お見合い
再構成終了
車のトランクからこんにちは俺だ。
あれから三十分位車は走っている。いつ着くのだろうか?何処へ向かっているのかさえ分からないから検討も付かない。
妹くんにはヘルプを失敗したし、変態も流血し放題だから助けが来る確率はゼロに等しい。
こうなれば適当にやり過ごし、どうにかしよう。てか、逃げずにそうしておけばよかった様な気もするが、母の知り合いと言うのは変わり者が多いから嫌なのだ。
例えば、メイド衣装を着たダンディーなおじ様や黒装飾の怖いオネイサン、銃を腰に下げた女性や魔法少女なマッスルおやじなんか居たりする。
つまり、今回も何かあるのではないかと本能的に回避行動に移ったら捕まってしまった。
キィー!
お、止まった。着いたのか、ゲヘナヘ。
どうせ母が行くところにヘブンなど存在しないことなど分かりきっている。
だから腹はくくった、かかって来こい!
やっぱり無理です、くくった何て嘘ですごめんなさい。
ガチャン
「修くん着いたよ♪さぁおいで〜」
俺は犬ではない、そのような言い方は正直やめてほしい。
まぁ喋れませんけどね、今
「ムム、むー(はず、せー)」
「あ、縛ったままだったわね〜、はい取れたよ~」
そこ、見たまんまなんだから忘れるな!と、言ったところでこの母にはむいみだろう
とりあえずトランクからは出よう
「はぁ〜、結局来てしまいやがりましたかこのやろ・・・・は?」
トランクから出ながら前を見ると、お城が有りました。
ええ、それはもう立派な西洋のお城がね。もうどーんと構えてらっしゃいます。
テーマパークにお見合いの相手がいるのだろうか?
だがどう見てもテーマパークのように華々しい飾りや、遊具がない。
つまりは、個人的に所有するものであるのはなんとなく分かったが、ここの人は何を考えてこの城を建てたのだろうか?
見れただけで満足です、母よ、帰っていいですか?
「どお〜、凄いでしょ!結婚したら逆玉よ〜!」
とても返してくれる雰囲気ではない、それどころか乗りノリノリようだ。
正直、これはない。
どれだけのビップなのだ所有者は。
無理だ、俺に礼儀作法とうの覚えはない
「敷居が高すぎるわ!?セレブどころか貴族か王様クラスの相手だろこれ!?」
「貴族や王族じゃないよ〜流石に。まぁ、世界的に一番凄い企業だけどね♪」
やだ、現実怖い。鬱だよ、パトラッ○ュ。殺してくれ。
あぁ、どこかの大佐がお空の城から破壊してくれないかな。
こんなことを思う俺は間違っているだろうか?
「御待ちしておりました、鏡 雪平様に鏡 修螺様」
母と会話していて気づかなかったが、めっさかっこええダンディーな執事さんが目の前来ていた。
なんだろう、もう逃げれない感じがしてきた。
「あら、紅、久しぶりね?」
「お久しぶりでございます、雪平様。相変わらず無茶苦茶なお方のようですな」
「げっ!?まさか見てたの?」
「はい、修螺様をトランクから出すところをこの老い耄れ、しかと。それと口調が気分次第でコロコロと変わる所などは相変わらずですな?」
「いいじゃない、これも個性よ、個性。さ、案内しなさいな」
ひどい個性もあったものだ。
母のそれが個性ならこの世に個性を持っている人間は一気に減るのではないかと言いたい。
「畏まりました、では此方へ」
うん、会話に入り込む余地なし。その後も着いていきながら話し込む二人。
まぁ、その方が有難いけどさ。こっちは緊張で頭回らんし。
急にダンディー執事が止まるのでぶつかりそうになりながらも何とか止まると、立派な扉の前だった。
「此方です。旦那様、鏡様方をお連れしました」
「えぇ、入って構いませんよ?」
部屋の中から何か凄い美声が帰ってきたとだけ言っておこう。
「失礼します」
ダンディー執事に促されるままに部屋に入ってしまった。
こちらに向くように机が配置されたまさにその机にイケメンがいた。
漆黒の髪は方まで伸び、青い透き通るような目はどこか優しげな雰囲気のイケメン死ねばいいと思った?
決して口には出さないが、せめて殺気だけでも贈ることにする。
「ん?何だか寒気がするね。風邪かな?」
どうやら殺気は無事に届いているようだ。
ついでにそのまま死んでしまえば世のもてない男性諸君の平和に貢献できるよと言って差し上げたい。
「まぁ、いいか。初めまして、修螺君。僕は深海 海、深海グループ会長だよ、宜しく。娘は夕食の席で紹介するから、それまでは客室で待ってもらえるかい?」
「はぁ、わかりました」
凄い爽やかスマイルで自己紹介されてもこまる。俺に男食の趣味はない、けして。
そう言えば、笑顔は実は攻撃的なものであると聞いたことがあるが、確かにそうだと思う。
現に、今この人に俺は敵意を持っている。
まあ、それはこの人の容姿に対するものが大きいせいかもしれないが。
「えー、早く合わせようよ〜」
そして母は愛も変わらずわが道を行く、だ。
「雪平、僕も仕事が忙しいんだ。少しくらい待ってくれないかい?」
何だろう、母にもっと困らせてやれと言いたくなってきた。
苦笑いを浮かべながら海さんは母に答えている姿などさまになりすぎてむかつきます。
「ちっ、使えねー奴」
いけ!母よもっと罵詈雑言を浴びせろ!
「聞こえてるよ、雪平」
「聞こえるように言ったんだし」
「母よ、自重してくれ」
もちろんこの自重してくれの意味はもっとやれと言う意味だが母は気がついていない。
でも、普通の人と話すときにこれでは困る。
もし許されるのであれば親をクーリングオフしたい?
一般的な家庭のお母さんと交換でもいいがね。
「雪平様、修螺様。客室にご案内致しますので、此方へ。では、旦那様、失礼致します」
すっかり存在を忘れていたダンディー執事ついて客室に向かうことになった。
「あぁ、任せたよ紅」
お前は仕事に溺れてしまえと、部屋を出る瞬間思ってしまった。
夕食の時間となり、紅さんに連れられて部屋へ移動。
そこには海さんしかいなかった。
その目の前には豪華絢爛な食事がすでに並べられており、見ていると
「修螺君、取り敢えず席に座りなよ。今娘を呼ぶから」
「はい」
やつから声をかけられた。
それはもうものすごい笑顔で。
はっきり言ってその笑顔を見ているとやはりむかついてくる。
それと、何か隣でかちゃかちゃ言っていると思えば母は既に席に座り飯を食い初めている。
真面目に言っていい?
戸籍抜いていいですか?と
「修くんこれ!これうまうまだよ!」
見ているこちらに気がついたのだろう、ホークに肉を刺しながら主張してきた。
「黙れ母よ、勝手に食うな」
そんな母がうざいので目をそらすとイケメンやろうこと海さんが目に入った。
海さんは母を全力無視。
苦笑いを浮かべながら娘さんを呼ぶように紅さんに言っているようだ。
「慣れてますね、海さん」
「ん?何にだい?」
「母の扱いです」
「あぁそりゃ慣れてるよ。幼なじみだからね。初恋の人でもあるし」
「へ〜、幼なじみですか。てっ初恋の人!?」
「うん、まぁね。だ「父さん、来たぞ」うん、じゃあ自己紹介してあげなさい」
「あぁ。初めまして、深海 衣だ。一目惚れだ結婚してくれ」
沈黙がこの場を支配した。
空気が凍ったと言うのはこのことだろう。
ただ響くのは母の咀嚼音だけ。
こんな時でも母は通常営業のようだ。
まぁそれはいい、だがこの少女、今何て言いましたか?
「あの、もう一度言ってもらえます?俺、どうも聞き間違えしたみたいで」
「結婚してくれ、と言った。何度も言わせるな!?恥ずかしいではないか!?」
どうやら聞き間違いではないようだ。
俺の耳が腐ったわけでも、聞こえなくなったわけでもないらしい。
だが結婚してくれと言われてもそもそもこちらはお見合い事態をする気がなかったのだから答えなどはなから決まっている。
「だがこと「ギャー!?そこは物は入らない、やめろ!?」へ?」
俺の人生で一度はまともに使ってみたかった台詞は、ダンディー執事紅さんの悲鳴により遮られることとなった。
疲れた