したのがこの国の御姫様らしいわ。第3皇女って言ってたわね」

「そんなに偉い人なら自分達で何とかすればいいのに!」

「確かにそうなんだけどね。でも、王様の前でそんなことは絶対に言っちゃだめよ。いくら私達でも死刑になるかもしれないから」

「死刑…そんなに怖いところなの?」

「少なくとも日本みたいに安全じゃないわ。東山君が言ってた通り、命が軽いのよ」

「てつくん…無事だといいな…」

「きっと大丈夫よ。そのあたりはあなたの方が詳しいんじゃないの?」

「えへへへへ………皇帝様との謁見はもうすぐなの?」

「ええ、これを羽織って待ってろって」


 そう言って楓の分のローブを渡す。


「何か…ゲームの魔法使いみたい」

「でもこれは現実よ。本当に魔法が存在する世界だから。私達がどういう立場になるかわからないけど、しっかりと生きていかなきゃ」

「うん。私達ってクラスのみんなより力が低いんだよね」

「ええ、だから助け合っていきましょう」


 起き上がろうとする楓を支える。ちょうど騎士が呼びに来た。


「ユウコ=マエジマ、カエデ=ニシカワ。謁見の時間だ。さっさと来い」

(さっきまでは『様』付けだったのにもう呼び捨て? これは気を引き締めてかからないとね…)


 二人は騎士に先導されてクラスメイトに合流する。


{楓ちゃん、大丈夫?」「西川、無理すんなよ」


 皆、口々に楓を労っているが、その口元は笑みを隠せていない。


(どうやら何かあったときに真っ先に切り捨てられるのが私達だって気付いてる。

でも、私達の次はあなた達のうちの誰かっていうことまでは分からないのね…)


「西川さん、何があっても私が付いてるから」

「はい! 先生!」


 そこに佐々木が近づいてくる。派手な鎧が全く似合っていない。


「おお、西川! 無事だったか! 無理するなよ!」

「先生…すごい格好だね…キラキラしてるよ」

「どうだ! 格好いいだろ! ところで君達はみんなのフロアに居なかったようだが」

「ええ、私達の部屋は別の場所なの。まあ力がない普通の人間だから仕方ないわね」

「そうか…そうだな! やはり力のある人間が優遇されるのは当然だからな」

(その考え方は教育者としてどうなのよ。やっぱり要注意よね…)


 召喚者達が大きな扉の前に並ばされる。楓と前島はあまり目立たない位置に並ばされた。扉の両脇には屈強な騎士が控えている。


「勇者様御一行、御入りください!」


 巨大な扉が開かれる。佐々木を先頭に謁見の間に入る召喚者達。その荘厳な雰囲気に一同は息を呑んだ。


 天井はかなりの高さの吹き抜けとなっており、その中央に玉座がある。玉座の両脇を豪奢な甲冑を着た騎士が侍り、その横には豪華な軍服を着た幹部らしい人々が並ぶ。

 玉座に座るのはもちろん、この国の皇帝だ。皇帝の正面に来たところで佐々木が歩みを止めて跪く。皆も一様に倣う。


「ようこそ、ティングレイへ、勇者殿。我がティングレイ17代皇帝、レオニス=ガルド=ティングレイである。皆、表を上げてくれ」


 低く通るバリトンボイスが謁見の間に響く。その言葉の端々に皇帝としての威厳が感じられる。


「すまぬな、勇者殿。本来ならば帝国あげての歓待をせねばならんのだが、何分国内の事情で我が皇子が2名共国外におってな。それゆえに簡素なものになってしまった。許されよ」

「いえ! そのようなお言葉、勿体無くございます。我々を召喚していただいた御恩に是非とも報いたいと思う所存です」


 佐々木が一同を代表して答える。勿論楓や前島には事前の話すら無かった。


(また変なこと言わなきゃいいけど…)


 そんな不安を嘲笑うかのように、謁見は始まった。

二人の扱いが…

あともう1話投稿します。


読んでいただいた方、誠にありがとうございます。

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