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Black Night have Silver Hope   作者: 空愚木 慶應
化物と心と命編
67/90

062

 この小説には、連載を通して性的表現(同性愛含む)・グロ表現・鬱展開・キャラクターの死等を含みます

 これらの表現・展開を含んだ記事には、頭に注意書きを載せます


 ですが、その記事を飛ばされた場合、その内容についての上記の表現を避けたまとめなどは用意いたしませんので、ストーリーが分からなくなる場合があります

 「続きが読みたい!」とのせっかくの声を頂きましても、どうしようもございません

 

 なお、著作権は放棄しておりません

 無断転載・無断引用等はやめてください

 

 以上の点をご理解の上、お読みください


 あるカフェテラスにて。

 キセトは亜里沙ありさを待っていた。城に呼び出されたと伝えると、どうして今まで教えてくれなかったの!と怒られ、仕事場であるギルドと家の中間にあるカフェを指定して、すぐ来るように頼まれたのだ。

 城から帰った日はギルドに泊まったので、城で決まったことはまだ亜里沙に直接は報告していない。メールは送ったが。


 亜里沙を待っているキセトの姿はどこかの絵画を切り出したように整っていた。カフェテラスの安物の机と椅子もなぜかそれっぽいものに見える。周りの視線など感じていないのか、口にコーヒーカップを運ぶその手は自分のペースを崩さない。ゆったりと一口含んでは、また胸の前まで下げる。

 それを繰り返すキセトはまさに芸術作品だ。


 「おまたせー!ごめんね、急いだんだけど、やっぱりキセトのほうがはやいね!」


 「家よりギルドのほうが近かっただけさ」


 「それより、どうなったの?」


 亜里沙の率直な質問にキセトは微笑むだけだ。すこし悪戯心が芽生えたのである。


 「あー!意地悪するつもりね!キセトのことなら口にしなくてもわからるんだから!あててやる!」


 「そうか、じゃ、当ててみろ。な?」


 「むー!んーと、んーと。悪くはないんじゃない?キセト的には納得できる形ね!」


 「漠然としすぎ。当てたとはいえない」


 今までの四年間の仏頂面を過ごしてきた人物と同一人物かというほどの笑み。亜里沙の回答を楽しんでいる。内容に関係なく、亜里沙との会話はキセトの至福の時間の一つだ。


 「えー!?でもキセトにとって納得できるなら、キセトは皇帝じゃないわね。それは言える。龍道りゅうとも巻き込まれない形かな?それにキセトと連夜れんや君は同じぐらいの権利がいいだろうから、連夜君も帝都に残ることを選んだんじゃないかな?キセトがここにいることを選んだんだもん。でも陛下だって放っておくわけには行かないでしょ?だから名前だけの皇位継承権はもらった、とか。そのあたりじゃない?」


 亜里沙の的確な推測に頷いて答える。キセトは元々引きずるつもりもなく、あっさり亜里沙に自分に定められた地位を打ち明けた。


 「よくわかるな。俺も連夜も同じく第二皇位継承者だよ。龍道には何もない。黒獅子くろじし銀狼ぎんろうの件は羅沙らすなでは全ての権限が無効されるらしい」


 「ふーん。じゃ、キセトは皇子様なんだね!」


 輝かしいと称するのにこれ以上適切な笑顔はないだろう。亜里沙は満開の笑みだ。

 亜里沙はまだ二十二。夢見る乙女なのである。好きな相手が皇子となれば、その響きだけでも嬉しい。


 「おう、じ?俺が?なんだか馴染まない名称だな。それに陛下の息子でもないんだから、皇子とは言わないだろう」


 「そっか。じゃ私だけの王子様だね。白馬には乗ってないけど」


 「…そうだな」


 亜里沙がさらりと恥ずかしいことを言う。だがキセトは特に気にしない。亜里沙とキセトの間では歯が浮くような台詞はたいした問題ではないのだ。言葉はただの言葉に過ぎないのだから。

 ただキセトは少し不満そうだった。カフェテラスの店員などからすれば無表情と変わりないが、他でもない亜里沙には分かる。キセトは何かを不満がっている。


 「不満そうね。あっ、わかるから理由は要らない!王子じゃなくて夫。それでご満足かしら?あなた」


 「敵わないな。その通りだよ」


 夢が憧れに出てくる王子などではなく、亜里沙もキセトもここにいる。王子と言われるより夫といわれたほうが現実味があり、キセトは嬉しい。

 今度こそ邪気のない笑みがキセトの顔に浮かぶ。亜里沙にはこれ以上ない笑みだ。誰の笑みよりも素敵な笑み。店員は、あの男性はなにがそこまでつまらないのだろう、と思う表情だったのだが。


 「あ、そうだ!龍君の授業参観に来てくれない?」


 「かまわない。いつだ?」


 「次の次の土曜。たくさんのお父さんお母さんが来れるように土曜なんだって。仕事空けておいてね」


 「もちろん」


 ここで夫婦らしいことも話して、二人は幸せに包まれる。災難が溢れたキセトの人生で、この時間は誰もが認める幸せというものだろう。

 二人は正式に籍は入れていない。事実婚というやつだ。龍道は亜里沙の子供であるだけで、戸籍上はキセトと何の関係も無い子なのである。もちろん血筋による弊害が出ないと決まった今ではいつ認知しようが問題ではない。


 「じゃ、今晩はちゃーんと家で寝てね。龍君が寂しがっていたわ」


 「わかった」


 だが、それでもキセトには亜里沙を巻き込む勇気がなかった。自分という存在に巻き込みたくないと、未だそんなことを考えてしまうのだ。キセトとの間に子を生んだ女性が相手だというのに、「巻き込みたくない」など、キセト本人でもおかしい思考だとはわかっている。

 何か巻き込んでしまうような出来事が起こっているというのなら、すでに巻き込んでしまっているし、これから巻き込むかもしれないというのなら、今すぐにでも別れるべきなのだ。現状としてはただ幸せを幸せとして生きることが彼女への想いを証明する方法だとわかっている。

 わかっているのに、キセトは考えられない。自分が何の代償もなしに幸せになっている姿が。これから、亜里沙も龍道も何事にも巻き込まず生きていく未来が。


 「キセト!」


 「え?あ、な、なんだ?」


 「暗い顔してたわ。なにを考えているの?」


 「何も。俺は元々こんな顔だよ」


 「ふざけないで」


 ぴしゃりと言われて、キセトは顔を上げた。亜里沙のその視線には普段は滅多に混じらない怒りが混じっている。


 「まさか、また『巻き込みたくない』かしら?」


 「……」


 「沈黙はイエスね。言っとくわよ、何度でも。龍道はともかく、私は一緒にいたいの。あなたの人生に巻き込んで欲しいの。あなたがつらいならそのつらさを分け合いたい。あなたが幸せならその幸せを共有したいの。巻き込みたくないってのは近寄るなと同じよ。あなたの傍で何かに巻き込まれるよりも、あなたを感じられないほど遠くにいるほうが私は辛いの」


 わかる?とばかりに亜里沙が首をかしげた。キセトには返事が出来ない。自分にこんなことを言われる資格などないのだ。


 「卑屈。卑屈!」


 「卑屈かもしれないな」


 キセトが否定しないことが亜里沙をさらに苛立たせたようだ。

 キセトが飲み物を飲むペースは全く揺るがない。言葉と言葉の間で一口含み、腕を胸の前ほどまでに下げる。たったそれだけが、繰り返される。


 「じゃ質問!素直に答えなさい!」


 「わかった」


 「幸せになりたいのよね?」


 ピタリとキセトが止まる。動けないようになる魔法でもかけられたのかと思ったほどだった。キセトが目を閉じる。目を開けて飲み物を一口含み、空になったカップを机の上に置いた。


 「……その幸せとやらが他人に迷惑をかけないのなら」


 亜里沙が苛立ちを隠すことなく舌打ちをする。

 亜里沙が愛したキセトという人は、何よりも他人を考えている。自分が強者だから、他人、ここでいうなら弱者を考えるのだ。強い自分が周りに合わせないといけないからなどと言って。

 間違った考え方だと一蹴できない分、面倒なのである。連夜がキセトを表した「自己犠牲野郎」という言葉通り、キセトの「同調する」はキセト自身の一切を犠牲にしている。人生も、幸せも、全て。


 「キセトがそう言って守ってきた他人ってものはキセトになにをしてくれたの?後ろから指を指して嘲ることかしら?黒髪と罵ったことかしら?兵器としてキセトを道具扱いしたことかしら?」


 「羅沙の帝都に黒髪がいたら、誰だって馬鹿にして罵りたくなるさ。自分の価値観が間違っていないと証明するためにそれに同調もする。何もおかしくない。それが彼らの幸せなんだ。敵を作って、皆でその敵を糾弾する。幸せならそれでいい。その幸せにどんな形であれ俺が貢献できるのならそれは俺の幸せだ」


 「私は嫌なの。キセトがそんなことされるの!」


 「それは――


 「あーキー君と亜里沙さんなのだよー!」


 「あっ、ホントなのです!メロメロなのです?ラブラブなのです?」


 キセトの言葉はかき消される。キセト自身にも聞こえなかったのだから亜里沙にも聞こえなかっただろう。キセト自身も声に出したくないことだったので、松本まつもと姉妹の登場を気に話を逸らすことにした。キセトを誰より理解する亜里沙なら、キセトがわざと話を逸らしたと気づき、無理には聞いてこないだろう。

 聞かれないから答えない。なんという甘えだろうと思いつつもキセトは甘えるのだ。他の誰かであれば甘えないが、相手は亜里沙。キセトにとって特別な人。


 「そーだ!私亜里沙さんに聞きたいことあったのだよー!」


 「私に?聞きたいこと?」


 「あ、私もなのです。キー様との馴れ初め!」


 「リーちゃんと私の聞きたいこと一緒ー!」


 断りもいれず松本姉妹が同席する。亜里沙もそのテンポの速さに驚いたが、「聞きたいこと」とやらの内容を聞いて微笑んだ。

 不知火しらぬいではキセトと亜里沙の出会いや付き合うに至るまでのことは有名なので、そんなことを聞かれたことは無い。自分の口でキセトとの出会いを語る気恥ずかしさを感じつつ、亜里沙は松本姉妹の質問に答えてやることにする。


 「最初は、私はキセトのこと特にどうも思ってなかったのよね。シャドウ隊に入隊試験を受けに行ったときに初めてであったんだけど、キセトは試験官だったし」


 「え?じゃ劇的な出会いってわけでもなかったのだよ?いがーい」


 「劇的といえば劇的だったかも」


 亜里沙のこの言葉に松本姉妹は期待したようだ。どちらかの一目惚れなど、甘い話を規定しているのがすぐにわかる目で亜里沙を見つめている。

 亜里沙がキセトにちらりと視線を送ると少し照れているようである。


 「私はさぁ、どうしても試験に受かりたかったから変な人たちの言葉に引っかかっちゃって。キセトに傷一つでも付けられたら即合格にさせてやるーなんていわれてね。割り当て的に面接官にキセトがいたから、部屋に入った瞬間キセト張り倒して小刀つきつけたのよねー。まぁ、怪我させる前に他の試験官に取り押さえられちゃったけど」


 「え、あ…。そういう劇的なのです?」


 「キセトったら、『即戦力として有力な候補だと思います』とか涼しい顔で言っちゃって。そのまま入隊試験を受けられたんだけど。今思うと変よねぇ。試験官に切りかかった受験者がそのときに合格しちゃうんだもん。そのときの私はキセトのこと変な人ぐらいにしか思ってなかったわー」


 「まぁたしかにそれは変な人なのだよ」


 松本姉妹の視線を受けてキセトは恥ずかしそうに俯く。思い出して恥ずかしいなどという人間らしい感情がキセトにあるらしい。


 「でね、試験の途中でキセトに助けられちゃったの。それまではしつこいなーとしか思えなかったんだけど、何で助けてくれたの?って聞いたときの答え。それを聞いて、あ、この人はきっとこれからも助けてくれるって思った」


 「そ、その言葉は!?」


 「『助けたかったから』」


 「素直っ!」


 やけに楽しそうに盛り上がる女性三人にキセトは苦笑するだけだ。そのノリについていけない。こればかりは化物云々などではなく男女の差なのだろう。

 キセトがお金をテーブルにおいて立ち上がる。これ以上女の話のさらし者にされることを嫌って立ち去るようだ。亜里沙は了承を示すために手を振って見送る。


 「続きは?続き!」


 そんなキセトと亜里沙に気づかず、瑠砺花るれかは続きを促す。他人の恋の話がそこまで面白いのか、亜里沙には不思議である。だから、そっと話題を逸らすことにした。


 「私は話したよー。瑠砺花ちゃんは?」


 「え……?あ、だって、だってさ!私は相手もいないのだし…」


 「連夜君はー?ちらちらーと見た私でも気づいたわよー?」


 「レー君とはなんでもないもん!」


 「今はでしょ?」


 「い、今!?こ、これからもだよ!」


 「ルー姉、素が出てるのですよ」


 「あ、えっと、だって……。私は……」


 先ほどまでの威勢は消え、目が泳いでいる。

 なにせ瑠砺花本人は隠していたつもりだったのだ。自分の分身とも言える瑠莉花るりかには相談したが、その他にばれるはずがないと思っていたのに。

 思わず自分の妹に助けの視線を投げ、妹が微笑んでいるのを見た。大丈夫、といっているようで安心する。妹がそういうだけで瑠砺花は何の疑問もなくそうだと思えるのだ。


 「つまり瑠砺花ちゃんは連夜君に恋してるんだけど、連夜君の気持ちがわかんないから手こずってるわけだー」


 「レー君は絶対私のこと女としてすら見てないのだし!」


 「そーかなー?連夜君が自覚してないだけでしょ。瑠莉花ちゃんはどう思う?一番近くで瑠砺花ちゃんと連夜君見てて、さ」


 「ルー姉はわかりやすいのですよ。鈍感な人とかじゃないかぎりは気づいてるはずなのです。ただレー様とキー様は鈍感以前に他にそういう感情がないと思うのですね。キー様はありたん様一筋ですし、レー様は遊びでしかなさそうなのですし」


 遊びでルー姉は上げられないのですよ、と瑠莉花は笑って言う。ただその目は本気だった。たとえ相手が連夜でも、瑠砺花を傷つけるのなら許さないと決めている目だ。

 連夜君も大変ねー、など他人事としてそれを楽しむ亜里沙だったが、上手く話題がそれたので、そのまま全く違う話題へ移ろうとまた話出す。


 「応援しちゃおーと。ねぇ、電話番号交換しない?メアドも!」


 「電話?あ、携帯なのだよ?別にいいのだけど」


 「やったー!私と瑠砺花ちゃんと静葉ちゃんって同い年じゃない?同い年の友達とかいなくてさー。同い年じゃなくてもいいから友達欲しくって。だから瑠莉花ちゃんもお友達!」


 「確かに私もシーちゃんみたいに友達は多くないのだけど……」


 それはあえて瑠砺花が関わる人間を制限しているからだ。昔は人が嫌いだったからで、今は奴隷のことで瑠砺花に関わろうとする人間がいないから。だが、友達が少ないからといってそれを深く考えたことはなかった。ギルドの人間と冗談を言い合えるだけで十分だと思っているためだ。


 「じゃーん。『東の炎』の新曲!瑠砺花ちゃんと瑠莉花ちゃんは東の炎聞く?」


 「シーちゃんが好きだから時々聞かせてもらうのだよ」


 「えー、私知らないのですー!」


 亜里沙が出したライグスの画面をしまい揃って覗き込む。本来ならジャケットの写真が載るはずの場所はノーアイコンと書かれている。不思議そうに瑠莉花が、新曲?と姉に尋ねた。


 「たしか声から男性だってことしかわからないらしいのだよ?でもその歌詞と歌唱力ですぐに有名になったとか。全世界で売れてるのにごく一部しか正体を知らないし、出身国すら公になってないって」


 「そのとーり!正体不明の謎だらけの男性!それだけでも結構売れてるらしいけど、やっぱり私は声が好きなのよねー!こういうお話できる友達欲しかったのよ」


 「キー君なら亜里沙さんの話にいくらでも乗ってくれるはずなのだよ?キー君は?」


 「キセトは男性ボーカルだっていうだけで、話せば話すほど面白くなさそうにするだもーん。曲聴いてたらさりげなーく邪魔してくるしー」


 「あははっ!そんなキー様想像できないのですー」


 亜里沙が家で曲を聴いていると、途中で止めたりするあからさまな行為はないものの、突然背中合わせに座ってきたりする。床に座り込む亜里沙に対して、キセトは普段椅子に座るはずなのに、わざわざ床に下りてくるのだ。

 何かを言うわけでもなく、ただ全体重をかけてもたれてくる。キセトの軽さなら女性である亜里沙にもさほど苦ではないのだが、鬱陶しいのには違いない。


 「そんなこと話されても、ただのノロケなのだよ」


 「えー…」


 「ノロケられるんですからいいのですよー、きっとー」


 「あと、連夜君にもらったエロ本を私にくれるのを何とかして欲しい……」


 「ぶはっ!なにそれ!キー君なにやってるのだよ?」


 瑠砺花の笑いが混じる突っ込みと、笑えて声も出ていない瑠莉花を見て、亜里沙は自分が間違っていないことを確認する。やっぱりキセトの行動がおかしいらしい。


 「いらないからって言われてもね。そこは自分で捨てればいいじゃない?なんで渡すんだろう。私見ても楽しくないし……」


 「そこから『どういう子が好み?』と話を進めるのもありなのですよ」


 言葉の節々から笑いが漏れている。それに瑠莉花の返答はどう考えても面白がっているものだ。


 「一回やったわよ……。真顔でどれも嫌って言われたの!どう考えても私より可愛い子たくさんいるのに!私より大人のエロさもった人だっているのに!」


 「どれも嫌って。キー君らしいといえばキー君らしい……」


 まだ笑いが収まらないのか瑠砺花の声にもこらえられないものが混じっている。

 が、火がついた亜里沙はそんなことを無視して叫びだした。あまり往来で叫ぶような内容ではないものも混じっている。


 「キセトは私のなにがいいの!?キセトからの一目惚れっておかしいでしょ!?なんなの?私って軽い女に見えた!?これなら俺でも落とせるってことなの!なんなの!?なんで私なのぉ!」


 「うわー、贅沢な悩みなのだよ……」


 「だってキセト美形だし。これ以上ないっていう美形だし!絶対私より可愛い子に言い寄られたことあるはずだもん」


 「そんなこと言われてもなのですよ」


 「うえーん。いいもん!静葉しずはちゃんに話すもん!掃除の時に仲良くなったんだから!」


 半泣きで亜里沙が静葉に電話をかける。そういえば瑠砺花はその場にいたから知っているのだが、東の炎の新曲が手に入ったら連絡するなどと言っていたので、そのことのついでに愚痴るのだろう。愚痴という名のノロケを聞いて、静葉も辟易するにちがいないと思って、松本姉妹がそろって笑う。

 ただ、電話にでたのは静葉ではなかった。



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