救出作戦的な
≪誠二視点≫
「おー、数が多いこった」
「さっさと行くぞ」
「そうですね」
今俺たちは別棟に着いたところだ。
「先輩、一ついいですか?」
「うむ何かね?空隊員」
「結局生存者の救出に向かうなら最初からゾンビの群れに突っ込んだほうがよかったのでは?」
「あー、それね」
空はなぜいまさらになって人を助け始めるのか疑問に持ったようだ。
「それはね、追い詰めるためだよ」
「追い詰める?」
こちらに向かってくるゾンビの首をねじ切りながら答える。
「そ、心をすり減らして判断力を落とすんだ」
「なぜそんなことを?」
空がゾンビにヘッドショットを決めながら質問してくる。
「ただゾンビと戦ってみんなを守ると調子に乗るからだよ。ある程度精神が弱ってから助ければこちらに恩を感じて要求を通しやすくなるからね」
「要求?」
奈央が階段にたむろしているゾンビをまとめて焼き払う。
「そうだよ。俺たちの能力について他言しないことや、俺たちはこれ以上助けないとかね」
「なるほど」
こちらに向かってくるゾンビに扉を投げつける。
「まあその二つを通すための時間だ。それに俺たちも余裕があるわけじゃないからな。ゾンビの倒し方とかが分からないとろくに動けなかったし」
「そっちが本音でしょう」
「あ、ばれた?にゃはははは」
そう。結局は自分たちの身の安全が確保されてからしか行動できなかったのだ。だから本音は。
「まあ、余裕できたし?どれだけの人間を救えるかの暇つぶしだな」
「はあ。まあ楽しそうだからいいですけど」
それを聞いてにゃははと笑う。こいつもまた少しおかしいのだ。そりゃそうだ親を殺すような奴が普通のわけがない。
* *
「お前ら着いたぞ」
「お、やったー」
「もうですか」
空と会話をしていたらいつの間にか着いていたようだ。扉の前にはゾンビどもが集まっている。
「邪魔♥」
誠二はそう言ってゾンビの頭を蹴りちぎった。
「化け物が」
「にゃははは、否定しない」
家庭科室の前にいたゾンビの掃討を終えた誠二達は中にいる生徒に声をかけた。
「大丈夫ですか?助けに来ました。外にいるゾンビは片付けました!」
空がそう声をかけると扉が静かに相手一人の少年が顔を出した。そして空の顔を見て安堵の表情を浮かべる。
「片桐さんか、助かったよ。うちの組はみんなここにいるんだ。片桐さんが言っていたように体育館に避難しなくてよかったよ」
「ああ、九重君ですか。無事でよかったです」
扉から顔をのぞかせたのは2年で一番イケメンだと評判の九重光輝だった。顔だけでなく成績優秀、運動神経抜群、優しいと完璧だ。ちなみに超鈍感。本当に完璧な奴である。
「屋上に避難します。ついてきてください」
「う、うん。みんな!屋上に避難するって!行こう!」
「さっさと行くぞ」
「にゃははは、鬼ごっこだねえ」
みんなは緊張しながら外に出るが、二人の上級生はのんきだった。誠二なんて鼻歌を歌っている。
* *
特に何か問題も起きずに、ゾンビを5匹ほど殺して屋上に着いた。
「いやあ、ゾンビがこっちにこないねえ。どんだけ体育館が好きなんだよ」
「血の匂いが好きなのかもな」
「そうかもね」
今は屋上でみんなを休ませているところだ。みんなこの一時間でかなり憔悴していた。
「あのっ」
そんな中で二人の女子が話しかけてきた。
「助けてくださり本当にありがとうございました」
「ありがとうございました」
今のは九重の親友の白崎妙と小暮杏。妙は黒髪ロングでスマートな体をしている大和撫子のような女の子。というよりも、女性というほうがしっくりくる。杏は茶髪をカールさせ、おっとりしているので、小動物みたいとよく言われる。もちろん二人とも男子に人気がある。
「いいって、いいって」
「お前らも災難だったな」
「うむ、感謝するがいい」
「「お前は何もしてないだろ」」
「むう」
そんな二人の感謝の言葉に生物部の三年連中はいつものように軽口を叩き合う。
「それにしても。このままだと一日で食糧が切れるな」
今回救助した数は37人一クラスは40人だから、空を抜いて2人いないことになる。おそらく死んだのだろう。
「世も末だねえ」
「だな」
「ふざけないでよ!!」
「ん?」
のんきな空気が壊れる。一人の女子生徒がいきなり切れて食いかかってきたのだ。