神
「どこだ、ここ」
俺―――山中鹿助は驚嘆の声を上げた。
いつも通り学校が終わり携帯を弄りながら一人、帰路を歩いていた時のことである。
突然、周りの喧騒が消えたと思って携帯から目を上げるとそこは自分の見慣れた情景ではなく、ただ漠然と白面の世界が広がっていた。
訳が分からない。
なぜ俺はこんなとこにいるんだ。
「なっ……!」
突如として一面白の世界に連れて困惑していたが、それ上回る驚きが俺を襲った。
俺より少し離れたところ。
何処からか出現した黄金色に光る粒子が密集するやいなやスーツを着た中年の男に姿を変えたのだ。
しかしその怪奇現象はそれだけで終わらなかった。
中年の男を始めに今度は視界を全て覆い尽くすほどの粒子が出現し、やがて子供、女性、外人など多種多様な人々に変貌した。
数えられないほど人数だった。
もしかしたら一万を超えているかもしれない。
皆、俺と同じように突然、白面世界に連れてこられたことを困惑した様子だ。
無理もない。
俺も速くなった鼓動がいつまで立っても落ち着きを迎えない。
もはや場は騒然とし、当たりでは喧騒が飛び交っていた。
その時である。
「「「皆さん、ご機嫌よう」」」
女性とおぼしき甲高い声が俺の脳内に響いた。
いやこの声を聞いてるのは俺だけではないらしく、ちらほらと頭を抱えてる人が目に入った。
なおもその声は続く。
「「「突然の非現実に驚いてるところ悪いですが時間がありません。早速ですがあなたたちに今起こっていること、そしてこれから起こるであろうことをお話します。一度しか言いませんのでよく聞いてください」」」
声の主は焦った口調でそう言った。
俺は反論も異論もできずただ呆然とそれを聞くことしかできなかった。
「「「これからあなたたちには今からとある異界に飛んでもらいます。その世界はモンスターが闊歩し人がとても住めるところではありません。ですがあなたたちには知恵を使って生き抜いてもらいます」」」
「なんで俺たちがそんなことしなきゃならねぇんだ!!俺たちを元の世界に還せ!!」
俺の近くの人の群れの中から誰かが叫んだ。
恐らくこの白い空間のあちこちでそんな声が飛んでいることだろう。
以外にも声の主はその問いに答えた。
「「「私がここに呼んだのは数ヶ月以内に何らかの形で命を落とす人々です」」」
俺は絶句した。
何らかの形で命を落とすだと?
なぜそう言い切れる。お前は一体何なんだ。
俺の心中のなかの疑問を誰かが叫んだ。
「あんたは一体何者なんだ!!」
「「「あなたたちの言うところの神という存在です」」」
辺が騒めく。
もはや議論の余地もなかった。
この全ての現象が神の一言で片付く。
「「「「時間がありません。申し訳ありませんがこれ以上の問答はお聞きすることはできません。話を戻します」」」
神はそう言って話し始めた。
「「「あなたたちがこれから行く世界にはダンジョンというものがあります。あなたたちにはそれを攻略してもらいます。もちろん生身の人間がモンスターと対峙しても一瞬で殺されることでしょう。なのであなたたちには神の力を少し使えるようにしてあります。その力を使って見事ダンジョンを攻略すればあなたたちを元の世界に還すことを約束しましょう。」」」
神がそう言うとこの空間にいる全員が光に包まれる。
「「「あなたたちをこれから比較的安全な地帯に転送します。それではご健闘を」」」
そう言って俺の視界は真っ暗になった。