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Black Night have Silver Hope   作者: 空愚木 慶應
バトルフェスティバル編
26/90

022

 この小説には、連載を通して性的表現(同性愛含む)・グロ表現・鬱展開・キャラクターの死等を含みます

 これらの表現・展開を含んだ記事には、頭に注意書きを載せます


 ですが、その記事を飛ばされた場合、その内容についての上記の表現を避けたまとめなどは用意いたしませんので、ストーリーが分からなくなる場合があります

 「続きが読みたい!」とのせっかくの声を頂きましても、どうしようもございません

 

 なお、著作権は放棄しておりません

 無断転載・無断引用等はやめてください

 

 以上の点をご理解の上、お読みください


 早く出て行ってくれないだろうかという視線を受けながら、連夜れんやはバーで酒を飲んでいた。酒に強い連夜なのだが、かなり飲んだのか顔が赤くなっている。他の客に迷惑になるような酔い方はしないが、どう見ても酔っ払いの域に入っているのは分かるため、店員から早く帰れという視線を集めていた。


 「んー、帰れって感じだな。なっ?マスター」


 「そりゃネェ。あんたその状態でまた飲む気なの?」


 「マスターの顔見てたら二日酔いだって一瞬で冷める。すっぴんのほうが綺麗だぜ?あんた」


 「あのネェ、オネエにそんな事言うの、あんたぐらいヨ」


 「まっ女たらしだからな。顔的に」


 「…誰かに振られたの?ひどい飲み方ヨ、あんたらしくないワ」


 質問してから質問してはいけなかったことなのだと悟った。連夜が拗ね始めたのである。


 「なんかしらねー奴がさー?突然『好きだったのに…。最低!』とか言ってきてよー?オレが何したってんだつーの。これだから女は嫌なんだよ。どうせオレの面だけみてファンとかになって夢見て勝手に失望したんだろー。オレが知るかってのっ!」


 「顔はいいもんネ、あんた」


 「顔もだよ!今は優しくなった!十分優しいぜっオレ。昔ならあんな意味不明な奴、二十メートルぐらい吹っ飛ばしてから丘の上の木とかに吊り下げてやったのによー。丸くなったぜ、ホント」


 「それはダメネェ。乙女には優しくが基本ヨ」


 「どうでもいい相手に好かれたくもないんで。マスターなら相手してやんないこともないけど」


 「ん?ワタシにはもっといい男がいんのヨ。残念でした」


 「ちぇ…、いい女は決まって男持ちだな」


 連夜がさらに追加で酒を頼み、マスターのおごりでつまみも追加される。つまみを見て連夜がにたぁーと笑った。


 「普段からそんな顔してなさい?きっと今までよりいい女がよってくるワ」


 「オレは普段からへらへら笑ってますー」


 「今の顔は『ヘラヘラ』ってもんじゃないワ。いい笑顔だったわヨ」


 「しらねーよ、そんなの。あれじゃね?マスターの腰があまりにも魅惑的だからじゃね?もう誘ってるよーにしか見えねーよ。むしろ家に泊まらせろよ」


 「だからワタシにはあんたよりいい男がいるのヨ。今日はコレ飲んだら帰りなさいナ」


 「うわーん、マスターまでオレのこと振るのかよー。つれーなつれーな」


 「子供の相手するほど暇じゃないのヨ。それに悩み事は女じゃないデショ?見れば分かるのヨ、それぐらい」


 「…かなわねぇな、マスターには」


 「話せることなら話してみなさいナ。相談ぐらい乗ってあげるわヨ。夜一緒にいてあげられないからネ」


 促されて連夜が小さくうなる。暫くうなり続け机の上に突っ伏してしまった。

 連夜が何度も酔いつぶれいている店なので、さすがにマスターも扱いには慣れている。今日も相談など連夜がするはずないと分かっていたうえでの言葉のつもりだった。

 だが今日は様子が少しいつもと違う。いつもならここで連夜から話題を変えたりマスターから違う質問をしたりするのだが、お互いの気まぐれか沈黙で時間が過ぎる。


 「なぁマスター」


 「なぁに?言ってみなさいナ」


 「オレは頼れるリーダーか…?」


 「へっ?」


 思ってもいない連夜の質問にマスターが固まる。

 マスターなどのイメージでいれば、部下に嫌われようが、同僚に嫌われようが、上司に嫌われようが、自分の在り方を貫く。それが今まで四年間の峰本連夜だった。その連夜が内心でこんなことを疑問に思っているなど誰も思わないだろう。


 「ある任務でな?ナイトギルド隊員の過去に大きく関わる任務があったんだ。オレはそいつが納得できるように動いてやれたか?あいつはあれで納得できるのか?もっといい指示だせたんじゃねーのか?キセトなら…間違わないんじゃねーのか?」


 「あら僻み?たしかにあの子、あんたんとこの副隊長さんは優秀だけど、隊長って柄じゃないワ。あんたのほうが隊長はお似合いヨ」


 「もう無いかもしれないんだぜ?あいつが自分の過去と向き合える機会。その一回きりの機会、使い切らせてやれたのかって思うと…な?オレだって過去には色々あった身だし、今もそれを引きずってるかっこ悪い奴だ。だから自分とこの隊員ぐらい、過去のことはすっきりさせてやりたいじゃねーか」


 「あんたらしくないわネェ。でも…そうね、あんたも人間ってことヨネ。安心なさい、間違いは誰だってするし、誰もがすることをいちいち恨むような間柄を『仲間』なんて言わないのヨ」


 「仲間ぁ?オレとあいつ等が仲間だと…。ちげぇよ、ただ同情したからそばにおいてるだけだ。オレの仲間はキセトだけだっつーの…。オレと正反対のオレのお友達だけが仲間だ。ナイトギルド隊員は同類、ってやつ?」


 突っ伏していた頭を上げて、珍しくダダをこねるかのように連夜が抗議する。酒の入りすぎということもあるのだろうが、これが連夜の本音なのだろう。


 (寂しい子ネェ…。子供のときに一人にさせられたタイプネ)


 「ましゅたー…きいてんのか?」


 「はいはい、ワタシの店でまたつぶれる気なのかしらん?悩んでるなら本人に満足できたか聞きなさい。聞けないってならまた相談には乗ってあげるわヨ。そのかわり、日を改めてネ?」


 「うー…寝る。明日朝起こせ…」


 「ちょっとぉ!ここで寝る気ぃ?」


 机に再び突っ伏したかと思うとすでに寝息を立てていた。このまま担いで送ろうにもギルド街の門はとっくに閉まっている。ギルド隊員だと知った上で夜まで酒を飲ましていたのがばれたらそれはそれで大変なことになるのだ。


 「まったく…。あっ、そこのあなた。この子を奥の部屋に寝かしといてあげてくれなぁーい?また酔いつぶれちゃったのヨー」


 「また峰本みねもとさんですか。わーやっぱり寝顔綺麗っスねー。酒で赤くなってなかったら惚れますよ、コレ」


 「ちょっとぉー、何顔だけ評価してんのヨ。その子は中身も立派な男ヨー」


 「ヨダレ垂らしてるこの人がですか?マスターが言うなら間違いはないでしょうけど…。とりあえず運んどきますね」


 「お願いネ。ワタシはこの子のギルドに連絡しとくワ」


 マスターが慣れた手つきでナイトギルドに電話をかける。電話を取った相手もマスターの声を聞いただけでなんとなく察したようで話はスムーズに進んだ。


 「仲間として支えてあげてネ。寂しい子だから」


 『寂しい子…ですか』


 「半泣き状態のかわいい男の子に手を出さなかったことを褒めて欲しいぐらいだワ」


 『明日の朝迎えに行きます。ご迷惑おかけしました』


 「いいのヨ、それぐらい。じゃぁね」


 『失礼します』


 業務的な会話以外一切行わず切れた電話の相手もマスターには大体想像が付いた。機械を相手にしているようなあの声は、キセト以外の誰でもないだろう。


 「寂しい子二人で傷の舐めあいかしら…。寂しい世の中ネェ…」





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