表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Black Night have Silver Hope   作者: 空愚木 慶應
バトルフェスティバル編
41/90

036

 この小説には、連載を通して性的表現(同性愛含む)・グロ表現・鬱展開・キャラクターの死等を含みます

 これらの表現・展開を含んだ記事には、頭に注意書きを載せます


 ですが、その記事を飛ばされた場合、その内容についての上記の表現を避けたまとめなどは用意いたしませんので、ストーリーが分からなくなる場合があります

 「続きが読みたい!」とのせっかくの声を頂きましても、どうしようもございません

 

 なお、著作権は放棄しておりません

 無断転載・無断引用等はやめてください

 

 以上の点をご理解の上、お読みください


 松本まつもと姉妹と前川兄弟が戦う魔空間ではなく、客席でのこと。

 魔空間からカメラを通してみるのは、客席でも家のテレビでも同じことだ。それゆえに、会場の客席に人影は少ない。それこそ戦っている人の知り合いなどは客席に直接来ているが、純粋な観客というのは本当に少ない。

 もう一つの魔空間の試合関係者は試合終了と共に帰ってしまった。今残っているのはナイトギルドの数人と、前川まえかわ兄弟の知り合いだろう数人と、実に少ない本当に物好きの観客だけだ。そしてじっと試合を見守る羅沙らすな皇帝、羅沙明日あすの姿も特別席に認めることができる。 

 「よっすぅ~。試合どうだ?」


 「連夜れんやぁ!どこ行ってたのよ?せっかく瑠砺花るれか瑠莉花るりかが戦ってるっていうのに!」


 「せっかくってなんだよ、せっかくって。どうせあいつらには勝つ気なんてない試合だろ?見てて何が楽しいんだよ」


 今までナイトギルド隊員が陣取っていた場所に居なかった連夜だが、試合後半辺りで帰ってきたときの発言である。

 その場にいた時津ときつ静葉しずは落葉おちばれん闘技とうぎ戦火せんかの三人だけが、連夜の不可解な言葉を聞いていた。他のメンバーはなにやら用事や学校などが重なり、直接会場へはやってきていないのだ。


 「向こうに座っている男性ですけれど、確か哀歌茂あいかもの方ですわ。鹿島かじま千陽せんようといいまして、今では哀歌茂分家に養子になったはずです。ですから哀歌茂千陽と申したほうがよろしいかもしれません。茂が話すには、前川兄弟に武器を売っているのはあの方らしいですわ。出世欲の強い方で、世襲制度に強く疑問を抱いていらっしゃるとか」


 「大変だなー、下っ端ってのも。自分がスポンサーってか。哀歌茂に入るより自分で自立してしまったほうが、純粋な利益とか高いんじゃね?そこらへんはどーなんだよ」


 「事実、養子として認められた今でも鹿島千陽と名乗っているそうです。鹿島というのは情報屋でもあるようで、哀歌茂側でも信用することもなく、警戒している人物だと言っていました。哀歌茂の分家になったのも、純粋に哀歌茂の情報を集めるためではなかったのかと本家でも思っているようです」


 「ふーん。情報屋ね。だからかー」


 「何がだからなのよ」


 連夜だけ一人納得言ったように何度も頷く。

 そして静葉の質問に対し、小さな子供が親に秘密をこっそり打ち明けるかのような得意げな顔で答えだした。


 「オレの勘。松本姉妹の最大の秘密がこの戦いの間でばれるだろう、っていう勘だよ。情報屋とつながってんなら知っていてもおかしくないし、あいつら自身だって顔見たら思い出すだろうことだし。むしろ情報屋とつながってるのに初めは気づかなかったってほうがおかしいな」


 「瑠砺花たちの秘密ー?ばれてヤバイことじゃないんでしょ?ばれるってわかってても連夜がこうやってじっとしてるわけだし」


 何もわかってねーな、とばかりに、相手を不愉快にさせるしたり顔で言葉を続けた。


 「んー。んーとな、オレ的には何も問題じゃねーけど、周りからしたらどうなんだろうなって話だよ。本当にオレはどうでもいいし、お前らもどうでもいいって言うかもしれねーけど、でも他人からしたらそうでもないんだろうなーってこと。結局人を評価するのは他人だろ?」


 「誰がどう言おうと私は瑠砺花たちを嫌ったりしないけどね。瑠砺花たちだって万人に好かれるなんて思ってないだろうし、わかってると思うけど?大事にする必要ないでしょ?ここでその秘密とやらがばれるなら、あの二人なら自分で何とかするわよ」


 「おぅ、万人に、ねー。丁度いい言葉をくれてやろうじゃないか。『万人にとは言わないが、特別に好かれたい。そして万人だろうが特別だろうが、他人は他人だ』ばい、キセト」


 「byキセト?それキセトさんの言葉なんですか?」


 今まで興味がないように聞き流していた蓮が意外というように食いつき、戦火と静葉まで先ほどより興味が出たようだ。

 連夜は心の中でキセトの人気スゲーと叫びながら言葉を続けた。


 「まーな。んで、偶然にもこの言葉は松本姉妹のために送られた言葉だ。あの二人そろって素に引き戻された言葉でもあるんだよなー。あの姉妹にとって共感どころか心の中見透かされたような言葉だったわけだ」


 「今の話と関係ある?脱線してない?」


 「してないしてない。あいつらは『特別』ができた今だからこそ、隠したいんだろ。『万人』に好かれるのも『特別』に好かれるのも、どっちも結局は他人だから、やることは一緒だし」


 万人、ここで言うなら観衆に嫌われたら、特別、今近くに居るナイトギルドの仲間たちに嫌われる。松本姉妹―特に瑠砺花―がそう考えていることが、連夜にはなんとなく分かってしまう。

 連夜の考えとは程遠いはずなのに、なぜ分かるのか。

 きっと、違う意味で同じだからだ。考え方が同じなのではなく、その考えに行き着くプロセスが同じ。プロセスは同じで、違う結論が出ていることはともかく、同じ部分がある以上、理解しやすいのだと思う。


 「連夜の癖に難しいこと言う~」


 「え、それひどくないか…?」


 「ひどくないですよ。あとわかったような口聞くぐらいなら応援してあげてください」


 「ちょ、やっぱりひどいだろ」


 「しっかりと松本さんたちを見て差し上げたらどうなのですか?無駄話が過ぎますと鬱陶しいですよ」


 「絶対ひどいって!今、ひどい扱いうけてるって!」


 「死ね!黙ってみろ!」


 「暴言!暴言出ました!」


 ほとんど試合そっちのけで騒ぐ四人―正確には静葉と連夜の二人―を見て、後ろから会話を聞いていたしげるがため息混じりに声をかけるタイピングを計らう。今、学校が終わって直接会場に着て見たら、うるさい客が居るものだと思っていたというのに、そのうるさい客が知り合いだったことを一人で恥ずかしがっていたので、声をかけるのがかなり遅くなったのだ。


 「黙って見ましょうよ、皆さん…」


 「あら茂。いつからいらしたのですか?」


 「ついさっきだよ。皆さん声が大きいから丸聞こえです」


 そういいながら、一番しっかり試合を見てそうな蓮に現状を尋ねる。茂が画面を見る限り、二階建ての建物のなかで松本姉妹と前川兄弟が追いかけっこをしているようにしか見えない。

 蓮が苦笑気味で、松本姉妹の奇襲といたずらだけとも言っていい今までの戦い方を説明した。


 「た、戦う気あるんですかね…。前川兄弟だって真正面から戦えばかなり強いですよ?何せ賞金稼ぎですし、加えて武器が武器ですから。千陽さんが手を抜いた仕事をしていなければ、ただの鉛の塊ってわけではないはずです。魔法的能力の一つや二つ、必ずついていますよ」


 後ろの席に腰を下ろしつつ、反対側に座っている鹿島に視線だけ向ける。


 「戦闘に関して、情報屋にしては珍しく彼は知識だけという人物ではないのです。履歴書によればフィーバーギルドの幹部レベルに居るといいますし…。松本さんたちが真正面から戦わないのはある意味正解かもしれません。って、戦闘に関することはぼくは何も知りませんけれどね」


 「鹿島になんかあんのか?なんかじっと見てるけど」


 「ってあの、顔が近いです」


 茂の目線に合わせようと連夜が無理な姿勢で頭の位置を低くしたせいで、茂と連夜の顔が近い。茂は連夜の頭を両手で挟み、無理矢理連夜の頭の位置を元通りに戻しながらごまかした。

 哀歌茂本家でいい見方をされていない鹿島を、茂自身もいい見方ができないのだ。この試合もわざわざ客席で見ているのは何かたくらんでいるからではないかと疑っているのである。

 もちろん茂の考えすぎだと、茂自身も自覚しているので口には出さずごまかしたのだが。


 「あー、分家に入ったっていうから未来の組合長として気になるわけだー。しかもあんまりいい感じじゃないな!まっ、オレの勘だけど」


 「連夜さんの勘って、あれです。心臓に悪いですね」


 「おぉーあたり?やったなー、オレ」


 (ぼく、この人苦手だな…)


 茂の心の呟きには連夜の勘も働かず、もう一度蓮に試合に集中するように注意され、茂と連夜も画面のほうへ注目した。丁度画面は、瑠莉花の手をつかんでいる前川後陽こうようが映し出している。

 客席やテレビの前の観客たちは息を呑むような展開なのだが、客席のナイトギルド隊員だけは、連夜の「セクハラだ~」という発言に突っ込んでいたため、その雰囲気には乗り遅れた。

 この後、無理矢理言葉を失う展開になるため、あまり関係もなかったが。



 * * *


 

 「はなしてくださいぃ!セクハラなのですぅ!!」


 「ちょ、暴れるな!」


 「はぁっ!?戦ってる相手に拘束されてセクハラされたら誰だって暴れますぅ!私はおかしくないのですぅ!」


 「ちっ!このガキ鬱陶しいぃぃぃっ!」


 「鬱陶しさが売りだ、このヤロウ~!!!」


 あらん限りの力で腕を振る瑠莉花と、それを必死に抑えようとする後陽。そして少し離れたところからそれを横目で見守りつつ、魔法の省略系詠唱を唱える瑠砺花と、両手剣でそれを妨げようとする前陽ぜんよう

 なぜこんなことになっているのか。ハッキリ言って妹と弟の戦いと、姉と兄の戦いの空気が違いすぎたというのもある。

 それも弓を使う瑠莉花として、ここまで近距離となるとまともに戦えないのだ。この距離で戦闘に持ち込んだ時点で戦えないことは分かっていた。

 松本姉妹の戦い方は奇襲が中心で、他の戦略はすべて弱点といってもいい。この筋力で剣相手では使い物にならない戦力が松本瑠莉花というものだ。


 「はっなっせっ!」


 「いってぇ!」


 なので、弓も戦闘の常識も捨てて握りこぶしを振り回すという行為に走っている状態だ。瑠莉花と後陽を見る周りの目もどこか冷たい気がする。


 「セクハラぁ!」


 「さっきからセクハラセクハラって!それはお前が人間だったらの話だろ!」


 「……っ!?」


 瑠莉花の過去の中で、このような言葉を言われるような心当たりは一つ。元々は奴隷だったという過去だ。

 だが瑠莉花の中で昔の買い手の顔など記憶に残っているはずもなく、なぜ今戦っている相手がそのことを知っているのかもわからない。調べた中には情報通などということもなかったはずだった。


 「あれー?動き固まってますよ、奴隷ちゃん」


 最後だけカメラに拾えない小声で。先ほどまで瑠莉花にからかわれていて精一杯だったはずなのに、急激に余裕に満ちた声で。

 瑠莉花の動きが止まっていたから油断していたらしく、後陽は腹部を狙って放たれた握りこぶしに全く反応できていなかった。腹部の痛みで瑠莉花の手を握る力も弱まり、そこを瑠莉花は見逃さずに全力で抵抗し、後陽と距離をとる。


 「あれ?秘密だった?ごめんごめん」


 「謝る気もないやつがテキトーなこと言うんじゃねーよ!相手馬鹿にするならとことん馬鹿にしやがれ!んで後で自殺ギリギリまで自分のことも馬鹿にして苦しめばいいんだ!」


 「ちょ、リーちゃんが暴走してるのだよ!」


 珍しく瑠莉花がキャラを捨てて叫んでいるのを聞いて、あわてて瑠砺花が瑠莉花のアシスタントに入る。瑠砺花が後陽と前陽から瑠莉花をかばうような立ち位置になり、しばらくお互いが無言でお互いの出方を伺っていた。

 が、松本姉妹は常識を守るようなタイプではない。全く同じタイミングで振りかえり逃走する、はずだった。


 「!? リーちゃんっ!」


 「え?え、えっ…―――


 瑠莉花だけ明らかに警戒心もなく呆然と突っ立っていた。そのせいで後ろに逃げようとしたのは瑠砺花だけで、松本姉妹が動いたと判断して、前川兄弟が放った攻撃を瑠莉花だけがまともに喰らう形となる。


 「リーちゃん!」


 瑠莉花と当然のように息が合うと思っていた瑠砺花だけではなく、斬った本人である前陽もしまったというような顔をしていた。後陽までも青ざめた顔で、傾いていく瑠莉花の体を凝視するしかない。


 「なっ、なっ…。ゆ、ゆるせな…」


 途切れ途切れになる瑠砺花の言葉に、前陽がいち早く立ち直った。露にしてしまった動揺を隠すように叫ぶ。


 「はっ、許せないだと!こっちだって許せないんだよ!むしろ清々したわ!」


 「はぁっ!?人の妹半殺しのめに合わせておいて何いってるの!?狂ってるんじゃないの!?」


 床に力なく伸びた瑠莉花の手を慌てて瑠砺花が握る。傷口を凍らせ止血しながら相手も見ずに瑠砺花が叫んだ言葉に、今度は前陽が我慢できないというように叫び返した。


 「狂ってんのはそっちだろ!奴隷の癖に人間様のフリまでして大会でやがってよぉ!」


 「は…?」


 「こっちは一回お前のこと買ったことあるんだよ!まだ賞金稼ぎになる前で、家の農業手伝ってたころだ!働き手がたりねーから奴隷買ったことがあったんだよ!なんで農業の労働者なのにメスの奴隷なんだって思ったらよーーく覚えてるんだよ!一人前におしゃれな服着てギルド隊員だぁ!?

  許せないのはこっちだ!何人の人間がギルドに入りたくて諦めてると思ってるんだ!お前らみたいな奴隷がギルド隊員!?さすがとち狂ったギルドだけあるな!」


 「なんだ、知ってたの。でもだから何だって言うのよ!法律だって奴隷に人権は認めてないけど、奴隷には奴隷の権利があるって認めてる!法律のどこにも奴隷がギルドに入ってはいけないなんて書いてない!それに私は履歴書だって嘘は一つも書いてない!それでも入隊を認めたのは上の人間じゃないの!?奴隷奴隷って見下してる野郎どもが、テキトーな審査して、テキトーに許可出してるのよ!」


 「開き直りか!奴隷の癖に人間様と当たり前に並べると思ってるじゃねーよ!お前ら奴隷を人間として求めるやつらなんていないんだよ!お前らのギルドが狂ってるからだ!どうせ履歴書だってナイトギルドの隊長と副隊長がなんかごまかしたんだろ!あんな北の森の民なんかが何もしてないわけないんだ!悪魔と奴隷か!いい組み合わせじゃねーの!?」


 瑠砺花が何か反論しようと口を開けたが、結果的には何も言わないまま口を閉じた。そして再び開いた瑠砺花の口は、先ほどまでの打って変わって冷たい声を放つ。


 「あなたたち、最低。これが人間なら私は奴隷でいい。腐った人間なんかより、誇りを持ってる奴隷のほうが、よっぽど強いよ」


 「何言ってんだ!?とうとう本当に狂ったのかよ!?弱いからお前らは奴隷なんだろ!?」


 「………」


 言い合いというよりあざ笑うかのような前川兄弟の声を、瑠砺花は目を閉じて聞く。一刻も早くここから立ち去りたかった。前川兄弟と同じ土俵で戦っている自分が急に恥ずかしくなった。

 何も言い返さず、瑠砺花は黙って自分と妹のリングを腕からはずす。この試合に勝ったとしても開催者側が松本姉妹のこれ以上の参加は認めないとわかっていた。

 どうせ勝つつもりもなかった試合。松本姉妹には試合を捨てることに何の未練もない。


 「これで私たちの負け。じゃ、もうこれでいい?私たちを見下したいなら勝手に遠くから見下しててよ。私たち、あんたたちみたいなクズを相手にするつもりないから。あんたたちなんてからかう価値もないよ。

  ずっとレー君やキー君と一緒に居たから、そんな馬鹿みたいな考えしかできない人がいること忘れてた。あーあ、最近になってレー君とかキー君とかと話して、世の中って楽しいのかもって思い出してたのに、あんたたちのせいで、最悪の気分」


 「なっ、てめぇ…」


 「はーーーい。試合は終わったんだから下がる下がる~。瑠砺花は瑠莉花を蓮のところに。その応急処置が瑠莉花がかわいそうだろ。ちゃんと治療してもらえ」


 瑠砺花の言葉に再び前川兄弟が反論しようとしたのだが、突然現れた連夜に阻まれてしまった。魔空間だというのに、連夜は自分でゲートをつなげて入ってきたらしい。

 前川兄弟も、初戦の連夜の力はとても印象に残っている。それに連夜が目の前に居るだけで、自分たちが言葉を発する立場ではないような気がする。簡単に言うと、前川兄弟は峰本みねもと連夜という存在に気持ちで負けていた。


 「オレに怖気づいてる奴がよく狂ってるなんて言えるもんだな。北の森の民だから?奴隷だから?見下すなら最後まで見下せよ。自分より弱い女にだけ必死に虚勢張って、見ててかわいそうだぜ、お前ら。まっ、安心しろよ。お前らが見下してた相手のほうが正しかったってわかったとき、すっげー赤面して人前に出れないぐらい恥ずかしがるお前らを引っ張りまわして晒し物にしてやるから」


 「ど、どこに安心しろっていうんだ…」


 「今この状態が晒し物だろ…」


 「え、オレが個人的にそうしないと気がすまないってだけだけど何か?」


 「「………」」


 前川兄弟より連夜のほうが年下だというのに、誰が見てもわかるほど前川兄弟が萎縮している。そして割り込んだ側である連夜があまりにも堂々としているので、聞いていたものは、めちゃくちゃなことを言っている連夜のほうが正しいような感覚にとらわれた。


 「決勝ではあたらんだろうからなー。茂と戦火も居るし、何よりあのフード二人組みも居るし?直接当たることはないけど、個人的にかわいがってやるよ。プライベートでな!」


 「「遠慮する!!」」


 「そうか?じゃ、これ以上関わるなよ。そっちから断ったんだからな?」


 連夜に関わるな、ではない。連夜の周りの人物、つまりは松本姉妹も含めて関わるなといっているのだ。

 あら捜しすればいくらでも出てくる会話だが、萎縮していた前川兄弟には反論しようのない屁理屈に思えた。


 「なっ」


 「うまいこと丸められた!?」


 「んじゃ。オレ、お前らのこと嫌いだからこれで。永遠に会わないことを祈るぜ!」


 うまいように丸め込んだ連夜はそれだけ残して、自分も自分が開けたゲートを通って魔空間を去った。

 いつの間にか客席にいたナイトギルド隊員も全員が撤退していて、詳細を公式の場所で明らかにすることはできない状況とされている。

 人間以下と決められた奴隷が、仮にも軍であるギルドに属しているという事実。誰もがその事実を嘆かわしいと言った。それがどれほど偏見や蔑みを含めた会見かも自覚せずに。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ