1/4
弟一品
夏萌は閉店後もスタッフルームのパイプ椅子に体育座りしていた。
「夏萌くん、帰りましょう。もう外は暗いですよ」
店長は笑顔で夏萌に接する。
「夏萌くん、見てください。外は真っ暗」
夏萌は顔を上げた。
「真っ暗?あぁ、外が恐い、人が恐い、暗闇が恐いっ!」
夏萌はテーブルの上の毛布をかぶった。店長が困った顔をしてこちらを向いた。
「夏萌はデス・メタルならぬ、デス・メンタルなんですよ」
「上手いこと言ってる場合ちゃうやろ」
鈴木先輩に言われた。鈴木先輩は同じ高校の先輩。中学二年生まで兵庫県で暮らしていたため関西弁を時々話す。
「聖ちゃん、どうにかせんとえらいことなるで」
「先輩、頼みます」私はスタッフルームから出ようと、
「聖ちゃん、ちょい待ち」鈴木先輩に捕まった。ゴツゴツとした手が私の二の腕を掴む。
「俺よりも聖ちゃんが行ったほうがええって」
「えー、夏萌は男だし先輩のほうが良いですよ」
二人で揉めている所へ店長がやって来た。